第百四十九話「戦争の後始末」
さて…、どうしたものかな。多少操られていたとは言えアマテラス自身に何の罪もないとは言えない。かと言ってここで俺が正視に堪えないほどの苦痛を味わわせてから殺せば良いのか?ということになる。
やっ…、別に…、あれだぞ?アマテラスの美貌にあてられて殺すのが惜しくなったとかそんなことじゃないぞ?
確かに美しいがアマテラスは伯母なのだ。先ほどまでは何か能力を使っていたせいかちょっと惑わされていたが今ではそれほどでもない。
俺の空力が避けられていたことから、恐らくアマテラスの能力の中に海人族を従わせたり惑わせたりする効果のある能力があるのだろう。あるいはそれは主神として海人族を纏めるためにアマテラスには必要な能力だったのかもしれない。
ともかく戦いが終わってからアマテラスがその能力を解いたようだ。だから今の俺は先ほどまでほどアマテラスに惑わされてはいない。
そりゃもちろん…?今でも綺麗だし押し倒したい美女だ。スタイルも良いし?人妻には手を出さないつもりの俺ですらアマテラスに誘われたら乗りそうで怖い。
シホミ「アキラ御従姉様!」
その時扉がバンッ!と開いてシホミが駆け込んで来た。その後ろから三女神と海人種の兵士達も続いて入ってくる。
シホミと三女神はボロボロになっているな。服も破けてちょっとやばい。男達が四人をやらしい目で見ないように威圧しておく。俺の威圧を受けた兵士達はその場で縮み上がっていたから変な気を起こすことはなくなっただろう。すでに四人の素肌を見られていたとしてもそれはもう俺にはどうすることも出来ない。
シホミ「アキラ御従姉様!あぁ…。アキラ御従姉様のお胸…。なんて素敵な感触なのでしょう。」
シホミは一直線に俺に向かってきたかと思うと抱き付いて胸に顔を埋めてスリスリしている………。何なんだ?何がしたかったんだ?
タキリ「アキラ異母姉様から離れなさい!」
タギツ「タギツだってまだそんなことしてないのにぃ~!」
イチキシマ「そのお胸はすごい威力ですよねぇ…。ええ。私には分かりますとも。」
三女神が何とか俺からシホミを引き剥がそうとするが結構すごい力で俺に抱き付いているシホミは剥がれそうにない。
アキラ「まぁ落ち着け。それでシホミは一体何がしたいんだ?」
シホミ「はっ!そうでしたわ!アキラ御従姉様!どうか御母様を殺さないでください!」
ふむ…。どうやらシホミは俺にアマテラスの助命嘆願にやってきたらしい。『もとから殺す気はありませんでした~』と言うのは簡単だ。だがそれでいいのか?
全てアマテラスが悪いわけでもないが何の罪もないというわけでもない。殺すところまではしないまでも無罪放免とはいかないだろう。
アマテラス「シホミ…。もう良いのです。どちらにしろわらわはもう助かりません。」
シホミ「え?御母様?それはどういう意味でしょうか?」
アマテラスの言葉にシホミは驚き固まる。まぁ俺に抱き付いて胸に顔を埋めたままだが………。
アマテラス「これこの通り…。わらわはすでに致命傷を負っています。」
そう言ってアマテラスが光を操っていたのを解除すると服が血塗れだった。どうやら俺と戦う前からすでに致命傷を負っていたようだ。それを自分の周りの光を屈折させて別の光を出しカモフラージュしていたらしい。
タケミカヅチ「アマテラス様!?いつからそのような……。」
タケミカヅチも驚いていることから誰にも知られない間にどこかでこの傷を負ってきたようだ。傷口自体は服に隠れて見えないが出血の量からしてこのままでは死ぬだろう。
アキラ「ツクヨミか?」
アマテラス「………。」
俺が犯人を聞くと一瞬驚いた顔をしたがその後静かに頷いた。やはりツクヨミがやったらしい。俺がアマテラスに近寄ろうとするとシホミががっちりと俺を掴んで止めようとした。
シホミ「アキラ御従姉様!御母様はもうすでに大きな傷を負っていますわ!どうかこれ以上は…。」
どうやら俺がアマテラスを甚振るか止めを刺しに行こうとしていると思ったらしい。言われるまでもなく俺だってこんな瀕死の者にわざわざ追い討ちしたりはしない。
アキラ「邪魔するな。」
シホミ「あっ…。」
俺に抱きついたまま離れないシホミをお姫様抱っこしてそのまま一緒にアマテラスのもとへと向かう。先ほどまで騒がしかったシホミも今は借りてきた猫のように大人しい。
アマテラス「わらわが死ぬ前にその手で仇を討ちなさい。」
アマテラスはじっと俺を見つめていた。その目は穏やかで死を受け入れている者の目だった。
シホミ「お待ちくださいましアキラ御従姉様!どうか!どうか御母様をお助けくださいませ!」
アキラ「ふむ………。ならばそれなりの見返りはあるんだろうな?」
俺は抱きかかえたシホミを見つめながら問いかける。こんなものは茶番だ。本当は俺だって見返りなんて求めていない。
元々重い罰を与えようと思っていたわけではないのだからそんなすごい見返りなんて必要ない。ただ何もなく無罪放免というわけにはいかない。だから罪を軽くするための茶番を演じているだけだ。
しかしシホミはそれがわからなかったらしい。覚悟を秘めた目で俺を見つめ返す。
シホミ「わかりましたわ………。それならば御母様の代わりにわらわの命をお取りください。どうかそれで御母様をお救いください。」
ウルウルと目に涙まで溜めて俺に嘆願する……。けどこの娘は…、まったくわかってない……。ここは俺に金品などのつまらない貢物をすればそれで済んだ話なのだ。
例え何を捧げられようともまったくの無罪とするわけにはいかないが、ここで俺につまらない物を捧げてそれを対価にアマテラスの罰を軽くするということになれば全ては丸く収まるはずだった。貢物などは所詮口実でしかなく元々軽い罰しか与える気がなかったことを誤魔化す理由付けに過ぎない。
それなのにそれが読めないシホミが自身の命を俺に捧げると言ってしまった。正統なるアマテラスの後継者の命だ。それを断るとなればそれ以上の貢物をしなければならなくなる。そしてそんなものは存在しない。
太陽人種にとってシホミの命より重い物と言えばもうアマテラスの命しかないのだ。だからここで断れば太陽人種には他にこれ以上の貢物などない。
このアホ娘が何もわかっていないから前にも後ろにもいけなくなってしまった。この茶番で罪を軽くする口実に出来なくなったらどうすればいいんだ?シホミのアホ娘のせいで面倒なことになった。他の手が思い浮かばない。
アマテラス「くすっ…。それではシホミはこれからアキラに身も心も尽くさねばなりませんね?」
うまい。アマテラスがうまく軌道修正してくれたお陰で助かった。シホミの言い方ではシホミの命と引き換えのように聞こえたが、アマテラスがうまく軌道修正してくれたお陰で、俺に直接命を捧げるのではなく俺に仕えるという形に変わった。
って、あれ?それってやばいんじゃないのか?
シホミ「え?あの?どういう意味でしょうか?」
言いだしっぺのシホミが一番意味がわからないという顔をして『え?え?』と繰り返している。
玉藻「やれやれ……。十人目のお嫁さんおめでとう!」
何か玉藻が投げやりっぽくそう言った。そりゃそういうことになるよね……。まさかこれもアマテラスの狙い通りじゃないだろうな?
冗談じゃなく本当にあり得るから怖い。俺がシホミを娶れば太陽人種は滅ぼされることはなくなる。皇后の実家なのだからそれほどひどい扱いも受けないと思えるだろう。
スサノオを溺愛していたアマテラスからすれば、自分の娘とスサノオの娘が結ばれるなど願ったり叶ったりだろう。これでは俺が貢物を貰ったどころかアマテラスにご褒美を与えたようなものだ。
娘の幸せも掴み、太陽人種も安泰。こんな万々歳なことはないだろう。
シホミ「え?お嫁さん?」
アキラ「………お前は次期太陽人種の棟梁なんだから愛妾にするわけにはいかないだろう?俺とシホミの子供がその次の棟梁になるんだ。妾の子として太陽人種の棟梁になんてしたらまた太陽人種との軋轢が出来てしまうだろう?」
シホミ「え?え?子供?」
シホミは完全に混乱して話についてこれていない。もう放っておこう。後でそのうち気付くだろう。
それにしても……、俺は相手の地位や出自に左右されるつもりはなかったがシホミに関してはやむを得ないのだろうか……。他の愛妾達は嫁になれないのにシホミだけ嫁にするなんて……。
だがさっき言った通りもしシホミを軽く扱えば太陽人種との軋轢になる。それを避けるためにこんな茶番をすることになったというのにそれでは元も子もない。
………面倒だな。いっそ太陽人種を滅ぼすか?そうだな。そうしよう。それならシホミを嫁にする必要はない。
タキリ「アキラ異母姉様。それはあんまりかと……。」
そっと俺の横に来たタキリが袖を引っ張りながら俺を止める。魂が一体となっている嫁達ほどではないが、心が繋がってしまっているから俺の大きな感情は読み取れるようになったのだろう。
そっと後ろを振り返ると何か嫁達の冷たい視線が突き刺さっていた。
フラン「駄目ですよアキラさん。きちんと責任をとらないと。」
責任って何だよ……。そんな言い方したら俺がシホミに何かしたみたいじゃないか…。
クシナ「大丈夫です。私だって最初はあれほど険悪な雰囲気だったのに今ではこれほどラヴラヴなのですよ?シホミさんだってきっと大丈夫です。」
そう言いながらクシナは後ろから俺を抱き締めてくる。右手側にはタキリが居り、正面にはシホミを抱きかかえているのにそれらごとだ。
最近のクシナは結構グイグイくるな。本当に隙あらば俺の貞操をゲットしようと狙っているのかもしれない。正式な嫁の一人なんだからそれ自体には何も問題はないしな。
玉藻「今回は仕方ないね。」
ガウ「がう……。」
おいガウ。お前返事してる振りしてるけど寝てるだろう?
キュウ「私はどちらでもいいですよ。ねぇアキラさぁん?」
ミコ「そうだね。私もどっちでもいいよ。誰が増えたとしてもちゃあ~んと私の相手をしてくれるんだったらね?ふふっ。」
うぅ…。この悪堕ちコンビはちょっと怖い。何が怖いって俺はこの二人に厳しく言われたら言うことを聞いてしまいそうなところだ。
俺は自分で自分のことをドMだとは思っていないが、この二人に厳しく言われたり妖艶に言われたり、様々な方法で命令されたらきっと聞いてしまうに違いない。それが一番怖い。
ティア「わたくしはよくわかりませんが…。お友達が増えるのならそれは良いことではないでしょうか?」
シルヴェストル「うむ…。色々とやむを得んのじゃ。」
ルリ「………ん。ルリはあっくんと一緒にいられれば他はどうでもいい。」
ルリの言葉が一番ジーンとくる。
アキラ「でもそれだとウズメとかの立場がないんじゃないのか?」
ウズメ「え?うち?」
まさか自分に話が振られると思っていなかったウズメは支えていたガウから手を滑らせた。ガウがうつらうつらしているのを支えていたのはウズメだ。
そのウズメが驚いた拍子に手の力を抜いてしまったのでガウはひっくり返った。でもまだ寝てる。さすが図太い神経だ。ガウはもうこのまま寝かせておこう。
アキラ「ウズメの方が先だったのに、ウズメは嫁になれないと言われてまだ愛妾にも入ってない。それじゃウズメがあんまりだろう?」
ウズメ「えぇ?うちはそんなん気にせぇへんで?それどころかシホミ様と同じ扱いやったらうちが恐縮してまうわ。せやからうちはこのままでええんやで?」
ふむ…。別に強がってるとか遠慮してるというわけじゃないようだな。本人が良いならいいのか?
玉藻「いいんだよ。」
アキラ「ああ、うん…。」
何か心を読まれて会話するのって慣れないな………。
シホミ「え?結婚?はい?」
まだ混乱しているシホミを降ろす。いつまでも抱きかかえていたら玉座に上がってきた目的が果たせないからな。と、思ったがタキリと反対の腕にタギツがとりついていた。
タギツ「あ~ぁ…。やっぱりこうなっちゃうんだぁ…。わかってたけどね…。でもさ……、タギツのことも忘れないでねアキラ?」
タギツがぎゅっと俺の左腕にしがみ付く。可愛いな。
アキラ「当たり前だろう?タギツも、タキリも、イチキシマも皆俺の大事な妹だ。」
タギツ「ちぇっ。妹かぁ…。……でも仕方ないよね。本当のことだから。それで許してやるよ!」
お?バシンとタギツが俺の腕を叩いた瞬間二人の魂が繋がった。どうやらタギツが妹としての立場を受け入れたから繋がったようだ。
タギツ「そっか…。これが二人の言ってたやつか。へへっ。アキラを感じるよ。」
うっ…。にっこり笑顔でそう言われたらちょっとムラムラとしてきたぞ。何で俺の妹達はこんなに可愛いんだよ。
シホミ「わらわとアキラ御従姉様が結婚?………そんな素晴らしいことが起こって良いのですか?」
アキラ「まぁ…、まだ…、確定じゃないかもしれないけど?色々と調整もあるだろうし?」
玉藻「もう諦めなよアキラ。どうせいつものことだろう?」
ですよねぇ…。俺の最後の足掻きもあっさり終わりを告げた。
アマテラス「ふふっ。よかったですねシホミ…。うっ!げほっ!」
話が纏まって安心したのかアマテラスが気を抜いた瞬間吐血した。かなり危ない状態だな。
シホミ「御母様!アキラ御従姉様!どうか御母様をお助けください!」
アマテラスに駆け寄ってその体を支えたシホミは俺に懇願してくる。どうやらもうシホミが俺の嫁に加わるのは規定路線のようだから、アマテラスは俺の義母にもなる。元々伯母でありこれから義母にもなる人物だ。
その上太陽人種の棟梁であり戦争を円滑に終わらせるには必要な人物でもある。ここで死なせることもない。まっ、シホミに頼まれる前から助けるつもりで玉座に上がってきたんだ。さっさと済ませよう。
アキラ「全員少し離れてろ。」
俺の言葉を受けてアマテラス以外の全員が下がる。シホミとタケミカヅチは少し不安そうにしていたが、他の者達は完全に俺を信頼し切っていた。そこまで信じられて失敗したらいたたまれないんだが……。
アキラ「………生命創生之術。」
玉藻「………前から知ってたけど毎回思うよ。アキラ、あんたどんだけ出鱈目なんだい?」
俺が新しい術を使うと玉藻がそんなことを言い出した。何か変だっただろうか?
アマテラス「わらわでも完全には出来ぬ新たなる生命を生み出す秘術。それをこの目で見られる日がこようとは…。そなたは最高神と同じ高みに立つ者なのだな。」
最高神程度と一緒にしないでくれよとは言えない雰囲気だな。でもそんなに驚くようなことか?生を司る天力。その天力を最も多く持ち最もうまく使える者はアマテラスだ。
そのアマテラスをもってすれば死んだ者も生き返ると言われている。今俺がしているのは生きてはいるが死に掛けている者に生命を足していることだ。だからこれでは死んだ者には効果はない…、と思う。
死んだ者ですら生き返らせることが出来る力と、死にかけている者に生命力を吹き込むだけの力とどちらが優れているかと聞かれたら、俺なら生き返らせる方がすごいと答えるだろう。
アマテラス「そんなことはない。わらわの力は元々ある命を呼び戻すにすぎぬ。そなたが今していることは無から生命を生み出すこと。それはすなわち生命の創造。真なる創造神の御業。」
アキラ「ふむ……。って、あれ?俺口に出してしゃべっていたか?」
あまりに自然にアマテラスが俺の心の声に答えるからさらっと流してしまったが、俺は今しゃべってなかったよな?心が読まれる以外に俺は時々独り言も言ってるそうだからな。
アマテラス「そなたがわらわに生命力を吹き込んでおるのだ。その力からそなたの心まで吹き込まれたとしても不思議ではあるまい?」
え~っと…。つまり俺が作り出した生命力を吹き込んだから擬似的に魂が繋がってるような状態ってことでいいですかね?
アマテラス「そういうことになる。」
………マジかよ。フリードやクロと同じか……。嫁達への愛や三女神への家族愛で繋がっている魂の繋がりとは違うタイプの繋がりがまた一つ増えてしまった。
アキラ「でも吹き込んだ力がそのうちなくなれば切れるよな?今だけだろう?」
アマテラス「確かにその通りではあるが…、吹き込まれた生命があまりに強すぎる。使い切るまでにどれほどかかることやら?」
マジか……。またやっちまったか…。………まぁいいか。どうせ俺の心は色んなやつに筒抜けだ。今更伯母で義母にも筒抜けになったって大差はない。
俺は真っ赤に染まったアマテラスの服を上から触って傷を確かめる。恐らく俺と戦っている間に血が垂れたりし難いように色々縛って止血していたのだろう。
その傷の具合がどうなっているか確かめるのにここで服をひん剥くわけにもいかない。だから服の上から体を触って確かめたんだ。だけどそれがまずかったのかもしれない。
玉藻「ちょっとアキラ!何してんだい!鼻の下伸ばして!」
シルヴェストル「その者は駄目なのじゃ!」
まず玉藻とシルヴェストルが飛んできて止められた。
ミコ「アキラ君……。ふふふっ。駄目だよぉ?私も怒っちゃうよぉ?ふふふっ。」
キュウ「アキラさぁん…。わかっていますよねぇ?」
怖い…。いや、マジで怖い。この二人は色々と危険だ………。
ティア「………。」
ルリ「………。」
何かこっちの二人は黙ったままじっと俺を見つめてる。これはこれで怖いな。ミコとキュウが猟奇的な怖さだとすれば、この二人は静かに怒ってる恋人とか嫁とかそういう怖さだ。
ガウ「がぅ~…。がぅ~…。」
ガウはもう完全に寝てる。体が大人のままだから薄着で寝てたら色々ヤバイ。特に胸関係が……。あと太ももとお尻と…。うん。結局全部だな。
クシナ「アキラさん。お気持ちはわかりますが節度というものが大事ですよ?」
フラン「そうですね。でなければ私の大お婆様やお母様も娶っていただけるということになりますよね?」
アキラ「いやいや、待て待て。何でそんな話になる?俺はアマテラスの傷の具合を確かめようとしただけだぞ?何か俺がアマテラスに手を出そうとしたみたいな話にすり替えるのはやめてくれ。」
俺が必死に弁明しても誰も信じてくれない。俺がやらしい手つきでアマテラスの胸を揉みしだいたとか、太ももを撫で回したとか、ありもしない嘘の罪状で断罪されようとしている。
これはあれか?痴漢冤罪か?俺は今痴漢冤罪で逮捕された人達の気持ちがわかったかもしれない。わかってないかもしれないけど………。
アマテラス「ふふっ。面白い者達じゃ。これならばシホミもうまくやっていけるであろう。」
シホミ「御母様。もう大丈夫なのですか?」
アマテラスの言葉にシホミが駆け寄ってその体を支えながら問いかける。
アマテラス「ええ。もうすっかり。太陽人種の降伏にシホミの結婚に…。これからすることがたくさんあるのですからいつまでも寝ているわけにはいきません。」
シホミに支えられたアマテラスは自らの足で立ち玉座に座りなおした。血塗れのはずの服は光を曲げてカモフラージュすることで着替えていないのに綺麗になったように見えている。
アマテラス「まずはわらわの責任を問いましょうか。どのような処罰でも受けます。」
アマテラスが俺を見据えながら戦争責任を自分一人で引き受けると言う。さて…。どうするかな。
タケミカヅチ「待て。アマテラス様に責任はない。軍の最高位であった俺に全ての責任がある。」
そこへ今まで空気だったタケミカヅチが割って入ってくる。この後暫く二人は自分が責任を取ると言い合っていた。このまま放っていても決着はつきそうにないから俺が決めるしかない。
アキラ「静まれ。今からお前達に与える罰を告げる。まずアマテラス。お前は今回の責任を取って俺に最愛の娘を捧げよ。そしていずれ娘に、さらには娘の子供に太陽人種の棟梁の地位を譲れ。」
一瞬何を言われたのかわからないという顔をしたあとアマテラスはふっと笑った。
アマテラス「いいでしょう…。しかと承りました。」
アキラ「そしてタケミカヅチ。お前はこれより俺に仕えろ。そしてシホミに俺の子が生まれたら身命を賭してその子を守れ。守れないなどとは言わせない。何があっても必ず子供を守れ。いいな?」
タケミカヅチ「はっ!……承知仕りました。」
シホミ「子供……。子供……。」
アマテラスとタケミカヅチは少し涙を流していた。シホミはまだあまりついてこれていないようだ。混乱した頭で子供子供と繰り返している。
しかし暫く繰り返していたかと思うと急に真っ赤になって色々ヤバイ言葉を叫びながらテンショウ中を駆け回っていた。
そのせいで後日シホミに変な噂が流れることになるがそれはまた別のお話。
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太陽人種は降伏し、アマテラス達テンショウの首脳部にも裁きを与えた。これで今回の戦争で主要な敵は全て降伏したことになる。小規模な戦闘はまだまだ続くだろうが国家規模では終戦となった。
少し落ち着いたのでタケミカヅチにも話を聞いた。何でもスサノオとは喧嘩友達のようなもので昔から何度となく戦ったらしい。もちろんお互いに相手を殺す気ではやっていない。
それほど仲が良いのならスサノオに仕えそうなものだが、色々な事情があってタケミカヅチはアマテラスに仕えることになったようだ。
最初のうちは何の問題もなかったが、アマテラスが思考誘導のようなものを受けてからは命令にも疑問を持っていたらしい。だが自分もいつの間にか奇妙な命令にも疑問を持たないようになっていったそうだ。
つまりいつの間にかタケミカヅチも思考誘導を受けていたのだろう。それはさっき俺と戦うまで続いていたようだ。
恐らく火之迦具土神で神力まで食らい尽くされた時に思考誘導のもとのようなものまで食らい尽くされたのだろう。
まるで靄がかかったようにぼんやりしていた頭がはっきりするようになったらしい。アマテラスも俺の生命創生之術をかけられて同じような感じらしい。
誰が何のためにとは言うまい。全てツクヨミの仕組んだことだ。そして最後には邪魔になるアマテラスを殺そうとした。
だが少し妙だな。あれほどの傷をアマテラスに与えておきながら何故止めを刺さなかった?あれだけの傷を与えていたのだから倒せなかったとか逃げられたということはないだろう。
俺が先にテンショウを攻めるかもしれないから?テンショウでアマテラスとぶつかった方が俺が消耗すると思って?
どうもしっくりこない。ここまで手の込んだことをしてきたツクヨミがそんな単純なことをするか?それでもしアマテラスの思考誘導が解けて自分の敵に回ったら面倒だ。ツクヨミがそんなことをするとは思えない。
………まぁ考えてもわかるものではないな。後は『本人に』聞けばいい。
アキラ「それじゃ一度帰ろうか?」
玉藻「はいよ。」
俺の言葉でカムスサへ戻る者が集まってくる。今回もゲッカと同様占領部隊を残すらしい。スクナヒコナ達は何も活躍出来なかったからカムスサへ戻ってまだ燻っている各地の戦闘に赴きたいと言っている。
嫁や仲間達はもちろん三女神とスクナヒコナ達に一部の兵士。それから行きと違うのはシホミがついてくるということだった。
まだ俺の嫁ということにはなっていないが、二人の相性を確かめるためにも暫く一緒にいろとのことだった。これで正式に決まればカムスサとテンショウでお祭り騒ぎの結婚式が行われるらしい。
あまり想像したくないがな…。それにシホミの結婚式だけそれほど盛大にするというわけにはいかない。それならば他の嫁達の結婚式もしなくてはという話になって中々決まらないのが現実だ。
おっと。ちょっと脱線していたな。それはまだ決まっていないから後でいいだろう。
アキラ「全員いるな?いくぞ?大転門。」
シホミを加えた俺達はカムスサへと転移したのだった。




