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転生無双  作者: 平朝臣
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外伝1「妖狐の里1」

 遅くなりました。少しだけ更新します。詳細は活動報告をご覧ください。


 先の戦争からもう三年が経っている。最終的に一年度毎に一人と結婚式をすることになってまだ玉藻、ミコ、フランとしか結婚式を済ませていない。その理由はガウの件があるからだ。


 本来なら魂の繋がった順ということでガウと一番最初に結婚式をすることになる。だけど俺がガウはまだ幼すぎるということで成長するまで待つという決定を下した。


 そこで他の嫁達が話し合って一年度毎に一人。全員が回るまで十年かけようということになった。玉藻が言うにはあと十年もあればガウも俺が納得するくらいには成長するだろうという話だったからだ。


 他の九人が連続で結婚しているのにガウだけ何年も離れていては可哀想だろうということで、その十年を待つ間に皆が順次結婚式をするということで落ち着いた。


 もちろん結婚式をしたかどうかなんて俺の愛には影響しない。結婚式が済んだ嫁もまだの嫁も皆愛している。ただの節目というかお祝いというかそういうことで結婚式をしてるだけだ。


 大体俺が結婚したからって世界中が休日になってこれから未来永劫、祝日扱いとか意味不明すぎる。それじゃ俺が日を変えて365人と結婚したら一年中祝日か?ということになるだろう?


 それに本当にあとたった十年でガウがそれほど成長するのか?という疑問もあった。ガウと出会ってから旅をして先の戦争まで二~三年も時間があったのにガウはほとんど成長していないように思えた。


 それなのにこの三年でガウは見違えるほど成長したのだから驚きだ。もちろんまだ小学生低学年、いや、中学年くらいか?まぁ細かいことはいいけど、まだまだ子供であることに違いはない。だけど前の数年成長してなかったように見えたのは何なのかと思うほどに成長している。


 このペースで成長すれば確かに十年目、最後に十人目としてガウと結婚式をする頃くらいには高校生くらいにはなってそうだ。それくらいになっていれば俺も断る理由はない。何しろ今でも成長したガウに誘惑されたら……ゲフンゲフン!


 いやいや…。俺は決してロリコンじゃない……。そんなことあるはずはない。今目の前に見えてる眩しい太ももに欲情してるなんてことはない。たぶん……。


ガウ「がぅ~…。がぅ~…。」


アキラ「ちょっと前までは天使の寝顔だと思ってたのに………。」


ミコ「え?今は違うの?今でもこんなに可愛いのに?」


 ミコが俺の呟きを聞いて一緒にガウを覗き込みながら問い返してきた。


 今俺はカムスサの執務室の椅子に座って書類を片付けている。海人族のこと以外にも、火の精霊王もまだ譲ってないから俺のままだし、ドラゴニアからも俺宛に報告書が届くから三倍大変だ。


 俺の膝の上に座ってガウが眠っている。その寝顔はまさに天使の寝顔だ。だけど俺にとっては違う。


アキラ「あぁ…。天使どころか小悪魔の寝顔だ……。たった三年でこんなに小悪魔に育つとは…。」


ミコ「あぁ………。そういうこと……。」


玉藻「あっはっはっ!十年も必要なかったかね?アキラがガウを押し倒すのもそう遠くないね。」


 俺が仕事をしてる間は遊べないから皆と遊びに出かけてた玉藻が戻ってきたようだ。ぞろぞろと皆を引き連れて部屋へと入ってきた。


アキラ「それにしても成長しすぎでしょう…。」


 もうガウの身長はフランとあまり変わらない。いずれルリに追いつき、ミコに追いつき、俺にも追いつき、今は一番大きい玉藻ですら追い抜くだろう。何しろもう成長した姿を見ちゃってるからな……。


玉藻「ガウの心が影響してるんだろうね。」


アキラ「え?心?」


玉藻「ああ。妖怪族は何かと普通の生物とは違うからね。成長だって想い次第で変わったりしても不思議じゃないさ。」


 ふむ…。まぁ妖怪族は何でもありだからそのこと自体は別にいい。でも想いってどういうことだ?


玉藻「つまりね。最初の頃はアキラが幼いガウを可愛がってたから成長したくないって想いが強くて暫く成長が鈍かったのさ。そして今は皆が次々女として愛されてるのにガウだけ幼いままじゃ困るから成長したいっていう想いが強くなって成長してるのさ。」


アキラ「なるほど……。それはいいけど心と会話するなよ。」


 俺は何も言ってないのに勝手に心で思ったことに返事をされても反応に困る。


玉藻「アキラが心を垂れ流しにしてるからだろう?さっきガウに欲情してたのだって嫁達には全部流れてたよ。アキラの方が主導権を持ってるんだから嫌ならある程度心が流れないようにすればいいじゃないかい。」


アキラ「う~ん…。それはそれで嫁達に隠し事してるみたいで嫌だし……。」


玉藻「だったら諦めるんだね。それに今更だよ。あっはっはっ!」


 まぁそうか。今更だな。もう俺の心の秘密まで全部フルオープンだからな。


玉藻「それより私の使い魔からある情報が入ってね………。」


アキラ「ん?何だ?」


玉藻「それはね………。」


 この情報がもとで俺達は思わぬ騒動に巻き込まれることになったのだった。



  =======



 戦争が終わって三年。世界はすっかり平和になった。とは言ってもそれは俺の身の回りだけと言われればその通りだ。


 例えばまだ一番戦火が広がってるのは南大陸だろう。ティーゲ達が旧大樹の民の領土を再度まとめるために統一戦争真っ最中だ。


 この三年でほとんどの領土を併合したから、旧大樹の民の領土を全て占領するまで、このペースならあと一年もかからないだろう。


 ただ占領したからと言って終わりではなく、真に併合して支配するまでには時間がかかるから、国として完全にまとまるまでにはあと二年というところだろうか。


 ティーゲ達はあまり強くないから結構苦戦もしたみたいだ。ただ何故か奴らはガウの似顔絵と『ラヴガウラヴ!』と刺繍された旗を掲げると途端に強くなる。その旗が翻っている時は常勝無敗。全ての重要な戦争に勝っている。


 ティーゲとティーゲの親衛隊曰く『ガウ様が見ている前で無様な戦いは見せられないから』だそうだ。そんなことで強くなれるのなら、その旗が出ていない時も本気を出しておけよとは思うが……。


 それにこいつらの最近成長著しいガウを見る目がやばい。完全に異性として意識している顔だ。ガウの生足とか見てハァハァ言ってるからな。……あれ?それって俺も人のこと言えないんじゃ…?いや…、気のせいだ。俺はロリコンじゃない。


 ともかくこの三年でほぼまとまり収束しつつあるとは言っても南大陸はまだ戦争が続いている。


 東大陸もファングが滅亡してからは何かと騒動が起こっている。特にドラゴニアに併合されることを反対している一部の旧ファング国民であった魔人族がゲリラやテロリストのようになって活動している。


 こちらは南大陸のような大規模な戦争というよりは個人単位レベルのテロが主体となっている。


 全ての者が納得する解決策などないだろうが、ドラゴニアの呼びかけにも応じず話し合いにもならずにただテロ活動を繰り返す者達はどうにかした方が良いかもしれない。


 ただ、俺なら全世界の全ての生物、いや、無生物であってもありとあらゆる全てのものを把握しているけどファルクリアの神である俺が、ファルクリアに住む者達にあまり過度に干渉しすぎるのも良くない。


 俺はあまりそういうことも気にせずやりたいようにしているけど、あまりやりすぎると最高神とかがうるさいからな。


 あとはやはり中央大陸だろうか。ガルハラとウルは安定しているが旧バルチアと旧アルクドは今でもまだ荒れている。


 大規模な反乱が起こっているとかテロ活動が盛んというわけじゃないけど、あちこちに盗賊や奴隷商人が跋扈ばっこしている。


 ガルハラの警備部隊でも十分抑えられるようなことでしかないけど、旧バルチアとアルクドの国民は全員が犯罪者予備軍で誰が突然犯罪に走るかわからないから警備の手がとてもじゃないが足りない。この旧二カ国の安定が訪れるのはまだまだ先になるだろう。


 西大陸の精霊族四カ国はポイニクスとエアリエルが結ばれることを機にこれから一つに纏まろうとしている。すぐに全てが纏まるわけじゃないけど徐々にでもそういう試みがあるのは良いだろう。地球にあった共同体が連合になってから崩壊したようにならなければ良いなとは思う。


 北大陸はサタンが引退して皇帝をマンモンと交代した。元々一国で北大陸を支配していたので皇帝が交代した所で大ヴァーラント魔帝国の安定は変わらない。


 それから欠けた将軍には新たに若い世代が取り立てられたようだ。ただその若い世代が何かと問題児のようだがそれは俺の知ったことじゃない。


 ふむ…。こうしてみるとやっぱりまだまだ問題は山積みか。でも何の問題も起こらないなんてことの方があり得ない。だからこれくらいなら平常運転なのだろう。


 海人種はもう完全に俺に従っているから何の問題もない。太陽人種はアマテラスとシホミが中心となって纏めて俺に協力しているからこちらも問題ない。


 月人種は表面上は大人しいからこれで全て問題はないように見える。ただ本当に何の蟠りもなく俺に従っているかどうかはわからない。


 特に月人種からは嫁をとっていないから何かと問題になるはずだってヤタガラスもいつも言っている。


 シホミとは最初は政略結婚の意味合いが強かったけど今ではまぁ…、あれだ。シホミは素直で夫を立てるタイプだし最近はどんどん色っぽくなってきてるし嫌いになる理由はない。


 ちょっとお嬢様育ちの箱入り娘だから常識や世情に疎いことがあるくらいかな。でもそれがまた天然で可愛いところでもあるから必ずしも悪い点とも言えない。いや、むしろ可愛い点ということになってしまう。


 そんなことを考えながら皆で歩いてると目的地が見えてきていた。界渡りで転移すれば一瞬なのに何で歩いているのか。それは色々と理由がある。


 まず何でも『転移でポンッ』じゃ味気ない。俺は旅をするのも結構好きだから自分の足で歩いて回るのも好きだ。


 それに今回は新婚旅行みたいなものも兼ねているらしい。最終目的地自体はあまり旅行で行きたい場所じゃないんだけど、行き帰りにあちこちを観光して行く計画らしい。


 もちろんこんなことを考え出したのは地球の知識があるミコとルリだ。それで新婚旅行の話を聞いて他の嫁達も乗り気になってしまった。


 俺達ならいつでもどこでも旅行に行けるのにこんな時にこんな場所に新婚旅行も兼ねて行く必要があるのか?とは思うが嫁達がそう言うならそれでいいだろう。


 そして最後の大きな理由が俺が今回の行き先に転移したくない…、というか行きたくないからだ。何しろ今見えている目的地は………。



  =======



ナコ「いらっしゃいませ~!」


マコ「アキラ御一行様ごあんな~い!」


妖狐達「「「「「ありがとうございま~す!」」」」」


 六尾のナコと五尾のマコが俺達が入り口を潜るとすぐに声をあげた。その声を聞いて妖狐達がキャピキャピと答える。


 ………うん。これはあれだ。どこからどう見てもキャバクラです。本当にありがとうございました。


 いや、違うよ?俺は行ったことないよ?地球では未成年だったし?ただのテレビや漫画のイメージですよ?


 ともかくまるでキャバクラのような感じで女の子…、って言うか妖狐達だけど、に囲まれて奥へと案内されていく。そう。今回俺達がやって来たのは妖狐の里だ。


 玉藻は妖狐の里なんて行くのを嫌がるかと思ったけどむしろノリノリだった。一番乗り気じゃなかったのは俺だ。っていうか行きたくないと思ったのは俺だけだった。


 それでは何故そんな妖狐の里にわざわざやってきたのか?それは玉藻が持ってきた情報のためだ。


 玉藻が使い魔から仕入れた情報によると妖狐の里でオサキがハクゾウスになったと聞いた。ヤコであるはずのオサキがハクゾウスに選ばれた理由もよくわからないがとにかく確かめようということで今回妖狐の里へとやってきたわけだ。


 そして本当にハクゾウスになっているのなら、目出度いかどうかは別にして、お祝いでもと思ったのだ。何しろオサキは可愛いからな。可愛い義妹のためならあまり好かない妖狐の里にやってくるのも我慢出来るというものだ。


 世界の全てを把握してるとか言いながら玉藻に聞くまで知らなかったのかって?そりゃそうだろう。君は毎日世界中の人間どころか蟻の動きですら逐一把握して記憶してるのかね?


 俺は情報として全てのことを把握しようと思えば出来る。むしろ俺が意識しないどこかにはその記録が記憶として残ってる。引き出そうと思えば自由自在にありとあらゆる情報を引き出せる。


 だけどそれこそ世界人口だけじゃなくて、蟻も、菌も、ウィルスも、砂一粒の動きですら全て事細かに記憶されてるのを毎日全て確認したりするわけはない。


 それに色々と個人の秘密というものもある。例えば人前ではやらないけど家で一人の時は変な癖があるとか、何かの拍子に漏らしちゃったとか、色々と人に知られたくないことがあるだろう。


 そういうことを考えて俺は普段他人の行動や言葉をいちいち覗き見してはいない。意識的にわざと遮断して見ていないのだ。


 もちろん記録として残っているから後で引き出すことは可能だ。だからこうして現地までやってこなくても記録を引き出せばオサキが本当にハクゾウスになっているのか。なっているのなら何故ヤコのオサキが選ばれたのか知ることは出来る。


 でもそれじゃ俺は何の楽しみもなくなってしまう。全知全能とは実につまらない。最高神が住んでいた高次の空間に引き篭もって全てを把握して干渉して好き放題にするなんてことが出来てしまう。それじゃ元人間だった俺にとってつまらないのはわかるだろう?


 人は知らないことがあるから知ろうという思いが沸く。人は出来ないことがあるから出来るようになろうという思いが沸く。


 俺はただ世界を眺めたり思い通りにしたいわけじゃない。実際に自分で見て聞いて考えて行動したい。だから余計な情報は見ないようにしてこうして普通の者として生きているんだ。


 ちょっと話が逸れたな。俺がそんなことを考えていると先導していたナコとマコが話始めた。


ナコ「世界をお救いくださったファルクリアの女神様とは一体どのようなお方なのでしょうねぇ?」


マコ「きっととても素敵な方ですよね!」


 君達を威圧して気絶させた張本人がファルクリアの女神ですよ。


 何故この二人が俺がファルクリアの女神と気付かずにこんなことを言っているのか。それはクロで証明されている通り、例えば姿形が変わったら前のクロを知っていても黒の魔神とわからないというようなことが起こり得る。


 もちろん中にはそれとなく察する者もいるだろう。だけど基本的にはその者が何という神なのか把握して意識して見ないと気付かない。


 だから俺は世界中のどこに行っても『俺がファルクリアの女神だ!』と名乗らない限り人々に俺がファルクリアの女神だとバレることはない。


 ただ俺がファルクリアの女神と知っている者。嫁達とかに俺をファルクリアの女神と呼ばれたら他の者も俺をファルクリアの女神と意識して見てしまう。そうなるとこの世界ではその者が本当にその神であると認識されてしまうのですぐにバレる。


 世界各国の知り合い達は先の戦争で突然現れて世界を救ったファルクリアの女神なる者が俺か、少なくとも俺の関係者だろうということは把握しているだろう。


 ただ直接会って『お前がファルクリアの女神だろう?』なんて問われでもしない限りは完全に俺がファルクリアの女神だと認識されることはない。


 それとなく察している者は俺の性格もよくわかっているのでそんな追求をしてくることもない。心の中では俺がファルクリアの女神なんだろうなぁとは思っているだろうが、無理に追求してこなければ確証は得られない。


 そしてそんなことをすれば俺との関係が悪くなることを理解しているので、今のところ誰も俺にそんなことを聞いてきた者はいない。


 そんな話をしながら進んでいると崖のように切り立ってる場所に出た。そしてそこには一匹の妖狐が待ち受けていた。


アコ「ふんっ!今頃一体何しにきたの?」


 アコは俺を見ても恐れることもなくそんなことを言ってきた。前回ボコボコにしてあれだけ甚振ったのに俺が怖くないらしい。


 誰かに治してもらったのか足も顎も大丈夫みたいだな。ちゃんと動いているし歪になっているということもない。


アキラ「オサキに会いに来た。通してもらおう。」


アコ「(会いたい相手に私は含まれていないのですかアキラ伯母様!?)」


アキラ「………あ?」


アコ「何でもありません。お母様には貴女が来たら通すように言われています。いきますよ。」


 一瞬アコが何か言った気がしたから問い返したけど知らん顔して飛び上がっていった。前回は妖狐以外は上がるなって言われたけど今回嫁達も一緒で良いのだろうか?


 何も言われてないから良いことにするか。あとで文句を言われても知らん。それに俺の嫁ってことはオサキにとっても義理の姉になるのだから良いだろう。前に顔合わせはしてるけど今度は正式に俺の嫁として紹介しよう。


 そう思って全員で崖の上にジャンプしたのだった。



  =======



 崖の上に出るとすでにオサキが社の外に出て待っていた。


オサキ「おかえりなさいませ姉上。」


 オサキがちょこんと頭を下げてそんな挨拶をする。


アキラ「くそぅ…。可愛いじゃないか。」


 俺は知らず知らずのうちにオサキに近づき抱き締めていた。だって可愛いんだもん。


 そもそもこの世界の熟女は皆おかしい。何でこんなに可愛いんだ?ドロテーは人間で言えば八十歳手前くらいだっただろう。サキムは四十代後半か五十代くらいかな。あの二人も熟女なのにとても可愛くて良い女だった。


 前回会った時のオサキは五十代くらいという感じだっただろうか。それでも十分可愛かった。でも今のオサキは何かおかしい。明らかに前に会った時よりも若く見える。


 そうだな……。四十代前半くらいに見えるだろうか。三十代でも通用しそうだ。そしてやっぱり可愛い。熟女に可愛いって言ったら失礼かもしれないけど可愛いものは可愛いんだから仕方がない。


オサキ「姉上…。」


 オサキの方もそっと俺を抱き締め返してくる。チラッと顔を上げて俺の顔を見た時のオサキの顔はほんのり上気していて色っぽかった。


玉藻「オサキは妹って言っても義理なんだからはーれむに入れて押し倒しても孕ませてもいいんだよ。」


アキラ「いやいや…。そりゃそうだけどそんなことしないよ。」


 玉藻がさらっと怖いことを言った。


玉藻「ふぅん?そんなにオサキに欲情してるのに?」


 ……うん。してるね。これは誤魔化しようもない。はっきり言ってオサキは可愛い。本当に押し倒しそうになる。


アキラ「確かにオサキは可愛いけど義理でも妹は妹なんだ。オサキがハーレムオッケーなら三女神も入れろって話になるだろう?制度上は三女神だってオッケーなんだから。オサキもちゃんと妹として扱うよ。」


 そうだ。確かにオサキは可愛いしそのうち好きになりそうなくらい良い女だけど、何でもかんでもハーレムに入れれば良いということにはならない。


 現時点でも十人の嫁と四人の愛妾がいるんだからこれから何人増えても大差ない気はする。そもそもすでにキュウがツノウを俺の愛妾にしようと画策してるみたいだからな。


 そのうちツノウを愛妾に加えるかどうかはともかく今以上に愛妾を増やしても俺も嫁も問題ないとは思ってる。だけど問題ないからって手当たり次第誰も彼も入れるというのはよくないだろう。


オサキ「姉上ぇ…。」


 うぅ…。ぎゅっと俺の胸に顔を埋めて甘えてくるオサキが可愛い。これが妖狐の魅了なのか?!


アコ「お母様!このような場所でそんなことをされている場合ですか?!」


 アコが後ろからオサキを引っ張りそうな勢いで肩に手をかける。


オサキ「そうかえ?それでは姉上、こちらへ。」


 名残惜しそうにそっと手を離したオサキが社へと俺達を先導していく。こうして俺達は社で少し話を聞くことになったのだった。



  =======



 まず話を纏めておくとやっぱりオサキが今代のハクゾウスになったようだ。アコは今ハクゾウス付きになっている。つまり現時点のN0.2であり次期ハクゾウスということになる。


 どうやらアコもあれ以来大人しくなったそうだ。どの程度心を入れ替えたのか、それとも表面的に大人しくしているだけで本性は変わっていないのかはわからない。


 ただオサキの親の贔屓目でなく本当に前よりも真面目で謙虚になったらしい。話し方までは急には変えられないから、俺達に偉そうにしゃべったように前とあまり違いはないみたいだけどな。


 それで何故ヤコに落とされているオサキがハクゾウスになり、その娘で当然ヤコであるはずのアコがハクゾウス付きのNo.2になっているのか。


 それがどうもテンコやクウコに力のある者がほとんどいないかららしい。つまり簡単に言えばオサキとアコに勝てる者どころか勝負にすらなる者がいないのでもうこの二人に任せるしかないということのようだ。


 もちろん妖狐の里では強さが一番の指標じゃない。他の…、大ヴァーラント魔帝国とかなら序列は強さの順で決まる。他の国も軍制についてはほとんどが強さで決まっているだろう。


 だけど妖狐の里ではむしろ強さよりも出自が重視されてきた。本来ならヤコで一番上位でもテンコの一番下より下という扱いになるからな。何故それが改められたのかというと妖狐の里の衰退が著しいからだそうだ。


 確かにぱっと見た限りでも妖狐の里はかなり衰退しているのが見て取れる。人数も少ないし、その少ない者達も力が弱い。妖狐がドラゴン族を上回るほどとまで言われていたのは過去の栄光のようだ。


 だからこのままではやがて衰退して滅亡するだろうということで抜本的な改革が行われているらしい。その一番最初の改革がオサキのハクゾウスへの起用だ。そしてハクゾウスになったオサキも数々の改革を行っている最中だという。俺達が里に入ったらキャバクラみたいになってたのもその一環というわけだな。


 内に篭るばかりだった妖狐達をもっと積極的に外と関わらせて子孫繁栄を狙っているらしい。つまりキャバクラより一歩進んで性サービスをする店みたいになっているのかもしれない………。


 とは言え別にそこかしこで性交渉が行われてるわけじゃない。ただの結婚斡旋所とも言えるかな。色んな掛け合わせで子孫を残そうと、前までのように外部から来る者を拒むのではなく積極的に受け入れる方針に転換したようだ。


 ざっとオサキや妖狐の里の事についてそうして話を聞いてから社を出る。オサキが俺達を食事に誘いたいというのだ。


 そして崖から降りて一軒の家に入って食事を勧められた。だが待って欲しい。これは食事じゃないだろう。いや、食事は出てるよ?だけど皆の隣に妖狐の女の子達がついて色々とサービスしてるのだ。それこそキャバクラかって言う感じに……。


 俺の両隣にもナコとマコが座ってあ~んされたり、飲み物を注いでくれたり、至れり尽くせりで全てやってくれる。


 俺は断ったけどどうやら客と嬢が合意すれば口移しとかのサービスもあるらしい。おいおい…。それって完全に風俗店じゃないですかって感じだ。嫁達の隣にもそれぞれ妖狐の嬢が付いて色々とサービスしている。


 一体誰がこんな馬鹿なことを考えたんだ?ってオサキです…。この義妹ったらまったく………。


 ただ勘違いしてはいけないのは嬢達も命令されてとか、イヤイヤやってるってわけじゃない。客が指名して嬢が付くのではなく、嬢が気に入った相手にアプローチして客が受け入れればこうして隣に付くことになる。


 じゃあ俺はナコとマコを受け入れたのか?って言えば半分間違いだ。確かにこの二人が俺の隣に付きたいと言った。俺は許可した。だけどこんなことになるとは思ってなかったからな。


 俺はナコとマコに何もしてないし性的な接触もない。嫁達だってもちろん隣に付いてる妖狐達とそんなことはしてない。ただちょっと過剰気味な接待を受けてる程度のものだと思っておけばいいだろう。


 そしてアコは俺の前に座って誰にも付いてない。オサキはナコを挟んで俺の隣に座ってる。


 そのアコがテーブルの下からこっそり尻尾を伸ばしてくる。何か企んでるのかと思いつつも何をどうするつもりかわからないので様子を見ていると俺の尻尾に自分の尻尾を絡めてきた。


 それも一本だけじゃない。俺が知らん顔してると次々に尻尾を伸ばして絡めてきてアコの尻尾八本全部が俺の短い尻尾に絡み付いてる。一体何がしたいのか意味がわからない。


 そこでアコを見ても知らん顔して顔を逸らすだけで何を考えてるのかまったくわからなかった。その表情は若干怒ってるような顔をしてる。


アキラ「なぁ…。妖狐にとって尻尾を絡めるって何か意味のあることなのか?」


 俺は隣に座るナコとマコに聞いてみることにした。これが妖狐なりの何らかの意味のあることかもしれないと思ったからだ。例えば決闘の申し込みだとか?


ナコ「えぇ!尻尾をですか!?それは妖狐の求愛のしるしですよ?それに応えて自らの尻尾を絡め返すと受け入れた合図です!でもでもそれって妖狐同士の時のことで禁忌なんですよ!」


マコ「アキラ様はまさか禁忌を犯して妖狐同士の子供をお作りになるおつもりですか?きゃー!私が選ばれたらどうしよう!あっ!もちろん私はアキラ様ならいつでもオッケーですよ!」


 何か知らないけどナコとマコが自分が俺とそういうことをすると想像してきゃーきゃー言ってる。そもそも何で君達俺にそんなに懐いてるわけ?前回あんな目に遭わせたってのに………。


 それはいい。それよりも………。アコの顔を見てみたらまだそっぽを向いたまま怒ったような顔をしてるけどほんのり赤くなってた。


 ………もしかしてこれって俺がアコから求愛されてんのか?



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