20
「よし、花園先輩の問題は、専門家に任せよう!」
俺は元気よく天女に言った。
天女は白目を剥きながら「はぁ?」と呟き、
「なんでよ!? あんたが請け負った相談なのよ!? いつもみたいに、ぱっと解決してみなさいよ!」
「俺は請け負ってないんだが……?」
俺と天女が何を言い争っているかと言えば、先ほどの三年生女子からの依頼についてだった。
今は、生徒会室。ここにいるのは、俺と天女だけ。
花園先輩は俺が渡した制服を受け取ると、彼は仕事の引き継ぎをしてから、そそくさと帰っていった。
そして、早見も先ほど、バイトの時間ということで帰っていた。
ほとんど生徒会業務をする時間は無かったわけだが、今日中に終わらせないといけない仕事は、ほとんど花園先輩が終わらせてくれていたため、それを引き継いですでに終わらせていた。
俺が無言のままでいると、天女が「はぁ~~~っ」ととてもウザったく溜め息を吐いていた。
「……繊細な問題だから、簡単に首を突っ込むべきではないだろう」
「……それじゃ、諦めるっていうの!? 普段から思ってるけど、花園さんの事務能力は、抜群に高いのよ! 普段から生徒会室に来て事務をしてくれてれば、仕事はあっという間に片付くでしょ? それになにより、完璧美少女の私が、一度請け負った依頼をほっぽり出すなんてことが、許されると思うの!?」
天女は鬼気迫る様子で言った。清々しいほどの駄目人間だった。
「だから……お願いよ、司さま!! どうか――この通り!」
この通りと言いつつ、いつも通り土下座をする天女。
呆れるほど軽い頭だな……。
俺が無言のまま彼女の後頭部を見下ろしていると、いつも通り高圧的な態度で天女が言う。
「な、何よ!? あたしが失敗したら、あんただって困るでしょ!? どうせ解決するつもりなんだったら、勿体ぶってないでさっさとどうにかしてくださいよ、この……司様!!」
土下座をしながら俺をなじる(?)天女に、俺は呆れて溜め息を吐くのだった。
☆
「あ、司君! 話って何だったの?」
ファミレスにて、俺の姿を見つけた花園先輩が、笑顔を向けて手を振った。
俺はそのまま、彼の席の対面に座った。
俺は天女と話をした後、すぐに花園先輩に連絡をしていた。
どうやら、彼は自宅最寄り駅に着いたばかりだったようだ。
俺は少し話がしたいと連絡して、駅近くのファミレスで待ち合わせをすることにしたのだった。
「……ちょっとお願いがありまして」
なんと切り出したものかと迷いつつ、俺はそう言った。
「お願い? 僕に? なんだろ……あ、ドリンクバーの割引券あるから使う?」
花園先輩は俺にドリンクバーの割引券を渡した。
「どうもです」と答えてから、俺は店員さんを呼び、ドリンクバーを頼んだ。
「あ、なんか飲む?」
花園先輩の言葉に頷き、一度ドリンクバーで飲み物を入れてから、席に戻る。
グラスに注いだウーロン茶を一口飲んでから、俺は告げる。
「さっきのお願いのことなんですが……。花園先輩、これから生徒会室で仕事をしてもらいたいんですが」
俺の言葉を聞いて、花園先輩は「え……」と惚けたように口を開き、呟いた。
「そ、それはヤダよ……。なんで急にそんなことを言うの? 僕の女性恐怖症は、司君も知ってるでしょ?」
「その、女性恐怖症について、ちょっと聞かせてもらいたいんですけど……いいですか?」
「え、う、うん。別に良いよ」
「どうして女性恐怖症になったんですか? なにか……きっかけが?」
俺のド直球な質問に、戸惑いつつも嫌な顔を見せない花園先輩。
「あー、僕は5人姉弟の末っ子なんだけど、男の子は僕だけなんだよね。それで、小さい時から4人のお姉ちゃんたちにいつもいじめられてて……。それで、いつの間にか女の子みんなが怖くなってたんだよ」
「……大変だったんですね」
「うん、そうなんだよ。……髪の毛も、ホントは短くしたかったんだけどね? 『短くすると可愛くないでしょ!』って言われて、髪の毛を切らせてもらえなかったんだよね」
トホホ、と肩を落として言う花園先輩。
「じゃあ、女装とかもその姉ちゃんたちにさせられてたんですね」
花園先輩は少し考えてから、首を横に振った。
「ううん、そういうわけじゃないんだよね。女装をしたら、お姉ちゃんたちの意地悪が無くなって、ちょっと優しくしてもらえたから。女装は、僕にとって自分を守る鎧なんだよ」
「……だから、セーラー服にも着替えた訳なんですね」
「気分的には無理矢理着替えさせられたようなものだよ!」
ぷんすか頬を膨らませる花園先輩。
「でも、女装したおかげで天女さんと早見さんとも少し話せたし、悪いことばかりじゃなかったかも。流石に、副会長として、コミュニケーションは取っておかないといけないな、って。思ってたし」
俺の後ろから早見に向かって話しかけたことが、コミュニケーションとカウントされてる……!
しかし、その言葉を聞いて、俺はもしや、と思い。
「花園先輩、一つ提案があるんですけど……」
ちょっと残念な提案をするのだった……。





