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場面練習的な  作者: No.9
8/23

最高の人嫌い?

 速さ。速さこそ全て。俺の生きる意義であり俺の価値である。

 騎竜として生まれた俺達は、人を乗せることが役目だ。そう育てられた。

 だが俺は人が嫌いだ。あいつらは速さってものが解っていない。皆、俺に振り落とされては文句を言う。俺は人が乗る事に構いやしないが、人が俺に乗れないんだ。


 乗るなら乗ってみせろ。速さってやつを教えてやるさ。



 人が嫌いで気性が荒い個体だと聞いていたが、たしかにコイツは曲者だな。

 だが、人を嫌ってる目じゃない。ギラギラとたぎる目は人を試す目だ。「乗ってみろ」って目をしてる。いい目だ。


 騎乗の準備にも大人しく従い、乗りやすいように姿勢を下げてくれる。こいつは気の利く良い奴だ。

 だが、まとう闘気は消えていない。むしろ増している。

 俺は鞍にまたがり、走り出す合図を送る。

 すると瞬く間に風を裂く音が鳴り、景色が線になる。


「いきなり襲歩しゅうほかよ!」


 身体へかかる慣性の負荷。ぶつかる空気、竜から伝わる熱気。

 竜が大地を踏む度に力強く心地よい衝撃が俺の腹の奥に響く。

 他の騎竜など比に出来ない程の運動エネルギー。この種では通常、過剰発熱オーバーヒートすると思われるが、魔力によって熱を変換しているのだろう。

 竜種の持つ焔袋ほのおぶくろに濃厚な魔力が集まり、口の端からチロチロと焔を吹かしている。


 剣で厚くなった手の皮が久しぶりに痛む……しかしたまらないな。この爽快感はたまらない。

 打ち付ける風、響く大地、そしてこの騎竜の熱い生命力!

 特殊個体であることは間違いないが、その事を差し引いても走りにおける練度が並じゃない。

 「友達になれそうだ」

 思わず口角を緩めた俺を騎竜が微かに見やると、チロリと漏れていた焔が少しだけ大きくなる。

 再び身体がぐん! と引っ張られ速度がまた一段上がった。


 あっという間にコースを周った俺たちは荒い息を吐きながら街に戻った。

 あの騎竜は、最初の闘気が嘘みたいに消えて竜舎で眠っている。

「どうでしたか……?」

 買い手の居ないことを心配そうにしていたブリーダーが少し期待をしたように聞いてくる。

「ああ、最高だった。是非アイツを貰うよ」



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