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転生無双  作者: 平朝臣
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第二十七話「ミコの手紙」


 救助と負傷者の治療は粗方終わった。気配察知をしているので生き埋め等はもういない。埋まっている死体までは見分けられないので遺体の収容はこの街の者が勝手にやればいい。死ぬまでどこにいたのか把握しているので遺体の場所は大体わかっているがそこまでは俺の知ったことではない。すでに夜が明けている。


ミコ「アキラ君。」


 三方向に分かれていた俺達は街の中央部付近で落ち合った。


ジェイド「ご協力感謝する。」


 ずっと俺に付き纏っていたジェイドが俺達に感謝を述べる。


ミコ「あの…。死者数は…?」


ジェイド「今のところ報告では死者200余名、行方不明者300余名と聞いている。行方不明ははぐれただけの者もいるかもしれないからまだ正確な数はわからない。」


ミコ「そうですか…。200名以上も………。」


 ミコの表情は暗い。精霊が点けたと思われる火については事前の知識がなかったので止めることは出来なかっただろうが俺達がすぐに動いていれば初期段階で消火出来ただろう。フォレストキーパーにも精霊魔法を撃ち込まれることなく始末できたはずだ。物的被害はあちこちが小火で焦げる程度。人的被害は皆無に出来ただろう。


ジェイド「君達のおかげでこの程度の被害で済んだ。街を代表して礼を言わせてくれ。」


ミコ「そんな…。もっと…、もっと救えたはずなんです…。すみません。私の力が足りないばっかりに…。」


 ミコが頭を下げる。ジェイドは困惑顔だ。そこへ子供が駆けてきた。


子供A「どうしてかあちゃんを助けてくれなかったんだよ!」


 子供が叫びながら俺達を睨みつける。この街の者全ての気配を察知していたのでわかる。この子供の母親というのはおそらく火事で崩れた家の下敷きになった者のことだろう。気配では血縁まではわからないが同じ家に寝ていた者で死んだのはその者だけだ。


市民A「そうだ。俺も見たぞ。あんたらすごい力を持ってたじゃないか。どうして助けてくれなかったんだ。」


市民B「そうだそうだ!あんたらがもっとちゃんとしてたらこんなに火が広がることも死人が出ることもなかったんじゃないのか?」


市民C「ひどい!私のお父さんを返して!」


 ミコは今にも泣き出しそうな顔をしていた。ほらみろ…。これが人だ。こいつらは魔人族だが便宜上知性のある生物を全て人と呼んでおく。こいつらの本性はこんなものだ。自分の不幸は他人のせい。持つ者を妬み持たざる者を蔑む。こんな奴らを救ってやる価値などない。そもそも他人を殺して領土を奪ってのうのうと住んでいる奴らだ。それが自分達に跳ね返ってきたにすぎない。


アキラ「何を勘違いしている?俺達にお前達を救わなければならない義務などない。別に救ってやったから感謝しろなどとは言わないがこの街の者が死んだことの責任も俺達にはない。」


市民A「なっ!ほらみろ!こいつらはこんなやつらなんだ。お前達のせいでこの街は滅茶苦茶だ。」


アキラ「まるで話にならないな。西大陸は戦場でどの街でもこうなることがわかっていてお前達が勝手に住み着いているんだろう?そもそもお前達も精霊族に同じことをして追い出したんだ。今回自分達が同じ目に遭う番だったからといって文句を言うな。こうなることが嫌だったならば北大陸に住めばよかっただろう。」


市民B「こいつ精霊族の肩を持つ気か!きっとこいつらは精霊族の仲間に違いないぞ。」


ジェイド「ちょっと待て。その敵を倒してくれたのが彼女らだぞ。落ち着け。」


市民C「きっとこの人達が精霊族を引き入れたのよ。敵を倒したのも自作自演じゃないの?」


アキラ「いい加減面倒だな。敵認定されているようだしこの街も消し飛ばすか。」


ジェイド「待ってくれ。今街の者達は街がこんな状態になって混乱してるんだ。君達に手は出させないからこの街を消すのは待ってくれ。」


アキラ「わかったかミコ?こいつらはこんな奴らだ。自分勝手で自分の不幸は全て他人のせいにするんだ。救う価値があったか?こんな奴ら放っておけばよかったんだ。」


ミコ「ごめんなさい。…私の力が足りないから…ごめんなさい。ごめんなさい。」


 ミコは頭を下げ声を震わせている。俺の中で怒りがこみ上がってくる。


アキラ「なぜこんなクズ共のせいでミコが悲しまなければならない?こんなクズ共ですら救おうとしたミコがなぜ責められなければならない?こんな奴らがいるから戦争は終わらないんだよ。…ミコ、戦争を終わらせる方法を教えてやる。こういうクズ共は全て根絶やしにすればいいんだ。」


ミコ「待って!アキラ君。お願い。」


 顔を上げたミコは俺を抱き締めて止める。


アキラ「…なぜ止める?こいつらはミコに酷い仕打ちをした。ミコを悲しませた。こいつらの命なんぞ何億個積み上げようが何の価値もないがこいつらに払える物は命くらいしかない。命で償わせてやる。」


ミコ「…ごめんなさい。行こうアキラ君。」


 一度だけ振り返り再度謝るとミコは俺を引っ張って行った。


ジェイド「すまない………。せめて門まで君達を見送らせてくれ。」


 ジェイドが付いて来る。その後ろにはジェイドとは別の隊の兵士まで付いてきていた。


アキラ「こんな不愉快な街は全てが燃え尽きるまで放っておけばよかったな。」


ジェイド「返す言葉もない…。君達はこの街の英雄だ。本来なら感謝こそすれ恨み事を言うなどもっての他なんだが今は市民達も混乱しているんだ。」


アキラ「混乱…ね。本性の間違いだろう?人は切羽詰ると本性が現れる。」


ジェイド「俺の昔話を聞いてくれ。俺は子供の頃よくこの姿のせいで虐められていた。どうしてこんな姿なのか悩んだこともあるし恨んだこともある。だが成長するにつれて俺は強くなり今度は周囲に恐れられた。先祖返りしている分俺は住んでいた村のワーウルフの誰よりも強かったんだ。誰一人俺にケチをつけることもなくなった。」


 そこでジェイドは一度言葉を切った。


ジェイド「だが結局一人だった。虐められていた頃と変わらない。恐れられても一人だったんだ。しかし今は仲間がいる。もちろん兵士になった最初の頃も一人だった。周囲に奇異な目で見られたし恐れられていたんだ。だが徐々に信頼関係を築いた。俺の力を信じてくれる仲間が出来たんだ。すぐには無理かもしれないが少しずつでもわかってくれる者は出てくる。人を信じることを諦めないで欲しい。」


アキラ「ふん…。それは信頼関係じゃないだろう?お前の力が利用できるとわかったから擦り寄ってくる寄生虫が出てきただけだ。子供の頃や村では強くても恐怖の対象でしかなかったものが兵士なら強い者の傍にいれば自分の生存率が上がる。だからお前を利用しているにすぎない。」


ジェイド「そんなことはない!君達だって信頼できる仲間同士なんだろう?俺だって最初はそうだった。兵士の仲間だけだった。だがこの街を守っているうちに市民達にも信頼されるようになった。今はまだ君達の力が強すぎてみんな君達を恐れているだけなんだ。」


アキラ「都合のいい話だな。最初のうちは除け者にしておいて使えるとわかったら擦り寄る。そして将来利用価値がなくなればまた除け者か?結局人は自分にとって都合が良いかどうかでしか判断しない。都合が悪くなればいつでも簡単に掌を返す。」


ジェイド「今は…それを否定することは出来ない…。市民達が君達にしたことを考えればそう言われても仕方がない。だが俺達は君達に感謝している。そのことは忘れないでくれ。」


 西大陸へと出る唯一の門までやってきた。荷物はすでに全て持ってきている。


ミコ「ありがとう…ございました。」


 ミコはジェイドに礼を述べる。まだ元気がないが何か考え事をしているようだ。


アキラ「まぁ…ジェイドには一応世話になった。礼を言っておく。」


ジェイド「やめてくれ。世話になったのはこちらの方だ。それなのにこんな送り出し方をしなければならないのは辛いことだが…。総員!ソドムの街の英雄に敬礼!」


 ジェイドと付いてきていた兵士達は整列し右手を握り締め掌の方を腹に当てている。これがこの国の敬礼なのだろう。俺達はそれ以上言葉を交わすことなく門を出て行った。



  =======



 街を出てから真っ直ぐ西へと進んでいる。ミコはあれ以来ずっと物思いに耽っていた。何か声を掛けた方がいいのかとも思うが俺には気の利いた言葉が浮かばない。


ミコ「アキラ君…。少しだけわかったことがあるの。戦争をなくすことも人々の考えを変えることもすぐには出来ない…。それにそのためには私はまだまだ力が足りないってこともわかったよ…。」


 その言葉を受けてミコを振り返る。だがその顔には悲しみや怒りは見えない。ただ静かな決意があるような気がした。


ミコ「だから私はもっともっと強くならなくちゃ。それに知らないことも多すぎるわ。アキラ君と一緒にこの世界を回ってもっと色んなことを知らなくちゃいけないの。…それまで世界を平和にする方法の答えは待ってもらえますか?」


 少しだけ顔を伏せ上目遣いでお願いされる。俺の答えは決まっている。


アキラ「好きなだけ考えろ。一生かかっても答えは出ないかもしれない。だけどミコが納得するまでどれだけかかっても考えておけ。…それまでずっと俺も傍にいるから。」


ミコ「っ!………アキラ…君。」


 ミコは両手で頬を抑えて瞳をうるうるとさせている。…俺らしくもないことを言ったものだ。だが市民達に暴言を吐かれながら悲しそうな顔で謝り続けていたミコの姿が俺の頭から離れない。もうあんな顔はさせたくない。この少女を守りたいと思った………。


 その時ぐいっと外套が引っ張られた。振り返るとフランが俺の外套を掴みながら何やら睨んでいた。


アキラ「どうしたフラン?」


フラン「何でもありませんっ!」


アキラ「何でもなくないから外套を引っ張ってそんな顔をしてるんじゃないのか?」


フラン「知りませんっ!」


狐神「やれやれ。お熱いねぇ。私のことも忘れないでおくれよ?」


ガウ「がうがう。」


ミコ「ふふっ。さぁアキラ君。先を急ごう?」


 ようやくミコにも笑顔が戻ったようだ。暫く西に進んだあと進路は南へと変わった。



  =======



 南に進路が変わってから休むのに丁度良さそうな場所に出たところで今日はテントを張ることにした。まだ十分明るいので普段ならまだ進むところだが昨晩は面倒に巻き込まれたので早く休むことにしたのだ。テントを張り終わり皆思い思いに過ごしてる。


ミコ「………アキラ君。ちょっといいかな?」


 ミコに呼ばれてテントの外へと出る。ミコがテントから少し離れた林へと歩いていくので付いて行くことにする。林の中にまで進んで行き少し開けた場所で俺を振り返った。他のメンバーに聞かれたくない話だから離れたのかもしれないがこの距離では師匠やガウには無意味だ。会話の内容も筒抜けで聞こえているだろう。だがミコがここでいいと思ったのなら俺が何か言うことではないと思って黙っておくことにした。


ミコ「あの…えっと…。その…これを読んでください。」


 そう言ってミコは一通の手紙を差し出した。


ミコ「…本当は…召喚されたあの日に…アキラ君の机に入れようと思っていたものなの。けれどこの世界に召喚されてこんなことになってしまって…。私は召喚されてからすごく後悔したわ。どうしてもっと早く渡さなかったんだろうとか机に入れようとしないで直接渡せばよかったとか色々考えてしまったの。だから今度こそは直接渡すんだって思って、絶対生きて地球に帰るんだって思ってた。今度は後悔しないために私の手で直接渡します。」


 ミコの顔は緊張している。俺は手紙を受け取り読んでみることにした。手紙には子供の頃に神社で助けられて初恋をしたことや学園に入学してからその相手と気づかずに俺をもう一度好きになったこと、その相手が初恋の人であったと気づいたことなどが書かれていた。


ミコ「私はずっとアキラ君を見ていたよ。初恋の人が近くに居たのに気づかなかったからあまり偉そうには言えないのだけれど…。アキラ君が本当は優しいことも、自分を殺してじっと耐えていたことも、本当は運動も勉強もすごいことも。私はアキラ君が好きです。それから…これを返そうと思ってずっと持っていたの。」


 ミコは白いハンカチを差し出した。アキラと刺繍してある。子供の頃に俺が神社で女の子にあげたものだ。


アキラ「これはやるって言っただろ?返さなくていい。」


ミコ「覚えていてくれたの?」


アキラ「かわいい女の子だったからな。学園で最初に見た時にわかった。」


ミコ「え?そうだったの?どうして言ってくれなかったの?」


アキラ「別に言うようなことじゃないだろう?」


ミコ「もぅ…。言ってくれてればこんなに遠回りしなくてもよかったかもしれないのに…。アキラ君の意地悪。」


 ミコが頬を膨らませる。かわいい仕草だった。


アキラ「ミコが気づかないなら気づかないでよかったんだよ。むしろ学園に居た頃の俺なら気づかれない方がいいと思っていた。」


ミコ「私の気持ちを伝えるのは私の自己満足。私がアキラ君のことを好きだって知ってほしかったの。そして私の望みはこれからもアキラ君の傍にいたいということだけ…。例えアキラ君が私のことを好きじゃなかったとしても傍に居られればいいの。今日ずっと傍にいてくれるって言ってくれたよね?…本当にこれからもずっと傍にいてもいいですか?」


 顔を赤らめもじもじしながら上目遣いで尋ねてくる。俺はそっとミコに近づき抱き締めた。


アキラ「ミコがいたければいつまででもずっと俺の傍にいろ。」


 俺はミコを受け入れた。その瞬間二人の心が繋がった気がした。


ミコ「っ!………アキラ君の心がすぐ傍にいるのがわかるよ。ありがとうアキラ君。」


 ミコも感じ取ったようだ。これが愛情なのか同情なのか友情なのか俺にはまだわからない。だがミコは俺に気持ちを寄せ俺はそれを受け入れた、魂の繋がりが出来たということはそういうことなのだろう。


アキラ「でもミコの気持ちが変わって俺の傍を離れるのなら早いうちにした方がいいぞ。あまり傍にいるとミコが離れたくなっても俺が離さなくなるかもしれないからな。」


ミコ「くすっ。本当にアキラ君は意地悪だね。…私がアキラ君から離れることなんてないよ。離れろって言われたって離れないんだからね。」


 抱き締めあっているミコの笑顔がすぐ目の前にある。今ではミコの方が背が高く少しだけミコが屈んでいる。目が合うとミコははっとしたようになり急に真っ赤になった。


ミコ「アキラ…君…。」


 ミコがそっと目を閉じそうになった時に背後からがさりと音がした。


狐神「ばかフラン。音をたてたら…あっ…。」


 師匠とガウとフランが出歯亀をしていた。ミコは顔を真っ赤にしながらさっと俺から離れて俯いている。


ミコ「いっ、いつから覗いていたんですか?」


アキラ「最初から。」


 三人は俺達が離れて林に入った頃くらいからテントを出て後をつけてきていた。


ミコ「え?アキラ君気づいていたの?」


アキラ「当たり前だろう?俺の能力で捉えられないわけがない。」


ミコ「どっ、どうして教えてくれなかったの?」


アキラ「こんな距離で師匠やガウの能力から逃れられるわけないだろ?テントに居たとしても全部聞こえてるよ。教えるも何も最初から隠れることも逃れることも不可能だ。」


ミコ「あっ、あっ、あああぁ!恥ずかしいぃぃぃぃ~~~。」


 ミコは顔を真っ赤にして叫び声を上げながら明後日の方角へと走り去って行った。


狐神「さてアキラ?私とだってまだ口付けをしていないのにミコと何する気だったんだい?」


アキラ「口付けまではするつもりはありませんでしたよ。」


狐神「本当かねぇ?随分良い雰囲気だったじゃないかい?」


 師匠は鋭い。確かに流されかけていたのは間違いない。


フラン「………。」


 フランは何も言わないが鋭い視線を向けてきている。眠そうに見えるがこれはフランにとっては鋭い視線だ。何も言わないのがかえって怖い。師匠はともかくフランに怒られなければならない覚えはないのだが…。


ガウ「がうっ!ご主人とちゅーするの~~~~!」


 ガウはガウで満面の笑顔で俺に飛び込んでくる。いつか見た光景だ。俺は空中でガウをキャッチする。その後ガウを宥めることになったのは言うまでもない…。


 ガウを宥めたあとにミコも戻り軽く時間を潰してから夕食を食べた。すでに外は真っ暗だ。眠るにはまだ少し早いが昨晩はゆっくり休めなかったので早めに床に就いた。


 俺と師匠とガウがいれば敵に接近されるまで誰も気づかないことなどほぼあり得ないので見張りなどはおいていない。いつも全員一緒に寝ている。今日は師匠が俺の添い寝役から外れているのだが夕方のミコの一件以来師匠は何度も俺に口付けをしようと狙っていた。さらにミコもいつも以上に密着してくるしフランも何か様子が違う。今晩の寝床はある意味戦場と化していた。


 俺が眠ると膝枕をしている師匠は顔を寄せてきて隙あらば口付けしようとしてくる。ミコも負けじと俺の頬に触れそうなくらい顔を近づけたりしてくる。フランも俺の腕をぎゅっと抱き締めていつも以上にくっついている。俺は今晩ゆっくり休めないだろうと覚悟した。いつもと変わらずすーすーと寝息をたてているのはガウだけだ。ガウだけが俺の心のオアシスだった。


アキラ「師匠が受け入れてやれって言ったのにどうして怒ってるんですか?」


狐神「別に怒ってやしないさ。ただミコとあんなに良い雰囲気になったんだから次は私としてくれてもいいだろう?」


アキラ「師匠………。そうやって無理やり迫られたら良い雰囲気になんてならないでしょう…。」


狐神「だったらどうすればいいんだい?」


アキラ「いつも通りのかわいい師匠でいてください。そうすれば俺の方がそのうち我慢できなくなります。」


狐神「えっ!そうなのかい?全然そんな素振りなかったじゃないかい。」


アキラ「何言ってるんですか?何度もやばい場面があったじゃないですか。誘惑に負けて師匠を押し倒そうと思ったことが何度あったことか…。」


狐神「そっ、そうだったのかい?どうしてそのまま押し倒してくれなかったんだい…。」


ミコ「アキラ君っ!私も見て…。」


 俺と師匠が話していたのでミコが俺の顔を掴みミコの方へと向けさせる。


狐神「ミコはアキラの傍に居られればいいんじゃなかったのかい?」


ミコ「キツネさんも意地悪です…。アキラ君が私のことをなんとも思っていなければそれでも我慢します。だけど…私にだってちょっとくらいチャンスはあるんだよね?アキラ君。」


アキラ「あ、ああ…。そうだな。そうかもしれない。」


 今度はフランの方がぎゅっと腕を掴み引っ張る。


フラン「………。」


 振り返ってみるがフランは目を瞑り寝た振りをしている。だが起きているのは明白だった。


アキラ「どうした?フラン。」


フラン「………。」


 やはりフランは何も答えないがますます腕に力が篭る。こんなことを一晩中繰り返し結局ほとんどまともに眠ることは出来なかった。



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