表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生無双  作者: 平朝臣
3/225

第三話「師匠との再会」


 山の方に感じる気がする気配に向かっていく。その道中何かと試してみたがやはりこの体の性能は異常だ。


 まずスピード。見た時は遥か遠くに見えた山の麓までちょっと走ればあっという間に着くことができた。具体的な距離や掛かった時間はわからないが車なんて比べ物にならないほど速いのは間違いない。目を覚ました時に高々と上がっていた太陽がまだ全然沈んでいない。一日はかかるかと思ったほどの距離をほとんど時間を掛けずに移動できたのだ。それも全力疾走でもなく、まるで息も上がっていない。周囲の動物や鳥を置き去りにして走り去ったスピードは人間だった時から比べれば異常と言ってもいいだろう。


 次に力。堅そうな木の幹を軽々と握りつぶせる握力。とても抜けそうにない太い木を軽々と根から引き抜く腕力。小さな少女のような腕からは想像も付かないほどのハイパワーだ。蹴ったゴブリンが粉々になるほどの威力と移動スピードから考えて脚力もとんでもないものだろう。軽く垂直跳びしても高い木々を遥かに超える高さまで跳べる。本気で跳べば雲まで届くのではないかと思うほどだ。


 耳は普通の人間の耳もついている。しかし猫?狐?耳はすさまじい性能だ。集中すれば数km以上離れているであろう場所にいる小さな虫の動く音まで聞き分けることができる。


 そして尻尾。何か特殊な力なのか青白いオーラのような物を集中するとなんと伸ばすことができる。どこまで伸びるのか雲の上まで伸ばしてみたがまだまだ余裕がある。もしかして全力で集中すれば世界全てを覆えるほどに伸ばせるかもしれない。もちろんこれは一本づつでも、数本まとめてでも、それぞれを違う長さにでも自由自在だ。この青白いオーラの調整に最初は手間取った感があるが、元々この体が覚えていたのかオーラに気づいてからはスムーズに動かせるようになった。さらに硬さの調整もできドリルのように回転させて大穴を開けたり、鞭のようにしならせて打ち付けたり、毛を針のようにして剣山で突き刺すが如く穴だらけにもできる。色々な用途に使えそうなので遠距離攻撃武器として考えてもいいのかもしれない。


 予定より早く山の麓まで来れたのでそうやっていくつか実験と確認を行った。これほど高性能な体なら生き延びるだけならいくらでもできそうだ。


 そろそろ山に登ってみようかと進んでいると湖のようなものが目に入った。別に飲み水が欲しいわけではない。もしかしたら水面に顔が映らないかと近づいて覗き込んでみる。不明瞭ではっきりとはわからないがやはりどう考えても俺の顔ではない。この体で元の俺の顔が付いていても不気味ではあるがどこからどうみてもかわいい少女の顔だ。ピコピコと猫耳が動いている。…俺は決してナルシストではないしロリコンでもない。ない、が!しかし…今は自分自身であるはずのこの姿が…めちゃくちゃかわいい…。街で普通に出会ったら一目惚れしそうだ。いや、する。断言できる。俺は今まで女の子を好きになったこともないし付き合ったこともない。だがロリコンと罵られようとこの子と出会ったら絶対惚れる。少し吊り目がちの切れ長の目に金色の瞳。瞳孔は猫のように大きく開いたり縦に細くなったりできる。整った小さな鼻と薄い唇。前髪は眉に掛かるくらいの長さで切り揃えられている。黒くてさらさらの長いストレートヘアーがよく似合っている。絶世の美少女と呼んでも誰も否定しないだろう。にっこりと笑顔をむける。かわいい…。妖艶に微笑んでみる。美しい…。少女から大人の女性へと移り変わる途中のような子供のかわいらしさも大人の色気も併せ持つような姿。


晶(やばいな…。自分の姿を見てうっとりしてたら危ない人みたいだ…。俺はナルキッソスになるつもりはない。ん?これは…。)


 その時少し気づいたことがある。犬歯が牙のように鋭く少し長い。やはり狐だからだろうか。牙に意識を集中しているとシャキン!とでも音がなりそうな感じに牙が伸びた。尻尾のように果てしなく伸びるということはなさそうだが明らかに唇からはみ出るくらいには伸びている。これも青白いオーラの調整でコントロールできるのかもしれない。それともう一つ疑問がある。狐ならイヌ亜科だったはずだが耳や瞳の特徴的には猫に近い気がする。本物の猫又など見たことはないが、猫又なら尻尾は二本に分かれているというのが一般に広まっている認識だったはずだ。九尾の猫又?九尾の狐?あるいは何らかの理由で混ざっているのだろうか。所謂雑種のような…。


晶(これは俺が考えてもわかることではないな。それよりも…。)


 それよりも重大な問題がある。それは女の子の大事な部分を確かめないといけないということだ。これは決してやらしい気持ちがあってのことではない。俺はこれからどれだけの期間この体でいることになるかわからない。それは次の瞬間には俺は消えるかもしれないし今後何十年と俺がこの体を動かさないといけないかもしれないのだ。その間お風呂にも入らずトイレもしないというわけにはいかないだろう。今後俺がこの体に留まる時間が長ければ長くなるほど見て、触れることになる体なのだ。なるべく意識しないように避けてしまっていたが今まで動き回ってきた感じではやはり真ん中の足、息子がある感じはしない。


晶(いくら手も体も本人の物とはいえ意識のない状態で男の俺が撫で回すのは気が引けるが…。一応確かめないわけにはいかない…。)


 まず俺は恐る恐る胸に両手を伸ばしていく。


晶「…ンッ…。」


 つい吐息が漏れてしまった。俺の声とは思えないかわいい声だ。触れた瞬間に体が勝手にビクンと反応してしまったのだ。両手が両方の膨らみをしっかりと捉える。手が小さいせいでまさに手に余るほどの自己主張をしている塊に触れる。自己主張とは言っても固いわけではなく柔らかく癖になりそうな心地良い揉み心地だ。元の俺の手の大きさでも十分に揉み応えのあるサイズだろう。パットなどが入っているわけではない。正真正銘この体の胸だ。あまり撫で回すのは気が引けるので本物と確認できた時点ですぐに手を離す。


晶(次は…。下…だな。)


 俺は女の子の大事な部分について詳しく知っているわけではない。元の世界では男であったわけだし彼女と付き合ったこともない。詳しくわからないのだからとりあえず服の上から触って真ん中の足、通称息子さんがついているかどうかだけ確かめよう。そう決めてソロソロと手を伸ばしていく。


晶「…ンンッ…。」


 またしてもかわいい吐息が漏れてしまった…。この体は敏感なのかもしれない。デリケートなところを触る時には男であった時のように雑にしないように気をつけたほうがいいかもしれない。とはいえスカートの上から軽く押さえただけなのだが…。触った感触ではっきりとわかった。少なくともこの体には息子さんはついていない。


晶(これは…まいったな…。お風呂やトイレはどうすればいいんだ…。)


 十八年間男に生まれて育ってきたのだ。女の子の体の扱い方など知る由もない。途方に暮れそうになる。


晶(お風呂もトイレもなしで過ごすなんてことはできない。かといって本人の意識もなく勝手に入った男である俺があれこれすることも…。ん?待てよ?この体の元の持ち主の意識はどこに行ったんだ?)


 そこで俺はようやく最も重大なことに気がついた。この体はどう考えても九狐里 晶の体ではない。だが意識は俺、九狐里 晶の意識なのだ。では元々この体にあった意識は誰だ?どこへ行った?今どうなっているのだろうか?


晶(まさか俺がこの体を乗っ取って元の意識は死…んで、いや、俺が殺してしまったなんてことはないだろうな…。)


 いくら考えてもわかるはずもない。わかっていることは俺が目覚めてから今まで俺以外の意識を感じた覚えはないということだけだ。


晶(考えてもわかるわけじゃない。最初の予定通り生き延びることが最優先。それから情報収集だ。それは変わらない。だが…、もし元の意識を俺が殺してしまったのだとしたら、高性能な体だ、などと浮かれてる場合ではなかったな…。)


 実験していた時の浮かれた気持ちが急速に冷えてくる。だが落ち込んだり暗くなるわけではない。冷静に、冷徹に、物事を考えていく。もし元の意識が死んでしまっているのだとしても、自分が殺してしまったのだとしても、いやそれならば余計に、その代わりに入り込み生き残ってしまった自分が死ぬわけにはいかない。当初の予定通り山の方から感じた気配に向かって進むことにした。今でははっきりと感じ取れる。山の頂を越えて裏側に周ってすぐの山頂付近に大きな気配を感じる。嫌な気配ではない。むしろ神聖さとでもいうような感覚すら覚える。なぜかはっきりと敵ではないという確信を持って山を登っていった。



  =======



 高性能な体のお陰であっという間に山頂まで辿り着く。急な斜面も、道なき道もまるで苦にならない。急激に標高が変わっても体に異常は感じられない。一直線に気配のある方に向かって突き進む。


晶(あれは…庵?)


 山頂を越え反対側に下りるとすぐに下り以外の三方を大きな岩で囲まれたような地形の真ん中に質素な庵のような建物があった。だが質素な建物であるにも関わらずまるで神殿のような神々しさ、神聖さがここまで漂ってくるかのようだ。そしてその神々しさの原因であろう大きな気配もそこから感じる。ここまで来て今更怖気づくはずもない。臆することなく堂々と正面の入り口の方へと歩いて行き声をかける。


晶「すみません。どなたかいらっしゃいませんか?」


???「はいよ~。はいはい。どこのどなたですかねぇ?こんな辺鄙な山奥にまでわざわざ訪ねてくるような変わり者は?」


 ぞんざいな口調でバタバタと音を立てながら誰かが出てくる。神聖な雰囲気もぶち壊しだ。ガラッと横開きの扉が乱暴に開けられ、巨乳の女が出てくる。その女の頭にも俺と同じく獣耳…。しかしその頭に乗る耳は俺の猫っぽい耳よりは犬っぽい、あるいは狐っぽい耳だった。


???「はいはいっと。どちらさん…。アキラ?」


晶「え?」


???「アキラっ!やっぱりアキラだね!」


 そういって思い切り抱きしめられた俺の顔面は見事な巨乳に埋もれる。


???「あんた随分久しぶりだね。1300年ぶりくらいか?1350年くらいか?今まで音沙汰もなく薄情な奴だね。」


晶「ん~~~!ん~~~~~~っ!」


???「何とかお言いよ。まったく…。…。ん?」


 リアルに胸の谷間で窒息し掛けている俺が開放されたのはその少し後のことだった。



  =======



???「それで急にどうしたんだい?わざわざ私を訪ねてくるなんて。」


晶「いえ…、あの…、まず貴女はどなたなんでしょうか?俺とはどういったご関係で?」


???「ハァ?アキラ…あんた何言ってんだい?」


晶「俺は…、今日の日中に目が覚めた時に、それより前のことは何も覚えていなかったんです。」


???「記憶がない?じゃあなんで私の所へ?」


晶「それは、どこへ行けば良いのか右も左もわからず、とにかく一番近くて大きな気配がするのがここだったからここへとやって来たんです。」


???「大きな気配ってあんた…。敵だったらどうするつもりだったんだい。」


晶「万が一敵だった場合、戦うか逃げるかしたでしょうけど、ここの気配は、あなたは大丈夫だとなぜか確信がありました。」


???「あははは。照れること言うねぇ。記憶がなくても私のことはわかってたってわけかい。」


晶「あの、それであなたの名前は?」


???「あん?私はとうの昔、神格を得た時に神になって名前なんて捨てちまったよ。だからそれ以来こう呼ばれてる。「狐神きつねがみ」ってね。あんた…アキラ=クコサトの師匠だった者だよ。」


アキラ「師匠?それに前の俺もアキラだったんですか?」


狐神「あん?そりゃそうだろ?アキラはアキラさ。」


アキラ「俺のことでわかること…何か教えてもらえますか?」


狐神「なるほど…。どうやらその口調や殊勝な態度も私の下を出てから1000数百年で成長して久しぶりに師匠に会ったからってわけでもなさそうだね。」


 狐神に聞いていくつかわかったことがある。記憶を失くす前、つまり俺と変わる前のこの体本来の持ち主もアキラ=クコサトという名前だったらしい。俺と同じ名前だ…。偶然…ではないだろう。だがまだどういうことかはっきりと確信を持っては言えない状況だ。そして俺と師匠は血のつながりはないが同じ種族に分類されていた。いたというのは神格を得て神になると元の種族とは違う物になるからだ。その種族とは妖怪族、妖狐種、九尾の狐。俺の考えていた九尾の狐というのは当たっていた。ただし師匠は純粋な妖狐種であるのにたいして俺は何か「混ざって」いるらしい。妖狐とはその美しい美貌で人々を惑わす種族で女しか生まれない。そして仮にどんな種との間に子供を成しても必ず純粋な女の妖狐が生まれてくる。だから俺のように何かが「混ざって」生まれる子など本来はあり得ないとのことだ。


 神となっても姿形は変わらないので目の前にいる純粋な妖狐種がどんな姿か伝えておこう。師匠は髪も獣毛も薄い茶色のような色をしている。同じ色のせいか獣耳の毛と頭の髪の境目がわかりにくい。肩より少し長いくらいの長さの髪だが、ぼさぼさというほどではないが癖っ毛なのかあちこちが跳ねている。切れ長の目は俺と変わらないが瞳孔は縦に細いままで俺のように開いたりはあまりしない。瞳は俺のように金色というよりは茶色掛かった銀色のような感じだ。さらに俺と違いスッと通った鼻筋をしている。人々を惑わす絶世の美女という通りの美人だ。獣耳は耳たぶ?が俺のように薄い猫っぽい物ではなく分厚い犬や狐のような耳をしている。尻尾は俺と変わらない。ただし師匠の尻尾は俺と違って常時1m以上はありそうな長さでフリフリと動いている。毛色、瞳の色、髪の色、多少の目鼻顔立ちは個体差があるようだが大きくは違わない。基本的に妖狐種はみんな巨乳で所謂ボンッキュッボンッと言われる体型だ。出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいるナイスバディーばかりだという。師匠は巫女装束のような物を肩が出るほど着崩しているため二つのメロンが今にも飛び出しそうになっている。


 妖狐種は全ての族の全ての種から見てもかなり上位に位置する強力な種族である。ただし繁殖能力は低く個体数はそれほど多くない。九尾ともなれば特定の条件下でのみ強力な者(例えば海中に住む者と海中で戦う。満月の夜は不死身の種族と満月の下で戦う等)を除けばドラゴン種と並ぶほどの最上位クラスである。妖狐種は尻尾の数が多いほど強力で危険な者とされている。尻尾が多いほど強力なのは事実だが危険な者かどうかは個体次第なので言い掛かりである。だが九尾だけは妖狐種たちからも「災いを呼ぶ者」として忌み嫌われている。九尾は本来滅多に生まれない。とはいえ俺も師匠も九尾だ。年代は違うが俺も師匠も「災いを呼ぶ者」として種族の集まりから追放された口のようだ。師匠はすでに3000数百歳に達しており俺も1500歳を超えているらしいので1500年に一度程度しか生まれないとすれば九尾は滅多に生まれないのは確かだろう。知らないだけで他にもいるかもしれないが…。いや…人間だった俺の感覚からすれば1500年に一度なら滅多に、と言えるが妖狐種の寿命からすれば1500年では2~3代で一人は生まれてしまうことになる。それでは滅多にとは言えまい。俺と師匠がたまたま近い年に生まれたのか。それともまだ何かあるのか。詳しいことはわからない。


 妖怪族自体が不老や不死の者も珍しくない種族であり、妖狐種も長命である。200歳くらいまでは人間と比べて十分の一くらいにすれば大体歳が合うらしい。つまり妖狐の100歳は人間で言えば10歳程度、200歳でようやく人間の20歳になるくらいだ。本来の妖狐種は約200歳で大人になり成長が止まる。その後老いることなく800歳~1000歳くらいで寿命を向かえる。寿命の数年前から急激に老い最後は人間と同じような老人となり死ぬ。


 1500年以上も生きる俺の姿が幼い理由や師匠も含めて妖狐種の寿命を遥かに超えるだけの長寿な原因は神格である。神格とはその種族の頂点を遥かに超えて神に届くほどの力を持った個体が神になれる器を持つことである。神格の中でも上から下までランクがあり、師匠は下から数えた方が早いくらいのランクだと言っていた。修行を終え師匠の下から旅立った時点で俺のランクは師匠を超えていたらしい。その後さらに師匠との格の差は開いているはずなので俺のランクは相当上位になっているはずだと師匠は言っていた。


 下位の神格であろうと神格を得た時点で「神と同等」ということであり寿命を超越した存在になる。能力は成長させ続けることができるが肉体は老いない。これが原因で俺は神格を得た歳から体が成長していないのだ。神格を得たからといって無条件に即座に神になるわけではない。一番重要なのは名付けである。神になる前までの自分を捨て去り神としての名を刻む。師匠が名無しで「狐神」というのがこれである。この名付けの誓いをするとこの世界に住む全ての住人がその神の存在を知ることになる。何千年も前からいる神も、例えば今日俺が名付けをして新たな神になっても自然と全ての住人が知ることになり同じ神として扱われることになる。


 そして俺のこと。先述の通り俺は「混ざって」いる特殊体の上に九尾の狐であり「災いを呼ぶ者」として妖狐種の集落から追い出されたらしい。追い出された「アキラ」は「狐神」の居場所を探し当て弟子入りする。その時の年齢が推定50歳前後。集落からどこをどう辿ってここに行きついたのかは俺にはわからないが人間で言えばたった5歳の子供がここまでやってきたのだ。それから師匠の下で修行に励み、たった80年くらいで神格を得るまで成長する。この時点で老化が止まる。つまり成長も止まってしまった。これは師匠も誤算だったらしい。まさかたった80年やそこらで自分と変わらないほどまで成長するとは思ってもみなかったのだ。


狐神「いやぁ~。まさかそんな歳で神格を得て成長が止まっちゃうとは思ってなかったんだよ。そのことで怒って出て行ったのかと思ってたんだ。なんせ妖狐種はみんなないすばでぃーだからねぇ。アキラだけそんなナリじゃあね…。」


 とは師匠の談である。


 それはともかく、その年齢の最小~最大を考えると130歳~150歳くらいの間には神格を得て今の姿のままとなってしまったわけだ。人間で言えば13歳~15歳くらいの見た目…。姿形から考えてもだいたいそのくらいが妥当だろうと思う。その後20年ほどさらに師匠の下で修行に励み、師匠の下を去る。その時点ですでに師匠を超えていたんだとか。何にしろ50歳くらいでやってきて100年ほど修行して出て行った。出て行った後は1350年くらいもの間、何の音沙汰もなし。神格は得ているはずなのに名付けの誓いで新たな神が誕生することもない。何事かあったのだろうかと思って日々を過ごしていた中で今日突然俺がやってきたというわけだ。


 修行時代からアキラは自分のことを「俺」と言っていたらしい。だが言葉遣いは俺より荒く態度も素っ気無く礼儀もなってなかったそうだ。ただ礼儀も言葉遣いもなっていなくともひたすら修行に励んでいたと遠い目をしていた。


狐神「以前のアキラは今のようなはっきりした意識を持っているような感じではなかったよ。どこかフワフワしていたというか…。修行には真面目に取り組んで必死にやっているようだったけど、普段は何を考えているのかわからないというか、何も考えていなさそうというか…。ともかくぼーっとしてるような感じだったよ。」


 意思が希薄だった…?しゃべり方もよく似ていた。ただし前は余計なことは自分から話すことはなかったけどね。とまで言われて俺の中で何かがカチリとはまる。だがまだ確証はない。このことはまだ結論を出すのは早いだろう。


狐神「さて…ところでアキラ。」


アキラ「はい?」


狐神「さっきからずーっと私のおっぱいばっかり物欲しそうに見て。おっぱいが恋しくなったのかい?」


 ニヤニヤしながらそう言われる。


アキラ「俺は別に…、そんな…。」


狐神「まぁまぁ。暫くはここにいるんだろう?それじゃ温泉にでも入ってきな。ここの温泉は1350年振りだろう?」


 温泉!ゆっくりと温泉に浸かって、肉体的にはさほど疲れていないが疲れを癒したい。しかし…。まさかこれほど早くこんな難関がやってくるとは思ってもみなかった…。


 敵を殺す覚悟なら最初のゴブリンの頃からできている。それは人間だろうと同族だろうと敵なら容赦はしない。…だが、少女の体でお風呂に入る覚悟はまだできていなかった…。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ