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転生無双  作者: 平朝臣
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第三十七話「固まる想い」

 シルフィードから真東へ向かっていた俺達の前には大きな山が見えている。その山はどこか神山に似ていた。山の麓まで来てみてその山の高さがよくわかる。神山は今まで見てきた山で一番高い。そして今目の前にある山は神山に次いで二番目に高いと思われる。


ティア「なんですかここは…。」


 ティアは俺の胸の谷間に収まったままブルブルと震えている。この山からは異様な気配が漂っている。ティアが怖がるのも無理はない。


ガウ「がうがう。何かいるの。」


 俺達が山へと近づいた時に空間が揺らぎ何者かが現れた。しかしその姿ははっきりとしない。黒い靄と白い靄のようなものが人型を形作りながら漂っている。この現れ方といい力といい精霊族ではあると思うが今までの精霊族達とはまるで質が違う。


???「お待ちしておりました。」


 白い靄がしゃべる。落ち着いた女性のような声だ。


???「今こそ約束の時。」


 黒い靄がしゃべる。地の底から響くかのような恐ろしい声だ。


アキラ「そう言われても俺には前の記憶がない。お前達は何者だ?」


光の精霊「私は光の精霊。」


闇の精霊「俺は闇の精霊。」


ティア「光と闇?そのような精霊は聞いたことがありません。」


 ティアが即座に答える。俺もそのキーワードを聞いても何も思い出せない。


アキラ「知らないな。光と闇の精霊は一人ずつしかいないのか?」


 他には気配はない。ここにはこいつらしかいない。


光の精霊「我らは個にして全。」


闇の精霊「全てが我であり全てが彼。」


 言わんとしていることは何となくわかるがわかりにくい。


アキラ「一応伝わっているとは思うがわかりにくい。わかりやすく言え。」


光の精霊「全ての光は私であり貴女です。」


闇の精霊「全ての闇は俺であり貴女だ。」


 結局わかりにくい。全ては自分であって自分でないと言ってるのだろうが抽象的すぎる上に言葉がわかりにくい。


アキラ「もういい…。それで?」


光の精霊「いにしえの盟約に従い。」


闇の精霊「我らの力を貴女に。」


 光の精霊が光輝き闇の精霊の闇が広がる。その力に包まれた俺の意識が遠くなる。


 ………

 ……

 …


狐神「アキラ?」


 俺はどれほど意識を失っていたのだろうか。光の精霊と闇の精霊の姿はない。それ以外は意識を失う前と何も変わっていない。


ミコ「何か…あったの?」


 ミコが俺を心配そうに覗き込んでる。


アキラ「あいつらの力に飲み込まれてからどれくらい経った?」


ミコ「え?光ってから?ほとんど時間は経っていないよ?」


アキラ「…そうか。」


ティア「あの精霊を名乗る者達に何かされたのですか?」


アキラ「………いや。知識の一部を思い出しただけだ。」


フラン「どのようなことですか?」


アキラ「光と闇の精霊魔法の使い方。そして………生命の源。生命の始まり…いや…世界の始まり。」


 俺は皆に思い出したことを語って聞かせた。


 世界の始まり。始まりは虚無だった。言葉としては『何もない』が一番近い表現だがそれでは『何もないということがある』となってしまうので正確とは言えない。だが概念的なものなのでこれ以上うまく説明することはできない。


 そこに混沌が生まれた。混沌とは全てのものでありながらどれでもない。全てのものが混じり合ったものだ。


 混沌は二つに分かれた。光と闇だ。全てが混じり合い区別の一切なかったものに区別が生まれた。光と闇は交互に世界を回った。そこで光の熱から火が生まれ闇の冷たさから水が生まれた。そして回る世界を区切るために土が生まれ世界を回す風が生まれた。


ティア「それでは精霊族は世界そのものですか?」


アキラ「違う。精霊族はその力を模して生まれた種族だ。そして生命とは混沌から生まれ世界を回り混沌へと還る。これ以上は概念的すぎて言葉では説明し切れない。」


 皆には説明していないことがある。混沌から生まれ混沌へと還る。それは間違いではない。だがその先がある。混沌から虚無へと至る道が…。


狐神「それでこれからどうするんだい?あの光と闇は消えちまったよ?」


アキラ「記憶ではこの山に登っています。登ってみましょう。」


 俺達は山へと登ってみた。今の俺達ならこの程度の山は全員すぐに登りきれてしまう。


ミコ「うわぁ~。すごい景色だね。」


 山頂から下界を見下ろすとこの山の周りには雲海が流れている。だが遠くの方を眺めると雲の切れ間から地上が見えているところもある。不思議で幻想的な光景だった。記憶の通りに山頂を歩いていると祠のようなものがあった。そこにはなるとのように渦を巻いた模様が九個描かれた石版がある。渦の根元は全て中央に繋がっている。この模様は見たことがある。師匠の庵にもあった模様だ。一箇所から九本の渦が伸びている模様が表しているもの…。九尾の狐か?


狐神「んん?これは何だか見たことがある気がするね。」


アキラ「師匠の庵にも同じ模様がありました。」


狐神「そうだったかね?」


アキラ「………自分が住んでいたのに覚えてないんですか?というか師匠がつけた模様じゃないんですね。」


狐神「ああ。あそこは私が勝手に空き家に住み着いただけでね。私が行く前からあそこにあったんだよ。」


アキラ「そうだったんですか…。それじゃあもう行きましょうか。」


狐神「もういいのかい?」


アキラ「………はい。」


 考えるべきことはある。だがここに居る必要はもうない。俺達は山を下りた。


狐神「次はどっちだい?」


アキラ「記憶ではここから真北へ。ザラマンデルンへと向かっています。ですが真南のグリーンパレスへ向かいましょう。」


狐神「それでいいのかい?まだ時間はあるだろう?」


アキラ「はい。もう西大陸で思い出すべき重要なことはありません。帰りにまたここを通ってザラマンデルンへと戻れば記憶の道も問題ありません。」


狐神「記憶が戻ってないのにわかるのかい?」


アキラ「なんとなくですがそんな確信があります。」


狐神「そうかい…。アキラがそれでいいって言うならそれでいいよ。」


 俺達は真南に向かって進んだ。途中でゲーノモスを通ったがグノムとノームはすでに精霊の園に向かったようだ。いや、本来の国が向こうなので帰ったと言うべきか。もちろん彼らは俺とは違いグリーンパレスを経由しなくとも向こうとこちらを自由に行き来出来るので呼び出してもらえばすぐに来れるはずだが、これと言って用があるわけでもなくこれから精霊王会談で会うことになるのだから無理に呼び出してもらう必要もない。ゲーノモスはそのまま素通りした。


 さらに南へと進むと森の中にある都市が見えてきた。都市と言っても日本にあるような都市ではない。森の木々を利用して木の上にも家のようなものがある立体的な村みたいなものだ。木々をつなぐ橋のようなものがあちこちに架かっている。


ティア「これがグリーンパレスですか。」


アキラ「ティアは来たことがないのか?」


ティア「それは…その…、ここは土の精霊の地なのでわたくしは…。」


 つまり土の精霊が怖くて水の精霊であるティアは近寄れなかったのだろう。そもそもティアは精霊の園へ行くのならどこからでも空間を越えられるはずなのでわざわざグリーンパレスに来る必要もなかったのわけだ。


???「~~~~~」


 グリーンパレスは壁に囲まれており門の前に不気味な生き物が二体立っていた。その不気味な生き物は俺達が近づくと槍を構えて何事かしゃべっている。だが俺には何をしゃべっているのか理解出来なかった。音としては聞き分けることは出来るかもしれないが発音を真似ることも表現することもできない。よく言われる表現としてはガラスや黒板を爪で引っかくような音と言えば想像が付きやすいかもしれない。


アキラ「こいつらは何だ?何を言っている?」


ティア「彼らはエルフです。わたくし達が怪しい者だと言っています。」


アキラ「エルフっ?!これが?」


 エルフ愛に溢れる皆様すみません。彼らは日本で想像するようなエルフとは似ても似つきません。


ミコ「アキラ君誰に謝っているの?」


 ミコには俺の心が読めるようだ。日本でよく描かれる美男美女とはかけ離れている。肌は緑色でものすごく細長い顔にとんでもなく釣り上がった細い目をしている。瞳に白目はなく全て茶色をしている。顔に合わせてか耳も長く先が尖っているところが辛うじて日本のイメージと似ているところだろうか…。


 言葉がわかるのはティアだけなのでティアに任せていたが結局信用してもらえず誰か信用してもらえる者はいないかということでグノムを呼び出してもらうことになった。


グノム「アキラ様申し訳ありませんですじゃ。まさかこのようなことになろうとは…。」


アキラ「いや、グノムのお陰で助かった。手間を掛けさせたな。礼を言う。」


グノム「とんでもございませんのじゃ。彼らの非礼を許してやって下されなのですじゃ。」


アキラ「別に責める気はない。俺は1350年近くもここには来ていないんだ。俺のことを知らないのは当たり前だ。どう見ても精霊族に見えない俺を警戒するのは彼らの仕事だろう。」


グノム「そう言っていただけると助かりますのじゃ。」


 エルフは精霊族に含まれるが本来はあまり他の精霊と親しくないらしい。悪魔と現地民の間に出来た子孫が魔人族と言う話と同じように精霊族と現地民の間に出来たのがエルフ種だそうだ。悪魔の件については証拠はなくウィッチ種の伝承にすぎないがエルフの方は確実だという。それ故にエルフは精霊族とは言っても半精霊族であり現地民との子孫のため物質世界との繋がりが強いというよりは物質世界の住人そのものなのだ。


 元素があるところならば世界中どこにでも現れることが出来る精霊種が世界各地で現地民と交わり様々な種類のエルフ種が存在するらしい。だが精霊族からも現地民からも半精霊族であるエルフは忌み嫌われ隠れ住んでいるそうだ。本来はどちらにも入れず隠れ住んでいるはずのエルフ種だがこのグリーンパレスに住んでいるエルフ種は土の国の保護政策もあり特に迫害等を受けることもなく仲良く暮らしている。代わりに彼らは労働力や兵士としてこのような仕事を請け負っているのだそうだ。とはいえここまで敵が攻め込んでくるようなことが起こるということはゲーノモスが陥落しているということであり今まで敵などに攻め込まれたこともない気楽な仕事だそうだ。労働力として森で狩りをして獲物を獲ってくるかせいぜいこうして門番をして魔獣などが入り込まないように見張っている程度らしい。


アキラ「だが混血は禁忌じゃなかったのか?そんなに世界中に混血がいるのか?」


ティア「なかには変わり者の精霊だって生まれることもあります。その精霊が他種族と交わることでその地にエルフが根付くのです。長い時を繰り返せばそのようなエルフ達も増えるのです。」


アキラ「じゃあ俺とティアの間に子供が出来たらその子供もエルフ種なのか?」


ティア「なっ!なっ!なっ!なんということをぉぉぉお!」


 ティアは真っ赤になりながら俺の胸の谷間へと逃げ込んだ。……っておい。そこに逃げ込んでも意味がないだろう…。俺から離れるために遠くに逃げるのならまだしもその相手の胸の中に逃げ込んでも逃げたことにはならない。


ミコ「アキラ君やっぱり…。」


 ミコが悲しそうな顔をしている。


アキラ「ものの例えで言っただけだからな?別にティアに何もしないぞ?」


フラン「………。」


 外套が引っ張られている。振り返らなくてもわかる。フランが俺の外套を引っ張っているのだ。


アキラ「ふぅ…。ティアに何かするより先にフランに何かしてしまいそうだ…。」


フラン「えっ!あの…それって…。」


 つい本音が漏れてしまった。ばっちり聞こえていたようで全員からじと目で見られている…気がする。五龍将もムルキベルもポイニクスもガウもそんな目をするはずはない。なのにそんな目で見られている気がしてしまうのだ。そう思ってしまうということはもう俺はフランのことを…。


ミコ「フランなら…仕方ないよね。」


狐神「そうだねぇ…。フランなら仕方ないね。」


アキラ「どうしてフランなら仕方ないんですか……?」


ミコ「最初からそんな予感がしてたもん。」


狐神「私は最初からフランをアキラはーれむに入れる気だったからね。」


 ………。もう何も言えねぇ…。



  =======



 グリーンパレスにある精霊の園へと至る門は魔の山にあった悪魔召喚門と似ていた。枠の部分のデザインはもちろん違うが…。もしかしたらこの門の構造がわかれば魔の山の門も閉じることが出来るかもしれない。門を潜るとそこには…。


アキラ「………暑い。」


ミコ「えっ?アキラ君暑いの?」


アキラ「いや…。実際に熱量を感じてるわけじゃない。気持ちの問題だ。」


 目の前は暑苦しいことこの上ない景色だった。まさに溶岩の川に囲まれた活火山の中といった風情だ。


アキラ「これが精霊の園か?」


ティア「ここはザラマンデルンです。」


アキラ「なに?」


 確かにザラマンデルンに似ているがザラマンデルンにこんな場所はない。


ティア「物質世界のザラマンデルンではありません。」


 ティアに詳しい説明を聞く。精霊の園とは簡単に言えば一番大きな枠組みのことだ。その中に火の国エリア、水の国エリアというようにいくつもに分かれている。本来は門を潜る時に行きたい先を考えればそこへ繋がるらしいのだがそんなことなど知らなかった俺は何も考えずにただ門を潜った。結果火の精霊王である俺は自動的に火の国エリア、つまり精霊の園の中にあるザラマンデルンの本国へと繋がってしまったというわけだ。


イフリル「お早いお着きですな。女王陛下。」


 嫌な奴に見つかってしまった。まだ精霊王会談まで五日ある。このままでは当日ぎりぎりまでやらされるということはないだろうがまた書類の山を処理させられることになりそうだ。


アキラ「イフリル。俺は用がある。」


イフリル「そうはまいりませんぞ女王陛下。ささ、こちらへ。」


 どうやら逃げられそうにない。強制連行された俺は書類の山と向かい合うはめになった。


イフリル「水の宰相が何用ぞ!」


ティア「貴方には関係ありません。わたくしはアキラ様に御用があってここにいるのです。」


 やはりと言うべきかイフリルとティアは仲が悪いようだ。だが力だけで言えばイフリルの方が総量も多く熟練だが実際に戦えばティアには敵わない。………そうか。ティアにイフリルを追い払わせれば俺はこんなことをしなくても済むかもしれない。…が、長年書類を放っていたのは俺の責任だ。それでも怒るわけでもなく今まで我慢し、ただ必要だからやって欲しいと俺に書類を任せているイフリルにそこまでしてはあまりに扱いがひどすぎる。覚悟を決めた俺は久しぶりに加速能力を使う。貯まっていた書類はみるみる片付いた。


イフリル「おお。さすがは女王陛下です。それではこちらも…。」


 さらに大量の書類が運び込まれる…。放置して逃げるような真似はしないと決めたんだ。やりたいことがあるのは確かだがこれを終わらせることを優先しよう。俺はさらに加速し次々に書類を終わらせていった。


イフリル「信じられませんぞ………。まさかたった一日で終わらせてしまうとは…。」


 俺は全ての重要書類を終わらせた。簡単な案件ならば俺の裁可がなくとも処理出来る。


アキラ「もう残りの書類はお前達に任せて大丈夫だな?」


イフリル「はい。お疲れ様でございました。」


 イフリルは素直に引き下がり帰っていった。今日で書類は終わらせたので明日からは精霊の園を自由に見て回れる。


 休もうと思い寝室へと入るとフランが眠っていた。今は他には誰もいない。俺はそっとフランに近づいてその顔を覗き込んでみる。すーすーと規則正しく寝息をたてているフランの顔はかわいらしい。目にかかっている前髪をそっと整える。


アキラ「かわいい寝顔だ…。」


 そのままふらふらと顔を近づけてしまう。


フラン「んぅ?………。えっ!アキラさん!」


 口付けしてしまいそうなほど二人の顔が近づいた時フランはぱっと目を開けて俺に気づいた。目を覚ましたフランに俺は動けなくなる。そのままの距離で二人で見詰め合う。


フラン「あぅ…。あにょ…。」


アキラ「すまん…。」


 何か言い淀んでいるフランから離れようとするとぎゅっとフランに抱き締められた。


フラン「あにょ………。あの!アキラさん…。愛して…います。」


 突然のフランの告白…。普通こんな場面で急にこんなこと言うか?だが俺は動けない。フランの力なんて俺よりずっと弱い。離れようと思えば簡単に振り解ける。それなのに俺はまるで動けなくなってしまった。


フラン「アキラさんには私なんかよりずっと素敵な人が周りにたくさんいるのはわかっています。ですから私のことも愛して欲しいというわけじゃありません。ただ…これからも今までのように…私もお側にいさせてください。私は…、黒き救世主様ではなくアキラさんが好きなんです!」


 二人でベッドに寝転び合い、ぎゅっと俺を抱き締めながらフランはそう告げた。こんなことを言われてこの世界に転生した今の俺が何も思わずにいられるはずはない。俺もフランを抱き締め返す。最早俺は自分の気持ちから目を逸らすことは出来ない。もうとっくに自覚している………。


アキラ「それは無理だな。」


フラン「えっ!そんな…。せめてお側に…。」


アキラ「ああ、ずっと側にいてもらう。」


フラン「えっ?」


アキラ「だけど愛さないでいいなんていわれてもそれは無理だ。俺はもうフランのことが好きなんだ…。」


 その瞬間二人の心は確かに繋がった。


フラン「ぇ?えっ!そ…それ…は…。これは夢ですか?」


アキラ「心が繋がっているのがわかるだろう?これも夢だというのか?」


フラン「っ!」


 フランは声にならない声を上げてポロポロと泣き出した。


アキラ「フランは泣き虫だな。」


フラン「これは…ちがっ…違うんです。うれしくて…。」


アキラ「くすっ。」


フラン「あぁ!笑うなんてひどいです。」


狐神「じーっ………。」


ガウ「がう。」


ミコ「………。」


 皆が俺達を見ていた………。何も言わないミコが一番怖い。


ミコ「アキラ君…。私には好きとか愛してるとか言ってくれないのに…。私のことは好きじゃないけど側に置いてるの?」


 ミコは本気で泣きそうな顔をしている。


アキラ「違う。あの時ははっきりと答えられるような気持ちは自覚してなかった。でも今は言える。ミコのことも好きだ。」


ミコ「アキラ君!」


 ミコはベッドのフランとは反対側に飛び込み俺を後ろから抱き締めてきた。その目にはやはり涙が溜まっている。


アキラ「どちらにしても泣くのかよ…。」


ミコ「えへへっ。これは悲しい涙じゃないもん。」


狐神「やれやれ。私はどうなんだい?」


アキラ「師匠のことも愛してます。」


ガウ「がうがう。ご主人がうはどうなの?」


アキラ「ガウのことだって好きさ。」


 これは異性としてではなく家族や娘のような感覚だと思うが今は余計なことを言う必要はない。


ガウ「がうがう!」


 ガウと師匠まで飛び込んできたベッドでいつものように五人仲良く眠りについた。


 ………

 ……

 …


ティア「ちょっと待ったぁぁぁ!わたくしのことをお忘れではありませんか?!わたくしも一緒に寝ます!」


 ティアの乱入と同時にこっそりハゼリとブリレが一緒に部屋に侵入してきている。なぜこいつらまで…。


アキラ「はぁ…。ティア。ここには寝相の悪い誰かさんがいるからな。小さいお前は潰されても知らないぞ。」


ブリレ「主様その心配はいらないよ。ティアはボク達が守ってあげるからね。」


ハゼリ「ブリレはいりません。ハゼリがいれば事足ります。」


ブリレ「二人で抜け駆けしてきたのにさらにボクまで出し抜こうって言うの?」


ハゼリ「ハゼリが一人で来る予定だったのです。二人でではなくブリレが勝手に付いて来ただけです。」


 賑やかなことだ。もう突っ込む気力もない。俺は放っておいて眠りにつくことにした。面倒なことはまた明日だ………。



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