慰謝料ふんだくり大作戦
そのころアイザックは。
「お前、フェリシア様を金で買ったんだって?」
「薄汚い商人風情が」
「貴族でもないくせに、侯爵令嬢に手をだそうなんて生意気なんだよ」
テンプレのごとく、学園裏に呼び出されていた。
貴族のボンボンが3人、アイザックを囲んでいた。
囲んできた男たちの顔を確認する。エバンズ子爵家三男、テイラー男爵家次男、スミス子爵家四男。
いずれも爵位低め、継承順位低め、一族や貴族社会でうっ憤を抱えているタイプなんだろう。庶民なら少しくらい遊んでもいいと思っている連中だ。そこに、うってつけの庶民が現れた。
頭の中で計算し、アイザックはあきれたように微笑んだ。
一発くらい殴られとくか。それで慰謝料をふんだくることにする。今後の商売相手としても使えなさそうだーーーー。
「爵位も低い、継承順位も低い、ついでに偏差値も低いおたくらに、侯爵令嬢が口説けるとでも?」
「なっ、てめぇ!」
案の定、沸点が低そうだ。たたみかけるように、アイザックは嘲笑する。
「悔しければ金で買えるほど、稼いでみろよ」
バキャッ。想定通り、アイザックの頬が打たれた。
狙い通り頬が腫れたのを確認した、次の瞬間ーーー
「だれかああああああああああ」
アイザックは突然大声を出した。
「ちょっ、おまえ、何叫んでんだよ!」
男たちが慌て始める。
「たすけてくださああああああああああい。殴られましたああああああああああ」
ひと気のない学園裏とはいえ、昼休み時間だ。何事かと、すぐにギャラリーが集まってきた。
これだけ目撃者を集めれば、慰謝料の話し合いもスムーズだろう。
「ちっ、ずらかるぞ…」
3人の男たちは駆けだそうとして、何かにぶつかる。
「きゃ!」
フェリシアだった。
「ふぇ、フェリシア様っ?」
男の一人が慌てる。フェリシアの手を取っていいところを見せるべきか、早く逃げるべきか逡巡しているらしい。
「すみません、どいてください!」
フェリシアはテンパっている男たちをかき分け、アイザックのそばに駆け寄る。
「アイザック様!」
勢いに気おされて、アイザックは少し引いている。
「な、何しにきたんだ…?」
フェリシアはキッとアイザックを見つめた。
「壁にドン! 行きます!」
次の瞬間、フェリシアはアイザックを壁に向かって思いっきり突き飛ばした。
ドゴオ! ものすごい音がして、アイザックは壁にめり込む。突然のことで受け身が取れなかったらしい。
「きゃああああ!!!誰か!!!!」「アイザックさんが!!!!!」
ギャラリーの女子生徒の叫ぶ声が上がる。
いじめっ子貴族3人組も状況が呑み込めず、固まっている。
壁にめり込むアイザック。
騒ぐギャラリー。
フェリシアは、やりすぎたかもしれない…とやっと気づいて、呆然と立ち尽くした。




