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転生無双  作者: 平朝臣
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外伝1「妖狐の里3」


 一体どうしたらいいんだ?そもそも何でアコが俺に求愛なんてしてんだ?こいつはドMか?


 前回あれだけボコボコにした俺に求愛してくるってまたボコボコにして欲しいとかそういう扉を開いちゃったのか?


 それにナコよ。尻尾を絡め返したら受け入れた合図だって受け入れる方は説明してくれたけど断る場合のことを言ってないぞ。断る時の方法も説明してくれ………。


 どうしたらいいのかわからず俺はただ呆然とアコを見ることしか出来ない。アコはまだ知らん顔してそっぽを向いてるだけで何を考えてるのかさっぱりわからない。


 これはあれか?俺が受け入れたら晒し者にしたりするつもりなのか?


 何かそこらのいじめるつもりの奴にラブレターとか送ってそれを皆で観察して晒し者にする。みたいないじめを地球の漫画等で見たことがある。


 妖狐にとっては妖狐同士は禁忌だそうだし、俺が受け入れたらそれをダシにからかうつもりなのか。それならあれだけボコボコにした俺にこんなことをしてくる説明にもなる。


玉藻「(はぁ…、アキラってばもぉ……。なんてニブチンなんだい……。)」


アキラ「ん?」


 今玉藻が何か言ったか?とか言ってる間にアコの尻尾がソワソワと動き出し俺を撫でたりし始めた。これはあれか?催促されてるのか?でもアコの方を見てもやっぱりそっぽを向いたまま知らん顔を通してる。


アキラ「………何かお呼びじゃない客が来たみたいだぞ。」


 それよりも何者かがこの妖狐の里に接近してきている。結構前からこっちに向かってきてるのはわかってたけど、途中でどこかへ行くかもしれないと思って今まで黙って放ってた。けどある気配がずっと一直線にこの妖狐の里に向かってきてる。ここまで一直線に近づいてきてたらもうこの相手の目的地は妖狐の里にしか思えない。


 放っている神力が天力であることから相手は天津神、太陽人種とわかる。しかし俺はほとんどの太陽人種と会ったことがありその気配を知っているがこの相手は知らない。どうやら俺が今まで会ったことがない相手のようだ。


 その力は巧妙に隠されており、見せ掛けは第七階位、本気で第五階位程度に見えるように偽装されている。つまり俺達が昔旅をしていた時に能力制限した上で神力を隠していたのと同じだな。


 しかし俺からすればその程度の偽装など意味はなくこの相手の本当の力がよくわかる。それは第二階位でも最上級に達しそうなほどの力だ。まだこんな力を持った者で俺も知らないような奴が在野でいたなんてな。


 もしこれほどの相手と戦いになれば海人族でも一握りの者しか相手にならないだろう。こいつが何者で何故ここに向かっているのかは知らないけど俺達がいる間に面倒事に巻き込まれてしまったようだ。


 いや、逆か?俺達がここにやってきたからこいつを呼び寄せてしまったのか?


 だとすれば誰が狙いだ?今回は俺達は嫁十人と愛妾四人しか連れてきていない。もう俺達に護衛なんて必要ないし世の中も平和になったから新婚旅行も兼ねて嫁と愛妾だけで行くと言って出て来たからだ。


 そこへ向けて天津神がやってくるということは、同じ天津神のシホミかウズメが狙いか?それか俺自身か、この三人くらいしかこの相手のターゲットになりそうな者は思いつかない。


 ともかくこの相手は嫁達でもあまり油断していい相手じゃない。一応備えておく方がいいだろう。


アキラ「皆気付いてると思うけど随分強い奴がここに一直線に向かってきてる。嫁達には尻尾を渡しておくからオルカの安全に気をつけてくれ。……あとはまぁ、この里も一応守るように気をつけよう。」


 嫁達は俺の尻尾を使えば第一階位を突破しているのでこの程度の相手に負けるようなことはない。傷一つつけられないだろう。


 そもそも第一階位を突破してしまえば、他に基準を示すものがないのでどれほど上でも第一階位以上という説明しか出来ない。


 俺の尻尾を使ってる嫁達なら第一階位をちょっと抜けたとかそんな程度じゃなくて、第一階位の者を何百人相手にしても余裕なくらいには突き抜けている。


 それに玉藻やガウのように元々能力の高かった者はこの数年でさらに力を増している。俺の尻尾なしでもこの相手と十分戦える者もちらほらいるレベルに達してる。


 愛妾達だって五龍神であるハゼリやブリレ、それに元々天津神で強かったウズメもそうそう遅れは取らないだろう。


 一番の問題はオルカだ。オルカも決して弱くはない。すでにオルカに勝てるのは海人族の上位の者くらいしかいないほどにはなっている。


 でも今回は相手が悪い。この相手ではオルカは殺されてしまうだろう。だから俺は先手を打って嫁達にこちらから尻尾を渡したのだ。


 全員で守ればオルカも、まぁついでに妖狐の里も被害を出さずに守れるだろう。妖狐の里はそれほど重視していないがオサキは可愛いからオサキのためにこの里も一応守ってやることにする。


 やっ…、別にあれだぞ?女の子達にキャッキャウフフで接待されたからとかが理由じゃないからな?またこうして可愛い妖狐達に囲まれて接待されたいとかそんなんじゃないんだからね!


アコ「はれっ?!アキラ様っ!尻尾はどうされたのですか!?」


 俺の尻尾が突然消えたことで俺の尻尾に自分の尻尾を絡めていたアコは困惑しているようだ。絡めていたはずの尻尾がなくなってソワソワと俺の尻を撫で回して尻尾を捜している。


 しかし根元からまるまる完全に尻尾がなくなってる俺の尻をいくら捜しても見つかるはずもない。俺の尻を撫で回しながらアコが驚いて立ち上がる。


 そしてその拍子に幻術が解けてテーブルの下を通って俺の尻を撫で回しているアコの尻尾が全員から丸見えになった………。


ナコ・マコ「「………アコ様。」」


 ナコとマコが何か生暖かい目でアコを見守っている。


妖狐達「「「「「………。」」」」」


 他の妖狐達も何か微笑ましいものでも見たような顔で皆がアコに注目した。


アコ「………あっ。やっ…、これは…、ちがっ…。違うんです!」


 それに気付いたアコが次第に真っ赤になってアワアワと何か言い始めた。でも違うと繰り返すだけで何の意味もなさない言葉を繰り返しているだけだった。


ナコ「いいんですよアコ様。ここにいる皆は禁忌を犯してもアキラ様と結ばれたいと思う者ばかりなんですから。いえ、むしろもう妖狐同士が禁忌だなんて思ってないんですよ。」


マコ「アコ様可愛いっ!」


アコ「ああぁぁっ!違うんです!違うんです!」


 何がどう違うのかは説明出来ていないが違うと繰り返しているアコはとうとう両手で顔を覆ってフルフルと頭を振り始めた。思いのほか可愛い。


 まぁオサキの娘だからな。オサキがあれだけ可愛いんだからアコだって前回のことを考慮せずにただその姿だけを見れば可愛いのは当たり前だ。


 オサキの若い頃もこんな感じだったのかなぁ…。その頃のオサキと出会っていれば押し倒して俺の女にしてたかもしれないなぁ…。


 や…、だからって代わりにアコを押し倒して俺の女にしようなんて思ってないぞ?そりゃ今後アコと何もないとは言い切れないけど、それはオサキの代わりとしてじゃない。アコを好きになって愛したらの話だ。


 何で急にそんなことを言い出したのか?それは俺がいくら鈍い恋愛音痴だったとしても今のアコの様子を見れば本当に俺にアプローチして必死の思いで尻尾を絡めて求愛してたことくらいわかったからだ。


 何でアコやナコやマコが俺にそんなに懐いているのかはよくわからないけど、本当に俺にアプローチしてきてることはわかった。


 一度目の争いという場合は俺は大体目を瞑って許す。何故なら最初はお互いのことをよくわからずに仲違いしている場合があるからだ。だからそうして一度争って決着をつけた後で仲直り出来るのなら俺はそれを許すことにしている。


 ただし二度目はない。一度お互いをわかりあったはずなのにそれでも敵に回るというのなら俺はその相手に容赦しない。


 だからアコ達や妖狐達が前回俺達と少しとは言え争うことになったのはもう許している。それでもなお俺と敵対する道を選んだのなら次は遠慮なく殺す。


 そしてアコ達はもう俺と敵対することをやめたと今回示した。だから俺から妖狐達に敵対したり攻撃するようなことは金輪際ない。もちろん裏切って敵対すれば即座に滅ぼすけどな。


 その上で俺に好意を持ったからとしてこうやってアプローチしてくるというのならそれを無下に扱おうとは思わない。


 お互い好きになって結ばれるかどうかはともかく、きちんと向き合って答えを出す。だからアコが俺に好意を寄せていて本気で他の何を捨ててでも俺と結ばれたいというのなら俺もそれを真剣に考える。


 今までの俺ならもう嫁はいらないとか、これ以上愛妾を増やさないとか言ってた。何故それがそんな風に変わったのかと思うだろう。


 俺だってただ来る者拒まずで愛妾をどんどん増やそうと思ってるわけじゃない。きちんとお互いに向き合って確かめ合って、それで愛し合っていると思えば迎え入れることも吝かではないという風に方針転換しただけだ。


 それは先の戦争でそういう者達と向き合わず俺が逃げて流している間に命を落としてしまった者が大勢いたからだ。


 俺がその相手と真剣に向き合って考えた結果、俺の嫁や愛妾にしないのは仕方がないと思ってもらうしかない。


 だがその相手と向き合うこともせずに、ただこれ以上嫁や愛妾にする気はないと言い訳して逃げ回るのは相手の気持ちに真摯に向き合っているとは言えない。


 だから俺はそんなことが今後ないように、本気で俺に想いを寄せる相手にはきちんと向き合うことにした。


 もちろんただファルクリアの女神への憧れだとか、そこらを歩いてる時に見かけだけで選んでナンパしてきた相手とか、そんな程度の想いにはいちいち応えない。


 俺が向き合っても良いと考えるのはもっと真剣な、それこそ今の自分の全てを捨ててでも俺と添い遂げたいというような本気の気持ちを持つ者だけだ。


 アコ達がそれほどの気持ちを持っているかどうかはまだわからない。ただアコの立場からすれば皆に知られたら大変なことになると思って幻術で尻尾を隠して俺の尻尾に絡めていたんだろう。


 少なくともそれくらいの危険を冒してでも俺にアプローチしたいというくらいの気持ちは持っているということだ。


 まぁ他の妖狐達はもう妖狐同士を禁忌と思ってないらしいから、無理に隠す必要はなかったみたいだけど………。


 それはいいか。それよりも今はこちらに近づいてきている天津神のことをどうにかしよう。アコとならそれからでも話し合えばいい。


アキラ「それよりも何か強い奴がここに向かってきてる。争いになったら危険だから警備や門番をしている者を下がらせろ。俺と嫁達が相手の出方を窺う。」


 俺も立ち上がって妖狐達に指示を出す。その言葉を聞いても妖狐達はまだポカンとしたままだ。どうやら敵の接近に気付いてないようだな。敵かどうかはまだわからないけど………。


オサキ「姉上の言われた通りにするえ。」


アコ「あっ…。はい…。」


 オサキが指示したことでポカンとしていた妖狐達も動き始めた。何か敵らしき者が接近中だということは伝わったようだ。


アコ「……私も前に出ます。ここは妖狐の里です。アキラ様だけにお任せするわけにはいきません。」


 他の者に指示し終わったアコが俺の前にやってきてそう言った。どうやら本気のようだ。その心意気は買うがアコじゃこの敵とは戦いにすらならない。


アキラ「わかった。ただし俺達の傍から離れるなよ。」


 でも俺はアコの提案を受け入れる。アコが言う通りここは妖狐の里だ。誰かに守られるだけで隠れているようでは妖狐の未来はないだろう。


 例え敵がどれほどの相手でも、自分達のことには自分達が参加して決めて行動しなければならない。結果的に相手に降ることになったとしても自分達の矜持も示さないようでは種として終わってしまう。


アコ「はいっ!」


 にっこり良い笑顔で元気に応えたアコは、前回とは同一人物とは思えないほど可愛らしかった。



  =======



 全員を里に下がらせて俺達は里の外へ展開する。俺を先頭に魚鱗のように嫁達が左右後方に並ぶ。そしてその後ろには愛妾達が待機し妖狐の里の前面を俺達が守る。オサキは愛妾達と同じ場所で他の妖狐達より前に立っていた。


 アコは俺の隣で最前線に立っている。多少の危険はあるかもしれないけど俺の横ならまず安全だろう。そもそも俺はジョーカーすぎるから、気に入らないことがあったら時間を巻き戻すなり、相手の存在そのものを過去に遡って消滅させたりとやりたい放題出来る。


 さすがにそこまで干渉したら最高神もうるさいし俺だってそこまでする気はない。そんなに好き勝手に干渉したら俺が思いのままに操っているだけの世界になってしまう。それでは最高神に怒られる以外にも俺だって楽しくない。


 全てが自分の思いのままで誰も自分の気に入らないことや予想外のことをしない世界。それが一体どれほどの退屈であるのか。それではただ一人遊びをしているのと変わらない。


 世界は主義主張、思考思想の違う他人と接するからこそ面白い。それが原因で争いになることもあるだろう。一時的に仲が良かったとしても考えの違いで仲違いすることもあるだろう。でもそれが世界だ。ただ全てが俺の言う通りになり思い通りになる世界なんてつまらない。


 だからアコの安全は俺が守るが、もしここで何か起こったとしても俺は世界に干渉してその過去を改変したりはしない。そう…。例え嫁達の誰かが死ぬ未来だったとしてもだ。


 だからこそそうならないように守りたいものは全力で守る。その決意でここへと迫ってきていた者の到着を待つ。


 ちなみに俺達も今は力を偽装しているから第一階位を突破してるような神力を垂れ流しにはしていない。ただしそれは能力制限とは違うので制限を解除しなければ全力を出せない前までとは違う。


 あくまで力は持ってるが敵に表面的に読まれる力を偽装して下げているだけだ。それにより俺達は全員が第五階位程度に見えているだろう。


???「………なんだ。知っているのはウズメだけか。」


 かなりの速さでここに到着したにも関わらず完全に衝撃を殺して静かに降り立った。それだけでこの相手が相当の手練れだとわかる。


 そしてどうやらウズメとは顔見知りみたいだな。ウズメもあんなに若い娘に見えるけど実際にはシホミより年上でかなりのご高齢だ。それを言ったら『ハハハッ』とか笑いながら裏でこっそり落ち込んでたりするから禁句だ。


 何しろアメノウズメはアマテラスの岩戸隠れの頃から出てくる古い神だ。登場順としてはアマテラスとスサノオの誓約うけひで生まれるアメノオシホミミの方が先だが、その時生まれた子供と岩戸隠れの時に成人している者とではウズメの方が年上だったとしても不思議じゃない。


 まぁ誓約と岩戸隠れの間に実際に何年の時間があったのかわからないし、日本の八百万は生まれた瞬間から大人の可能性もあるから何とも言えないけど、少なくともこの世界ではウズメの方が年上ということになっている。


ウズメ「あんた………、ミカボシ………。まさか生きてたん?」


アキラ「………アマツミカボシ?不順まつろわぬ神か。」


ウズメ「えっ!ご主人様知ってはるん!?」


 いや…、知りません。少なくともこの世界のミカボシという者がどういう者なのかは知らない。こっちの世界は微妙に地球とは違うからな。シホミも女になってるし………。


 地球の話では高天原にいた天津神が葦原中国を国津神から譲り受ける。それを葦原中国平定という。ただし当然ながら全ての者がそれに従うわけではなく不順まつろわぬ神々という者が現れ、中には征伐され、中には懐柔され徐々に纏め上げていくという話だ。


 アマツミカボシもその不順わぬ神々の一柱であり最後まで抵抗した者として知られる。名前が同じだから地球の知識でそうかと思っただけにすぎない。


ミカボシ「如何にも。俺がミカボシだ。」


 ミカボシがドンッと一歩前に出る。かなりの巨躯で結構ムキムキで初老の武骨な武将のイメージそのままのような人物だ。力はまぁさっき言った通り。タケミカヅチともうまくすればそこそこ戦えそうなほどの鬼神だな。


アキラ「で?不順わぬ神が一体何の用があってこんなところにやってきた?」


ミカボシ「ふんっ。知れたことよ。のこのこと天津神がやってきたからその首を狩ってやろうと思っただけのこと。しかし女子供ばかりとは……。」


 この場で天力を持ってるのは俺の尻尾から天力を貰ってるガウとシホミとウズメくらいだからな。俺も出そうと思えば虚無から何の力でも出せるけど今は天力は放っていない。


アキラ「世界ではもう戦争は終わった。何故天津神を狙う?」


ミカボシ「何が『戦争は終わった』だ!スサノオ様を裏切り殺した薄汚い天津神などこの世界に存在する場所はない!」


 あぁ…。ふぅん。こいつはスサノオ派だったわけか。なるほどね。


 それで裏切り行為を働いた天津神が許せないと?それじゃ俺の尻尾の影響で暗黒力を放ってるミコも対象か?それに月のチャクラの影響があるキュウも暗黒力を放っている。天津神を狙っているのならこの二人も狙われそうだ。


アコ「それでは我々妖狐の里には用はないと?」


 そこへアコが割って入ってくる。自分達の命に関わることだからそれを確認しておくのは当然と言えば当然だろうな。


ミカボシ「確かに妖怪族になど用はない。だが天津神に与するというのなら話は別だ。この里ごと全員消し去ってくれよう!」


 そこまで言うと突然神力の偽装を解いて第二階位の力を放ち空に飛び上がった。そして両手に天力を集める。


アコ「なっ……。何ですかこれは……。」


 アコは神力を解き放ったミカボシの力がある程度は理解出来るらしい。あまりに力量差がありすぎると相手の力を理解出来ない者もいるからな。


 ………それにしても結構洒落にならない威力だな。さすがは星の神様ってところか。俺達がいなければ辺り一帯どころか北大陸も消滅するぞ。そしてそれでもまだミカボシは本気じゃない。なにしろこのクラスの神が本気で暴れたら世界が滅ぶレベルだからな。


 世界を滅ぼす気はないのと俺達の力が偽装によって弱く見せられているからこれで十分だと思ったのだろう。っていうか十分すぎるからな。大陸一つ消滅したら世界は大混乱だ。


ミカボシ「消え去れ!」


 ミカボシがそれを下にいる俺達に向けて放つ。そして放つと同時に光の速さで脱出を図った。この程度の自分の力で怪我を負うことはないだろうが、わざわざ巻き込まれたいものでもないだろう。


 さて…、ミカボシはいなくなったがこれはどうするかな。防ぐのは簡単だが一体どうしようか。


 世界に影響が出ないように俺が全て虚無にでも飲み込むか?あるいは俺がファルクリアの守護者なのだからファルクリアに力を流し、ツクヨミ、スサノオと戦った時のように世界全体を包み保護するか?他にも通常の結界を張るという手もある。この程度の威力など普通に防ぐことなど容易い。


 しかしどの方法を取ってもやらかしそうな気がする。何をか?それはもちろん俺がファルクリアの女神だと露見することだ。


 どうしても絶対隠したいというわけでもないけど、ほいほいそこらの人に教えたくもない。そんなことが世界で出回ったら気軽に旅行も脱走も出来なくなる。おっと…。脱走じゃなかった。気分転換のお出かけだ。


 ともかくあまり知れ渡っても俺が困るのは目に見えている。だから可能な限り余計な者には知られたくない。簡単に言えば嫁や愛妾や仲間と一部の海人族の者だけでいい。他に流れたらたちまち広まりかねない。


玉藻『隠したいなら私ら全員で結界を張ればいいさ。アキラ一人で防いだらバレそうで嫌なんだろ?全員で何とか防いだ風に装えばまだマシだろう?』


 玉藻から念話のようなものが届く。厳密には一体になった魂で話しているから普通の者達が使う念話やそれに類する能力とは根本的に違うけどな。でも俺達しか出来ず俺達しか知らない方法だから特に名前のようなものはない。だから念話のようなものという言い方しか出来ない。


アキラ『そうだな…。それじゃ全員で結界を張ろう。あまり力は出しすぎるなよ。それと形状は普通の半球状じゃなくすり鉢状にして威力を上に逃がす。』


全員『『『『了解!』』』』


 半球状に結界を張れば結界の内側は守れるが結界の外に被害を出してしまう。だから逆向きに攻撃を囲んで攻撃の威力を上空へと逃がすことで周囲への影響もほとんどないようにすることにした。


 上空に派手に威力が拡散すればミカボシも俺達が死んだと思ってそのままどこかへ行くかも……、しれない……?すればいいなぁ…。倒すのはわけないがあまり派手に暴れたくはない。


 それにミカボシの言葉通りだとすればミカボシはスサノオ派でスサノオのためにこんなことをしているということになる。


 そんな奴を殺したいとは思わない。出来れば話し合いで何とか纏めたい。ただし俺の嫁や愛妾や仲間達に手を出してくるというのならもちろん殺す。守るべきものの優先順位を間違えてはいけない。


アキラ「全員で結界を張って凌ぐぞ。」


ウズメ「は~い。」


 うん。何か俺達緊張感なさすぎ。アコもミカボシの力やこの攻撃を見て驚いていたのに、今は俺達の方を見ながら違う意味で驚いた顔をしてる。


アキラ「全員力を合わせろ。いくぞ。」


 俺の言葉に合わせて全員がほんの少しずつ力を出す。そうして集めた力ですり鉢状の結界を張ってミカボシの攻撃の威力を空へと逃がしながら凌いだのだった。



  =======



 上空へと逸らした威力が派手な音と振動を撒き散らしながら世界に広がっていった。これだけの威力なら世界中で今の衝撃が観測されただろう。


アコ「きゃっ!」


 振動と衝撃でよろめいたアコが俺の方に倒れてきた。結界を張ってる風を装うために手を上げていた俺にアコが抱き付いてくる格好になる。


アコ「……え?あっ!」


 顔を上げて俺に抱き付いていると気付いたアコは一気に真っ赤になった。


アコ「あぁ…。これがアキラ様の胸。お母様もこれほどのものにあんなに甘えていたんですね。あぁ良い匂いがします。柔らかい。」


 何かうっとりした顔でますます俺の胸の谷間に顔をつっこんでクンクンまでしてやがる。ちょっとくすぐったいからやめれ。


アキラ「おいアコ。勝手に匂いを嗅ぐな。それから谷間に顔を突っ込むな。」


アコ「あぁアキラ様。もうこんなチャンスは二度とないかもしれません。離れません!離れませんとも!」


 おい…。離れろよ………。何かキャラ崩壊してるぞ。お前はそういう奴じゃないはずだろう………。


 完全に俺にぎゅっと抱きつきながら甘えてくる。何か俺の方もクラクラしちゃうだろうが…。俺は女に弱いんだからあまりそういう誘惑はやめてくれ…。すぐに愛妾にしちゃうから……。


 アコを引き離したいけどまだミカボシの攻撃が暴れ狂ってるから結界を張ってる俺がアコを引き剥がすのに動くわけにはいかない。


 本当は俺の能力なら別に結界を張りながら自由に動けるけど、皆の力を集めて精一杯の力で結界を張ってる体になってるからアコと戯れてたら周囲からおかしいと見られてしまう。


 ミカボシの攻撃の衝撃が消えるまで散々アコに俺の体を弄ばれたのだった。



  =======



 ミカボシの攻撃を凌いだ後で皆で集まる。もちろんまだ時間的にはそれほど経っていないし里の入り口の前でのことだ。


 まずミカボシはあれで終わったと思ったのか戻ってくる気配はない。というより表面的に探れる範囲ではミカボシの気配そのものがない。一体どこへ行ったのか…。普通世界中のどこにいてもその存在を感知出来る俺達ですら見つけられないのはおかしい。


 何らかの能力によるものか?あるいは本当にこの世界のどこにもいないのか?何にしろ今の状態のままじゃ俺達にはミカボシがどこにいるのか見つけることは出来ない。


 なんてな。もちろん俺が本気になればミカボシを見つけるなどわけはない。ただそういうチート能力は極力使わないのがお約束ってものだ。


 ミカボシくらいなら世界存亡の危機とか、外宇宙からの侵略みたいな話というわけじゃない。ただのこの世界に住む者同士の争いでしかないのだから、この世界の創造神であり管理者でもある俺があまり過度に介入するのは良くないだろう。


 今回のように俺の周りに何か仕掛けてくるのなら相応の力で対処するが、チート能力全開にして滅茶苦茶にするというほどのことじゃない。


アコ「あぁ~…。アキラ様ぁ…。」


 ………それからアコがおかしくなった。俺にべったり抱きついたままふにゃんふにゃんになってる。もう誰に見られてるとか完全に忘れ去って俺の胸に顔を埋めたままゴロゴロと甘えてくる猫のようだ。


ナコ「アコ様………。可愛いっ!」


マコ「アコ様いいなぁ…。アキラ様!私も後で抱き締めてください!」


 敵が去ったから脅威はなくなったと思ったのかナコとマコが後ろに隠れてた妖狐達の中から飛び出してきた。


 それから目に入ったオサキの顔は完全に『計画通り!』みたいな顔になってた。もしかして俺って今回もまたハーレム推進派のどっかの誰かさんに嵌められたんじゃないんですかねぇ?


玉藻「はめたなんて失礼だね。」


 あぁ…。俺は誰なんて言ってないのに犯人が自白した。語るに落ちるとはこのことか。どうやらそういうことらしい。この旅行と里帰り自体が誰かさんの罠だったんだな………。



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