閑話⑪「その頃の勇者(笑)達 終(つい)」
私は昔から巫女が嫌いだった。巫女が憎い。巫女が憎い。巫女巫女ミコミコミコミコ………憎い憎い憎い憎いニクイニクイニクイニクイニクイ………。
私が始めて巫女に会ったのはいつなのか正確なことなんて覚えてない。たぶん小学校に入学する前後くらいには英雄と巫女と三人で巫女の実家の地元で有名な神社で遊ぶようになってたと思う。
私は巫女に出会うまで何でも一番だった。近所の人にも可愛いわねぇと言われて勉強でもスポーツでも幼稚園のお遊戯でも何でもとにかくありとあらゆることで一番だった。私は生まれつき特別な人間だった。それなのに巫女が現れてから私の一番は減った。特別は減った。巫女は小学校に入った頃から男子に大人気で可愛いといわれてた。勉強も私よりよく出来た。巫女を追い抜いてやろうと勉強を頑張った時期もあった。でもどれだけ頑張っても私は巫女に追いつきもできなかった。
だから私は巫女とは違う方向を目指すことにした。巫女がお淑やかで女の子らしいといわれてモテるのなら私は活発で親しみやすい女の子としてモテることにした。巫女が勉強が得意で一番なのならば私はスポーツを頑張って一番になることにした。
それなのに………。それなのにそれなのにそれなのに!巫女はスポーツでも私を脅かした。脅かすだけなら別に私も気にしない。私だって勉強を頑張れば巫女の一位を脅かすことくらい出来るんだから。問題なのは巫女はいつもすまし顔でスポーツで本気を出していない顔をして呼吸も乱さずに軽くやって良い成績を取ることが問題なのよ!まるでいつでも私の一位を奪えるけど勉強で屈した私の残った一位まで奪うのはやめてやってるとでも言うかのようなその態度が許せないのよっ!
巫女の取り巻き達だって『大和さんすご~い。本気でやったらもっといけるんじゃな~い?』『大和さんって勉強もスポーツもできてお淑やかで女の子らしくて女の私でも見蕩れちゃうわ~』なんて持て囃す!私の一位なんていつでも奪えるけど奪わないでおいてやってるのよって言いたいわけ?!許せない!許せない!許せない許せない許せない!
私は特別な人間なのよ!あんたら無能の愚図とは出来が違うのよ!
でもいいの。特別な私は頭も良いからとっておきの方法を思いついたんだから。女子の特別が私だとすれば男子の特別は英雄なの。
英雄も小学生の頃から女子に大人気で勉強もスポーツも出来た。まさに特別な人間。特別な私に相応しい男は英雄しかいないわ。そして巫女も英雄を狙ってる。だから巫女から奪ってやるの。特別である英雄が巫女を捨てて私を選ぶ。それってつまり私が特別っていう証明よね。ふふふっ。あはははっ。巫女の悔しがる顔を見ながら私が特別だったと学園生皆の前で証明されたらさぞ楽しいでしょうね。
そう思って卒業までに巫女を地獄に叩き落してやろうと思って着々と準備を進めてたのに…。あの日世界は変わってしまった。
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この世界は私のためにあるような世界だった。私はやっぱり特別な人間だった。選ばれた人間である勇者だと言われた。実際に大の男ですら私にはまるで歯が立たず跪いている。あぁ楽しい。ミコまで付いてきてるのは目障りだけどこの際そんなことどうでもいいわ。おべんきょばっかりで体が出来てないミコより私のほうがきっと強いわ。ヒデオも私が手に入れられるはずよ。ミコはそのうちモンスターにでも犯されて殺されるように仕向けてやろう。学園生達の前で恥をかかせてやれない分それくらいはいいよね。
なのに!それなのに!ミコの方が強いなんて…。なんでよ!おかしいじゃない!なんでこの女ばっかり…。ヒデオは私達の中で一番弱いけどミコは私よりもさらに強いなんて…。うっかりミコがヒデオに勝ちそうになってから二人は組み手をしなくなった。だから私もミコとなんてしないようにした。バルチア王国での舞踏会でもミコばっかりモテて、この世界の力もミコのほうが強い。こんなのおかしいでしょ!どうしてよ!ミコばっかり!ミコ、ミコ、ミコ、ミコミコミコミコミコミコ………!
でもそのミコがいなくなった。はっ、あはははっ、あはははははははっ!いなくなった!とうとうあの女いなくなったのよ!これでヒデオは私のモノ。ふふふ。私は今日もヒデオの部屋を訪ねる。
コンコンッ
ヒロミ「ヒデオ~。入るわよ~。」
どうせいつも通り返事はないだろうと思って聖教皇国に用意してもらったヒデオの部屋に勝手に入る。
ヒデオ「………ミコ。どうしてだ………。どこへ行ってしまったんだ………。」
ミコがいなくなったと聞かされてからヒデオはずっとこの調子だ。いつもうわ言のようにミコ、ミコと言っている。まるで元気がなくずっとベットに臥せってる。ここでヒデオを元気付けたら私のモノにできるわ。
ヒロミ「ヒデオ…。もういいじゃない。報告で聞いたでしょ?ミコは自分から勝手に出て行ったのよ。私達を放ってね。それに北大陸はとてもじゃないけど人間が生きていける場所じゃないって聞いたでしょ?もう生きてないわよ。」
ヒデオ「だまれぇぇぇぇぇ!ミコは………。ミコが俺を置いていくはずないんだ。ミコは俺を愛しているんだから………。」
ヒロミ「………。」
ずっとこの調子…。だんだん私も腹が立ってきた。だいたいなんなの?この男。ミコ、ミコって情けなくベットで泣いてるだけで何にもできない。そもそもこいつ本当に特別だったの?よく思い出しなさい。確かに勉強もスポーツもそこそこ出来たわね。顔もまぁそれなりよ。テレビに出てる大した顔でもないのに所属事務所のブランド力のお陰だけでイケメンだのなんだのときゃーきゃー言われてるアイドルよりはマシな顔してるわ。でもそれだけ。勉強も結局ミコには敵わないから一位を諦めちゃった。スポーツが出来るって言ってもサッカーの大きな大会で自分よりずっと出来る本気でサッカーに打ち込んでる人達にこてんぱんにやられてからはあまり熱心でもなくなったわね。あれ?結局地球にいた時から中途半端な奴だったんじゃない?
そもそもこの世界で勉強やスポーツが出来て何の役に立つの?地球に居た頃ならそれなりの仕事について将来もそこそこの生活ができたでしょうね。でもこの世界じゃ私やミコよりも弱いこの男に何の価値があるの?地位も名誉もお金もない。能力も権力もない。そして口を開けばミコミコミコ。あんたそんなだからミコに振られるのよ。
よく思い返せばミコもこんな男のこと好きじゃなかったみたいね。勝手にヒデオが都合の良いように解釈して周囲もお似合いの二人だなんて持て囃すからその気になってまるで二人は付き合ってるみたいなつもりになってたけどそれはヒデオの方だけ。ミコは軽くあしらってこんな男相手にしてなかったわ。
ヒロミ「くっ…、あはっ!あはははっ!あっははははっははっはははははっ!」
ヒデオ「………………ヒロミ?」
ヒロミ「いいわよ。そのままずっとそこで嘆いてなさいよ。今の姿あんたにはお似合いよ。じゃサヨナラ。」
ヒデオ「………え?おい……。ヒロミ…。ヒロミ!待てよヒロミ!」
私はヒデオが引き止めるのも聞かずにそのまま立ち去った。そうよ。私はどうかしてたわ。あの程度の男が特別だと思ってたなんて。私と釣り合うような男じゃなかったのに。ふふっ。でもいいわ。今の私はこの世界では特別なんだから。何でもできる。どうにでもできる。ふふふっ。あははははっ!
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私は部屋の荷物を纏めるとさっさとこの国を出ようと教会の廊下を歩いていた。すると廊下を塞ぐように一人の男が現れた。この男は…、えっと、なんだっけ…?カルド?…そうだ。カルド枢機卿だっけ?
ヒロミ「何か用ですか?カルド枢機卿?」
カルド「どちらへ行かれるおつもりですか?ヒロミ様?」
どうやらカルド枢機卿であっていたらしい。さすが私。選ばれし特別な勇者は頭の出来も違うってわけ。
ヒロミ「あんたに何か関係あるわけ?」
カルド「召喚者は聖教皇国の持ち物です。勝手な行動は慎んでいただきたい。」
最初の頃のへらへらした感じはまるでない。威圧的に私に命令してくる。ただの無能の愚図のくせに。でもここでこいつと揉めても面倒なだけで得る物はないわ。うまく丸め込んでやろう。
ヒロミ「私が気付いてないとでも思ってるわけ?バルチア王国の王も王太子も私のこと狙ってるわよね?私がバルチア王国を手に入れたらあんたにも利益があると思うけど?」
カルド「………。」
カルドは顎に手をあてて考えている。バルチア王国に行った時に気付いたわよ。あの王と王太子は異世界人に興味があるみたいだってね。そしてこの世界で最も大きな国土と古い歴史をもつバルチア王国の王妃は特別な私にうってつけなわけ。バルチア王国の王太子は特別な人間よ。見た目はまぁ…そうね。ヒデオと大差ないくらいかしら。でも地位も名誉もお金も持ってるわ。将来は約束されてるこの世界の最高権力者の一人ってわけ。聖教皇国もその最高権力者のうちの一つだしバルチア王国といえども簡単には逆らえない以上はこいつらとの付き合いは今後も必要なのは仕方ないわ。だけどここで私がバルチア王国を手に入れてこいつらに恩を売れば今までより良い地位を得られる。カルドは私のお陰でバルチア王国の後ろ盾を得られる。どちらも利益になる話よ。これが理解できないようならカルドにはここで消えてもらうわ。枢機卿だなんだといっても所詮ただの人間じゃ私には敵わないんだから。
カルド「………良いでしょう。貴女が今後も私達を裏切らないのでしたら貴女がここを出る後ろ盾になって差し上げましょう。そのかわり…おわかりですね?」
カルドがいやらしい笑みを浮かべる。私にあんたの駒になれって言うんでしょ。いいわよ。表面的にはあんたの駒の振りをしてあげる。だけど本当に主導権を握ってるのは私よ。ふふふっ。
ヒロミ「ええ、もちろん。『バルチア王国はカルド枢機卿を応援いたしますわよ。』ふふふっ。」
カルド「そうですか。それではどうぞ。」
カルドは笑みを深めて頷き道を空けた。
カルド「ああ、そうそう。これをどうぞ。これからの貴女に必要になるでしょう?」
ヒロミ「これはっ!………ふふふ。いいわ。餞別に貰っておいてあげる。」
すれ違い様にカルドは私にとっても便利なお土産を渡してきた。私はそれを受け取りカルドの横を通って外へと出る。方向はわかってる。さぁバルチア王国を手に入れにいきましょう。
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私が訪ねて行ってもバルチア王国の兵士は全然わかってなかった。所詮は聖教皇国がアポを取って正式な書類と馬車で通るから通されてたわけね。勇者といえども聖教のアポもなしに王国を訪ねても門前払い。一度は引き下がろうかと思ったのよ?でも私を小馬鹿にした見張りの兵士が許せなかったの。無能の愚図の分際で特別な勇者である私を馬鹿になんてするから…。だから手足をばきばきにへし折ってやったわ。そしたら大勢の兵士がかけつけてきたの。もう面倒になっちゃって私はそのまま兵士をなぎ倒しながら謁見の間へと向かっていったわ。
兵士A「止まれ!」
ヒロミ「うるさいわね。あんたらがさっさと王様と王太子様に会わせてればこんな面倒じゃなかったのよ。」
兵士A「………ぐわぁぁぁっ!腕がっ!俺の腕がぁぁぁぁっ!」
ああ、うるさい。ちょっと腕をへし折ったくらいで何よ。本当に面倒臭い。前に一度来たはずだけどどこをどう歩いたか覚えてないわ。何も考えずにその辺をうろうろしてたら見覚えのある大きな扉を見つけた。そうそうここだったわね。私は躊躇うことなく扉を開けた。
親衛隊長「そこまでだ狼藉者!」
謁見の間に入ると玉座に王と王太子がいた。その前には大勢の兵士と親衛隊長がいる。この親衛隊長は前にも見て自己紹介されたはず…、だけど名前も覚えてないわ。
ヒロミ「誰が狼藉者なのかしら?勇者である私が訪ねてきてやったのに門で随分ひどい扱いを受けたからそいつに礼儀を教えてやっただけよ?」
親衛隊長「勇者ぁ~?何が勇者だ。お前達は数居る勇者候補のうちの一人にすぎん。それがこんな暴走を起こしてただで済むと思うなよ!」
いらいらしてきていた私は我慢の限界を超えてこの親衛隊長の懐まで一息で近づいた。誰も私の動きを目ですら追えてない。左腕を掴んでねじ切ってやろうと思って思いっきり捻ってやったけど関節がメキメキ音を立てて壊れただけでさすがに腕をねじ切ることは出来なかった。
親衛隊長「―――ッ!ぐぁぁぁぁっ!」
親衛隊長はのた打ち回って転げまわる。
ヒロミ「あはははっ。さっき私に向かって何て言ってたのかしら?ねぇ?ねぇ?ねぇ!」
転げまわる親衛隊長の壊れた腕を何度も踏みつける。
親衛隊長「ひぃ!ぐわぁぁ!や゛め゛っ!や゛め゛でっ!うぐぅぅっ!」
大の男が涙を流しながら私に許しを請う。あぁ…、たまんないわ。うふっ。うふふふっ。
フィリップ「やっ!やめないか!一体何が目的なんだっ!」
王太子のフィリップが声を上げる。誰もが呆然となって動けない中私に声をかけてきただけたいしたものね。
ヒロミ「御機嫌ようフィリップ王太子様。たしか私とミコを犯すのでしたよね?聖教皇国にいてはその機会もないと思ってこちらから来てあげましたよ。」
フィリップ「なっ!何のことだ?」
ヒロミ「あら?前に来た時に王様と二人で私達を味見するとおっしゃってたじゃないですか。ふふふっ。」
私はシャルル王にも視線を向けながら答える。
シャルル「ヒッ!ちっ、違う。余は知らん。フィリップが企んでおったのじゃ!余は関係ない!」
フィリップ「なっ!父上!私だけ見殺しにする気ですか!」
二人が醜い擦り付け合いをしている。どっちも同罪じゃない。本当に程度の低い王族ね。でもそんなことどうでもいいわ。これからは私の王国になるんだから。
ヒロミ「別にそのことを責めにきたんじゃないんですよ?ただお会いしたいと言ったのに門番の兵士が通してくれないからこんなことになってしまったんです。」
シャルル「………。余を殺しにきたのではないのか?」
ヒロミ「ええ、もちろん。むしろお二人にとっても良いお話をもってきたつもりですけど?」
フィリップ「良い話?」
ヒロミ「私とフィリップ王太子様の結婚を認めてください。そうすれば味見どころか私が手に入りますよ?」
シャルル「………は?」
フィリップ「………何を言っている?」
二人はお互いの顔を見合わせてから間の抜けた問いを返してきた。まったく、これだから程度の低い人間は疲れるのよ。私は私とフィリップの結婚で得る物をこの馬鹿達に教えてやった。
ヒロミ「まず結婚すれば私の体を自由にできるのはさっき言った通りでしょ?それからあんたらの国の一番強い奴よりずっと強い勇者がただで手に入るわよ?どう?悪い話じゃないでしょ?」
シャルルとフィリップはまた二人で顔を見合わせている。
フィリップ「勝手にそんなことをすれば聖教皇国との関係が悪くなる。我が国は得る物より失う物の方が多いだろう。とても引き受けられない。」
ヒロミ「当然聖教皇国からの批判はないわよ。私にはカルド枢機卿がついてるの。私の独断じゃなくてカルド枢機卿も納得のことよ。」
フィリップに答えてやる。本当に面倒臭い。さっさとうんと言えばいいのよ。この愚図どもが。
シャルル「聖教皇国が貴重な勇者候補をただで余に寄越すはずはない。そんな都合の良いことがないことくらいわかっとるぞ?何が目的だ?」
ヒロミ「よく考えなさい。カルド枢機卿はバルチア王国に恩を売ることで聖教皇国での権力争いに有利になる。バルチア王国はカルド枢機卿の後押しをしてカルド枢機卿が上に立てば今後有利になる。そして私という力も手に入る。私はバルチア王国で王妃という立場を手に入れる。どう?皆が得でしょ?」
シャルル「ううむ………。よかろう。」
フィリップ「父上!お待ち下さい!このようなことをそんな簡単に決めてしまっては…。」
シャルル「うるさいわ。お前はどうせ一人の女に縛られるのがいやなだけじゃろうが。ここでカルド枢機卿に恩を売っておけばバルチア王国のためになる。もう良い年なんじゃから我慢せい。」
フィリップ「うぐっ…。そういうわけでは…。ただ国の大事ゆえにもっと慎重に…。」
段々声が小さくなっていく。図星なんでしょうね。この男は軽そうだから。カルドが付いていると言った途端にシャルルは私の側に付いた。フィリップは私と結婚することで窮屈な暮らしになると思って反対してるんでしょうけど私もこの男自体には別に興味はないのよ。あんたについてる地位と権力が欲しいだけなの。だから浮気でもなんでも好きにすればいいわ。
こうして私はフィリップ王太子と電撃結婚することになった。国中に大々的に宣伝され大きな式が執り行われた。
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ヒロミ「強くなっても痛いものは痛いわね。」
フィリップ「そういうところは異世界人もファルクリアの人間族も変わらないな。」
ヒロミ「ふぅん。ま、最初は痛かったけどあとのほうは気持ちよかったわよ。あんた遊んでるだけあって上手いのね。」
フィリップ「ふんっ!それが初夜の夫に対する態度か?まったく…。お前との結婚なんて政治取引にすぎないからな。」
ヒロミ「別にいいわよ?私もあんたのこと愛してるわけじゃないし。でもそうね。お互いギスギスした生活もいやでしょ?私達は別にお互い愛し合ってないけど利害関係は一致してるのよ。だからわざわざ反発しあうことないでしょ?あんたが浮気しても私が王妃であれば私は別に気にしないわ。あんたも私が浮気しても目を瞑りなさいよ。お互いに好きな相手と浮気すればいいじゃない。」
フィリップ「なっ!なんだとっ!そんなことが許されるはずが…。」
ヒロミ「何でよ?夫婦がお互い納得してれば別にいいでしょ?勇者が始めてこの国に嫁いできたとあって国民が熱狂してるのは当然わかってるわよね?すでに私には大きな名声がついてるわけ。あんたはそれを利用する。私はあんたの地位を利用する。ただそれだけよ。お互いの生活まで縛りあって喧嘩することないでしょ?」
フィリップ「なっ………。ふっ、ふはは、あっはははは。おかしな女だな。くっくっくっ。いいぜ。じゃあお互い生活には口を出さないことにしよう。俺もお前だけに縛られるなんて御免だ。だがお前の言う通り今更お前を手放してこの国から勇者が去ったということになれば俺が非難される。俺達は夫婦じゃない。共犯者ってわけだ。」
フィリップも納得してくれたみたいね。これで快適な王宮生活が送れるわ。ふふふ。あはははっ!
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王太子妃になってからしばらく経った。私は城で快適な生活を送っている。義父であるシャルル王の元に向かう途中でかわいい騎士見習いを見つけた。
ヒロミ「ちょっとそこのあんた。」
騎士見習い「はっ、はい!」
急に王太子妃である私に声をかけられて驚いてかたまってる。ほんとかわいい。
ヒロミ「あんた名前は?」
マルコ「はっ!マルコ=ド=ノアイユです。」
敬礼しながら答える。何人もかわいい騎士見習いをつまみ食いしてるから格好をみただけでわかる。騎士見習い用の衣装を身に纏い動作もぎこちなく初々しい。
ヒロミ「そう。マルコ…。あんたあとで私の部屋に来なさい。」
マルコ「え?あの…?それは一体?」
ヒロミ「いいから。…そうね。夕食が終わってから二時間後に体を清めてからいらっしゃい。」
マルコ「そっ!それって………。」
顔を真っ赤にして俯いてかたまっちゃった。ほんとかわいい。
ヒロミ「いいわね?」
それだけ言うと私はその場から立ち去った。後ろからは『はいっ!』と言う元気な返事が聞こえてきた。
コンコンッ
シャルル「入れ。」
ヒロミ「失礼しまーす。」
私は義父のシャルルの部屋へと入った。
シャルル「おぉ、おぉ。ヒロミか。どうした?」
ヒロミ「パパ~。私新しい宝石が欲しくってぇ~。」
シャルル「…ううむ。この前宝石商に作らせたのではいかんのか?」
ヒロミ「今度は普段余ってる魔力を込めておける宝石が欲しいの~。ねぇ~ん。パパ~、おねが~い。」
私は座っているシャルルの膝の上に座って体を密着させる。
シャルル「ぐひひっ。そうじゃのぅ。魔力石は高いからのぅ…。ヒロミの態度次第では考えんでもないが?」
ヒロミ「えぇ~。どうしようかなぁ。………パパのお仕事が終わったら寝室に行く~?」
シャルル「おお!そうかそうか。余と一緒に寝室に行きたいか。それでは行こう。」
ヒロミ「パパお仕事は~?」
シャルル「そんなものどうでもよい。」
ヒロミ「宝石買ってくれる?」
シャルル「おぉ、おぉ、いいともいいとも。ぐひひっ。」
こうして私はシャルルの寝室で数時間豚親父の相手をすることになった。この程度のことで簡単に言うことを聞かせられるんだからちょろいものよ。今夜はお口直しにかわいい騎士見習いも予約してあるからこの豚親父の相手も我慢できるわ。
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夜にマルコでお口直しをして寝室で休んでいると突然乱暴に扉が開いてフィリップが帰って来た。
マルコ「ッ!こっ、これはっ!そのっ!」
フィリップを見て大慌てになるマルコ。浮気現場に夫が帰ってきたらそれは慌てるわよね。
ヒロミ「別に慌てなくてもいいのよマルコ。…どうしたのフィリップ?今日は女のところに泊まるんじゃなかった?」
私がそう声を掛けるとチラッと私とマルコを見たあと舌打ちしてから語りだした。
フィリップ「…チッ。振られたよ。今夜はお前で我慢しておいてやる。」
ヒロミ「あら?今夜の私の相手はもういるけど?あんたには見えないのかしら?」
振られて気が立ってるとはいえこの言い方には頭にきたのでこっちも振ってやる。
フィリップ「なんだとっ!夫にむかってなんだその言い方………。いや。すまん。そうだな。俺が悪かった。俺も混ぜてくれよ。」
フィリップはカッとしやすい性格だけど案外素直だ。下手に出てくるのなら相手をしてあげてもいい。
ヒロミ「ふふっ。いいわよ。犬のように舐めなさい。」
フィリップ「チッ。………そうそう。お前最近評判が悪いぞ。お前の贅沢のせいで税が上がってると市民達から反発の声が上がってきてる。それに宮中でも男を連れ込んでるって評判になってるぞ。」
それが何だっていうのよ。私は特別な人間なのよ。市民なんて皆私の奴隷よ。私のために貢いで死になさい。
ヒロミ「…そうね。それじゃ戦争しましょうか。ガルハラ帝国ともめてたわよね。条件全部突っぱねて戦争になるようにしましょう。」
フィリップ「なっ!正気かっ!」
ヒロミ「正気よ?戦争になれば税が上がっても不自然じゃないわよね。それは全部ガルハラ帝国のせいにすればいいわ。市民なんて馬鹿なんだから軽く煽ってやるだけで簡単に流されるわ。バルチア市民からも必要以上に税を搾り取ってついでにガルハラ帝国からも賠償金をふんだくってやればいいのよ。」
フィリップ「勝てるならそれでもいいが負けたらどうするんだ!」
ヒロミ「聖教皇国にも協力させるわ。聖教もガルハラ帝国のことは快く思ってないでしょ?ガルハラ帝国を奪って聖教皇国とバルチア王国で利権を分けましょう。」
フィリップ「ふっ。ふはは。あ~はっはっはっ。お前って奴は本当に狂った女だよ。面白い。父上にもそう上奏しよう。」
ヒロミ「そんなことより今は楽しみましょう?」
フィリップ「くっくっくっ。最初はお断りだと思っていたがお前を妻にしてよかったよ。」
こうしてガルハラ帝国との手打ちのための落とし所を模索していたバルチア王国は一気に強硬論へと傾いていった。
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すでに正式にバルチア王国の王太子妃になっている私は聖教皇国でも無視しえない存在になっている。カルドがうまくやっているのもあるでしょうけど勝手に皇国を出て行った私を今では捕まえることすらできない。堂々と乗り込みガルハラ帝国との戦争での協力について協議する。
カルド「ふーっ。こんな条件飲めません。これでは聖教皇国はただ働きではないですか。」
私はカルドの説得をしていた。ここはカルドの私室。二人は今ベットに並んで寝転がりながら今後について協議している。
ヒロミ「あら?どこがただ働きかしら?早いもの勝ちでガルハラ帝国を占領した分だけもらえると言ったんですけど?それにあんた今私の体で報酬を受け取ったじゃない。」
カルド「聖教皇国は戦闘能力こそ高いですが兵の数は少ないのです。大量の兵力が必要になる占領した分だけもらえる条件なら聖教皇国はほとんど領地を得られないことになるのです。」
私の体を受け取ったことはスルーするわけね。まぁいいわ。もちろんそれがわかってるからこんな条件にしたのよ。交渉の最初には相手が絶対飲めない条件にするのは鉄則よね。そこから徐々に譲歩してやるのよ。
ヒロミ「それじゃ聖教皇国の案はどんなものなのかしら?」
カルド「そうですね………。ヴィッテルスバッハ家領バイルン州の今後新たに発見された物も含めた全ての鉱山利権及び収穫穀物の三割。それで手を打ちましょう。」
ヒロミ「それは駄目よ。取りすぎだわ。………そうね。すでに発見されている鉱山の利権と穀物の一割。」
カルド「うぅ~ん…。新鉱山は諦めるのです。穀物の二割はください。でなければ他の聖教関係者を『説得』出来ません。」
ここが落とし所みたいね。ヴィッテルスバッハ領は広大だから取りすぎな感もあるけどまずは戦争に勝たなきゃ全ては無意味になっちゃうからね。
ヒロミ「いいわ。それで手を打ちましょう。」
こうしてバルチア王国と聖教皇国の戦争協力は決まった。詳しい作戦の打ち合わせもして私は王国と皇国を何度も往復することになった。もちろん私がわざわざ自ら出向いた理由は皇国の男もつまみ食いするためよ。フィリップも時々付いてきて女をつまみ食いしてたみたいだけど怒られても私は知らないわよ。
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戦争が始まってから順調に作戦は進んでるわ。捨て駒だけ戦場でぶつけて主力は後退させて兵力を集める。撤退時にガルハラ帝国のせいにして全て略奪して後退することで王国の収入もうなぎのぼりよ。後方地域の兵力も集めてすでに王都には四十万近い兵力が集まっているわ。カライの街で敵の足止めがうまくいったという報告を受けて反攻作戦の発動が決まったわ。カライに足止めしているうちに皇国が援軍として向かいカライ方面にいる敵を殲滅する。王都の戦力はロウエンにいる部隊に向けて出陣してこれを殲滅する。
ヒロミ「バルチア王国には人神様に選ばれし勇者!このヒロミ=ハカナがついてるわ!出陣!」
兵士「「「「「おおおおぉぉ~~~っ!!!」」」」」
私の演説に兵士の士気は最高潮に達する。本当は四十万全てで出陣したかったけどシャルルとフィリップがパルにも兵を残して欲しいと懇願するから三十万だけで出陣することになったのは残念ね。でもいいわ。そのお陰で魔法部隊をパルに残していくのが不自然じゃなくなったもの。私が聖教皇国を出て行く時にカルドにもらったもの。それは片方は他人の魔力を集める石。そしてもう片方を持つ者にその魔力を送る石。皇国でも極一部の者しか知らされていない最新の魔法理論を使った新兵器。魔力を集めて送るほうの石を魔法部隊の部屋に設置して私に魔力を送らせることにしている。これで私は通常ではありえないほどの魔力が使えるわ。勇者である私が大活躍しないとね。ここで活躍しておけばまた後で増税しても不満を抑えられるわ。
ロウエンに到着した私は一部の部隊を引き連れて敵の側面に周り込むことにした。正面の部隊は囮よ。私がいれば一人でもこの程度の敵なんて倒せるんだから。うまく周りこめた私達は敵をどんどん殺していく。魔力が切れることがない私は魔法を次々に使って敵陣を崩し敵兵をなぎ倒し殺していく。あはははっ!気持ちいい!今の私は最強よ!ミコよりもずっと強いわ!
それなのに!それなのにそれなのに!敵軍の将軍か指揮官みたいな奴が急に演説を始めたと思ったら私のいる方へ向けて部隊を引き連れて向かってきた。もうちょっとで敵は崩れて私の勝ちだったのに急に敵兵の動きがよくなった。崩そうと思っても崩れない。いっぱい殺してるはずなのにそれでも向かってくる。何なのよ!何なのよ何なのよ!死ね!私の邪魔をするやつは皆死ね!死ね!死ね死ね死ね死ね!シネシネシネシネシネシネ!
ガクッと急に私の体に力が入らなくなった。何?どういうこと?どうして?私は最強よ!
グシャッ!と嫌な音がして私の腕が潰れてる。ここは何て言うんだっけ…。そうそう…。前腕よね。根元側は上腕とか二の腕とか言うのになんで先の方は前腕なんだろうとか思ってたわ。
ヒロミ「ぎっぃぃぃやぁぁぁああああぁぁぁっ!!!」
頭に痛みが染み込んでくる。痛い痛い痛い痛い!体が重い。魔法が使えない。思うように動けない。死ぬ!死ぬわけないわ!私は特別なのよ!絶対に死んでなんてやらない!そこらにいる騎兵から馬を奪ってさっさと私はパルへと駆けて行った。
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何日馬で走ったのかよくわからない。痛みで朦朧とした意識のままとにかくパルを目指して馬にゆられていた。ようやく帰り着いたパルは不気味なほど静かで衛兵も何もほとんどいなかった。
フィリップ「………どの面下げて戻ってきた?」
ヒロミ「ぐぅぅ。…そんなことどうでもいいのよ。この腕を治す魔法使いを連れてきなさい。」
フィリップ「くっ、くっくっくっ、はっはっはっはっ。お前が逃げ出してからロウエンに向かった我が部隊は壊滅したのを知ってるか?この城に集まっていた兵も大半は逃げ出した。魔法使いは全て待機所で干からびて死んでたよ。お前が何かやらせてたんだろう?くくくく。もう終わりさ。俺達もこの国もな…。」
ヒロミ「なにを…。なにを言ってるのよ!私はまだ生きてるわ!私さえ生きていればどうにでもなるのよ!私はまだたった数ヶ月しかこの生活を…。」
フィリップ「お前ごときが分不相応に王族の暮らしを数ヶ月も出来たんだ!それで満足しておけよ……。お前の贅沢のために増税されたこともお前の作戦で我が国内から略奪していたことも敗戦もすでに全て市民達は知っている。ここに居ても俺達はこれからなだれ込んでくる市民達に殺されるだけだ。………なんだかんだ言っても俺はお前が妻でよかったと思ってるぞ。滅茶苦茶な奴だったが世間体を気にしながら悪さをしてる自分が馬鹿らしくなるくらいお前はあっけらかんとしてた。市民達に犯され嬲り殺されるくらいならここで一緒に最後を…。」
ヒロミ「ぷっ。あははははっ!あんたが私に惚れるのはわかるわよ。私は特別なんだからね。でも私があんたと一緒にここで死んでやる謂れはないわ。私は生き延びるわよ。………私もちょっとだけあんたとの生活楽しかったわよ。それじゃサヨナラ。」
フィリップ「そうか…。じゃあな…。」
後ろを向いて歩きだした私の耳にブシュッと肉を裂く音とくぐもった呻きが少し聞こえた後は物音一つしなくなった。冗談じゃない。私は生き延びてやるわ。………そう思ってたけどどうやら無理そうね。城から脱出しようと門まできた頃に城に向けて大勢の人間が向かってきているのが見えた。それはこの国の国民達。パルの市街地からやってきた者達だ。手には包丁や鎌、手斧など家にある武器になりそうな物を持って声高に王家の政策を罵っている。『あいつだ!偽物の勇者だ!』『あの王太子妃が俺達を苦しめたんだ!』と私を見つけた者達が叫びを上げながら駆けてくる。
ヒロミ「ふっ、ふふふ、あっはっははははははぁはははあっはあっ!いいわ!殺してあげる!」
私は力の限り抗った。もうとっくに魔力はないはずなのに命を代償にでもしているかの如く最後の輝きを放つ魔法を使い、市民達の武器を奪って殴り殺し一人でも多くの道連れを連れていこうと暴れまわった。でもガクッと私の足が止まる。偶然足首に刺さった槍によって腱が切られていた。
市民A「やったぞ!今だ!みんなぐぴゃっ。」
びちゃびちゃと音を立てて私の足首を槍で突いた男の脳みそが垂れて落ちる。市民から奪った手斧を投げつけて頭を真っ二つにしてやった。
ヒロミ「ふふっ、ふふふふふっ、あはははは!」
市民B「ここだ!捕まえた!皆抑えこめ!」
市民C「こいつこんなになってるのにまだ綺麗な肌してやがる。すべすべだぞ。俺達の血税を使って贅沢をしてたからだろう!」
市民D「許せねぇな!やっちまえ!皆で思い知らせてやれ!」
一度捕まるともうどうにもできなかった。私の体に小汚い手が群がってくる。ああ、そんなに乱暴に服を引き裂いて…。この服はあんたの一生分の収入より高いのよ。あぁ、こんな小汚い男達に好きにされて体中痛めつけられて………。こんなのが私の最後なのかな………。どうしてこうなったんだろう……。どこで間違えたのかな………。
なんて諦めると思ってるわけ?!私は諦めないわよ。そうよ!もっともっと良い思いをするまで死ぬ気なんてない!こんなゴミ共のために死んでやる気なんてない!こいつらは私のために働いて死んでいけばいいのよ!ミコに!ミコに思い知らせてやるまで私は死ぬつもりなんてないんだから!!!
~~~~~ヒデオ編~~~~~
ヒデオ「ミコぉ…。どうしてだよミコぉ。ミコはずっと俺の傍にいたしこれからもいるはずだろ~!!俺のことを愛してるはずだろう~~!!!それなのにどうして………。ヒロミ………。ヒロミは俺に惚れてるはずだろ?なんでだよ!どうしていなくなったんだよ!ミコの親友だからミコが許せば俺の愛人くらいにはしてやろうと思ってたのに!!!」
おかしい!どうしてこんなことになってるんだ!俺は学園でも一番モテて俺の思い通りにならない女なんていないんだ!そうだ!それなのにどうして………。どうしてこんなことになったんだ………。
???「どうしてこんなことに………。それはアキラ=クコサトという者のせいですよ。」
ヒデオ「―――ッ!誰だっ!」
この部屋には俺しかいなかった。それなのにいつの間にかテーブルに座ってお茶を飲んでいる人物がいる。その姿に俺は別の意味での恐怖心が湧き上がってくる。
人神「私は人神と言います。はじめまして、ヒデオ君。」
その姿は頭は少し禿げが進み前髪は後退し天辺は透けている。少し小太りで眼鏡を掛けている。人の良さそうな柔らかい笑顔だ。それは…、それは本当にどこにでもいそうな日本の中年サラリーマンのようにしか見えなかった。それが逆に恐ろしい。俺はこの世界に来てから感覚も鋭くなっている。それなのにこのおっさんがここにきたことにまったく気付かなかった。いや、今目の前で見ているのにそれでもその存在を疑ってしまうほど何も感じない。まるで空気のようだ。
人神「怖がらなくてもいいよ。私も遥か昔はね。平成日本でサラリーマンをしていた普通のおじさんだったんだよ。」
ヒデオ「………え?」
人神「私はどうやらこの世界で初めて召喚された異世界人らしくてね。もうとても長い時間をこの世界ですごしているんだ。私のことはまぁいいね。君の大切な人を奪っていったのはアキラ=クコサトという者だよ。どうする?このまま指をくわえてみてるのかい?」
ヒデオ「九狐里?九狐里もこの世界に来てるんですか?」
人神「ああ。来ているよ。ミコ=ヤマトがいなくなったのはアキラ=クコサトが連れて行ったからだ。どうする?」
ヒデオ「九狐里~~~!!!殺してやる!俺からミコを奪った九狐里!絶対に殺してやる!九狐里がミコを奪ったせいでヒロミまでいなくなったんだ!絶対に許さない!」
人神「うんうん。わかるよ君の気持ち。だけど今の君じゃアキラ=クコサトには勝てないよ。」
ヒデオ「どうしてわかるんですか!俺は最強の勇者だ!」
人神「君は弱いよ。ミコ=ヤマトやヒロミ=ハカナにすら敵わないこと…気付いてたんだろう?」
ヒデオ「それは………。」
人神「いいんだよ。私に付いてきなさい。そうすれば君は力を手に入れることができる。力が手に入れば君の望むものも取り戻せるかもしれないよ。」
俺は迷わず人神の言葉に乗った。このおっさんはただのおっさんじゃない。見た目はこんななのにその力は本物だと俺にはヒシヒシと伝わってくる。だから俺は人神に付いて聖教皇国から出て行った。
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ヒロミが出て行き人神がヒデオを連れていったあと誰もいないはずの廊下にすっと人影が現れる。
カルド「全ては人神様の思し召しのままに。」
ヒロミを見逃したのもアイテムを渡したのも全てはカルドの考えではない。人神の使徒たるカルドが行うことは全て人神の指示によるものなのだ。
すっと人影は消えていく。誰にも気付かれることなく静かに…静かに………。
今日は昨日より300文字ほど少ないからセーフ!(何が?)
文字数が多いので休日にゆっくり読めるようにお昼投稿です。




