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転生無双  作者: 平朝臣
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第二十五話「要塞都市ソドム」


 北大陸西部にあるパンデモニウムからほぼ真西に向かって俺達は進んでいた。このまま進めば西回廊に出るだろう。パンデモニウムを出発してからすでに数日が経っているが俺達はゆっくりと進んでいる。


フラン「あの…私一つ思ったんですが…。」


 昼食休憩中にフランが声を上げた。


アキラ「どうした?」


フラン「私の力はすでに城で見たマンモンやルキフェルを上回っていると思います。もしかして…アキラ…さんの食事の影響ではないでしょうか?」


狐神「そうだよ?」


 師匠が今更何言ってるの?と言わんばかりの態度で答える。


フラン「やっぱりそうなんですね。」


 フランは得心したという顔でうんうん頷いている。眼は相変わらず眠そうに見える。


ミコ「え?そうなの?どういうことですか?」


 ミコだけわからないという顔をしている。


狐神「アキラの保存している食料や料理はアキラの膨大な神力に包まれて保存されているのさ。だから入れている物にもアキラの神力が染み込んでいるんだよ。それを食べることで体内に取り入れるから食べてるだけで神力が増大するのさ。」


ミコ「アキラ君が…染み込んでる…。」


 ミコは顔を真っ赤にしながら食べていた昼食をまじまじと見つめている。何かやらしい表現だな。


ガウ「がうがうっ!ご主人のはとってもおいしいの。」


 一度卑猥な方向に思考が移ってしまったのでガウの言葉もなんだかやらしいことを言ってるような気がしてしまう。


アキラ「さぁ出発しよう。片付けるぞ。」


 俺はその思考に嵌らないために話題を変える。


ミコ「あっ!ちょっと待って。もうすぐ食べ終わるから。」


フラン「アキラ…さんのを残したら勿体無いですからね。」


 ミコとフランは顔を赤くしながらも急いで食べていた。



  =======



 旅を続けていた俺達の目の前には一面の海が見えている。その海の向こうまで一本の道がずっと続いている。俺達は西回廊へと辿り着いたのだ。近づいてみると西回廊は北回廊のような砂浜が続いているのとは違うことがわかった。ごつごつとした岩場のような道であちこち水が溜まっていたりする。その上にはやはり海抜2mほどの石造りの橋が架かっている。北回廊といい西回廊といい海の魔獣が襲ってくる中で誰がどうやってこんな橋を作ったのか。確証はないが推測はついている。恐らく古代族だろう。


 橋のことにも関係あるがこれから向かう西大陸について少し知識の整理をしておく。まず西大陸北部はこの西回廊を渡って攻め込んだ魔人族が支配している。南部には精霊族の勢力圏がある。この勢力圏というのを理解しておく必要があるだろう。


 遥か昔は五大陸全てを制覇し世界を統一していた種族がいた。そう、古代族だ。だがこの古代族は滅びた。滅ぼしたのは妖怪族を除いた人間、魔人、獣人、精霊、ドラゴンによる五族同盟だ。なぜ古代族を滅ぼさなければならなかったのか。それはわからない。この太古の大戦と呼ばれる戦争により古代族は滅び、古代族の支配地を五族同盟が分け合った。古参の神と呼ばれている者達はこの大戦当時から生き残っている者達なので詳しい事情を知っているはずなのに何の文献も残っていないのは意図的に隠されているからだろう。


 支配地分配について五族では勢力圏協定が結ばれた。東大陸はドラゴン族、西大陸は精霊族、南大陸は獣人族、北大陸は魔人族、そして中央大陸は人間族の勢力圏となったのだ。


 だがこの支配地分配に納得しなかった魔人族が中央大陸を狙って人間族に戦争を仕掛け西大陸にも侵攻して精霊族から西大陸北部の支配権を奪った。というのが人間族に広まっている経緯だ。しかしフランから聞いた魔人族側の見解は異なる。人間族は魔人族の魔法の秘技を奪った。だから現在人間族は魔法が使える。それに怒った魔人族は人間族に戦争を仕掛けたのだという。それではなぜ西大陸にまで侵攻したのかということについてはわからないらしい。


 そして北大陸の大ヴァーラント魔帝国とは別の魔人族の国がもう一つある。ドラゴン族の勢力圏である東大陸南部の支配権を奪い魔人族が国を建てたのだ。その国はファングという名で大ヴァーラント魔帝国の守護神黒の魔神とは違う赤の魔神というものが守護神になっている。そしてファングは東回廊を渡って南大陸の獣人族と戦争中だという。当然その勢力圏の元の支配者であるドラゴン族とも戦争中だろう。驚くべきことに魔人族は妖怪族を除いた四族全てと戦争中なのだ。


 ともかく中央大陸とは違い地続きで戦争中なので西大陸では余計な争いに巻き込まれる危険は高いだろう。だが魔人族の勢力圏内ではサタンの指輪があるので多少の無茶は通るかもしれない。いざとなれば力ずくでどうとでもなるので俺達は気負うことなく西回廊へと侵入する。北回廊の北大陸側と同じくここにも特に門などはない。


ミコ「ふわぁ~。やっぱり何度見てもこの回廊っていうのはすごいね。」


 北回廊の時とは違い余裕のあるミコは西回廊を堪能しているようだった。


フラン「私は初めて見ました。これが西回廊ですか…。」


 フランは初めてのようだ。ウィッチの森に引きこもっていたのだから当たり前と言えば当たり前だが。


ガウ「がうがう。お魚なの。」


アキラ「ガウは魚が好きなのか?」


 そういえばブレーフェンの時も騒いでいた。あの時はすぐに出発したから俺以外は海も魚も見ていない。


ガウ「がうがうっ!」


 そういえばガウも集落でずっと暮らしてきたから海や魚は珍しいのかもしれない。川魚くらいいただろうが…。


狐神「大した敵はいないね。これは当分ミコとフランにやらせようかね。アキラは強敵と戦わせるよ。」


ミコ・フラン「「任せて!」」


アキラ「はい。」


 俺は強敵との実戦経験が足りない。ここくらいの敵ならばミコとフランに戦闘訓練させる方がいいだろう。


 ミコとフランの装備は一新されている。ミコはなんという種類なのか俺にはわからないが制服のスカートのような折り目のついた青いミニスカートに白いシャツを着ている。シャツには一部にフリルやリボンがついているようだ。肘まであるグローブとニーソックスを履いている。これらは師匠が織ったもので防御力は格段に上がっているだろう。そして胸当てと肘、膝、肩、腰、籠手、脛当て等に一部金属製の鎧をつけている。この金属は俺のボックスで少しだけ寝かせて加工したものだ。長時間寝かせるとヒヒイロカネという金属になるようだがこれは加工するのに莫大な神力が必要であり時間がかかってしまうので軽く寝かせた物を使ったのだ。武器はレイピアを少し厚くして斬る用途にも使えるようにしたような細身の剣とバックラーのような小型の盾を持っている。


 フランはロングスカートにタイツかパンストかわからないがそういうものを履いている。シャツはミコと違い鎧をつけないのでフリルがふんだんに使われているようだ。こちらも肘まである長いグローブをつけている。もちろんこれらも全て師匠が織ったものだ。フランは鎧を着ないので代わりに俺のボックスで寝かせた金属で作った指輪やブレスレットなどのアクセサリーをつけている。これらは俺の神力を内包しているのでいざという時はここから魔力を取り出せるらしい。愛用のでかい杖と金属を細くて短い棒にした杖も俺のボックスで寝かせたものを持たせてある。とんがり帽子だけは愛着があるようでそのまま使っている。


 ヒヒイロカネ自体は俺のボックスにまだ大量にあるので少しずつ加工して皆の装備を作っている最中だ。だが大きくなればなるほど生半可な神力では加工すらできないのでこればかりは時間がかかりそうだった。


狐神「ミコ。右前方から二匹くるよ。」


ミコ「はい!」


 でかさは比較にならないが蛇やうなぎのような細長い魔獣は一刀両断にされぎざぎざの歯がついた平べったい魚のような魔獣は頭を一突きにされていた。


狐神「フラン。左前方から四匹だよ。」


フラン「はい。………ウォーターランス!」


 飛び出した四匹の魔獣を追いかけるかのように海の水が槍となって飛び出し四匹全てを串刺しにした。


狐神「二人共まだまだ反応が鈍いね。もっと鋭くだよ。」


ミコ・フラン「「はいっ!」」


 なぜか二人共気合十分なようだ。この程度の魔獣ではミコとフランには傷一つつけられない。俺達は何の問題もなく西回廊を渡ったのだった。



  =======



 西大陸側には街があった。だがここは街というより要塞のような雰囲気だ。恐らくだが昔魔人族が西大陸に侵攻した際の橋頭堡として築かれた砦が勢力圏の拡大とともに基地としての機能よりも街として徐々に栄えていったのではないかと思われる。すでに勢力圏が安定しているためか北大陸側から渡ってきた俺達を気にする者はいない。


狐神「先に進むかい?今日はここで休むかい?」


アキラ「俺達にとっては街中の方が不便です。それにこの国の通貨も持ってませんから先へ進みましょう。」


 今までの旅でもわかる通り俺達は無一文な上に街中ではボックスの使用は出来るだけ控えている。野宿でも困ることはないので人目のある街中の方が俺達にとっては都合が悪い。全員それがわかっているので反対する者もなく街を通り過ぎようとした。


???「おい。そこの旅人。見かけない姿だな。初めてきたのか?」


 元砦か要塞だったと思われるこの街は周囲を守るように立派な壁で囲まれていた。街の外へ出るために門へと向かっていた俺達に兵士のような格好の男が声をかけてくる。推定180cmくらいと思われる身長にパンデモニウムで見た兵士が着ていたのと同じ統一された鎧を着ている。全身は毛に覆われているようで鎧のない箇所からは毛がはみ出ている。頭は完全に狼だ。俺達は北回廊に侵入してからは外套を羽織っているがフードは被っていない。


???「今から街を出たら荒野で夜になる。今夜はこの街に泊まって朝から出発したほうがいい。」


アキラ「余計なお世話だ。」


ミコ「ちょっとアキラ君…。折角教えてくれたんだからそんな言い方はちょっとひどいと思うよ。」


アキラ「今から出れば外で夜になるのはわかっている。わかってやっているのに無関係の者が口を出すことを余計なお世話と言わずに何と言うんだ?」


ミコ「それはそうかもしれないけれど…。」


???「腕に自信があるようだが西大陸の魔獣は北大陸の魔獣とは違う。魔法の効きが悪いんだ。北大陸でいくら腕自慢でも初めて来たんなら西大陸の魔獣を侮らない方がいいぞ。」


狐神「どうせ私らは文無しなんだ。街の中だろうと外だろうと野宿なのは変わらないんだよ。」


 この兵士風の狼に詳しいことを説明するつもりはないので師匠ははっきりとは言わなかったがむしろ街の外の方が快適に過ごせるのだからこの街に無理に留まる理由は俺達にはない。


???「おいおい。全然違うだろ。例え街中で野宿したとしてもこの街には城壁もあるし兵もいる。外で野宿すれば危険だぞ。」


アキラ「くどいな。お前には関係ない。」


???「そう言うなよ。お前たちは近縁種だろう?むざむざ殺されに行くのを黙って見てられない。金がないのなら兵士の宿舎を貸してやるから今から発つのはやめておけよ。」


 どうやら俺と師匠を近い種と思ったようだ。…こいつはどこからどうみても二足歩行の狼にしか見えないのだが………。


狐神「どうするんだい?」


 皆の視線が俺に集まる。急ぐ旅ではないのでここで一泊しても問題はない。だが街中では俺達は不便な上に余計な関わりを持てば厄介事に巻き込まれかねない。俺としてはさっさと出発したい。しかし西回廊でずっと戦っていたミコとフランのことを考えるとここで休むのもいいのかもしれない。


アキラ「その宿舎とやらを見てみよう。設備が悪ければ出発する。きちんと休めるようなら休んでいこう。」


 俺の提案にパーティーメンバーは全員頷く。


ジェイド「見てから選ぼうってか。文無しと言った割りに贅沢だな。ともかく休んで行く気になったんなら案内するから付いて来い。…ああ、俺はワーウルフのジェイドだ。ソドムの街へようこそ。」


アキラ「ワーウルフ?」


 俺の知識にあるワーウルフは獣人のように耳と尻尾があるだけでほとんど人型のはずだ。俺はワーキャット、師匠はワーフォックスという種の振りをしているのでワーウルフとは近縁種といえば近縁種だ。


ジェイド「俺は先祖返りのようでな。こんな姿だが正真正銘ワーウルフだ。」


アキラ「そうか…。俺はアキラだ。」


狐神「私はキツネ。」


ガウ「がうなの。」


ミコ「ミコです。」


フラン「フランです。」


 俺達はお互いに自己紹介した。俺もミコも普段は苗字を名乗らないことにしている。名乗るのは重要な時だけだ。ジェイドに付いて行くと門の近くの建物へと案内された。


ジェイド「ここが宿舎だ。五人部屋というのはないが四人部屋で泊まっていけ。ちびっこ一人くらいならなんとかなるだろ?」


 そう言いつつ宿舎へと入っていくジェイドに俺達も続いて入る。


兵士A「うおおぉ。なんだこの美人達は?ジェイド!どこかで女を買ってきたのか?」


兵士B「色街は全部知ってるがこんな美人は見たことないぞ?どこの店だ?」


兵士C「まさか誘拐してきたんじゃないだろうな?」


 俺達が入ると屯していた兵士達が一斉に声を上げた。


ジェイド「あまり下品なことを言うなよ。このお嬢さん方は旅人だ。泊まる金もなくて今から街を出るって言うから今夜は宿舎に泊まるようにと連れてきた。この街の品位も疑われるから変なことはするなよ?」


兵士A「だろうと思ったぜ。こんな上玉がこの街の店にいるわけない。」


兵士B「お嬢さん。ジェイドは変態だから今夜は俺の部屋においで。」


兵士C「お前の方が変態っぽいぞ?」


ジェイド「やめろと言ってるだろ?」


 わいわいと賑やかな場所だ。内容は下品だが男の俺からすれば別に男同士のむさい集まりでこの程度の話は普通だろう。多少呆れはするが特に不快になるほどでもない。はっきり言って俺達のパーティーは美人揃いだ。師匠は妖艶な美女だ。ミコは清楚あるいは清純な美少女だろう。フランも幼げに見えるが美少女だ。ガウはまだ子供だが将来美人になるだろうと思える顔立ちをしている。男ばかりでむさくるしい宿舎の中では異彩を放つ存在だ。男共が沸き立つのも無理はない。


アキラ「ジェイド。さっさと部屋とやらを見せてみろ。」


ジェイド「ああ。すまんな。こっちだ。」


 三階建ての宿舎の二階の一番奥の部屋へと案内された。


ジェイド「ここは誰も使っていなくて空いている。ここでどうだ?」


 俺は中へと入ってみる。ベッドが四つと机が一つある以外は何もない。広さもそれなりにあり俺達五人なら十分な広さだろう。それなりに掃除しているのか汚れているというほどではなかった。俺に続いて入ってきた四人も部屋を見回している。


アキラ「どうする?」


狐神「アキラがいいならいいよ。ベッドだけくっつければ私は気にしないよ。」


ミコ「お城のベッドに比べたら眠りにくそうだけど十分じゃないかな?」


フラン「私はどこでも構いません。」


ガウ「がうがう。」


アキラ「それじゃ今夜はここに泊めてもらいましょうか。…ということだジェイド。世話になる。」


ジェイド「そうか。お気に召したようでよかった。食事は…。」


アキラ「俺達の食事は俺達で何とかする。気にするな。」


ジェイド「下で食べられるぞ?兵士と同じ食事だがな。」


アキラ「俺達には俺達の食事がある。隣の部屋で聞き耳を立ててる奴らだけなんとかしてくれ。」


ジェイド「あいつら…。よく気づいたな。あとで注意しておく。」


アキラ「助かる。」


 今夜はここで泊まることにした俺達は部屋を整理したり装備の点検をしたり鍛錬したりしながら夕食までの時間を潰した。机が一つしかなかったのでテーブルと椅子を運んできて全員が部屋で俺のボックス内の料理を食べることにする。


狐神「今夜はここに泊まるんだから酒を出しておくれよ。」


 師匠は夕食の席で酒を要求する。城を出てからはずっと野宿なので念のために酒は飲ませないようにしていた。久しぶりの宿なので飲ませてあげたい気もするが…。


アキラ「う~ん…。ちょっとだけですよ?」


狐神「ありがとうアキラ!」


 一升瓶一つだけ出すと師匠が抱きついてきた。柔らかくて気持ちいい。


ミコ「アキラ君…鼻の下が伸びてるよ。」


アキラ「……伸びてない。」


 こうして久しぶりにリラックスして楽しい夕食を堪能した。そして何事もなく眠りにつく。四つのベッドをくっつけて一つにして全員で眠る。しかし楽しい時間は唐突に終わりを告げる。夜半に要塞都市ソドムの街から火の手が上がった。



 今日は少し更新が遅くなりました。


 この頃は一話あたりの文字数が多すぎたかなと思って今までより少なめに書いていた時期なので今までの文字数で丁度良かった方にとっては少し物足りないかもしれません。


 あとでまた徐々に文字数が増えてきて最近書いている分についてはある程度同じくらいの量になるように調整していますが書き溜め分はどれくらいが良いかよくわからずこのようなことが多々ありますがご容赦ください。


 引き続き誤字脱字誤用のご指摘や感想等お待ちしております。

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