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転生無双  作者: 平朝臣
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第十六話「ハーレム計画」


 俺達は今バンブルクの皇太子邸にいる。そしてフリードとロベールは意気投合していた。


フリード「そうか!その時のフィリップの悔しがる顔が目に浮かぶようだ。はっはっはっ。」


ロベール「あんたも中々話のわかる皇太子だな。バカ王子とは大違いだ。はっはっはっ。」


 類は友を呼ぶのだろうか。この二人は似通っている。主にバカなところが…。


狐神「ア…アキラ…、ほら…あーん。」


 師匠は顔を赤らめモジモジしながら俺にあーんをしてくる。


アキラ「…師匠。自分で食べられます。」


狐神「うるうるうる。」


 俺の言葉を聞いて師匠は瞳をうるうるさせる。


アキラ「ぅっ…。あーん。」


狐神「はい。あーん。おいしいかい?」


 師匠はニコニコ顔だ。俺が変なスイッチを入れてしまったらしい。恋人同士のように桃色甘々空間を作り出している。


アキラ「おいしいです。」


狐神「じゃあ次は何を食べたい?」


アキラ「もう大丈夫です。」


狐神「うるうるうる。」


アキラ「………。じゃあそこの魚を…。」


狐神「はい、あーん。」


アキラ「…あーん。」


 どうしてこうなった…。自己紹介をさせた辺りから思い返す。



  =======


ロベール「ガルハラ皇太子?!」


フリード「ドラゴンスレイヤー?!剣聖か!」


 二人はお互いの名を聞いて正体に気づいたようだ。


パックス「なぜバルチアの剣聖がこんなところにいる!何が目的だ!」


アキラ「おい…。追放されたって言っただろうが。お前もバカの仲間か?」


パックス「なんだと?貴様っ!」


アキラ「お前じゃ話にならない。おい、フリード。どこかもっと人のいないところはないのか?」


フリード「え?アキラからそんなに積極的に俺を求めげふっ…。」


 フリードの鳩尾に鉄拳をお見舞いする。再度フリードは沈む。


アキラ「また地獄が見たいか?」


フリード「冗談です。わかってます。」


 ロベールは真性のアホだがフリードはわかっていて悪ノリしている口らしい。余計に性質が悪い。


フリード「それじゃ皇太子邸に行こう。」


 こうして俺たちは皇太子邸に向かった。向かう間中ずっと師匠は俺の腕を抱いてニコニコ顔をしている。


 そしてフリードがフィリップとやらの悪口を言いロベールが国を追われた話をする。師匠は相変わらず俺にぴったり寄り添い出された食事で俺にあーんをしている。つまり現在だ。


アキラ「どうしてこうなった………。」


 ここ最近俺は小悪魔チックなアキラちゃんで師匠を惑わせてみただけだ。………師匠がこうなったのは俺のせいだな。だが惑わせたとは言っても遊びではない。薄々気づいていたが俺も師匠のことを好きになっている。ただ今の俺の状態ではそれを伝えてはいけない気がして気づかない振りをしていただけだ。だがロベールが師匠にちょっかいをかけるので俺の箍が外れてしまったんだろう。


 そしてロベールの件。これも好都合だ。師匠にちょっかいをかけるから厄介払いしたいというわけではないが人間族では北大陸に渡れば死ぬだけだろう。俺達が本気になれば守りながら進むことも簡単だがそういうわけにもいかない。まだ二週間ほどしか一緒にいないが俺ももうこいつのことを仲間と思っている。死なせたくないと思っているし死なれたら寝覚めが悪い。フリードと一緒に中央大陸に残らせてやらせたいこともある。ここでフリードに押し付けよう。


アキラ「おいフリード。」


フリード「どうしたアキラ?」


アキラ「俺達は北大陸に渡りたい。なんとかしろ。」


フリード「…。」


 いつもならホイホイ言うことを聞くフリードだが今回は返事をしない。


フリード「いくらアキラの頼みでもそればかりは聞けないな。」


アキラ「なぜだ?」


フリード「北回廊を管理しているのはガルハラ帝国だけじゃない。バルチア王国にも関わることだ。俺一人では決められない。」


アキラ「建前はいらない。本音を言え。」


フリード「アキラをあんな危険なところに行かせられるわけないだろ!」


 それが本音か。


アキラ「パックスって言ったか。あれがフリードの懐刀か?」


フリード「?それを聞いてどうする?」


アキラ「ロベールに随分噛み付いていたしちょっと手合わせしてみろ。」


ロベール「なんで俺なんだよ。」


アキラ「俺達の中でお前が一番弱いからだ。」


ロベール「そうだね~。一番弱いね~。悪かったな弱くて!」


パックス「ふんっ。剣聖が聞いて呆れる。確かにフリッツが惚れるのもわからんでもない美しい娘共だが小娘に顎で使われるような者が剣聖などと大層な名を名乗っているとはな。」


アキラ「だからそのアホで弱くて情けない剣聖様の実力を試してみろよ。だがフリードの方はそいつでいいのか?相手の強さもわからない雑魚じゃロベールに相手をさせる意味すらないぞ。」


パックス「なんだと!」


ロベール「お嬢ちゃん。そこまでは言われてないぞ…。」


フリード「アキラの実力は俺がよく知ってる。それでも北大陸はだめだ。」


パックス「フリッツ。俺にあの剣聖の化けの皮を剥がさせてくれ。」


フリード「負ける勝負はしないほうがいいぞ。」


パックス「俺が負けると思っているのか?」


フリード「負ける。ここにいる衛兵全てを使ってもあの男一人すら止められんよ。」


パックス「フリッツッ!頼む!自分の目で確かめたい。」


フリード「はぁ…。じゃあやるだけやってみろ。ただしアキラに言っておくがこの結果はわかってる。それで俺の考えは変わらんぞ。」


 こうして二人は立ち合うことになった。


フリード「それじゃはじめろ。」


 俺達は食堂から庭へと移動した。ロベールとパックスは睨みあっている。いや、剣を構えて睨んでいるのはパックスだけだ。ロベールはファルシオンを右手に持ち肩に剣をトントンと当てて涼しい顔をしている。


ロベール「どうした小僧?いつでもいいぞ。」


パックス「………。」


 まだ動いてすらいないのにパックスは汗を掻いている。立ち合ってようやくロベールの実力がわかったらしい。気づかない者は殺されるまで気づかないのだから今気づいているだけでも大したものかもしれない。


パックス「はぁ!」


 パックスが仕掛ける。上段から斬りかかった。


 ドスッ


パックス「ぐはっ!…貴様。」


 上段から斬りかかってきたパックスの鳩尾を右足で蹴り上げる。パックスは動けずその場に崩れ落ちた。


ロベール「お前さんが相手じゃ剣を使うまでもない。」


パックス「こんな勝負無効だ!」


ロベール「ほう…。戦場じゃお前さんは10回は死んでるぜ。気づいてないわけじゃないよな?」


パックス「くっ…。」


 パックスは顔を伏せる。


パックス「くっ、くははっ。あはははは。すげーな。これが剣聖か。俺じゃ逆立ちしても勝てん。非礼を詫びよう。」


 さっぱりした性格のようだ。これでロベールを押し付ける障害はなくなった。じゃなかった。ロベールと仲良くできそうでなによりだ。


フリード「それで?俺はまだ何も納得してないぞ。」


 フリードは俺を見ながら問う。


アキラ「よし。じゃあ次は俺とロベールでやろうか。」


ロベール「え?まじで?折角俺が久々に良いとこ見せたのに無様晒させるの?上げて落とすの?」


フリード「その必要はない。アキラが剣聖など手も足も出んほど強いのはわかってる。だが俺の考えは変わらない。」


アキラ「………。フリード…、頼む。」


 俺は頭を下げる。


フリード「うっ…。いくら頼まれてもだめだ!」


アキラ「…そうか。わかった。力ずくで押し通るからもういい。フリードなんとかさんなんてもう知らない。」


フリード「え?ちょっ!待って。わかった!わかったから。」


アキラ「…本当か?」


 俺は上目遣いにフリードの様子を伺う。


フリード「アキラッ!かわいすぎるっ!」


 顔を赤らめ鼻の下を伸ばしながらフリードがいきなり抱きつこうとしてくる。


アキラ「一回死ねっ!」


 さっきまでの手加減した拳とは違う俺の地獄突きを鳩尾に叩き込まれフリードはブレーフェン以来二度目の地獄を見ることになった。



  =======



パックス「すまない剣聖殿。フリッツの幼馴染とはいえ傭兵あがりの平民がフリッツの側近として振舞おうとらしくないことをしていたようだ。剣聖殿に敵わないことは最初に剣を抑えられた時点でわかっていたのにな。」


ロベール「はっ!それこそ傭兵あがりらしくないだろ?傭兵なら傭兵らしく『次は勝つ!』くらい言ったらどうだ。」


パックス「そうか…。そうだったな。宮仕えで俺も腹芸ばかり磨いていたようだ。」


ロベール「気にするな。俺もお嬢ちゃん達に出会う前まで酷い有様だったからな。飲め飲め。」


パックス「はははっ。」


 今度はパックスと打ち解けたようだ。ロベールは嫌われやすい体質などと言っていたが気さくで人に溶け込みやすい性格をしているのかもしれない。


フリード「うぅっ…。まだ気持ち悪い。」


アキラ「いきなり抱きつこうとするからだ。自業自得という言葉を学べバカ。」


フリード「あれは俺のせいか?!あのしおらしい顔!かわいらしい仕草!誰でも抱きしめたくなるに決まってんだろ!」


アキラ「…もう一発逝っとくか?」


フリード「ごめんなさい。勘弁してください。」


狐神「…じーっ。」


アキラ「師匠…。」


狐神「アキラは私のだからね!」


 横から師匠に抱きしめられる。柔らかい胸が気持ちいい。


フリード「ああっ!ずるい!俺も抱きしめたい。」


アキラ「おいフリード。俺達が北大陸に行っている間に頼みたいことがある。」


フリード「…バルチアか?」


 やはりこいつはただのバカじゃない。実力主義で皇太子に上り詰めているのは伊達ではないということか。


アキラ「バルチア王国だけじゃだめだ。聖教も腐ってやがる。人間族の問題は人間族がなんとかしてみろ。」


フリード「出来たら…結婚してくれるか?」


狐神「だめだね。」


フリード「何もなしじゃ俺も動かんぞ。」


狐神「むっ…、じゃあ握手させてあげるよ。」


フリード「おっぱい揉み揉みだ。」


狐神「腕を組む。」


フリード「一分間抱きしめて体を撫で回す権利で。」


狐神「一秒間抱きしめるだけ!」


フリード「もう一声!」


狐神「しょうがないね…。五秒間抱きしめてもいいよ。」


フリード「よし乗った!」


アキラ「何で師匠が俺のことで交渉してるんですか…。」


狐神「アキラは私のものだからに決まってるじゃないか。アキラは優しいからこのケダモノに言われたらかなり危険なところまで許しちゃうだろう?」


アキラ「なんですかそれ…。俺なら抱きしめられることすら許しませんよ。」


狐神「二度も思いっきり抱きしめられてるくせに…。絶対アキラをこんなケダモノに渡さないからね!」


 ますます力強く師匠に抱きしめられ俺の頭は半分以上師匠の胸に埋まっていると思う。というか二度もってブレーフェンでのこともやっぱり知ってるんですね…。


アキラ「だいたいフリードもフリードだ。俺を五秒間抱きしめる権利だけで自国を滅ぼされるかもしれないリスクを負ってまでバルチア王国と聖教に戦争を仕掛ける気か?」


 実際に武力衝突になるかどうかはやり方と相手の出方次第だ。だがバルチア王国と聖教の支配体制を崩壊させるのだ。武力衝突があろうとなかろうとそれはもはや戦争だ。


フリード「アキラはわかってないようだな。俺のアキラへの愛を!アキラとキスできるなら俺は神でも殺せる!」


アキラ「威張って言うことか…。そもそも俺は男だって言ってるだろう…。」


 それはともかくフリードに言っておかなければならないことがある。手招きのジェスチャーをして耳を寄せさせる。


アキラ「ブレーフェンでの追い剥ぎはただの偶然じゃない。俺達を狙ったものだった。お前は国内にも敵がいるんじゃないのか?」


フリード「あっ…。アキラの息が耳に…。」


アキラ「真面目に聞け変質者が!」


フリード「…わかってるよ。スラムで見つかった死体だろう?」


 さすがバカの仮面を被った馬鹿だ。きちんと情報は把握しているようだ。


フリード「実力次第で上に登れるこの国ではほとんどの者は自分の力を磨いて上を目指す。だが上がいなくなれば自然と順位が繰り上がる以上は上の邪魔な者を消そうと考える者もどうしても現れる。アキラに言わせればこれも腐ってるのかもしれんが国を動かすためにはそういう人間でも必要な場合もあるんだ。」


 確かに俺から言わせれば『そんな奴は始末すればいい』の一言で片付ける。だがフリードの言っていることも理解できる。


フリード「どちらにしろ俺がこの国を治めるには裏で糸を引いていた者は炙り出すことになるしバルチアと聖教のやり方は俺も認めてない。アキラに言われるまでもなくどの道いつかはやらねばならんことだ。」


アキラ「フリードもフリードなりに苦労しているんだな。」


フリード「苦労か。俺は楽しんでるがな。ともかく北回廊の通行許可が取れるまで数日はかかる。それまではここでゆっくりしててくれ。」


アキラ「…わかった。おいロベール。」


ロベール「どうした?」


 ロベールを呼び出すとのこのことやってきた。


アキラ「フリードにロベールを貸してやる。存分に扱き使え。」


ロベール「あ?何の話だ?」


アキラ「俺達は北大陸に渡る。ロベールはフリードに付いてバルチア王国と聖教をぶっ壊せ。」


ロベール「おいおいおい…。俺に死ねって言ってるのか?だいたい俺を置いて行く気か?」


アキラ「北大陸に行くにはロベールは足手まといだ。それにバルチア王国のバカ王子に目に物見せてやりたいだろう?」


フリード「ちなみにフィリップは王子じゃなくて王太子になってるぞ。」


ロベール「確かに足手まといかもしれないが俺は死んでも付いて行くと決めたんだがな。」


アキラ「フリードにはこれから信用できて腕の立つ者が必要になる。それにロベールにも死んでもらいたくない。俺達が戻るまで中央大陸で腕を磨いてくれ。付いて来れるくらい腕を上げたら次は連れて行く。頼む。」


フリード「アキラ…。俺のこと心配してくれてるんだな…。」


ロベール「出会って二週間かそこらの俺が信用できるのか?」


アキラ「出来る。ロベールは信用に値する男だ。違うか?」


ロベール「…はぁ。そこまで言われちゃ断れないよな。よろしく頼むぜ皇太子様よ。」


フリード「フリッツでいい。こちらこそ頼むぞ剣聖様よ。」


ロベール「俺のこともロベールでいいぜ。」


アキラ「二人とも無茶はするなよ。…絶対死ぬな。」


フリード・ロベール「「おうっ!」」


 この二人ならうまくやっていけそうだ。その後は打ち合わせが続いた。俺と師匠とガウはフリードが北回廊への侵入の根回しが出来たらすぐに北大陸へと向かう。フリードとロベールにフリードの信頼できる部下はバルチア王国と聖教への対処に当たることになった。



  =======



 俺達に宛がわれた客室で師匠とガウの三人で寝ている。師匠はあれ以来俺にべったりになってしまった。いつものように寝ている俺に師匠がぴったりくっつくのではなくぬいぐるみを抱くかのように師匠の上に乗せられて抱きかかえられている。『がうもなの~!』と言ってさらに俺の上にガウが乗っている。三段重ねで師匠は重くはないのだろうかと思うが俺達なら上に百人乗られても平気なので肉体的には大丈夫なのだろう。こんな状態では俺なら体は大丈夫でも寝付ける自信はないが…。


 ガウが寝静まったので俺の上から降ろしてベッドに寝かせる。そして俺も師匠の上から降りる。


アキラ「師匠…。お話があります。」


狐神「わかったよ。」


 師匠も何か察していたのかガウが寝静まるのを待ってくれていたようだ。テラスへと出て人に聞かれない場所へと移動する。


アキラ「師匠は俺が前の世界で男だったことはご存知ですよね。今は体は女ですが俺は男のつもりです。」


狐神「ああ。わかってるよ。そして私にとってはアキラが男だとか女だとかそんなことはどちらでもいいんだよ。私にとってはどちらであろうとアキラはアキラだよ。」


アキラ「俺は男として師匠のことを好きになりつつあります。」


狐神「アキラっ!」


 師匠は両手を頬に当ててうるうると潤んだ瞳で俺を見ている。


アキラ「ですがそれは母や姉に向けるような情なのか一人の女性に対して向ける情なのか俺にはまだわかりません。俺は前の世界では誰も愛さなかった。全てを拒絶していました。他人など誰も信用せず両親すら拒絶して…。だから俺にはこの感情がどういう感情なのかまだはっきりわかりません。」


 師匠は黙って俺の話を聞いてくれている。


アキラ「それから…。師匠は俺の意識が眠っていただけだからこれは俺の体だと言いました。ですが俺が覚醒するまで居たアキラ=クコサトは俺の中にはいないんです。もしかしたら俺の意識が眠っていたようにアキラ=クコサトの意識も今は眠っているだけで本来ならこの体は九狐里晶ではなくアキラ=クコサトのものなのかもしれない…。」


狐神「アキラそれは…。」


アキラ「アキラは神になれるのになっていなかった。千五百年も生きていながら夫や子供もいない。もしアキラの意識が戻った時に晶が勝手にそんな大事なことを決めていたらきっと困ると思います。…だから、俺の答えはそれまで待ってもらえませんか?それまでに師匠が俺に愛想を尽かせて違う人を好きになったらその時は俺のことは気にせず師匠の幸せのために…。」


狐神「馬鹿!」


 言葉の途中で師匠に抱きしめられる。


狐神「『それまで俺を待ってろ』って言えばいいんだよ…。私は何千年でも何万年でも…ずっと、ずうっとアキラを待ってるからね。」


 師匠の鼓動と体温が伝わってくる。俺も師匠に腕を回して抱きしめる。


アキラ「待っててください。」


狐神「ああ…。待ってるよ。」


 暫く二人で抱き締め合う。


狐神「私はアキラが私のことを想ってくれるのなら母でも姉でも恋人でも何でもいいんだよ。私のことさえ忘れないでいてくれたらね…。そうと決まればさっそく計画を進めなくちゃね。」


アキラ「………計画って何ですか?」


 嫌な予感がする。


狐神「あん?それはもちろん…アキラはーれむ計画だよ!」


アキラ「………はい?」


狐神「アキラに相応しい女達を集めてアキラのはーれむを作るのさ!」


 どうしていきなりハーレムの話になるのかわけがわからない。師匠との甘くて酸っぱい逢瀬ではなかったのだろうか。


狐神「わからないって顔してるね。アキラは今まであまりそういう性的なことに無関心だった。でもついにアキラは目覚めたんだよ!アキラほどの者なら子孫をたくさん残さなければならない。これは最早義務だよ。優秀な子供達をいっぱい残すんだ。そのためにはーれむを作るんだよ!」


アキラ「師匠はフリードに俺は師匠のものだとか渡さないとか言ってませんでしたか?ハーレムならいいんですか?」


狐神「あのケダモノの子供も欲しいのかい?あまり賛同できないけどアキラが欲しいなら仕方ないよ。きちんと私のことを想ってくれるなら誰に体を許したって誰を孕ませたっていいんだよ。」


アキラ「体を許すとか孕ませるとか…。フリードとそんなことになる気はありません。俺は男のつもりですし男と抱き合う趣味はありません。」


狐神「そうだね。やっぱりアキラにはかわいい女の子が相応しいよ。ガウももうちょっと成長したら…。」


 師匠は目をキラキラさせながら遠くを見ている。俺には見えない何かが見えているのかもしれない。師匠は百合の属性でもあるのだろうか…。俺はイベントフラグを間違えたかもしれない…。その後も師匠は興奮しながら計画とやらを練っていた。



  =======



 それから俺と師匠の関係は変わらない。べったりくっついたり過保護になることもなくなった。だが心の距離は確実に縮まった。まるで師匠の心がいつも一緒にいるようだ。……その言葉であることを思い出した。もしかして…これが魂の繋がりではないだろうか?


フリード「事態が変わった。アキラ!今から北回廊へ向かうぞ。」


 その時突然フリードが駆け込んで来た。皇太子邸に泊めてもらうようになって五日目。これまでフリードの根回しが終わるまで、ここで一時別れることになるロベールを連れてみんなで街に繰り出したり今後について作戦会議をしたりしていた。


アキラ「どうした?一週間はかかるんじゃなかったのか?」


フリード「まだ北回廊への侵入の正式な許可は下りてない。だが逆十字騎士団の者と勇者候補がこの街に来た。奴らの狙いはわからないが今このタイミングでここに来たのはまずい。特に逆十字騎士団の者はアキラ達が北回廊へ入ると知れば何をしてくるかわからない。かち合う前に多少強引にでもねじ込む。」


アキラ「わかった。すぐに向かおう。」


 俺達はすぐに出発した。ロベールの荷物は皇太子邸のロベールの部屋にすでに全部出している。準備はすでにできているので旅用袋を持ってフードを被ればいつでもいける。急いで北回廊大門へと向かっている途中で人ごみができており中心で争っている声が聞こえてきた。


バルチア兵士A「この小汚い獣人のガキが!どう落とし前つける気だ?俺のグリーブを汚しやがって。」


獣人の子供「うぇ~ん。」


???「この子が悪いわけじゃないでしょう?貴方達がこの子を蹴り飛ばしたのはちゃんと見ていましたよ!」


バルチア兵士B「おい姉ちゃん。あんた獣人を庇うってのか?俺達が誰だかわかってるんだろうな?」


???「自分達でいきなり蹴り飛ばしておいて!貴方達が誰であろうと落とし前をつけるのは貴方達の方でしょう?」


 この声は…。俺の脳裏に長い黒髪の少女の顔が思い出される。そういえばフリードが勇者(笑)達も来ていると言っていた。だがまさかちょうど出会うことになるとはな…。騒ぎの中心を覗いてみたが他の二人はいないようだ。


バルチア兵士B「おうおう。勇ましいこって。姉ちゃんが相手してくれるってんならそんなガキ見逃してやってもいいぜ。ヒヒヒ。」


 兵士Bが黒髪の少女の手を掴む。


黒髪の少女「離してください。」


 彼女がこの程度の奴らに負けるとは思えないが時間が掛かり過ぎだ。俺達の通行の邪魔にもなっている。割り込む決意をする。


 コキッ


バルチア兵士B「あれ?…いてぇぇぇ。」


アキラ「邪魔だ。」


バルチア兵士A「てめぇ!何しやがった!」


アキラ「肩の関節を外しただけだ。これからここをガルハラ帝国皇太子殿下がお通りになる。貴様らこそ身の程をわきまえてさっさと道をあけろ。」


バルチア兵士A「なんだと…。ちっ。向こうから来る奴らか。こんな時に。さっさと行くぞ。」


バルチア兵士B「いてぇ。覚えてやがれよ!」


黒髪の少女「あっ!あの、ありがとう…ございます。」


アキラ「………自分の手に負えないことには手を出すな。」


黒髪の少女「っ!…九…狐…里君?」


アキラ「!?」


 黒髪の少女、大和巫女は俺の名を呼んだ。



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