第八十二話「土龍神」
翌朝起きて周囲を探ってみたが九十九も鳥獣戯画の兎や蛙もいなくなっていた。あの洞穴に向かってみると壁面に描いてあった絵に前に見た時はなかった鳥獣戯画が追加されていて兎や蛙が楽しそうに遊んでいる場面が描かれていた。
さらに奥へと進むと勾玉が置いてあった台の手前に古ぼけた着物が落ちていた。柄が九十九の着ていた服と同じだ。九十九はこの服の付喪神なのかもしれない。
アキラ「世話になったな。それじゃこの勾玉はもらっていくぞ。………機会があればまた来る。」
俺は誰にともなくそういって踵を返した。
『またね。』
ふと俺は幻聴のようなものを聞いた気がした。もちろん振り返っても誰もいない。昨日は壁から出て動いていたはずの鳥獣戯画達からも九十九の着物からも何の気配も感じない。
アキラ「じゃあな。」
俺は手を振ってそのまま歩き去ったのだった。
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記憶のルートに戻った俺達は順調に進んだ。そして大樹へと辿り着く。まずはティーゲに話を通したほうがいいだろう。そう思って王の間へと向かった。
ティーゲ「ガウ様、太刀の獣神様。よくぞお戻りくださいました。」
今のところティーゲはうまく国内を纏めているようだ。俺達がここを出る前よりずっと大樹の民の雰囲気もよくなっている。
それにしてもティーゲの奴。自分達が崇める獣神の一人である太刀の獣神よりガウの方が上なのか。ちょっと釘を刺しておいた方がいいかもしれないな。
アキラ「おいティーゲ。ガウを妻にしたかったら最低でも俺より強くないと資格なしだからな。」
ティーゲ「………え?いえいえいえ。それはとんだ誤解です。ガウ様に懸想などしておりません。」
ティーゲは慌てて繕った。だけど若干顔が赤くなってる気がするぞ?もしかして本当にガウのことをそういう対象として見てるんじゃないだろうな?
狐神「アキラより強いのが最低条件ってそれはもう嫁にやる気はないって言ってるのと一緒じゃないかい。大体ガウはアキラの嫁の一人なんだから他の者に嫁にやるなんてありえないだろう?」
ガウ「がうがうっ!」
俺はガウを見つめる。うん。可愛い。ギュッてしたくなる。でも女としてとか嫁としてとは見れない…。たぶん………。だよな?俺はロリコンじゃないはずだ。ガウをそういう目で見たことはないはずなんだ………。
アキラ「………ガウはまだ幼いですから。大人になった時に本人がきちんと判断してからそういうことは考えましょう。」
何か最近俺のロリコン説が濃厚になりつつある気がするのでとりあえず問題の先送りをしておく。そうだ。ガウが成長して大人になれば何も問題はない。………ってそうじゃないだろ。それじゃまるで俺がガウを嫁にしたいみたいじゃないか………。
ミコ「アキラ君………。ドツボだね………。」
え?俺の心はまた読まれてるのか?何か不安になってくるな………。
フラン「とにかく話を先に進めましょう。」
フランの言葉に皆同意して話を進めたのだった。
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まずティーゲに大樹の民の一部を避難させて大樹から離れさせた。誰でも予想がつく通りここには土龍神が封印されているはずだ。そしてまた五龍王の誰かと戦闘になるだろう。だから戦いになることをティーゲに教えて住民達を避難させたのだ。
結界を張れば被害を出さないようには出来るしブリレの時と同じだとすれば俺達が結界を張らなくとも光る玉の中で戦うので周囲には被害は出ないはずではある。だが念のために邪魔な者達を除けておいたのだ。あまり見られたくないというのももちろんある。
大樹の民の方の準備が整ったので俺達は大樹へと向かう。大樹の根元まで近づくとまた水龍神が現れた時と同じようなことが起こった。
???「どっこいせっと。」
大樹の根元から変な奴が出てきた。その姿を一言で表すなら人間の頭がついた巨大な蜘蛛だ。はっきり言って気持ち悪い。俺は虫とか爬虫類とかも平気だったはずなのに何か最近は少し気持ち悪いと思ってしまうようになっている。普通の状態でもそうなのに人の頭が付いた巨大な蜘蛛などなおのこと気持ち悪い。
ヤツカハギ「あ~…。どもども。わいは土蜘蛛のヤツカハギっちゅうもんや。」
狐神「へぇ。これが土蜘蛛かい。気持ち悪いね。」
師匠…、ストレートすぎるでしょう……。
ヤツカハギ「なんやそないはっきり言われたら傷つくわぁ。…まぁそれはええやろ。それでや。お嬢ちゃんらの目的はよぅわかってるで。ほなさっさと済ませよか。」
アキラ「どういうことだ?俺達の目的?」
ヤツカハギ「お嬢ちゃんらは土龍神の封印を解きにきたんやろ?ええてええて。おっちゃんは何でも知ってるさかいな。ほな行くで。」
アキラ「あっ!おい!」
俺の言葉も聞かずにヤツカハギがごそごそと大樹の根元を掘り返し始めるとそこには茶色い玉がありその玉が光ったかと思うと浮かび上がった。
???『継承者よ。力を示してみよ。』
ブリレの時と同じように声が聞こえたかと思うとサバロが光の玉に連れられて吸い込まれていく。
サバロ「………。」
その表情に何かただならない決意のようなものを感じた。
アキラ「サバロ。無茶はするなよ。勝たなくてもいいから必ず生きて帰ってこい。」
このまま行かせたら命を賭けて戦いそうな表情をしていたサバロに俺は不安になって堪らず声をかけた。
サバロ「………っ!」
うん………。何か表情がちょっと変化したけどどういう意味だったのかはよくわからない。ただ五龍王達は俺の言いつけを破るようなことはしない。きっと生きて帰ってくるはずだ。
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茶色い玉の中でサバロは巨大な竜と向かい合う。その竜に翼はなく全身は茶色い。大きさは水龍神と同じ三十メートル前後といったところだろうか。両者が正面から対峙したかと思うと突然戦闘が開始された。
???『ギャオォォーー!!!』
茶色い竜の口から土が吐き出される。土のブレスなのだろうが物凄い勢いでゲ○を吐き出しているようにしか見えない。正直見ていてあまり気持ちの良いものじゃない。
サバロ「――ッ!!」
サバロもメイスだかモーニングスターだかのような武器を持ったまま両手を前に突き出してブレスを迎撃する。が、その手から撃ち出されたものに全員が驚愕した。
ブリレ「えぇ!なんでサバロの手から土が出るの?!」
ハゼリ「サバロにあのような力はなかったはず…。」
二人が言うようにサバロの手からは土が撃ち出されていた。五龍王の技はほとんど同じだった。サバロが今使おうとしたのもブリレが水龍神と戦った時に出した水流破だったはずだ。それなのに出てきたのは土…。サバロ自身も困惑しているのが魂の繋がりを通じて俺に伝わってくる。
水龍神もそしてこの恐らく土龍神と思われる者も五龍王達に向かって『継承』だとか『継ぐ者』だとか言っている。土龍神を継ぐということはサバロには土の属性があるということか?
………いや。前まではなかった。ただその資質があるから土龍神に選ばれた?そして相克で勝敗が決まらないように、さらに継承者として相応しいかどうかはかるためにあの中では相手と同じ属性しか使えないということか?
相克で考えれば水では土に勝てなかった。だからサバロにとっては同じ土で戦えるだけマシにはなったはずだ。だがそれでも神力量に差があり今まで使ったこともない土の属性では土龍神とは勝負にならない。ブリレの時と同じように徐々に圧されてきている。
サバロ「………。」
サバロは相変わらず何もしゃべらずただ淡々と行動に移す。圧し合いでは勝てないと見たサバロは土龍神のブレスをかわしてから距離を取った。ブリレは懐に飛び込んだが結局竜の防御力を突破出来ずに追い払われた。それを見ていたサバロは同じ轍を踏まないように離れたのだろう。
だが離れてどうする?放出系の技では土龍神のブレスに勝てないのはさっき証明された通りだ。当然のように土龍神はブレスで追い討ちをかける。
サバロは危なげなくブレスを避けていた。だがそれは土龍神の狙い通りだったようだ。土のブレスはあちこちに残って積み上がっている。周囲を積み上がった土に囲まれて移動出来る方向を制限されたサバロに土龍神のブレスが迫る。逃げ場はない。
サバロ「………。」
サバロは一瞬こちらを振り返った。魂の繋がりから覚悟の感情が伝わってくる。
アキラ「サバロっ!」
そしてサバロは土龍神の吐いた土のブレスに飲み込まれた。
………
……
…
五龍王「「「「………。」」」」
誰も言葉を発しない。サバロはブレスに飲み込まれ土龍神は悠々と出来上がった山に向かって近づいていく。
サバロ「―――ッ!!!」
サバロが直撃したように見えたブレスで出来た山とは別の、サバロの退路を囲むように先に出来上がっていた山の中からサバロが近づいて来ていた土龍神に向かって飛び出す。
サバロはブレスを食らって埋もれたわけじゃない。土龍神のブレスをかわすために周囲に出来ていた山の中に自ら入ってブレスをやりすごしたのだ。まったくの無傷というわけにはいかなかったようだが土の山の中にいたお陰でブレスによるダメージはほとんどなかった。
止めを刺そうとでも思っていたのかゆっくりと近づいてきていた土龍神の死角から飛び出したサバロのメイスが土龍神のお腹を捉える。トカゲやワニも腹の方が弱いというのは定番だ。ドラゴンも腹の方が防御力が低いかもしれない。
ブリレのパンチではダメージを与えられなかったが蝦蛄の捕脚から変化したのであろうメイスの威力は格段に高い。直撃を受けた土龍神はその巨体を浮き上がらせて吹き飛んだ。明らかに鱗が割れてお腹が窪んでいる。
チャンスと見たサバロはさらに吹き飛んだ土龍神に飛び掛り追撃する。光る玉の中で戦っているにも関わらすこちらの空気まで振動するほどのすさまじい威力で竜の腹を殴り続ける。暫くのたうち逃れようとしていた竜も次第に動きが鈍くなりついには完全に動かなくなった。
しかしあれだけ硬く格上の相手を思い切り殴り続けていたサバロの指や腕も折れて血が噴出していた。それでもなおサバロはメイスを離さない。鬼の形相のサバロは動かなくなった竜をまだ睨み続けている。
サバロ「………。」
しかしすでに限界だったのかそのまま後ろにバタリと倒れた。そしてブリレの時と同じく茶色い玉は光って縮み玉の中からサバロが出てくると今度は逆に玉がサバロの中へと吸い込まれて行った。
光が消えると落ちてきていたサバロを受け止める。ブリレのようにお姫様抱っこはしないが受け止めてから肩を貸してやった。
最古の竜『土龍神サバロの誕生だな。』
サバロ「………戻りました。」
アキラ「バカっ!何が『戻りました。』だ。無茶するなって言っただろうが………。あまり俺に心配をかけるな。」
サバロ「………はっ!」
サバロは俺の肩から離れると跪きそう答えたのだった。
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さて、サバロも無事に乗り越えたのはいいが色々と後始末がある。まずこのおっさんから何とかしよう。
アキラ「おいヤツカハギ。お前には色々聞きたいことがある。」
ヤツカハギ「ほいほい。なんでっしゃろな?」
アキラ「この封印や試練のようなものについてお前は何を知っている?」
ヤツカハギ「さて?ようわかりまへんな。ただわいはここでお嬢ちゃんらが来るのを待っとったっちゅうだけのことですさかい。」
アキラ「誰に言われて、何故ここに留まり、その試練の相手がどうして俺達だとわかるのか。」
ヤツカハギ「そないいっぺんに聞かれても答えられまへんがな。」
その後ヤツカハギに色々問い質してみたが結局ほとんど何もわからなかった。何故ヤツカハギが、誰に言われて、ここを守るようなことをしたり俺達に試練のようなものを与えたのか。これら全てが思い出せないのだという。
自分がいつからここにいたのかすら思い出せないというのだから普通ではない。ヤツカハギにこれらのことをさせた相手が何らかの細工をしてヤツカハギを操っていたのだろう。ただ操ると言っても意識を奪われるとか行動を全て制限されるというようなものではなかったらしい。
ヤツカハギはこれまで普通にここで暮らしてきた。ただ何故ここにいなければならないのかもわからずここで生活していたことと、試練の対象者、つまり俺達が来たら自動的に試練を開始するように操られていただけだ。
結局ヤツカハギからはほとんど情報は手に入らなかった。
それよりも別の疑問が湧き上がってくる。それは五龍神についてだ。俺の知る情報では確か五龍神は制約によって生贄に捧げられたのではなかったか?それなのに封印されていて継承者まで探しているなどどうにもおかしい。
アキラ「おいクロ。五龍神は生贄に捧げられたんじゃなかったのか?」
クロ「そうだぞ。」
最古の竜『生贄と言っても命を奪うようなものではなかったということだろう。』
アキラ「ふむ………。」
制約がどういうものであったのかはもう俺達には知る術はない。当事者を見つけて話を聞くしかないが数少ない太古の神々の一人であるクロですら完全に把握しているわけではない以上これより詳しく知るのは相当難しいだろう。
生贄に捧げるとは言っても命を奪うものではなく世界各地に封印されるものだった。それが今目の前で見せ付けられた現実だろう。
だが何の封印か知らないがそんなものを解いてしまって本当に良いのだろうか。何故、何を封印しているのか。それとも封印されるということが生贄に捧げるということでそれが制約だったのか?よくわからない。ただ俺の記憶のルートは恐らくこのまま残りの封印の場所を巡っていくのだろう。
この大樹までも真っ直ぐ向かってきていたのだ。ならば俺はその記憶の通りに進むしかないだろう。
これ以上何も判明しそうになかったのでティーゲの所へと戻り問題が片付いたことを知らせたのだった。
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ティーゲは大樹で休めばどうかと勧めてきたがもちろん断った。大樹にいるよりももっと良い場所が他にある。記憶のルートは大樹から基本的に北上するルートだったのでそのまま南回廊に出て中央大陸へと戻ったのだろうと思うが記憶のルートを外れてでも南回廊を渡る前に寄ろうと思っていた所がある。
ツノウ「キュウお姉さまっ!」
キュウ「ツノウちゃん~。お久しぶり~。」
それはもちろんキュウの故郷でもある兎人種の村だ。中央大陸へと渡る前にキュウに他の者との別れの挨拶もさせてやりたいしここは居心地が良い。何ならここで数日滞在してもいいくらいだ。
アキラ「ツノウ。悪いが少しここに泊めてもらってもいいか?」
俺達は兎人種のツノウの家の前にいる。少し前まではこの家はキュウが住んでいた家だったし俺達が前に滞在していた時に泊まっていたのもここだ。だがこれは玉兎の巫女が村に滞在するための家でありキュウがツノウに巫女を譲ったということはこの家もツノウに譲ったということになる。
だから俺達がこの村に滞在する間はここで泊めてもらえないかツノウに聞いてみたのだ。
ツノウ「はっ、はい…。どうぞ………。」
ツノウはあまり俺と視線を合わせずに小さな声でそう答えた。
アキラ「………いやだったか?」
ツノウ「いっ、嫌だなんてとんでもありません!是非泊まっていってください。」
俺がそう言うとツノウは慌てて大声で否定した。
アキラ「そうか………。」
ツノウ「はいっ!」
ツノウの感じからして嫌々引き受けたとか義務感から泊めてくれるというわけではなさそうだ。
アキラ「それじゃ世話になる。」
ツノウ「はいっ!」
こうして俺達はツノウの家でお世話になることになった。
狐神「アキラ。十人目は駄目だからね。愛妾ならいいけど十人目は駄目だよ。」
アキラ「………色々突っ込みたいですけど俺は別にツノウのことをどうにかしようとか思ってないですからね。」
狐神「押し倒すのはいいよ。でも十人目は駄目だよ。」
こういう時の師匠には何を言っても無駄だろう。もう適当にあわせておく。
アキラ「はぁ…。気をつけます。」
狐神「うんうん。」
俺の答えを聞いた師匠は上機嫌になってツノウの家へと入っていった。そもそもなぜ愛妾はよくて十人目は駄目なのだろうか。それがよくわからない。クシナより先に師匠が言う所の愛妾になったブリレやハゼリは駄目で後から入ったクシナはまだ俺と何の進展もないどころか俺のことを嫌ってすらいるのに九人目として嫁達には迎えられている。
一体この違いは何なのか。どういう基準なのか。師匠達に聞いても結局教えてはくれないので情報のない俺が一人で考えても永遠に謎は解けそうになかった。
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ツノウの家に上がりこんで寛ぐ。今はツノウの家とはいえキュウの家だった時に過ごしていたのでまるで自分の家のように落ち着く。
アキラ「キュウ、膝枕してくれ。」
キュウ「はぁい~。」
キュウがソファに座って膝を差し出してくれたので俺は横になって頭を乗せる。
アキラ「何か前からそれほど経ってないのにここでこうするのがもう懐かしい気がするな。」
キュウ「そうですねぇ~。これまでの旅の間にも膝枕自体はしてましたけどぉ、何かここでこうすると懐かしい気がしますねぇ。」
キュウも俺と同じ気持ちだったようだ。本当に俺達からすればそれほど経っていない少し前のことのはずなのに随分昔のことのように感じる。
アキラ「はぁ…。キュウの体は柔らかくて温かくて触れてるだけで気持ちいい。」
キュウ「きゅぅ~。アキラさぁ~ん。くすぐっちゃだめですよぅ~。」
少し手を這わせるとキュウはくすぐったさに体を捩っていた。
ブリレ「主様………。サバロがご褒美をもらえるのを待ってるよ………。」
アキラ「ん?」
キュウと戯れていたらブリレの声で現実に引き戻された。見てみるとサバロが俺の近くでウロウロそわそわとしていた。
サバロ「………。」
アキラ「………。」
二人で暫く見詰め合う。サバロが欲しがっている褒美は別にブリレの時のように一緒に寝るだとか俺に抱きついて甘えるだとかそういうものではないだろう。だから俺はチョイチョイと手招きする。
サバロ「………。」
アキラ「よく頑張ったな。…でもあまり無茶するなって言っただろ?もう俺に心配をかけさせるなよ?」
近くまできたサバロの頭を撫でながら俺はちょっと説教をしておく。とは言え別に怒っているわけでもないし厳しい口調でもない。できるだけ優しく語り掛ける。
サバロ「―ッ!―ッ!―ッ!」
サバロは俺に撫でられるたびに体をビクビクさせる。繋がっている魂からサバロの歓喜の感情が流れ込んできた。ただ頭を撫でるだけでこれほど喜んでもらえたら撫でる方としてもうれしい気持ちになる。
タイラ・アジル「「………。」」
ハゼリ「次は…、次こそはハゼリの番です………。」
まだ出番の周ってきていない三人は羨ましそうにサバロを見つめていた。
ブリレ「あ~あ。ボクももう一回敵が出てこないかな。そしたらまた主様に抱き締めてもらえるのに…。」
アキラ「おいブリレ…。お前もう一回敵と戦うことになったらまたあんな危険な戦いをする気じゃないだろうな?今度は本当に怒るからな?」
ブリレ「は~ぃ。ちぇっ。」
ちゃんとわかってると思いたいがブリレは本当にわかってるのだろうか。もう少し厳しく言っておいたほうがいいのかもしれない。
狐神「心配ないよ。」
アキラ「え?」
狐神「心配しなくてもブリレだってちゃんとわかってるよ。」
アキラ「はぁ………。」
なんで皆俺の考えてることがわかるんだ?
狐神「あのねアキラ?」
アキラ「はい?」
狐神「アキラが心の繋がった相手の大まかな心情を感じ取れるのと同じで私らの方もアキラの心情がある程度わかるんだよ………。心配して不安になってる気持ちや疑問に思ってる気持ちってのはなんとなくわかるんだ………。それまでの会話の流れとそこから発生する感情を考えたら何を考えてるか大体想像がつくだろう?」
アキラ「じゃあ今まで俺の考えてることが読まれてたのは………。」
狐神「そうだよ。今ブリレと話てて不安に思ったのがわかれば『ブリレは本当に自分の言ったことをわかってるのかな?』って不安になったってすぐわかるだろう?今までのだって全部そうさ。」
つまり俺が誰かを見ていてムラムラしていればそれを感じて俺がその相手に対してやらしいことを考えていると推測が成り立つわけだ。ミコ辺りがよく俺にそういう突っ込みを入れていたのはそれがわかっていたからだったのか………。
ルリ「………そんなの気にすることない。あっくんはいつも私達を想ってくれてる。私達はいつもあっくんを想ってる。それだけでいい。」
ルリが俺に圧し掛かってくる。押し倒された俺は再びキュウの膝の上にのることになった。
キュウ「心が繋がるってぇ、一体どんな感じなのでしょうねぇ~。私もぉ~、早くぅ、アキラさんと繋がりたいですぅ。」
ミコ「キュウさんはきっとすぐだよ。」
フラン「そうですね。私より素直なのできっと私が繋がるまでに掛かった時間より早く繋がると思います。」
クシナ「またこんな子まで侍らせて………。一体どれだけ女の子の気持ちと体を弄んだら気が済むのですか?!」
急にクシナが怒り出した。『こんな子まで』ってツノウのことか?ツノウとは何でもないぞ。ツノウも俺のことを好きなわけでもないしただの伝承に出てくる昔の人って感覚だろう。
まぁクシナにいちいち言い訳しなければならない理由もないのでそのまま放っておいてキュウの柔らかさとルリの抱き心地を堪能しながらダラダラと過ごしたのだった。




