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メガプルメカトルゴーパスロボデビカミシャー

こんなのに一時間半も使っちまった


 海とは、とても怖いものである。

 私がまだ学生だった時分、友人たちと旅行で行ったハワイで私はそれを実感した。

 私たちはスキューバダイビングをすることになり、初めは海の透明さや生命の尊さに、胸を躍らせた。

 しかし、それと共に自然の恐怖を知った。私は何とは無しに小さくカラフルな生命に触れようとしたところ、ヒレをバタつかせ私の手をひらりとかわした。その逃げた先に目を向けた途端、これまで感じたことのない悪寒が走った。

 暗く、底の見えぬ海へと、魚は消えて行った。きっと足を滑らせたら、戻れはしない。この世の一切さえ飲み込めてしまいそうなほどの深さに、震えが止まらなかった。

 

 そはさておき、私は事故で死んだ。酔っ払いの運ちゃんに轢殺された。


「あっ意識!」


 不思議なことに意識を確認できた。それも衝撃を感じてからそれほどの時間が経ってないように感じた。

 咄嗟に辺りを見渡すと、天井は白いがどうやら病院ではなく、まるで神殿のような場所だった。


「はじめまして」


 ふと後ろから女性の声が聞こえてきたので、振り返る。

 女性は美しい顔立ちに、生まれた我が子を見るような優しい眼差しを向けていた。巨乳だった。


「あなたは、きっと女神様ですね」

「そうです。飲み込みが早いですね」

「やっぱ女神は巨乳ですよね」

「わかる」


 なるほど流石は神様、コミュニケーション能力がSSランクだ。

 こんな下卑たセクハラもお茶の子さいさいというわけだ。


「それはさておき、あなたは前の世界で死にました。把握できていますか?」

「えぇ。ラグがあまり無いので多少戸惑ってはおりますが」

「そうですか。では早速ですがあなたの転生先、ステータスを発表しますね」


 ステータス? 転生先? これまたゲームや小説でよく聞く単語が出てきたものだ。

 しかしステータスというくらいだから数値化されているのだろうか? だとしたら前の世界と違って分かりやすい。


「数値化されていますよ」

「心を読むな」

「女神様ですから。では、まずあなたの種族から発表しましょう」

「種族ですか、お願いします」

「メガトリプルヘッドメカトルネードゴーストオクトパスロボデビルカミシャーク」

「え?」

「メガトリプルヘッドメカトルネードゴーストオクトパスロボデビルカミシャーク」


 女神様は変わらぬ笑顔でそう言った。


「え?」

「いやこの天丼は2回まででしょ。あとは寒いって」

「いややかましいわ。何フランクに喋っとんねん。多くない? 種族」

「こんなもんですよ」

「ちょっと覚えらんない。なんか空中に文字として表示とかできない?」


[メガトリプルヘッドメカトルネードゴーストオクトパスロボデビルカミシャーク!]


 空中に虹色のグラデーション且つ楷書体フォントで表示された。輪郭は金色だった。

 なぜかエクスクラメーション・マークもおまけでつけられていた。


「これは、あれか? 最近君はサメ映画を見たのか?」

「なんのことですか?」

「いや盛りすぎ。鬼盛りじゃん設定」

「頑張りました!」


 頑張っちゃったかぁ。そんな無邪気な笑顔を向けられたらその頑張りを否定することはできんわなぁ。


「いや最初にメガいらんくない? 途中のメカとかぶるって」

「サメ語る上でメガロドンの存在は外せないので」

「いやわかるけども、てか真ん中にオクトパスいるじゃん」

「吸盤は壁を登るのに便利です。もちろんその際指に吸盤が浮き出てきたりしないのでご安心ください」


 そうか、ならいいんだ。


「メカあるのにロボって単語入ってるけど、重複してない?頭痛が痛いみたい」

「急に韻踏むやん(笑)」

「いやもうキャラ設定。 反応に困るからしっかりしてくれ」

「メカは、機械です。もしくは、装置。略によっては、メカニック(技術者)の略でもあります。ロボは、もちろんロボットの略。主に、人型である場合があるが、大きい意味でとれば、自動の機械です。つまり、メカ(機械)の中のある一部の自動の機械を、ロボと言うのです。」

「へぇ、詳しい」

「y◯hoo知恵袋に書いてありました」


 もう何もいうまい。女神様なんだから私の世界にも精通していることだろう。ネットだって使うだろう。

 自分で思い出すよりもネットで調べた方が早いことだってある。それは皆同じなんだ。


「そうですか、まぁいいでしょう。他のゴーストとデビルもいいでしょう」

「はい」

「カミってなに?」

「GOD」

「なんでカミだけ日本語なん?」

「いやゴッドは流石にダサいかなと(笑)」

「いやさっきからワラって口に出さなくていいから。違和感半端ないじゃん。カミはえぐいって」

「では次にあなたの名前を発表します」


なるほどこの女神は人の話を全くき

「あなたの次の世界での名前はシブガキ イサメです」

「思考の途中で入ってくんな。あとその名前はマジで危ないってホントに。マジでやめて」

「しょうがないですね。ではメサで」

「いやもうそれでいいわ。マジで頼むわ」

「では次にステータスを表示します」

_______________________

|名前  :メサ Lv.1            |

|種族  :メガトリプルヘッドメカトルネードゴース

|                       |

|体力  : ー                |

|力   : 普通               |

|素早さ : 普通               |

|知力  : ゴミ               |

|モラル : ゴミ               |

|                       |

|能力  : なし               |

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


 いや種族途中で切れてるし。もうゲームのバグみたいになってんじゃん。

 というか数値化されてないじゃん。体力に関してはロボだからか「ー」って表示されてるし。

 しかも知力とモラルゴミって。ゴミって。


「ひどくない? 普通に傷つく。」

「記憶を受け継いでますのでそこは変更できないんですよね」

「俺前の世界でモラルと知力ゴミだったんだ、……」

「ドンマイ」

「ありがとうございます。それより能力のところ、なしって何ですか」

「そりゃあLv.1ですから。最初から能力あるわけないじゃないですか、そういうとこですよモラル」

「きっつ」

「では次に転生先の世界を発表します」


 メカでシャークがまかり通る世界ってどんな世界なんだ。恐ろしい、恐ろしすぎる。

 人間の次がメガトリプルヘッドメカトルネードゴーストオクトパスロボデビルカミシャークって業が深すぎるだろ。俺が何したっていうんだよ。


「アシュヴィ帝国です。隣国のフォルセ帝国とは頻繁に戦争していた歴史がありますが現在は平和な世界です」

「おぉ、意外。平和な国に転生できるならそれに越したことはない」

「しかし、内政が不安定で都市によっては治安が非常に悪い場所もあります」

「そこは何とかなるでしょう。因みにどんな世界なの」

「簡単にいうとファンタジー系ですね

「いや、わからん。色々あるじゃんファンタジー」

「ドラゴンを操り、剣と魔法で戦争するような世界です」


 無理あるわぁ。ドラゴンナイトが空を舞い地上では賢者が上級魔法で戦うなかメガトリプルヘッドメカトルネードゴーストオクトパスロボデビルカミシャークが参戦するのは流石に無理があるわぁ。


「何とかなるでしょう」

「他人事だなぁ。せめてスチームパンク要素ないと合わないって」

「合う合わないじゃないんで」

「いやもう対応めんどくさくなってるじゃん。まじ本社にクレームいれてえわ」

「ではいってらっしゃい。目覚めたらもうその世界の住民ですから」


 ふっと意識がぶち落とされた。

 それからまた意識を確認できた。眠っていたような感覚があったので、死んだ時よりは心地よい目覚めだった。

 健やかな風を感じ、ゆっくりと瞼を開く。

 メガトリプルヘッドメカトルネードゴーストオクトパスロボデビルカミシャークには決して合うことはないであろう草原が広がっていた。

自分はB級サメ映画を見たことがありません

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