表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生無双  作者: 平朝臣
183/225

最終話「これからも」


 俺の意識が次第に覚醒する。………目を覚ました俺はベッドから体を起こした。


アキラ(あぁ…。夢か………。)


 俺はいつもの見慣れたベッドから降りながら頭を覚醒させる。俺は普段滅多に夢なんて見ないのに今日は珍しく夢を見たらしい。


 洗面所で顔を洗って…、歯を磨いて…、着替えて………。毎日毎日同じことの繰り返しだ。


 たまに…、ふと…、本当に世界を滅ぼせるのなら滅ぼしてしまいたくなる衝動に駆られる時がある。それは俺が特別だろうか?


 誰だって自分の力で自由に出来るものがある。自分の持ち物だったり、ペットだったり、家庭だったり…。中には会社だとか、本当に世界を壊せる者もいるだろう。


 だがほとんどの者はそれを壊したりはしない。…たまに八つ当たりしたりして小物を壊すことくらいはあるかな?かもしれないな…。


 それはともかくほとんどの者は大きな物は壊さない。核ミサイルの発射を命令出来る権利を持っているからと言って本当に発射する者はほぼいない。


 ただ…、ふと…、たまに思うだろう。全て壊して投げ出してしまいたいと…。それは何ら特別なことじゃなくて、本来誰もが持っている衝動で…、だけどほとんどの者は踏みとどまって実行しない。


 もちろん俺だって何もかも面倒になって全てぶっ壊してしまいたくなる時もあるけどそれはしない。何故なら………。



  =======



 俺が洗面所で顔を洗っているとバタバタと大きな音が聞こえてきた。誰か俺の部屋に乗り込んだらしい。まぁいつものことだから気にしない。


ブリレ「ああ~!主様がいない!」


ハゼリ「まさかまた脱走ですか?」


オルカ「ピィ!匂いを辿れば!」


 はぁ…。朝から騒がしいったらない。すぐ隣にある洗面所を確認したりしようという考えはないのだろうか?そもそもこんなことは今回初めてじゃないんだ。何度も俺の方が先に起きて洗面所にいたことがあるだろう?


アキラ「朝っぱらからうるさいぞ。もう少し静かにしなさい。」


ブリレ「主様!」


 声をかけた俺を振り返ったブリレが抱き付いてくる。


ハゼリ「ずるいですよブリレ。主様、ハゼリも抱いてください。」


アキラ「いや…。ブリレは俺が抱いたんじゃなくて抱きつかれただけだが?」


 ハゼリに説明しても無駄だが一応言うべきことは言っておく。ていうか、言ってる間にもハゼリはブリレと逆の方に抱き付いてきている。


オルカ「ピィ…。ご主人様ぁ~…。」


 オルカはオルカで何か知らないが俺の匂いをフンフンと嗅いでトリップしている。ちょっと恥ずかしいからやめてけれ……。


ウズメ「あ~あ…。やっぱりなぁ。あんたらよう毎朝毎朝同じことしてるなぁ…。ほら!離れや!ご主人様のお召し替えがでけへんやろ?!今日はご主人様忙しいねんで?はよせな。ほらほら!」


 そこへひょっこり顔を覗かせたウズメが割り込んできた。


アキラ「『今日は忙しい』じゃなくて『今日も忙しい』だろ?」


 あれ以来俺が忙しくない日なんてない。毎日目が回る忙しさだ。


ウズメ「そうかもしれへんなぁ。まぁええやん。ご主人様は疲れもせえへんし休息もご飯も必要ないやん。趣味でしてはるだけやろ?」


アキラ「まぁそうだけど…。けど俺だって休みたいし遊びたいし食べたい。」


 なくても平気だからと言ってイコール必要ないということにもならない。嗜好品と一緒だ。確かに生きる上で必須ではなくともあることによって様々な効果がある。


ウズメ「はいはい。わかってますて。なるべく時間が空くようにしてますて。さっ、お召し替えやで。ほらほら!はよここに立ってや。」


 ウズメに引っ張られて姿見の前に立たさせられる。何か雑だなぁ…。他の愛妾達みたいにべったりすぎるのも色々問題があるが、ウズメみたいに軽く扱われてるようなのもそれはそれで問題だ。


ウズメ「今日は~……。これなんかどうやろ?可愛いで?」


アキラ「いや…、これは無理…。ミニじゃん……。」


 ウズメが出してきたのはかなり短いミニスカートだ。嫁や愛妾達の前だけならミニでも平気だが他人の前でミニは穿けない。


ウズメ「じゃあこれ!」


 今度ウズメが出したのは胸元も背中もばっさり切れ開いている上に尻が見えるんじゃないかってくらいスリットの入ったドレスだった。


アキラ「………もういい。俺が自分で選ぶ。」


 俺は自分で箪笥から服を引っ張り出して姿見の前で胸に当ててみる。


アキラ「ふんふ~ん。あっ、これ可愛いな。でもちょっと…、ん~?」


 ちょっと体を捻ったりしてみる。う~ん…。やっぱりもうちょっと違うのも確かめてみよっと。


アキラ「う~ん?これはどうかなぁ~?………やっぱりこっちかなぁ~?」


ミコ「アキラ君?あぁ…、やっぱり…。こうなってると思った。」


 俺が服を見繕っているとミコが部屋を覗いていた。ウズメといいそうやって覗いているけどお行儀悪いぞ!


アキラ「もうちょっと待って。もうすぐ決めるから。」


ミコ「アキラ君がそうやってアキラちゃんになってる時はあてにならないのだけれど………。ほら。メイドさんの四人が困ってるよ?」


 ミコに言われて後ろを見てみる。………なるほど。俺が出しては放り投げる服を片付けるのに四人が走り回っている。


ミコ「もう私が決めちゃうね?これと…、これ。」


アキラ「う~ん…。まぁいいか。俺もそれ考えてたし。じゃこれで。」


 今まで見繕ってた中でいいかなと思ってた組み合わせの一つをミコに出されたから素直にそれにする。フリルのついた可愛いシャツにピンクのフレアスカートだ。膝が出てるのがちょっと恥ずかしいけどこれくらいならギリギリ我慢出来る。


 着替えて執務室に入るとすぐにヤタガラスがやってきた。


ヤタガラス「お早う御座います女神様。今日のご予定を確認いたします。」


アキラ「その女神様ってのやめないか?」


ヤタガラス「ファルクリアの女神様を女神様と呼ばずに何と呼べば良いのでしょうか?」


 う~む…。何か知らないけど俺がファルクリアの守護神になったら神の名が『ファルクリアの女神』になっていた。もちろん俺がそんな名前を付けたわけじゃない。もしかして最高神がつけたのか?


最高神「心外だね。僕はつけてないよ?守護を受ける者達が望んでつけたんだよ。」


アキラ「勝手に心を読むな。それから何当たり前みたいな顔して混ざってんだ?」


 あれ以来最高神まで普通に俺の周りにいる。こいつこんなとこウロウロしてていいのかよ。


最高神「僕の目的はお嫁さん探しだよ?だからアキラちゃんが僕と同じ高みに至って僕のお嫁さんになってくれるのが僕の願いだったんだ。晴れてアキラちゃんが第四世代の神になってくれたんだから後は口説くだけだよね!」


アキラ「知るか……。俺は男と結ばれるつもりはない。」


最高神「いいよ。僕とアキラちゃんにはこれから何千兆年もの時間があるんだから。何百億年でも考えてよ。僕も何百億年でも口説くからさ。」


 ………そうだな。ファルクリアで神になった者でもわかっている限りで最長でも十万年ほどしか生きていない。それは不老だったとしても不死ではないから誰かに殺されたりして死ぬからというのはもちろんある。


 だから途中で皆死んでしまうために本当に不老なのか。無限の命があるのかはわからない。形ある物はいずれなくなる。


 最高神のような本物の神ですらいずれ死ぬのだ。ファルクリアの中でだけ神になった者など最高神よりも短い寿命しかないだろう。それはつまり俺の嫁達もいずれ寿命で死ぬということだ……。


 そして俺は死ねない。この世界を救うために俺が犠牲になったという話。何も問題なく生きてるじゃないかと思っただろう?


 だが違う。俺は虚無と一体となった。だから俺が死ぬことはない。何故ならば虚無は俺であり俺は虚無なのだから。虚無を殺すことも、虚無が死ぬこともない。例え今のこの肉体が朽ちようとしても虚無が新しい体を永遠に作り出し朽ちて死ぬことはない。


 これが俺の払った代償だ。最高神達、創造神ですら何千兆年か何千京年か知らないがいずれ寿命がくる。だが俺一人だけが永遠に生き続ける。無限に続く生とは究極の苦痛だ。他の拷問なんて陳腐だとすら思えるほどに……。


最高神「だからアキラちゃんに寄り添えるのは僕だけだと思うなぁ。ね?いいでしょ?僕と結婚しようよ。」


アキラ「だから勝手に心を読むな。そんな奴と結婚なんてしないぞ。」


最高神「そうは言ってもアキラちゃんが無防備にだだ漏れにしてるから聞きたくなくても聞こえちゃうよ。それならせめて聞こえないように努力してよ。」


 何か前にも似たようなことを言われたことがあるな。まぁそんなことはどうでもいい。………いつか、本当に誰もいなくなって…、俺と寄り添えるのが最高神だけになったら……。もしかして本当に結ばれる日が来るのだろうか………?


 まさかな…。俺は男だ。男と結ばれる趣味はない。もし男と結ばれるのなら最高神の前に一杯予約が入ってるしな。


ヤタガラス「あの…、予定を続けても良いでしょうか?」


アキラ「ああ。すまんな。続けてくれ。」


ヤタガラス「はっ!女神様が謝られることなどありません!それでですね。今日は狐神様との結婚式から始まり……。」


 ヤタガラスの説明を聞き流す。そもそも聞かなくてもファルクリアの…、いや、全宇宙の全ての事象を把握している俺に抜かりがあるはずはない。ただ時々面倒でサボることがあるくらいだ………。


 さらっと聞き流したが今日は玉藻との結婚式の日だ。これから魂が繋がった順に結婚式が行われる。ただし毎日じゃない。何ヶ月か何年か知らないが間を空けることになっている。


 理由はどうも俺の結婚式とはファルクリア全土でのお祝いだかららしい。その日は全ての仕事が休みになり世界中がお祝いと称してお祭り騒ぎだ。


 だからそんなに毎日毎日するわけにはいかない。何より俺の結婚式の日はこれから未来永劫祝日として制定されるらしい。祝日が十日も続いてたら、それはそれでうれしいけどある程度分散してる方がいいだろう?


 というわけで、結構な時間を空けて順次式を開くらしい。俺達には長い時間があるのだから一年二年待ったってどうってことはない。それに式をしたかどうかの違いであって俺と嫁達には何の変化もないのだから問題はない。


 むしろ後になるから凝った式をしようとすでに色々準備を始めている嫁もいるくらいだ。嫁達が楽しんでいるのなら俺が何か言うこともない。


 ヤタガラスの話を聞き流している間にあの最終決戦の後にあったことを整理しておこう。



  =======



 北大陸ではマンモンが新たに皇帝になった。そして半分いなくなった六将軍に新たに加入した者もいる。ただ少しばかり新入りで困った者がいるようだがそれはまた別の話だ。


 ウィッチの森にはそれほど戦争の影響はなかったようだが、ドロテーはとうとう玄孫の顔を見ることなく息を引き取った。


 一時元気になっていたが戦争でかなり無理をしたらしい。俺達が会いに行った時にはもう事切れる寸前だった。それでも最後に会えてよかったとフランは言ってくれた。俺もドロテーの最後を看取れてよかったと思う。


 ちなみにクロはあまり北大陸には帰っていない。何か知らないが未だに俺の周りにいる。


 西大陸ではポイニクスとエアリエルが結婚することになっている。ただ俺の結婚式もしていないのにするわけにはいかないということで保留になっている。


 それから進化したウゥルカヌスとタロース部隊は俺が会いに行った時に皆で抱き付いてきて大変だった。武骨なゴーレムとして作ったはずなのに可愛い女の子になってたからな。揉みくちゃにされて気持ちよかった…。じゃなくて大変だった。


 今でもウゥルカヌス達はザラマンデルンを守る任務についている。俺に会いたいと寂しがるから時々は会いに行ったり、勝手に来たりするけどな………。


 エンとスイは晴れて男と女の性別になれたので毎日イチャイチャしている。お前らも西大陸に帰れよ…。何か知らないけどこいつらもずっとカムスサに住んでる。


 水と土は新しい王がたてられた。土はグノムだ。水はよく知らない奴だった。何でもティアの子供が生まれるまでの暫定らしい。やっぱり水の精霊にとってはティアの家系は特別なようだ。じゃあティアがなればいいじゃんと思うがどうもティアも俺の力の影響を受けて変質しすぎて水の精霊王には向かなくなってしまったらしい。


 南大陸ではティーゲが新しい国を建てようと奮闘中だ。ティーゲの力は大したことないからな。統一戦争は大変だろうが内政はそこそこ出来るほうだから大丈夫だろう。まぁそこそこな?獣人族は政治が苦手だから…。その中ではマシってだけだが……。何でもガウに新しい国を捧げるそうだ。このロリコンどもが!


 兎人種の里ではまだツノウが巫女をしている。キュウの妹がもう少し成長したら交代するそうだが…。何か巫女を引退したら俺のもとに来たいと言っているらしい。


 らしいと言うのは俺が直接兎人種の里に行ってもそんなことを言われたことがないからだ。だがキュウにはそういう相談をするらしい。キュウは従妹のツノウも俺のハーレムに入れてやれと言ってくる。嫁ではなく愛妾らしいけどな。


 太刀の獣神の話はクロ達から聞いた。土壇場で面倒なことをしてくれたもんだ。たまたまクロが圧倒的だったお陰で問題にならなかったが場合によっては被害が出ていたかもしれない。


 と言うわけで無罪放免とはいかない。俺が太刀の獣神に課した罰は百年間の武力の行使禁止だ。身を守ることですら相手に手を出すのは禁止している。基本的には防御と逃げることしか許されないわけだ。


 武力の行使には修行も含まれている。太刀の獣神は修行も出来ず、戦うことも出来ず百年過ごさなければならない。


 もちろん違反したからと言って追加の罰は与えない。ただもう二度と俺達の周りに近づけなくなるだけだ。もし破ったら敵と看做すと伝えてある。今の所守っているようだが果たして百年耐えられるかな?ちょっと楽しみだ。


 東大陸ではファングが消滅した。赤の魔神が守護神を放棄して出ていった。王も死に敗戦国となったファングは自壊してなくなった。


 ただ竜王がかなり変わった。前ほどの愚王ではなくなったのだ。どうやら西の竜の最後の言葉を思い出しては自分を律しているらしい。まぁ当然まだまだ失敗もするし弱気にもなるし駄目な点は多いけどな。


 それでも何とかしよう、間違えたなら正そうとするようになっただけずっと良くなっている。そしてその竜王が元ファングの国民達をドラゴニアに受け入れて保護し、ドラゴン族と対等に扱っている。そのお陰で大きな混乱は起こっていないようだ。


 それで何故か赤の魔神はカムスサで暮らしている。っていうかカムスサっていうかもう俺達と一緒に暮らしてるよな。もちろん赤の魔神とのルートもないぞ?俺はあそこまでマッチョなお姉さんはちょっと苦手だ。


 中央大陸ではガルハラ皇帝がウィルヘルムからフリードに譲位された。先の戦争での功績がかなり評価されているらしい。デルリンはなくなってしまったんだがな………。


 バルチア王国とアルクド王国領はまだガルハラ帝国が支配している。これからこの二国がどうなるかはわからない。残ったウル連合王国のヴィクトリアはフリードの所に押しかけて毎日付き纏っているらしい。


 フリードのどこが良いのかわからないが蓼食う虫も好き好きという言葉もあるくらいだし、人の好みはそれぞれだろう。


 海人族は海人種が纏めることになり太陽人種は俺に棟梁の娘を捧げて恭順を示した。月人種達はツクヨミを失い逆らう気力も失ったようだが今は呆然としているだけで今後どうなるかわからない。


 カムスサは基本的にガルハラ帝国西側の海上を移動している。どこか一点に留まって腰を据えても良いのだが、ただの俺の気分転換のために移動している。


 まぁ…、本当は陸に接舷しているとフリードが毎日訪ねてきてうるさいから沖に逃げているだけだが………。


ヤタガラス「それで…、月人種達の不安もあることから、月人種からも嫁をとられてはどうでしょうか?」


アキラ「むっ……。」


 いつもこの話になる。太陽人種からのみ嫁をとって月人種からとらないと、統治に差をつけられるのではないかという不安が月人種に広がるというのだ。


 それに何かあるごとに自分達は嫁を出していないから軽んじられているという思いが出るとも言う。


 だが本当はシホミとの結婚だって政略結婚の意味が濃く、まだお互いに愛し合っているとは言えないような状況なのだ。そこへさらに政略結婚の相手を加えたらどうなるか。


 ………あまり良い予感はしない。いずれ月人種からも嫁をとらなければならないとしても今はまだ時期尚早だと思う。ヤタガラスは逆に早くとるほど良いと思っているようだが………。俺は種族間の問題よりも俺の家庭の問題を考えているからな。


 五龍神とバフォメットはお互いに切磋琢磨している。俺の一の腹心はどちらかということで悪魔軍団と龍神軍団が相手の上に立とうと修行に励んでいる。


 ちなみに龍神軍団とは俺のボックスに住んでいた他の魚達だ。あぁ…。どれもこれも化け物になってたよ……。今はまだまだ悪魔軍団の方が上だが龍神軍団も侮れない。いずれ追いつき追い越す時が来るかもしれない。


 親衛隊はそれぞれが親衛師団なる謎の組織を作っている。もともとの親衛隊達は今でも親衛隊員だ。なのにそれぞれが親衛師団という師団を作りその師団長も兼ねている。


 親衛師団は師団長次第でその特色が異なる。可愛い女の子なら種族を問わないが可愛い女の子しか入れない師団もあれば(誰が師団長かは推して知るべし)、魔人族しか入れない師団もある。


 こいつらもどの師団が一番かで争っているらしい。ただし争うとは言ってもドロドロの権謀術数渦巻く争いじゃない。模擬戦をしたりしてどちらが優れているか争っているのだ。


 ジェイドとシュリは微妙な距離を保っている。ジェイドはかなりシュリに心を許すようにはなっているがまだ俺のことが諦められないらしい。何度も振っているんだがどうやら俺に受け入れてもらえるかどうかではなく自分の気持ちを貫くことが大事なんだと。シュリは苦労するだろうが俺にはどうすることも出来ないので応援だけしておくことにする。


 ロベールはタマに剣を教えている。隻腕でもまだまだタマには遅れをとったりはしない。けどタマはメキメキと実力をつけているそうだ。それを毎日健気に応援したりお弁当を作ったり汗を拭いてあげたりしているミィはすごい。あれだけされたらさすがにタマもミィを意識しているようだ。この二人もそのうち結婚するだろうな。


 シロー=ムサシは戦後帝国技術班班長としてガルハラ帝国の中央に戻った。フリードがうまく手綱を引いてコントロール出来れば非常に有用な男だろう。


 それにユイ=アマノとも多少進展があったようで彼女のためにも少し丸くなったらしい。もう前のような愚かなことはしないだろう。何よりフリードのバックに俺が居て、俺をどうすることも出来ないとわかった以上は、あいつは反乱なんて無駄なことはしない。


 あいつは勝算なしの争いはしないタイプだからな。だから別の方向で頑張っている…、と思う。あまり会ってないから知らないが……。


 各地で会った妖怪達や妖狐の里は前と変わりない。九十九達なんかが平和に暮らしているのは良いと思う。けど妖狐は変われよと思う……。まぁ口出しする気はない。あいつらはあそこであのままがいいなら勝手にすればいい。


 最古の竜から分離したヤゴコロオモイカネは今日も俺の伝説を吹聴して回っている。一番近くで見ていた生き証人だと名乗っているらしい。どうでもいいけどな……。


 三女神は変わりなく妹として可愛がっている。タケミカヅチは約束通り俺に仕えており、いずれシホミに子供が生まれたら子供に仕えてくれるだろう。


 ツクツミはあれ以来何度もお礼にやってきている。母子で仲良く暮らしているようだ。


 その時扉が開いて一人の人物が入ってきた。


ヨモツオオカミ「おお、おお。アキラ。綺麗になったな。」


 入ってきたのはヨモツオオカミだ。従者はいない。一人で来たようだな。


アキラ「黄泉の住人があまり現世をウロウロするなよ。」


ヨモツオオカミ「ほほほっ!そなたが黄泉の国も根の国も消し去ってしまったからであろう?」


 確かに一度は吹っ飛んだがもう世界自体は戻っている。ただ建物とかはなくなっているだけだ。それくらいは自力で再建しろといいたい。


ヨモツオオカミ「可愛い孫の晴れの姿を見ることも許されぬのかの?」


アキラ「はぁ……。結婚式の席は用意してある。ちゃんと周囲の指示は聞いてくれよ?」


ヨモツオオカミ「ほほほっ!わかっておる。」


 それから暫くヨモツオオカミは俺を撫でたり髪を梳いたりして満足したのか、結婚式場へと移動していった。


 一人だけまったく触れていない人物がいることにお気づきだろう。そう…。ムルキベルはあの最終戦の時から大変なことになっている………。


ムルキベル「ただいま戻りましたアキラ様。」


アキラ「ああ、うん。お帰り。」


 生きてるじゃないかって?そりゃそうだ。死んだとか動けないとは言ってない。じゃあ何が大変かと言うとムルキベルの性能だ。


 素材で性能が決まるゴーレムであるムルキベルを強化するために俺は全身をヒヒイロカネと置き換えた。そうだ。ヒヒイロカネを加えたとかじゃない。全身、全てをヒヒイロカネにしたのだ。


 そりゃもうえらいことになった。バフォメットを超えちゃったからな………。それはつまり第一階位を超えたということであり…。俺と俺の尻尾を持っている状態の嫁達に次ぐ力だ。もう色々飛びぬけすぎていてどれほどすごいのかすらうまく伝わらない。


 それに加えてジェット噴射のように神力を噴射して飛行を補助する装置を開発してしまった。これでムルキベルは空も自由自在だ。そりゃもう性能は滅茶苦茶だよ…。化け物だよ……。


 ちなみにあの後尻尾は無事に俺のお尻に帰って来たぞ。今ではちゃんと九本生えている。ただし嫁達が俺の尻尾を呼び出してあの時の状態にいつでもなれる。


 まぁ…、嫁達が俺の尻尾を呼び出してまで戦わなければならないほどの強敵なんてもういないわけだが…。嫁達だって俺の尻尾なしでも日々強くなっているからな…。


アキラ「それじゃそろそろ式の準備に取り掛かろうか。」


 ヤタガラスの話を適当に聞き流して頃合を見て解散にする。さぁ。玉藻との結婚式に向かおう。



  =======



 新郎新婦の控え室に向かうともう着替えている玉藻が座っていた。その衣装は白無垢のようなものだ。妖狐の玉藻にはとてもよく似合っている。


アキラ「玉藻…、綺麗だ。」


玉藻「あんっ。もうっ。アキラの馬鹿っ!今赤面しちまったら化粧の色が合わなくなっちまうだろ!もう!」


 玉藻は真っ赤になりながらむくれてる。けどそっと手を握ってきたことから言葉ほど怒っていないのだとわかる。


ミコ「はい。アキラ君もお着替えしましょうね~。」


フラン「さぁさぁ。こちらですよ。」


ティア「着替え着替え~。」


シルヴェストル「早くするのじゃ。」


キュウ「きゅうきゅう!」


クシナ「私もお手伝いしますよ。」


 嫁達に引っ張られて無理やり強制連行されていく。


ルリ「………頑張って。」


ガウ「がうがうっ!」


 ルリとガウだけは手伝う気はないのかあまりやる気がなさそうに後ろからついてくるだけだった。でも着替えを手伝う気はなくてもついては来るんだな………。


アキラ「って、ちょっと待て!このドレス俺が選んだのと違うだろ!?胸元開きすぎ!丈も短い!」


ミコ「そんなことないよぉ?アキラ君が選んだドレスだよねぇ?」


フラン「そうですよ。(基本的には)アキラさんが選んだドレスですよ?」


アキラ「おい、待て。(基本的には)ってどういう意味だ?」


ティア「その部分は読んでは駄目ですよアキラ様。」


シルヴェストル「もう時間もないのじゃ。」


キュウ「そうですぅ~。今更変更出来ません~。」


クシナ「諦めてください。」


 うぅ…。嵌められた。絶対これは俺が選んだデザインと違う。胸ぼよよんで生足でで~んだ。こんなドレスで会場の者に見られると思うと恥ずかしくて赤面してくる。


 けど嫁達が言う通り今更替える時間はない。それを狙って嫁達は今まで俺に気づかれないようにしていたんだ。


ブリレ「ほらほら主様。お化粧もあるし時間がないから早く早く。」


 ブリレの急かされてどんどん準備を進めていく。地球の感性を持つ俺からしたら新婦と新婦の結婚式なんて変だけど誰も変だと思ってないようだ。


玉藻「色々あったねぇ。」


 玉藻がしみじみとそう漏らした。


アキラ「………そうだな。色々あった。」


 ここに来るまでに色々なことがあった。出会いも、別れも…。良いことも悪いことも…。でもゲームじゃないんだから人生にやり直しはきかないし、嫌なことだからってやらないというわけにもいかない。


 俺はここに来るまでに随分変わっただろう。他人なんて信用してなかった。それは今でも変わってないが信じられる者もいるのだということは知った。


 それに愛も…。俺は今まで誰も愛するようなことはなかった。だがこれまでの冒険の間に本当の愛というものがあることも、人を愛するということも知った。


 これからも俺は変わっていくだろう。またやさぐれることもあるかもしれない。それでも俺はこれからも悠久の時を生き、世界の移り変わりを見ながら、自分も影響を受けて変化しながら生きていくのだろう。


アキラ「あっ…、そうだ。変化の術!」


 俺は変化の術で体を小さくした。ルリやミコに近い年齢だった体が前の中学生くらいの体に戻る。これならドレスの胸元や丈がぴったりだ。いや…、ちょっと胸元がゆるゆるか?ちょっとだけピンで留めて絞っておこう。ポロリしたら大変だ……。


 俺が変化の術を使えなかったのは虚無が俺の中にいたからだ。簡単に言えば二人いる状態で一人だけ変えようとしても変化することが出来なかったわけだな。


 今では俺は虚無であり、虚無は俺であり、二人ではなく完全なる一人になっている。だから変化の術も自由自在だ。そして虚無の声が俺の頭に響くことはない………。


 聞こえなくなったら聞こえなくなったで少し寂しい気持ちもある。だが寂しがることはない。虚無は俺の中にいるのだから………。


 それからもう一人の俺…。もう一人の俺なんていなかった。それは結局俺の中の女の子の部分でしかなったのだ。全てが一体となった今の俺の一部だったに過ぎない。………だから時々俺が女の子みたいになっても仕方ないのだ。だって本当に今は女の子なんだし……。けど男と結ばれる気はないからな!………今のところ。


 それから最高神に教えられた真名…。自分の真名を知るということは限界を取っ払うということ。俺がバフォメットの名を奪って力を抑えていたように、真名を最高神が握ることでそこに住む生物達の力の上限を抑えていたのだ。


 だがその真名を知るということはバフォメットに真の名前を返したのと同じように、全ての力が開放されるようになる。


 一定以上の力を持ち、真名を知る。これが最高神に並ぶほどの本物の神になるための条件のようだ。お陰で俺はまた面倒な地位が増えてしまった。


 まぁどうでもいいけどな。俺には世界のことなんて関係ないし。


アキラ「さぁ、行こう。」


 俺は玉藻の手をとる。


玉藻「………うん。」


 三千歳を超えているとは思えない少女のような笑顔で玉藻は頷いた。


 俺はこれからも歩いていく。先のことはまだわからないけど、少なくとも今は嫁達と一緒に…。


 俺はその扉を開いたのだった。



 ここまで読んでくださりありがとうございました。ここまでこれたのは偏に応援してくださった皆様のお陰です。


 これにて本編は一先ず完結となります。


 本編『は』『一先ず』………、はい。


 ご挨拶や今後について活動報告に書き込みしますのでよければそちらもご覧ください。


 あと最後に急遽無駄な一話を投稿します。本当はここまでで終わりのつもりでしたが、ルージュさんの感想を見ているうちに少し書こうかなと思って急いで一話書きました。


 本編には影響しない話ですので本編はこの話で終わりとなります。


 それでは最後まで読んでくださりありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ