表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生無双  作者: 平朝臣
40/225

第三十四話「離れて暮らしても子は親に似る」


 ゲーノモスで一晩休んだ俺達は翌朝すぐに出発することにした。


ノーム「もう行かれるのか?」


アキラ「どうせすぐに精霊王会談で会うことになる。」


ノーム「それもそうであったな。それでは次は精霊王会談で会おうぞ。」


 ノームとの挨拶も終了だ。さぁ出発という時にグノムに声をかけられた。


グノム「アキラ様これを…。」


アキラ「これは?」


 グノムが差し出したのはただの四角い箱だ。大きさは掌に乗るほどで2~3cm四方くらいだろう。継ぎ目はまったくなく素材も何かよくわからない。表面は硬く重厚な質感だが重さはほとんどない。ただの真っ黒い小さな箱状の塊だ。


グノム「記憶を失くされる前のアキラ様が置いていかれたものですじゃ。」


アキラ「置いていったのならずっと置いておいたほうがいいんじゃないのか?」


 これが何なのか今の俺にはわからない。もし意味があって置いていったのだとすればそのままにしておいた方がいいんじゃないだろうか。


グノム「少し言葉が足りませんでしたのじゃ。記憶を失くされる前のアキラ様が『いずれ必要になる時まで預かってくれ』と言って託された物ですじゃ。」


アキラ「そうか…。それならば持っておこう。」


 いつが必要な時かもわからないのだがいつか必要な時が訪れるのだとすれば持っておけばいいかもしれない。だが必要になるのならなぜ預けたりしたのだろうか。………以前師匠は前の俺がいずれ覚醒して今の俺と交代するとわかっている節があったようなことを言っていた。ボックスの中に入れていては今の俺と交代した時にその存在すら思い出さないだろう。だから今の俺がこの箱の存在に気づくようにあえて人に預けておいたのかもしれない。都合の良い解釈だがどちらにしろ記憶のない俺では考えてもわからない。ともかくグノムからその箱をもらいボックスの中に収納しておく。


アキラ「それでは世話になったな。次は精霊王会談で会おう。」


グノム「はいですじゃ。アキラ様もお達者で。」


 こうしてゲーノモスから出発した。少し進んだところでムルキベルが声をかけてきた。


ムルキベル「アキラ様。グリーンパレスはゲーノモスから真南の方角です。こちらは方角が違いますが。」


 ゲーノモスから出発した俺達は現在北北西に向かって進んでいる。だがそれでいい。今の俺の目的地はグリーンパレスではない。精霊王会談までに西大陸での記憶を取り戻すことだ。


アキラ「精霊王会談まではまだ時間がある。その気になれば西大陸の北の端から南の端まで数時間で移動できるんだ。今は記憶の通りに進む。」


ムルキベル「はっ!出すぎたことを申してしまいました。」


アキラ「気にするな。俺だっていつも正しいことを考え行動しているわけじゃない。お前が本当に主のことを思う忠臣なら主が間違えている時は忠言をすることこそ正しい。最も俺はお前のことを部下や家臣ではなく仲間と思っているがな…。」


ムルキベル「もったいなきお言葉…。私には身に余る光栄です。」


 ムルキベルもオーバーな奴だ。何か俺の仲間は堅苦しい奴ばかりのようだ。


ミコ「西大陸の端から端まで数時間って…。私はそんなに走れないよアキラ君。」


 ミコが泣き言を言い出した。実際にそんなことをするつもりはないので余裕をもって行動するつもりだがミコは想像しただけで疲れたようだ。


フラン「何を泣き言を言っているんですかミコさん?アキラさんに抱っこしてもらえるチャンスではないですか。」


 フランは最初から俺に抱えられる気満々のようだ。


アキラ「自分で歩け。」


フラン「もちろんいけるところまでは自力で歩きます。ですが限界まで歩いたらアキラさんが抱っこしてくださるんですよね?」


 外套を掴み赤い顔をしながらも俺を真っ直ぐ見据えて甘えてくる。だめだ。クラクラしてつい抱き締めてしまいそうになる。最近のフランは危険だ。このままでは本当に俺がフランに惚れてしまいそうだ。


ティア「何をいっているのですか?あなた以外はみんな自力で移動しているのですよ?アキラ様に甘えないでください。」


 ティアがフランに突っかかる。


アキラ「だったらお前は俺の肩から降りろ。自力で飛べ。」


ティア「絶対に降りません!」


 ティアはなぜか大威張りで胸を反らして断言した。左肩に乗っているティアは横を向くとすぐ目の前にいる。薄い水のような衣を纏っているその姿で胸を反らすと半透明のような衣が素肌に張り付いて下の肌がうっすら透けて見えて………。


ミコ「あっ!アキラ君!今いやらしいこと考えているでしょう?ティアちゃん気をつけて。アキラ君がいやらしい目で見ているよ!」


 こういう時はなぜかミコは鋭い…。


アキラ「いや…。別にティアとかいやらしい目で見てねぇし?」


ミコ「アキラ君?目を逸らさないでこっちを見て言って?それに言葉もおかしいよ?ん?やましいことがないのならどうしてそんなに動転しているの?」


 ミコは尚も追求してくる。


アキラ「だいたいそんな地肌が透けて見えるような薄い衣着てる方が悪いんだよ。」


ミコ「やっぱりティアちゃんをいやらしい目で見てたんだね…。」


 ミコは悲しそうな表情で顔を伏せた。


アキラ「いや…その…これは…。」


 つい本音が出てしまった。完全に俺のミスだ。女絡みとなると俺は大体失敗している気がする。


ティア「なっ!なっ!わたくしをそんな目で見ていたのですか!なんという…。いくらわたくしが綺麗でかわいくてアキラ様を虜にしてしまうほどの良い女だとしてもそのような目でじろじろと嘗め回すようにいつも見ているなんて!」


 そこまでは言ってないぞ…。そもそも目の前にあったから目がいってしまっただけで普段はまるで意識なんてしていない。そもそも火の精よりは大きいとはいえ30cmほどの大きさしかないのだ。これでは人形遊びをしているようだし何も出来ない。いや…何もする気はないんだよ?ほんとだよ?


狐神「この世界で最強と言っても過言ではないアキラの唯一の弱点は女だね…。」


ガウ「がうぅ。」


 師匠の言葉が俺の心に響いた。



  =======



 それから俺は何かを誤魔化すかのようにスピードを上げて移動したが今日のフランは平然と付いて来ている。まさかとは思うが昨日たった半日の師匠の修行で能力が上がったのだろうか。


ティア「次の目的地は風の国シルフィードですか…。」


 ティアの呟きに前方を注視してみる。辺りはむき出しの岩山で山と谷が複雑に入り組んだ地形だ。近づいただけですごい風が不規則に吹き荒れている。土の精霊魔法はグノムに見せてもらって思い出した。そして目の前に吹き荒れる風をみて風の精霊魔法も思い出した。目の前の風は自然の風ではなく風の精霊魔法によって人為的に作り出されているのだ。常に発動させたり流れを変えたりしているためか見ただけで思い出せた。姿は見えないが風の精霊らしき気配がありその者達が風の精霊魔法を使っているようだ。


 ここに辿り着いて脳内の地図と照合してみる。西大陸の東西南北に綺麗に各精霊が分かれている。西大陸は南北に長く東西に短い地形なので南北と東西で距離は違うが北が火、南が土、東が水、そしてここ西が風と各精霊の国を南北と東西を線で結べば綺麗に十字になっている。


アキラ「よし。踏み込むか。」


ティア「ちょっと待ってください!こんなところへ正面から入ろうとすれば大怪我をしてしまいます。」


 吹き荒れている風はただ風が吹いているのとは違う。まさに攻撃するための風の刃と思われるようなものが吹き荒れているのだ。それも普通の風と混ざって目には見えない。並の人間族が踏み込めばたちまち細切れにされるだろう。


アキラ「だったらティアはここで待ってたらどうだ?俺達は進む。」


ティア「………。」


 ティアはそれ以上何も言わずただ俺にしがみ付いた。防御や回避する方法はいくらでもあるが今回の俺は火の精霊王として堂々と乗り込むことにする。俺の火の精霊魔法の力によってドーム状に俺達のパーティー全員を包む。ただ単純に力によって防ぐことも可能だが俺は試したいことがあった。それは謂わば空気の断層だ。俺達を包んだ膜のようなドームの部分だけ高温にしてある。もちろん内側にいる俺達にその熱の影響はないようにしている。周囲の温度とその膜との急激な温度差によって空気の流れを大きく変えているのだ。試しにそのまま風の中に突っ込んでみたが熱による空気の断層で風の刃は俺達には飛んでこず捻じ曲げられあらぬ方向へと飛んでいく。実験は成功のようだ。


狐神「へぇ…これは面白いね。こんな方法もあるんだねぇ。さすがは私のアキラ。よくこんな方法思いついたね。」


 師匠に褒められたようで少しくすぐったい。だが現代地球の科学知識を利用しているので俺の発見ではない。テストでカンニングをしているような気分であまり素直に喜べない。


ティア「誰があなたのアキラ様ですか?勝手なことを言わないでください。」


狐神「おや?ティアは別にアキラのはーれむに入っていないだろう?私らはアキラのはーれむに入っているんだよ。」


ティア「ぐっ…。」


フラン「ですが私もキツネさんのというのは納得出来ませんね。私達みんなのアキラさんではないですか?」


 ティアがぐうの音も出ないほどやり込められたところへフランが割って入った。


狐神「おや。フランも言うようになったね。その調子だよ。もうすぐアキラは完全にフランに惚れるからね。もう一押しだよ。」


 師匠には完全に俺の心が読まれている。確かにその通りだ。むしろすでに惚れていると言ってもいいくらいまでいっている。師匠の計画通りなのだろう。だが俺ってこんなに惚れっぽい奴だったか?という疑問が付き纏う。


フラン「もちろんです。ティアさんに先を越されたら立ち直れませんから。」


 フランはにっこりと俺に笑顔を向けてくる。最初は眠そうな顔とか思っていたはずなのに今は眩しいくらいにかわいく見える。


ティア「そもそも貴女方はわたくしのことをティアティアと気安く呼びすぎではないですか?そう呼んで良いのはお母様とアキラ様だけです。オーレイテュイア様とお呼びなさい。」


ミコ「ムルキベルさんも言っていたじゃない。親しい間柄なら愛称で呼び合うんでしょう?私達もう友達でしょう?」


ティア「ともだっ……。そっ、そんなにわたくしとお友達になりたいのでしたらなってあげてもよろしいですよ?」


 ミコに友達と言われたティアは強がっているが真っ赤になって顔を背けている。もしかしたらティアは友達がいなかったのかもしれない。


ミコ「うん。それじゃあこれからは私達友達だね。よろしくねティアちゃん。」


ティア「本来であれば人間族などわたくしのお友達として釣り合わないのですがそこまで言うのなら特別にお友達になってあげましょう……。ミっ…ミコ。」


 友達を名前で呼ぶのが恥ずかしいのかミコの名前を呼ぶとティアはとうとう耐え切れずに俺の服の中へと入り胸の谷間へと隠れてしまった。って勝手に入るなよ…。


アキラ「おいティア。勝手にどこへ入っている。出て行け。お前は精霊にしてはでかいから邪魔だ。」


ティア「絶対に出て行きません。」


 胸元から顔だけ出して偉そうに踏ん反り返りながら断言した…。


ガウ「がうがう!あそこに何かいるの。」


 谷の奥へと侵入していた俺達はその先にいる気配に気づいた。風に紛れて目に見えない風の精と思しき者達が最初から周囲にいて風の刃を飛ばしてきていたのだがこの奥にいる気配は格が違う。宰相クラスの奴だろう。


???「火の精霊の力を持つ者よ。一体ここに何の用ですか?」


 声はするし気配はあるが姿は見えない。これが風の精霊の特性だろうか。


アキラ「俺は火の精霊王だ。少しだけこの地を見せてもらいたい。」


???「火の精霊王?なんでも燃やすしか能がない野蛮な火の精霊達はこんな獣に王を譲ってしまったのですか…。ここは風の精霊のための国です。さっさと出て行きなさい。」


ポイニクス「ママをばかにするなっ!」


 安い挑発に乗って興奮したポイニクスの精霊力によってチリチリと外套の右肩部分が焦げてくる。前のようにいきなり爆発することはなくなったようだがこの程度の挑発に乗せられているようではポイニクスもまだまだだ。


アキラ「安い挑発に乗るなポイニクス。………今度は本当におしおきするぞ?」


ポイニクス「ピッ!ごっ、ごめんなさいママ。」


 子供相手に大人気ないが本気だと示すために少し殺気を込めて凄むとポイニクスは大人しくなった。


ティア「シルフィ。少しここを通るだけです。誰か監視を付けても良いので穏便に済ませられませんか?」


 ティアが俺の胸元から顔を出す。襟を掴んでいる指先と頭だけ出ている姿はなんだか可笑しくてかわいらしい。


シルフィ「オーレイテュイア………。なぜ貴女が火の精霊と一緒にいるのですか?」


 シルフィと呼ばれた風の精霊と思しき者が姿を現した。服のような物は何も身に付けていないが体自体が半透明のように少し透けている。一見すると女性のように見えるがポイニクスと同じように性別は無い。蜻蛉のような翅が二対四枚付いているがそれで飛んでいるわけではないようだ。


ティア「水の精霊はこの方達と対立する道を選んで危うく滅ぶところでした。ですがこの方達はこちらから危害を加えない限り何もしてきません。ここは穏便に済ませてください。」


シルフィ「水の精霊が火の精霊に負けると言うのですか?それに風の精霊では火の精霊に勝てないことはわかっています。それでも力ずくで要求を通そうとするような野蛮な者にただ屈するつもりはありません。」


ティア「それは違います!水の精霊が火の精霊を馬鹿にして攻撃したことが原因なのです。この方達は最初からわたくし達に危害を加える気などなかったのです。決して野蛮な者ではありません。」


 ティアが必死にシルフィを説得しようとしている。だがシルフィは聞き入れそうにない。こんな問答など無意味だ。


アキラ「ティアもういいだろう?お前達の時と同じだ。何を言っても無駄なんだよ。口でいくら説得しようとしても聞き入れはしない。どうせこいつらの攻撃など通用しないんだから無視してそのまま進む。」


ティア「待ってください。それでは風の精霊との関係がこじれてしまいます。」


アキラ「水と風の関係など俺の知ったことじゃない。お前だけここに残ってシルフィとやらと話をつければいい。元々火と風は関係が悪いんだろう?だったらこれ以上悪くなることなどない。」


シルフィ「なんと野蛮な…。やはり火の精霊など信用できません。例えここで風の精霊が全滅しようとも貴女達の思い通りにはさせません。」


 シルフィは明確な殺気を俺達に向けてくるが俺はお構いなしにずんずんと進んで行く。


ミコ「アキラ君だめだよ!皆殺しなんてしたらだめだからね!」


 ミコが慌てて俺の横まで来て腕を掴みながら必死に説得しようとしている。だがミコは何か勘違いしているようだ。


アキラ「勘違いするなよミコ。どうせこいつらが何かしても俺達には何の影響もない。ただ無視して俺の行きたい場所へ行くだけだ。」


ミコ「本当に?」


 ミコは不安そうな顔で俺を覗き込んでいる。なぜか俺はこういうことに関してはまるで信用がないようだ。


アキラ「本当だ。そもそも俺はどこかの種族を皆殺しにしたことなんてないだろう?」


 そうだ。俺は散々皆殺しだなんて言いながら実際にやったことは一度もない。口だけ番長だ。


ミコ「それは周りの皆が止めてるからだよね………。もしアキラ君一人だったらもうかなりの種が絶滅してると思うよ………。」


 …そんなことは………、あったかもしれない。そういえば爆発寸前で止められたこともある。ポイニクスが短気なのは俺に似たのかもしれない。


アキラ「ともかく今回は何もしない。ただ通るだけだ。」


ミコ「それならよかった…。アキラ君が大虐殺しているところなんて見たくないからね。」


 ミコもようやく信用したのかほっとした顔になって俺の腕を離した。自由になった俺はそのままさらに谷に向かって進んで行く。


シルフィ「止まりなさい。それ以上進めば攻撃します。」


アキラ「さっきからしてるじゃないか。」


 シルフィが警告してくるがすでに攻撃してきている。これでは警告の意味はないのではないだろうか。


シルフィ「黙りなさい。これ以上進めば本気で攻撃すると言っているんです。」


 内包する神力量からするとすでに全力全開で攻撃してきていると思われる。それがまるで通用していないので強がりを言っているのだろう。俺の精霊力に包まれた俺達にはそよ風ほども届かない。無視してそのままどんどん進む。シルフィは後退しながら攻撃を出し続ける。暫くそのまま進み続けるととうとうシルフィは力尽きたようだ。


シルフィ「はぁ…はぁ…。止まりなさい。これ以上は進んではいけません。」


アキラ「だったらそろそろ本気の攻撃とやらで止めてみたらどうだ?」


シルフィ「くっ…。…この先へは進んでは駄目なのです。どうかこれ以上進まないでください…。」


狐神「何か事情があるようだね。アキラ、話くらい聞いてやればどうだい?」


アキラ「なんで俺が話しも聞かない奴みたいな雰囲気なんですか?問答無用で話も聞かなかったのは向こうでしょう…。おい、シルフィとか言ったか?話をする気があるなら聞いてやる。だがまた問答無用で攻撃して追い払おうというのならこっちも黙って進む。好きな方を選べ。」


シルフィ「ここでは話せません…。シルフィードへと来て下さい。」


 俺達は話をする気になったシルフィに付いて行くことにした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ