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 小説を書く。暗い部屋でパソコンのモニターだけが輝いている。タイピングのカタカタと軽快な音がそこには響き渡っている。男はそこで一人小説を書いている。

 男には小説を書く以外の趣味がない。それ以外の趣味といえばアニメだったり漫画だったりする。結局それは人に言えるような趣味がない、ということだった。


 趣味なんてない、といえばそれまでのことだが。

 

 何も書きたくないと思う時がある。それがまさに今この瞬間だ。書くものが思いつかない。思いつかない、だから以前書いた小説の手直しをやって自分自身に「今俺は別のことで忙しいのだ」と言い訳をする。


 そもそも小説を書きたいのはお金が欲しかったからだ。なぜお金が欲しかったかと言えば、お金こそが絶対的なステータスだと思ったからだ。そしてお金がほしいのであれば流行りに乗っかるのが最も簡単な方法だ。恋愛モノから始まり学園モノ、異世界モノと流行は流れていく。流行に乗った作品は流行がされば忘れ去られる。それでもお金のためには流行に乗ったものを書かなければならない。


「流行とは一種の集団催眠である」とかの有名な潮留財五は語っていたが、催眠にかかっていないものからすればわざわざ催眠にかかりにいきたいと思うはずもない。学園モノが面白いと思えない人間に学園モノは書けない。そもそも学園モノが一体どんなものなのか、ということさえ知らない。知らない以上すでに流行という流れの中で研がれ、洗練された作品群に勝つような作品を書くことは難しく、結果売れることはなくお金も手に入らない。


 逆に言えば売れるためには流行りのものがどんなものなのかを熟読し理解する必要がある。催眠にかかる必要がある。いわば勉強だ。けれどパソコンさえあれば誰でも執筆ができる時代に小説を書こうなんてする人間が勉強なんて面倒なことをするのは苦行でしかなく、気がつけば小説を書くための勉強、研究であった流行物の読書、視聴もメモを取ることもなく、記憶することもなく、頭を働かせないままに娯楽として消費してしまうのである。


 このままではいけない。そうは思ってもどうしようもない。そんな自堕落な日々が毎日続いている。


 売れている人って凄いと思う。

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