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転生無双  作者: 平朝臣
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第四十七話「動き始めた世界」


 四霊神達は呆然としている。先ほどの黒の魔神の言葉通りなのだとすればこいつらは、いや、太古の神々のほとんどは人神による思考誘導を受けているようだ。黒の魔神はこれは自分で気付かないと解けないと言っていた。だから四霊神を説得していたのだろう。あの会話だけでは俺達にはまだ人神の狙いや怪しい行動についてわからないことも多いが、四霊神達は思考誘導の呪縛が解けるほど怪しい矛盾に覚えがあったのだろう。


黒の魔神「さて、俺達はお前達二人に対して負けを認める。俺は狐神には勝てない。大ヴァーラント魔帝国は総力を挙げてもアキラには勝てない。つまりお前達二人がいれば俺達に勝つ方法はない。」


狐神「はぁ…。その言い方…。まだわかってないんだねぇ。アキラはあんたはおろか私より強いって言ってるだろう?アキラが私より下みたいに言うんじゃないよ。」


 師匠が怒気を放つ。静かな声ではあるが本気で怒っているようだ。師匠がこんなに怒るところは始めてみた。…だが俺が師匠より上か下かなんてそんなに怒るほど重要なのだろうか。俺にはわからない。


黒の魔神「大ヴァーラント魔帝国は前にアキラに敗れた。俺はつい先日狐神に敗れた。ただその事実を言っただけだ。」


 黒の魔神も師匠と向き合い簡単には引き下がらない。まぁ言っていることはその通りだ。前の黒き獣にしろ今の俺がウィッチの森の件で来た時にしろ俺が大ヴァーラント魔帝国に勝ったようなものだ。そして先日は師匠が黒の魔神に勝った。黒の魔神はその事実を言っただけだ。俺と師匠の強さの比較は言っていない。ただ俺の相手が大ヴァーラント魔帝国で師匠の相手が黒の魔神では言い方として俺の方が弱いから弱い相手と比較しているというふうに取れる。師匠はその点が気に入らない。が、やはり俺としてはそんなことはどうでもいいように思えるので先に進めることにする。


アキラ「そのことについては後で二人で話し合ってくれ。先に進めたい。」


黒の魔神「ああ。進めてくれ。俺達は敗れた。お前達の要求を聞こう。だが魔人族に滅びろというような要求ならば例え負けるとしても全滅するまで抗わせてもらうぞ。」


アキラ「火の国の要求は大きく分けて二つ。一つ目は西大陸北部の勢力圏を火の国に返し西大陸に住んでいる全魔人族を北大陸へと帰すこと。」


黒の魔神「ふむ…。妥当だな。」


レヴィアタン「全員だと!西大陸に住む魔人族はすでに何世代にも渡って住み続けている!彼らの故郷を奪う気か!」


 それまでずっと黙っていたレヴィアタンが大声を上げて立ち上がった。前回の一件以来俺を恐れていたはずのレヴィアタンが怒りの表情で俺を睨みつけている。


アキラ「俺にそこまではっきり敵対してでも民を思うレヴィアタンの気持ちはわかった。だがそれは見当違いも甚だしい。不法に住み着いた者が長年住み続けたからといって権利を主張できるとでも思っているのか?ならば北大陸の各地に精霊族が勝手に住み着いて何世代も経ればそこは精霊族の国になるのか?」


レヴィアタン「ぐっ……、それは…。なるはずない………。」


 自分の愚かさに気付いたレヴィアタンは力なく項垂れて席に着いた。日本でも不法入国で住み着いた者達が代を経たからといって日本人と同じ権利を自分達にも与えろと問題を起こしてる。ここは国として絶対に譲ってはならない最後の一線だ。例えば真っ当な手続きを経た移民であれば受け入れることは吝かではないだろう。だが不法行為を認めることは断じてあってはならない。彼らは強制連行されてきたのだと嘘をついているが内地に入った人間の動きは把握されていたのだ。当時は行きも帰りもほとんどが船で渡っていた。当然誰が、どこからどこへ、何のために船にのって海を渡るのか調べられる。結論からいえば内地へと入っていた半島人のほぼ全ては終戦後半島へと帰国している。極少数の希望者と刑務所に収監されていた者くらいしか残らなかったということは公式にデータに残っている。それがその後の半島国の某島での軍部による赤狩りで自国住民を虐殺した事件や半島戦争から逃げ出した不法移民が数十万人に膨れ上がった。彼らは日本に密航して勝手に住み着いたにも関わらず後年になると強制連行されてきたのだと主張し始めた。戦時中徴用された者の数と帰国した数のデータが残っている以上は今いる数十万人の強制連行されたという供述が嘘である純然たる事実があり調べればいくらでも証拠が出てくる。だが彼らは言う。被害者である自分が証言しているのだからそれが何よりの証拠なのだと。


 また強制連行と徴用についても説明しておこう。強制連行とは無理やり連れ去って無理やり労働させたという主張である。これは奴隷的労働を含めたような意味であり国際条約で禁止されている。徴用とは国が国民などに一定の強制力を持って兵役を含まない仕事に就けさせることをいう。これはハーグ陸戦条約でも認められている国家の正当な権利である。近代以降総力戦が行われるようになり全世界で国家の権利として認められ世界中が両大戦などで行ったことである。またこの徴用の適用範囲は自国民に限らず占領地の現地民などに適用する権利も認められている。ただしその場合は不当に安い賃金等で奴隷的労働であってはならないという条件がつく。


 さて、強制連行されたと言う者とさらに強制徴用をわざと混同させあたかも不法行為であるかのように喧伝する者達がいる。国家総動員法などの名前は教科書であたかも悪法であるかのように教えられた方もいるだろう。だが日本が日本国民や占領した現地民を『強制徴用』する権利はハーグ陸戦条約で保証されている。なんら違反ではない。強制連行(労働)は不当に安い賃金や無償での奴隷的労働のことを指す。労働に見合った賃金を支払っていた日本では強制連行(労働)は行われていない。また当時は半島は日本の領土であり住んでいる者は全て日本人であった。自国民を強制徴用することになんら違法性はない。にも関わらず内地人は1938年から徴用されていたのに対し半島人は優遇措置を受け徴用が行われ始めたのは敗戦間近の1944年の9月から敗戦までの11ヶ月のみであった。日本国が日本人を徴用することに違法性はない。占領地の現地民であっても徴用しても良い。ハーグ陸戦条約に批准している全ての国に保証されている権利であり全世界が行っている。半島での戦時徴用は敗戦間近の逼迫した状況になるまで行われず優遇措置を受けていた。さて問おう。どこに日本の不法行為があるのだろうか?


 少し話しが逸れたので元に戻す。だからここはたった一人の例外すら認めてはならない。全ての不法入植者を北大陸へと帰らせる。後々の禍根にさせないためには一切妥協は許されない。


アキラ「一切の交流や通行まで禁止するわけじゃない。軍事・経済交流でも民間交流でも旅行でも好きにすればいい。ただし今いる者達は一度全て北大陸へと帰ってもらう。今西大陸に住み着いている者達の滞在や居住を火の国は認めていない。後々移民などを受け入れるとしてもそれを承認するのは主権国家たる火の国でなければならない。」


黒の魔神「………。聞きなれない言葉がいくつかあったが言わんとすることはわかっているつもりだ。火の国の許可なく入り込んだ者達は全て出て行けということだろう?そしてこれからは入りたければ火の国の許可を得ろと。」


アキラ「まぁそんなところだ。」


黒の魔神「それでもう一つの要求は?金か?領土か?あるいは俺達を従属させるか?」


アキラ「………。」


 俺は一度黒の魔神を見つめてから目を閉じ腕を組み椅子に深く腰掛ける。パーティーホールは静寂に包まれ全員の視線が俺に集まっているのがわかる。たっぷりと間をとった後に俺は目を開けおもむろに口を開いた。


アキラ「火の国と大ヴァーラント魔帝国の間に対等な相互防衛同盟を結んでもらう。」


全員「「「「「………はぁっ?!」」」」」


 一拍の間を置いて全員が間の抜けた声を出す。


黒の魔神「相互防衛同盟?どういう意味だ?」


アキラ「言葉通りだが?加盟国のいずれかが加盟国以外の国から攻撃を受けた際には全ての加盟国は攻撃してきた国に対して共同で対処する。一応確認しておくが自分から攻め込んだ場合は知らんぞ。あくまで攻撃された際に協力して防衛する義務を負う同盟だ。」


黒の魔神「火の国と大ヴァーラント魔帝国がその同盟を結んだとして水の国が大ヴァーラント魔帝国を攻めてきたらどうするんだ?」


ウンディーネ「水の国はそのような野蛮な真似はしません!」


 いやいや…。いきなり俺の話も聞かずに精霊魔法をぶち込んできたウンディーネの言葉じゃ説得力ないぞ。とはいえここは単なる例えなんだ。ここに噛み付いても意味はない。


アキラ「ウンディーネ。これはあくまで単なる例えだ。それよりむしろ緊密な関係である火の国と水の国の間でも対応を変えないのかと聞きたいんだろう。」


 俺はあえて緊密と強調しながらウンディーネを宥める。


ウンディーネ「もちろんそんなことはわかっています。」


 ウンディーネは大人しくなった。もちろん例えであろうと悪役として言われれば良い気分はしないだろう。


アキラ「水の国が大ヴァーラント魔帝国に攻め込めば当然同盟に従って火の国は大ヴァーラント魔帝国を支援する。」


黒の魔神「ほう…。それから『加盟国が加盟国以外から』と言ったな。これは二国間の同盟ではないということか?」


アキラ「いずれ加盟国は増やしたいと思っている。」


黒の魔神「将来的に加盟国が増えるのなら、あえて加盟国以外からと言っている以上は加盟国同士ならば対応を変えるということか?」


アキラ「基本的に加盟国同士での戦争は起こさせたくない。だがそれでも起きた場合の対応については検討しておく必要はあるだろうな。」


黒の魔神「アキラの考えは?」


 これは難しい。地球にある国際組織と同じだ。口では勇ましいことや国際協調を謳っていても現実にはそれらの組織は大国に対して何もできない。戦争を抑止しようとしても各国が勝手に行っているのが現実だ。話し合いで決着するのならそもそも戦争にならない。やはり力を止めるにはより大きな力で止めるしかないだろう。


アキラ「俺ならば、争いになりそうな時に全加盟国の代表からなる議会を召集して問題を話し合える機会を設けるようにしよう。それを通さず、あるいは出た結果が気に入らず戦争を仕掛ける国があればその国は同盟から除名し全加盟国を敵に回すことにする。とかそんなところかな。」


黒の魔神「それでは結局の所は火の国の意見が通ることになると思うがな。」


 なかなか鋭いところを突いてくる。確かにその通りだろう。これでは結局力のある者の意見に従えと言っているに等しい。だがそれが悪いことだろうか?どの道力のない正義など何の意味もない。結果的に力ずくであったとしても同盟内での決定に従わせなければそもそもいくら会議で話し合っても無意味なのだ。現に地球にあった国際組織は話し合えと言うばかりで何の解決もしたことはない。国際協調だグローバリズムだと綺麗事は言ってくれるが何の役にも立ちはしないただの集金組織だ。何も決められず何も実行できずただ宣言を出すだけならば小学生のクラス会議にも劣る。


アキラ「どの道国力も戦力もなにもかも違う国同士の集まりだ。関係は対等でも貢献している労力によって立場に差があるのはやむを得ない。」


 平等と公平を履き違えてはならない。Aさんは10万円稼ぎました。Bさんは100万円稼ぎました。二人合わせて110万円なので一人55万円ずつ平等に分けました。これは確かに『平等』だろう。だが非常に不公平であることは誰にもでもわかる。怠けて10万円しか稼がなかった人と頑張って100万円稼いだ人では稼ぐために掛けた努力、労力が違う。運や本人の資質の違いはあるだろう。いくら努力しても稼げない人や簡単に多く稼げる人がいるだろう。だがそれも含めて本人の努力の成果なのだ。自分は大変努力をしたのに10万円しか稼げなかった。貴方は私に比べて大した努力もしてないのに100万円稼いだのだから二人で55万円に平等に分けるべきだ。これは集りの発想だ。自分で努力して今度は自分が500万円でも1000万円でも稼げばいい。何も同じ方法で同じ仕事で稼ぐ必要などない。自分に合った方法と努力と仕事をすればいいだけの話だ。ただ相手の方が多く稼いでいるのはずるいから自分にも寄こせなどと言う者は知性ある人間としてすでに終わっている。他者に寄生して生きていくことしか考えていない生ゴミ以下の存在にすぎない。


アキラ「この同盟はあくまで対等で公平を目指す。同盟への貢献や重要度に置いて公平に差があるのは当然のことだ。…がこれはあくまで現時点での俺の考えだ。後々変わるかもしれないし詳細は実務レベルの者が詰めれば良い。」


黒の魔神「ふっ。むしろ綺麗事を並べるよりも信用できる。それで加盟させる国の候補はあるのか?」


アキラ「火の国と大ヴァーラント魔帝国。………それからいずれはガルハラ帝国を入れるつもりだ。」


 俺の言葉を聞いた途端に黒の魔神の眼光は鋭くなった。


黒の魔神「ガルハラ帝国だと?人間族の国を引き入れるとはどういうつもりだ?人神は敵だ!」


アキラ「人神は敵だ。それは俺も同じこと。だがお前の敵は人間族全てか?それとも人神か?人間族全てを滅ぼすのがお前の正義か?」


黒の魔神「!!?………それは。」


アキラ「ガルハラ帝国は聖教にもほとんど影響されていない。国民一人一人で言えば信者もいるだろうが国策としては聖教に反発しているくらいだ。人神の影響を排除すれば聖教の教えもいずれ影響力がなくなるだろう。」


黒の魔神「………まさか生きているうちにもう一度その言葉を聞くことになるとはな。確かに俺の目的は人間族を滅ぼすことじゃない。人神を滅ぼすことだ。そこへ立ち塞がる者は全てなぎ倒すが関係ない者まで人間族だからという理由で滅ぼすことはない。…だがそのガルハラ帝国は信用できるのか?」


アキラ「俺は信用している。今頃はバルチア王国と聖教をぶっ潰すために戦争中だろう。」


 黒の魔神は驚いた顔をしてからサタンの方を向いた。


サタン「確かに現在人間族の国同士で戦争をしております。」


 さすがにサタンは人間族の情勢にも精通していたようだ。


ノーム「その同盟…、わしらも加えてもらえるのかの?」


 ノームの声に俺達が視線を向けると水と風も加えて欲しいと言い出した。


アキラ「俺は構わない。」


黒の魔神「………。むしろ別枠だったことに驚いたぞ。てっきり精霊族全てのことだと思っていた。」


アキラ「俺はきちんと火の国と言ったはずだ。俺は火の国の王であって他の国のことにまで口出しは出来ない。」


黒の魔神「…そうか。俺にも異論はない。」


ノーム「それでは土の国。」


ウンディーネ「水の国。」


エアリエル「風の国も。」


アキラ「五カ国による相互防衛同盟…。そういうことでいいな?」


黒の魔神「もちろん魔人族はその要求を飲…。」


火霊神「ちょっと待て!人神が怪しいことはわかった。だが俺達は魔人族を信用したわけじゃないぞ!」


土霊神「そうじゃな。」


 我に返った四霊神達が魔人族との同盟について反対しだした。正直面倒臭い…。火の精霊神が言ったことがわかった。こいつらは何もしないくせに口だけは出してくる。


アキラ「だったらお前達だけ魔人族と戦え。俺達は知らない。なんなら相互防衛同盟が発効される前からの戦争だから俺達は魔人族に協力しないことにしてやる。それでお前達が勝てば好きにしろ。」


水霊神「私達だけで勝てるはずはありません。」


アキラ「知るか。お前達のやっていることは、『協力しない。文句は言う。』ということだ。自分の意見を通したければそれなりのものを示してみろ。出来ないのなら口出しするな。他人の足を引っ張ることしか考えない奴の面倒までいちいち見てられるか。」


四霊神「「「「………。」」」」


風霊神「それで精霊族が滅ぶことになったら貴方はどうやって責任を取ると言うのですか?」


アキラ「精霊族のことなんて知らないって言ってるだろう?」


風霊神「なっ!」


アキラ「俺は火の精霊王だ。火の国の存続に関しては責任を取る。滅亡などさせない。だが他の国のことはその国の者が考えろ。俺の知ったことじゃない。」


四霊神「「「「………。」」」」


火の精霊神「火の国のことはこいつに任せればいいんじゃないですかね?火霊神様?」


 火の精霊神が俺のフォローをする。驚いた俺は火の精霊神を凝視した。


火の精霊神「っ!べっ、別にお前のためじゃないからな!お前の力なら火の国を守れる。だから火の国のために言ってるんだ!」


アキラ「ふっ。そうか。火の精霊王を預かっている以上は火の国のことは任せろ。」


 またしてもツンデレさんみたいな言い方をする火の精霊神がおかしくて俺は笑いながら火の精霊神に応えた。


火の精霊神「うっ!………ふんっ!偉そうに言って失敗するなよ!」


 それだけ言うと火の精霊神は真っ赤になって俯いてしまった。


ミコ「アキラ君………。止めを刺しちゃったんだね…。」


アキラ「なんのことだ?」


 俺には意味がわからなかったがまたしても師匠とフランの二人もミコに合わせて三人でウンウン頷いている。


サタン「そろそろ昼時になる。このまま昼餐会として実務面まで詰めようと思うがいかがかな?」


アキラ「そうだな。そうしよう。」


黒の魔神「そうか。じゃあ追加の料理を出してくれアキラ。」


アキラ「は?………え?マジで?」


黒の魔神「当たり前だろう?もう朝の分はほとんど残ってないぞ。」


アキラ「はぁ………。ちょっと待ってろ。」


 こうして精霊族の四カ国と大ヴァーラント魔帝国の五カ国による相互防衛同盟が締結され世界は大きく動き出した。この同盟はファルクリア全土を巻き込んだ激動の時代の到来を告げることになるのだった。



  =======



 昼餐会には大ヴァーラント魔帝国の大臣達まで参加し、同盟の詳細を詰めるために各国の宰相等と活発に意見を交わしていた。王達もたまには口を挟むことはあるがすでに大筋では合意できておりあとは漏れがないように大臣達が詰めた内容を承認するだけとあってリラックスして大臣達の話を聞いている。リラックスした雰囲気だったせいか気が緩んでいるそんな時にこそ大事件が起こってしまうものだ。


黒の魔神「魔人族、ドラゴン族、妖怪族のうちいずれか二族が集まれば他の四族全てが集まっても二族の方が勝つ。この同盟はアキラと狐神が、つまり妖怪族と魔人族が結ばれたことですでに勝ちが決まっているのだ。」


ノーム「わしらはいらんと言うのか?」


黒の魔神「いらんとまでは言わないが魔人族と妖怪族が揃った時点で他などいてもいなくても変わらんと言っているんだ。」


ノーム「貴様っ!神が相手であろうとここまで虚仮にされては黙っておれんぞ!」


アキラ「やめておけノーム。黒の魔神も余計なことで煽るな。」


黒の魔神「事実を言ったまでだろう?」


アキラ「事実だったとしてもだ。それから俺は妖怪族としてここにいるんじゃない。火の国の精霊王としてここにいる。その点を履き違えるなよ。」


黒の魔神「ふぅ…。それじゃだめなんだっつってんだろ?人神は強かだ。生半可な方法じゃ力を削いだり計画の邪魔をすることは出来ても奴を完全に止めることは出来ない。出来るんだったらとっくに俺がやっている。………。そうだな。それじゃアキラは精霊族の代表でいい。おい狐神。お前俺の妻になれよ。そうすれば魔人族と妖怪族の繋がりもより強固になる。」


アキラ「――――ッ!!!」


 こいつ今何て言った?師匠が黒の魔神の妻になる?何を言っているのか意味が理解できない。出来ないはずなのにその言葉が徐々に俺の脳に染み渡ると俺は我を忘れていた………。


アキラ「おい………。玉藻が誰の妻になるだと?玉藻は俺の嫁だ。俺の嫁達に手を出す気なら今ここで皆殺しにしてやる。」


 気付いたら俺の能力制限は外れていた。どれほどはずれていたのかは冷静さを欠いた俺にはわからない。まだまだ全力ではない。だがほとんどの者からすれば並の力ではないだろう。久々に漏れ出た青い妖力により髪が完全に逆立つ。九本の尾がどんどん伸びていく。ああ…。なんだろう。俺の中を快感に似た物が駆け抜ける。久しぶりに伸び伸び力を出しているからだろうか?それとも久しぶりに妖力を使ったからだろうか?やはり妖怪族である俺には妖力が一番馴染むのかもしれない。今すぐアバレタイ。メノマエノコイツラヲズタ…ズタ…ニシテ………ヤ……ル………。


狐神「アキラッ!」


アキラ「ッ!」


 玉藻に抱き締められた。少し冷静さを取り戻した俺は妖力を抑え玉藻に体を預ける。


狐神「心配しなくたって私はアキラのものだよ。ガウだってミコだってフランだって。だからアキラがあんな戯言を気にして怒ることはないんだ。」


アキラ「うん………。ごめん。………ありがとう玉藻。」


狐神「ッ!いっ、いいんだよ。」


 そっと抱き締め返して名前を呼ぶと玉藻は真っ赤になりながらもうれしそうな顔をした。普段はお姉さんぶるのにこういう所はミコ達と変わらないほど初心なところが可愛らしい。


フラン「あの…。アキラさん…。嫁達というのには…。」


ミコ「私達のことも含まれてるのかな?」


 ミコとフランも両側からそっと抱き締めてくる。なんだろう。他の国の王や大臣達が呆然と見守っている中で俺達はお互いに抱き合って何をしているんだろう…。でもこの愛おしさは止められない。


アキラ「ああ。二人も俺の嫁だ。」


 ミコとフランも抱き寄せながら俺は二人に告げた。ますます顔を赤くした二人がさらに力を込めて俺に抱き付いて来る。当然のように『がうもなのー』と言いながらガウも飛び掛ってきて五龍将達も足元へと擦り寄ってくる。なんだかいつもこんなことになるな…。これもパターン化している気がする。でも良い匂いと柔らかい感触に包まれて俺に断る理由はない。


ティア「あのあの!わたくしは?」


アキラ「ティアはまだ嫁と言えるほどじゃないな。」


ティア「………そうですか。」


 ティアはがっかりしたように肩を落とした。一瞬だけ…。


ティア「ん?まだ?ということは?」


アキラ「これからのティア次第だな。」


ティア「アキラ様!」


 俺が今の本心を打ち明けるとティアまでこのいつもの抱き付き合戦に参加して飛び込んできた。


 ………。

 ……。

 …。


黒の魔神「おい。何を綺麗に纏めようとしてるんだ?まだ終わってないぞ。」


 黒の魔神は心が読めるのか。俺がこれで終わらせようとしていることがわかるらしい。


黒の魔神「そんなことはどうでもいいんだよ。とにかくお前の女達に手を出そうとしたら大変なことになるのはよくわかった。」


 怖っ!ほんとに読んでる!


黒の魔神「いやいや。お前顔に出すぎだから…。それは良いっていってるだろ。とにかく。玉藻って言ってたか?狐神の前の名か?狐神は諦めるからアキラが俺の妻になれよ。それならいいだろう?」


アキラ「はぁ?嫌に決まってるだろ!なんで俺がお前なんかと………。」


 その後の昼餐会は大変だった。俺から漏れ出した妖力は黒の魔神と戦っていた時の師匠よりもさらに強大だったらしい。俺があそこまで妖力を出したのは今回が始めてだ。ソドムの時の力は量だけで言えば今回より遥かに上ではあったがあれは単なる神力ではなかったと思う。師匠は俺の力がもっと強いことを知ってはいるが実際に修行の時にもあれほどの力は出していない。なにしろ修行の時は妖力を抑えていたからな。俺の力を知らなかった者はおろか俺の力の一端を見てきた者達でもさっきの力には大いに驚いたようだ。精霊族や魔人族からは尊敬や畏怖の目で見られて会談が一時まともに進まなくなってしまった。


 それから黒の魔神…。こいつは本気で俺を口説こうとしている………。男に言い寄られても気持ち悪い。本気であの手この手で口説こうと言い寄ってくるこいつに俺の精神は参っていた。見た目は…まぁ男の俺からみてもハンサムだとは思う。頭も悪くない。ちょっと考えなしに思えるようなところもあるがそれは絶対の自信の表れでもある。確かに俺と師匠を除けば最強クラスの神であり長い年月を生きてきた知識と経験もかなりのものだ。でもだからって…俺が男となんて………。考えただけで寒気がする。


 俺に怯える大臣達を何とか落ち着かせて同盟の詳細を決めてなんとか締結までこぎつけ、しつこく俺に言い寄る黒の魔神をなんとかかわして昼餐会は何とか終われた。俺達は部屋へと戻って寛ぐことにした。



  =======



 各国の代表も今日は昨日と違いそれぞれの部屋へと戻っていった。ここでいきなり魔人族に殺される心配はないと理解したのか。あるいはもしそうなってもそれはそれで仕方ないと割り切ったのか…。そして俺達の部屋の前に二つの気配が近づいてくる。控えめにノックされ俺が扉を開けてその二人を迎え入れる。


アキラ「どうした?エアリエル。シルフィ。」


 気配で察していた通り二人はエアリエルとシルフィだった。


シルフィ「火の精霊王様、お休みのところを申し訳ありません。」


エアリエル「実は………。シルヴェストル様のことで…。」


 その名前を聞いた瞬間俺の脳裏に嫌な予感が掠めた。まさか…。まだそんなに時間は経っていないはずだ。現に目の前にいるエアリエルも少し年を取った印象は受けるがほどよく熟れて色気が増したくらいのもので決して老けたようには見えない。むしろ今の方が前より大人の色気が増して魅力的な女性に見える。まぁ性別はないので女性ではないのだが…。


アキラ「シルヴェストルの身に何かあったのか?」


エアリエル「あっ!いえ、その。命に関わるようなことではないのです。ただ………。」


 エアリエルは俺にさらなる厄介事を持ってきたのだった。



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