表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/6

ぼちぼちダンジョンですわ

 平和的な交渉により無事パーティ結成を果たし、3人仲良くテーブルを囲んでランチタイム。しかし私はランチを早々に切り上げ私は早くも仕事へと借り出したい気分だ。

 この私が仕事がしたいと思うことがあるとは、やはり人間わかったものではないな。いや社会人一年目は確か張り切っていたっけ。それが社会の揉まれて行くうちに自分というものが分からなくなって、いらんことまで考えてしまうようになって、思考はいつだってネガティブになっていた。

 そして人生そのものについてネガティブに考え始めていた時、気づけばメガトリプルヘッドメカトルネードゴーストオクトパスロボデビルカミシャークになってました。世の中わからないものですね。


「さて、無事パーティ結成できたことですし、どっかダンジョンとか行きましょうよ」

「お、……おう」


 アルドーは意外にも苦虫を噛み潰したような顔をしていた。こういう奴こそ訓練も兼ねて色々なダンジョンに繰り出すと思っていたのだが。その表情には何か含みがあった。


「まだ、私と組むのは解せませんか」

「いや、そうじゃねえよ。オメェは実際強えし。ただ、……」

「私たち、まだダンジョン行ったことがないんですよ」


 隣でアルドーと同じように不安げな表情をしていたサンディーがそう言った。


「それは、そうだったんですか。しかし初めてだと、何か問題があるんです?」

「オメェ怖くねえのかよ。ダンジョンは野生でちょこっと魔物がいる状況とはワケがちげえんだぞ」

「イケるイケる。俺サメだしメカだし」

「サメ要素まだ見てねえけどな」


 うぅん、これは困った。こっちとしてはもう鉛玉や炎をぶちまけたくてうずうずしているんだが。アルドーの様子を見るに怯えているのは演技ではないらしい。口を開く時以外はずっと俯いてやがる。


「おいアルドー! まだびびって雑魚しか狩らねえのか!?」


 そう無能国会議員のようなヤジを飛ばすのは他の団員の方。アルドーよりもイキリLvが10ほど高いと見た。


「ちっ、……うるせぇな」

「レイもパーティ抜けちまったししょうがねえか!」


 ここで私の知らない名前が出て来る。まぁ大方私が入る前アルドーはレイとやらとパーティを組んでいて、そのレイに戦闘の面で頼っていたのだろう。


「と、思ったんですけどサンディーさん実際のところどうなんです」

「いや次からちゃんと思考は声に出してください。レイさんに関しては想像通りです。レイさんは私が入ってすぐに抜けてしまったのであまり詳しくは知らないんですけど、なんでもレベルアップ時の基礎ステータスの上昇が凄まじかったらしく、3レベルほど上がっただけでRANK4ダンジョンに行けるようになってしまったんですよ」

「へぇ、そりゃすごい。知らんけど」

「それで、高ランクダンジョンに行くためレイさんは基本パーティから抜けてしまったんです」

「ふーん」


 そりゃあ、アルドーくんも負い目を感じますわな。高ランクダンジョンに行っていた元仲間に比べこっちはスライムの経験値取られて発狂しとるんだから。俺がアルドーの立場だったらベソかいて拗ねるわ。


「……クソッ! 行きゃあいいんだろ! ダンジョン!」


 突然、アルドーはガタンと勢いよく椅子から立ち上がり啖呵をきる。


「おっ、おいおい、冗談だってアルドー。まだ早いって」


 イキリ員は、アルドーを焚付けといた割には焦っている様子だった。おるおる、こういう後先考えず人を適当に煽ってライン超えたと気づいた途端、オロオロしだすカス。おるわーこういう奴。まぁ傭兵団だしおるわなこういう考えて喋れん奴。俺も基本何も考えとらんけど。


「うるせえ! テメェ俺がダンジョンから帰ってこれたら覚えとけよ! 行くぞ! メサ、サンディー!」

「待って、まだガソリンスープ飲んでる」

「早く飲んでくれよ、……てか俺の金なのにスープセットまで付けんでくれよ」

「スマンゲリオン」


 結局ガソリンスープはアツアツなのでゆっくり数分かけて飲み干し、依頼やダンジョン情報全般を扱う受付の前に立った。受付のお姉さんも何故か苦虫を噛み潰したような顔。どうやら我がパーティは相当信頼が無いらしい。


「聞いてたよな、ダンジョン紹介してくれ」

「……そうですね、ではオズワルド地下墓地はどうでしょうか。調査によると主にアンデッドがこのところ数を増やしており、外への侵攻を危惧されております」

「アンデッドか、……」

「もちろん探索のみでも構いませんが、アンデッド発生原因を突き止め増殖を阻止してほしいという依頼も来ているので、増殖原因を絶つと別途報酬が与えられます」

「へぇ」

「報酬は150000G、道中の拾得品は自由にしてもらって構いません」


150000Gか。相場がわからんから何とも言えんが3人で割ると一人5万か。1日の稼ぎとしては中々に良いな。


「因みにアンデッドの強さに関しましては武装はしているものの耐久力自体は気にかけるほどでもないそうなのでダンジョンRANKは1となっております」

「RANK1か、……それなら」

「しかし、依頼に関しましてはRANK3となっております。原因については一切不明なので」

「RANK3、……」

「奥まで進まなければ他のダンジョンと比べ安全かと」


 アルドーの顔色は優れない。そりゃそうだ、初ダンジョンにそんな危険が含まれとったら血の気だって引くわ。同情します。


「……へっ、報酬用意しとけよな」


 ここでアルドーくんの十八番、「啖呵」が発動。若者の立ち向かう姿は様になる。手の震えさえ味になるというもの。思ったよりも良い子なのかもしれないな。


「……オズワルド地下墓地は、モラウルを出て南西に5kmのところにあります。少し遠いので馬車を使うことをオススメします。お気をつけて」


 いや馬車っていうシステムがあってマジで助かるわ。5km聞いた瞬間動く気がマジで失せたからね。ロングウォーク嫌い。

 集会所を後にすると、各々装備を整えるため一度解散。私は当然何もないので待ち合わせ場所のモラウル入り口まで直で行った。そしてタバコを2本吸い終わる頃に、全員集合。

 サンディーの格好は特に変わってないように見えたが、アルドーはがっつり鎧を着ていた。


「おお、カッコええやん」

「ダンジョンに行くんだ、……こんくらいはな」

「そんなえぐいんかダンジョン」

「そりゃそうだろ。魔物の巣窟なんだぞ」

「うぅん。そう聞くと少し怖くなってきた」

「へっ、……やめとくか?」

「いや、やめないよ。やめようかって言って欲しそうだけどやめないよ」

「そんなこと思ってねえ! さっさと馬車に乗るぞ!」


 アルドーは勇んで馬車に乗り込む。私とサンディーも後に続く。

 車内の空気はまぁわかっていたが重い。ふかふかのクッションと自然豊かな景色に、私としては何とも心が落ち着く。この景色を見ながら安いホットドックを食べて、ババ抜きにでもしゃれこみてえ。が、ダメだ。通夜みたいな空気が車内を埋め尽くしてやがる。


「運転手さん、ダンジョンまでどれくらいで着くんです?」

「あと5分ほどですよ」

「だってさ、暇だからみんなでしりとりしようよ」


 無視された。結局沈黙を乗りこなした。で、遂にダンジョンに到着。

 ダンジョンの雰囲気はバッチリ。地上の墓地自体そこまで大きくはなかったが、白昼だというのに濃い靄に囲まれているため、二人の緊張感側から見るには増しているようだった。俺はテンション上がるけど。


「よし、……よし。行くか」


 アルドーはさやから剣を抜く。シキィンと小気味の良い音がした。この音を聞くとファンタジー世界に来たんだなぁと実感。サンディーは杖を両手でぎゅっと握りしめる。カワE。いいとこ見せてえ。

 地上にはアンデッドいなかったので、とりあえず中央にある石造りの小屋の中へ入った。室内にはまぁわかっていたがど真ん中に地下へ続く階段があり、暗闇が私たちを誘っていた。


「ここから、生死をかけた戦いが始まる。……皆、覚悟はいいか?」


 ダンジョンRANK1で生死掛けるか? せいしはせいしでも違

「私は、大丈夫です!」


 おお危ない。サンディーに潰されなければクッソしょうもない思考を繰り広げるところだった。


「はよ行こ」

「よし、じゃあサンディー、ライトを頼む」

「はい、……コントライト!」


 サンディーがそう言って杖を上に掲げると、杖の先から辺りを照らす光の玉が出現した。


「おぉ、すげえ。便利」

「えへへ」

「えらい。辺りを照らせてえらい。助かる」

「あはは」


 褒めれば褒めるほどサンディーの笑いが乾いていった。誰が乾燥材や。


「なぁ、……進もうや」

「あ、ハイ。すいません」


 普通に怒られたのでダンジョンを進むことに。

 階段を1分ほど降り、ようやく地下広場に到着。かなりの地下深くまで進んだだけあって天井は地下とは思えないほど高かった。


「ほー、こりゃすごい」

「気をぬくなメサ、……もうここはダンジョン。……戦場だ」


 いちいちセリフが鼻につくな、別にいいけど。まぁアルドーはアルドーで初めてダンジョンに足を踏み入れたことにより無意識ながらにも高揚しているのかもしれない。そっとしておこう。

 すると柱の陰から、ぬらりと剣を持った骸骨がカシャカシャ音を鳴らしながら登場。胸当てに肩当てをしっかりと装備しており動きはそこまで鈍重ではないところを見ると、よほど生前カルシウムをしっかりとっていたようだ。魔物の名前は知らんけど多分スケルトンだと思う。いや絶対スケルトンだわ。


「二人とも下がってろ。この2匹は俺がやる」

「まじ? 死ぬで」

「試したいんだ、俺の力を」

「じゃあ頼む」


 アルドーは2匹のスケルトンの前に立ち、剣を握りしめる。


「行くぜ、……ハァッ!」


 アルドーの横一閃斬りは、スケルトンの上半身と下半身を分けた。上半身はそのまま後ろへと倒れ、下半身は膝から崩れ落ちる。意外と立派な剣技だったの普通に感心。


「おぉ、すごい」

「へッ! たいしたことなゲェッ!?」


 普通にもう1匹のスケルトンに切りつけられてた。しかし反射的に後退したようで傷は浅いようだ。


「ちっ、……こしゃくな!」


 こしゃくなって言葉リアルで初めて聞いた。それはさておき、アルドーはもう1匹のスケルトンへ体当たり。スケルトンは受け身を取れずガシャンと大きな音を立てて勢いよく倒れる。アルドーは倒れたスケルトンの元へ駆け出し、


「オラァ!」


 と、倒れたアンデッドの頭をマジのサッカーボールキックすると、頭蓋骨は勢いよく吹き飛んだ。容赦ねえ、理にかなっているがファンタジーさは無いな。


「へっ! どうだ!」

「普通に強いやん」

「あの時のスライムでちょうどレベルアップだったからな。あの時とは装備も違うしこれくらいはワケねえ」

「傷の方は?」

「あぁ、あれくらい問題ねぇ。防具もしっかりしてるしな」


 思ったより問題なさそうだ。このままおんぶに抱っこで終わんねえかな。俺は地下墓地観光してえんだ。

 とか思ってたら、また体にある違和感。しかしこの違和感は一度この世界で感じているものだ。


「レベルアップしたっぽい」

「メサもか、俺もだ」

「レベルアップのスパン早ない?」

「それだけスケルトンからもらえる経験値が多いってことだろう。武装もしてたしな」

「へぇ」

「よし、俺の基礎ステータスの上がり方を見てみろ。俺が天才であることを理解できるからよ」


 そう言ってアルドーはウキウキしながらステータスを見せびらかす。


________________________

|名前  :アルドー Lv.10 ↑1       |

|種族  :人                 |

|                       |

|体力  : 30 ↑6             |

|力   : 34 ↑8             |

|素早さ : 21 ↑4             |

|知力  : 10               |

|モラル : 10               |

|                       |

|能力  : ツインスラッシュ         |

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


「いや見せられても基準がわからん。ファイアーエ◯ブレムだったらすごいと思うけど」

「なんだよそれ! いや普通にすげえだろ! 一回のレベルアップで合計一桁の奴もいるんだぞ!」

「へぇ」

「おめーも上がったんなら見せろよ」

「しゃーなしな」


 魔石を握り渋々ステータスを壁に映し出す。


________________________

|名前  :メサ Lv.3 ↑1          |

|種族  :メガトリプルヘッドメカトルネードゴース

|                       |

|体力  : ー                |

|力   : 普通  ↑             |

|素早さ : 普通  ↑             |

|知力  : ゴミ               |

|モラル : ゴミ               |

|                       |

|能力  : リード・トルネード ファイアー  |

|      リペアトゥース          |

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


「いやお前の方がわからんわ。数値化されてないやん。しかも、……いや、……ツッコミどころ多いな。とりあえず何リベア・トゥースって」

「説明によると歯が生え変わるらしい」

「ここぞとばかりにサメ要素入れてくるやん。いるかその能力」

「いるわけねーだろ死ね」

「えっごめん」

「サンディーさんは上がった?」

「えっあっはい。私ですか。はい、上がりました」


 完全に蚊帳の外だったので気を抜いていたようだ。突然司会に話を振られたトークが苦手な雛壇芸人みたいな反応しやがった。


「サ、サンディーも上がったのか。見せてくれよ」

「あっはい。こんな感じです」

 

_______________________

|名前  :サンディー Lv.4 ↑1      |

|種族  :キャットマン           |

|                      |

|体力  : 20  ↑2           |

|力   : 10  ↑1           |

|素早さ : 14  ↑1           |

|知力  : 114 ↑52          |

|モラル : 85              |

|                      |

|能力  : コントライト フレイム サンダー |

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


 いや知力の上がり方えぐ。このダンジョン出る頃にはアインシュタインみたいになってそう。


「あっ! フレイムとサンダー覚えました! これで私も戦闘に参加できますよ!」

「ふ、ふーん。やるじゃん」


 アルドーは顔を引きつらせわかりやすくドン引きしていた。多分俺もこれくらい顔が引きつっている気がする。この子も大概イカレてるな。


「女性なのに、キャットマンなの?」

「はい。男女で名称に変わりはありません」

「スキービディビディブヨダダブダブヨダブダブダブスキービディビディブヨダダブダブヨダブダブダブ」

「えっこわ。なんですか」

「アイム ス◯ャットマン」

「そ、そうですか、……」


 サンディーはマジでドン引きしていた。これで全員顔を引きつらせたパーティの完成だ。

 全員のステータス確認を終え、ダンジョンの奥へと足へ進める。みんなドン引きしながら。


 

スキャットマンが出来るなら君にも出来るさ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ