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ヒロインと呪われた令嬢

 ゲーム開始は14歳から。15歳の現在、すでにヒロイン…エルシィ=ヒルシュは登場している。彼女も伯爵令嬢だ。とても可愛らしく、元気な明るい令嬢だ。


 攻略対象であるアイザック様と仲のよいヒロインに、やけになった私は最初ゲーム通りに彼女を虐めようとした。駄菓子菓子…間違えた。だがしかし、呪いを忘れていた。


 水をかけようとしたら、自分が被る。教科書を破ろうとしたら、爪をひっかけて爪が剥がれかける。着替えを切り裂こうとしたら、カッターが手に刺さった。さらに、全て本人に目撃された。しかも…


「うわ、ビショビショ!?なにしてんの!?乾かしてあげるよ、乾燥(ドライ)!」


「なにしてんの!?爪はげかけ!?ほら、医務室行くよ!」


「…なにしてんの?あ、怪我してるじゃない!回復(ヒール)!綺麗な肌なんだから、傷つけたらダメだよ」


 挙げ句のはてに…ヒロインに世話を焼かれているという始末…でも、これで良かったのかもしれません。だって、エルシィは優しい子なのです。私の醜い、身勝手な嫉妬で傷つけていいはずがありません。


 そして、私達がどうなったかというと……






「全く、この程度もわからないなんて、仕方ありませんわね!この私が教えて差し上げましてよ!」


「わーい、助かるよ」



「や、休んでた分のノートですわよ」


「わーい、ありがとう」



「アイザック様にあげるついでに差し上げますわ!クッキーですわよ!」


「わーい、おいしい!」


 このように、すっかり仲良くなってしまったのです。どうしてこうなった!?いや、借りは作らない主義なんですよ!アレコレしているうちに…いつの間にか仲良くなってしまった…

 もう彼女にならアイザック様をあげても…アイザック様がゲームみたいに幸せに心から微笑めるなら……と思っている。


「…イオリア、考え事?」


「くすぐったいわ、エルシィ」


 唇を撫でられ、クスリと笑う。ん?近くない?


「何をしている」


「え?」


 あら、アイザック様。不機嫌そう?あ、さては私がエルシィと仲良くしているから!?女の私にも嫉妬するなんて…エルシィを愛しているのね…


「嫌だなぁ、イオリアが考え事してたから、なに考えてるのって聞いてたんですよぉ」


「…距離が近い」


「熱を測ろうかなって」


 へらりと笑うエルシィ。なるほど、だから近づいてきたのか。でも熱は無いですよ。やっぱりエルシィは優しい子だわ。


「…そうか」


「のあ!?」


 慌ててアイザック様の攻撃を回避するエルシィ。アイザック様は刀を一閃していた。ん?もっと不機嫌になってらっしゃるわ。あ、さては自分もして欲しかったのですね!?なんだかすいません…


「…ちっ。…エルシィ、相手をしろ」


「やなこった!か弱い女の子になにするのよ!ムッツリ!変態!足フェチ!巨乳好き!」


「…殺す」


 ああ…アイザック様とエルシィったら、あんなに楽しそうにおいかけっこをしているわ。あれね…海岸なんかで…


「うふふ、捕まえてごらんなさぁい☆」


「ははは、こいつめぇ☆」


 みたいな奴だわ、きっと。いいなぁ…私も参加したいけど、走ってパンツ丸見えは嫌だからなぁ…結局見学しました。



 ちなみに、エルシィはアイザック様から見事に逃げ切った。アイザック様はハァハァ言いつつ真っ青になりながら、私に足フェチでも巨乳好きでもなく、私が好きだとリップサービスをしてくれていた。


「………大きなお胸は好きでないのですね」


 私はこの年齢にしては胸がかなり大きい。アイザック様が巨乳好きなら、胸で誘惑できたかもしれないのに…試しに胸をゆさゆさしてみた。残念だ。


「いや、大好物だ!」


「へ?胸は食べ物では…ああ、むね肉ですか?鳥肉?」


「は…いや…その…うむ!」


 アイザック様は鳥肉…それもむね肉がお好きなのですね!今度お弁当にいれてあげよう。たまに私が作るのだが、アイザック様は知らずに食べている。好物があると微かに笑うのだ。


 やっぱり、アイザック様が好き。切なくなりながらもアイザック様に笑いかけた。


 ところで双子はなんでさっきから丸まりながら痙攣しているのかしら?

 頭がいいと、頭はいいは違う典型的なパターン。皆様お気づきでしょうが、ヒーローも相当残念な男です。

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