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転生無双  作者: 平朝臣
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第百四十六話「空中都市テンショウ」


 一先ず大転門で出たのは旧バルチア王都パルだ。いくら俺が大胆不敵で見たこともないテンショウにでも空間把握能力を使って転移出来ると言っても、いきなりテンショウの中に転移するほど無鉄砲でもない。


 俺一人ならそれでも問題ないが今回は大勢の仲間や部下を連れているんだからそいつらが死ぬリスクが高い行動はなるべくしない。


 何度も言うように全員死なないように俺が全てを守るなんてことはしないが、わざわざ死ぬ危険が高いことをさせる必要もない。


 常識的に考えてより良い作戦だけ実行していけばいい。その結果いくらか犠牲が出てもそれはやむを得ない。


タキリ「あの…、ここはどこでしょうか?」


 タキリが遠慮がちに俺の袖を引っ張ってオズオズと尋ねてくる。世間知らずのお嬢様だったから地理がわからないのが恥ずかしいのかもしれない。


 その上聞ける相手が俺だけなのも問題なのだろう。ヤタガラスにならば普通に質問出来るのだろうが、自分の身に置き換えて考えれば、憧れの人に無知を晒してつまらない質問で煩わせるのは申し訳ない。でも聞かざるを得ない。そんな気持ちに近いのではないだろうか。


 ちょっと恥ずかしさと申し訳なさが入り混じったほんのりピンクに染まった顔でそんな態度をされたら………。いかんな。異母妹にムラムラしてどうする…。ちょっと落ち着け。


アキラ「ここは旧バルチア王都パルだ。テンショウが隠れていた場所だな。テンショウはここから飛び上がったはずだが、何か残ってないかと思ってな。それにいきなりテンショウの中に転移するのも危険だろう?」


タキリ「あっ…、はい…。そうですね。」


 もう話は終わったはずなのに袖を離してくれない。ちょっとモジモジしながらずっと俺の袖を握ってブラブラさせてる。何だこの可愛い生き物は?


 あまり俺を誘惑するのはやめてくれ…。妹として可愛がりたいと思っているのに女として意識してしまうじゃないか………。


アキラ「それじゃちょっとテンショウが隠れていた場所を見に行こうか。」


タキリ「あっ!………。」


 袖を握られたままだと動き難いので俺はタキリの手を離させた。一瞬驚いた顔をして悲しそうな顔をしたタキリだったが俺がすぐにその手を握ると真っ赤になって固まってしまった。


アキラ「どうせなら袖じゃなくて手の方がいいだろう?」


タキリ「―ッ!」


 あ~ぁ。耳まで真っ赤にしちゃって…。そんなに照れるなら自分からこんなことしなければ良いのにな。でもそういう所が可愛くて…、いや、違うぞ?妹としてな?決して疾しい意味じゃないぞ?


タギツ「あー!アキラ!タキリと何してんの!タギツお姉ちゃんとも手をつなぎなさい!」


 目敏く俺とタキリが手を繋いでいるのを見つけたタギツが逆の手を取る。これで俺の両手は塞がってしまった。


イチキシマ「………。」


 そんな俺達をイチキシマがジッと見ている。


タキリ「譲りませんよ。」


タギツ「早い者勝ちだもんね~!」


 二人はイチキシマが自分も入れろと言ってくると思ってか先手を打って交代しないと告げた。しかしイチキシマはふっと笑ったのだった。


イチキシマ「ええどうぞ?私はアキラ様ともっとすごいことをしましたから…。二人は手を握るくらいしか出来ないでしょうけどそれで満足だと言われるのならどうぞどうぞ。ねぇ?アキラ様。」


 イチキシマはゾクリとするほど妖艶な笑みで俺に笑いかけた………。え?イチキシマってこんなタイプだったっけ?何か俺が変なスイッチを入れてしまったのか?椅子で上に跨ったのが原因で?


タギツ「むきぃ~!タギツだってアキラとチュッチュするもんね!」


アキラ「待て…。俺はイチキシマとはチュッチュはしてないしタギツともしないぞ。」


 さらっとハードルを上げるんじゃない。ちょっとハグするくらいなら姉妹でもするだろうがチュッチュは駄目だ。それは俺の中では越えてはいけない一線を越えている。


タキリ「私は………、これでも良いですよ?アキラ異母姉様にご迷惑をおかけしない範囲で限界がこれだと言われるのでしたら…、これで満足します。」


 ええ娘や…。めっちゃええ娘や………。タキリってこんなポジションだったか?どっちかと言えばこういうタイプはイチキシマかと思っていたが……。


ミコ「アキラ君?姉妹で仲が良いのはいいことだけれど節度は守らないと駄目だよ?」


アキラ「はははっ…。当たり前じゃないか………。なぁ?」


 ミコさんが怖い………。ちょっとタキリにときめいたのを気付かれたらしい。でも仕方ないじゃないか。あんなにしおらしくて素直なタキリを可愛いと思うことはおかしなことか?


 ただ手を出す気はもちろんないぞ。その辺りはきちんと弁えている。いつもそう言いながら嫁や愛妾を増やしてきたじゃないかって?それは違うぞ。他の女ならそれでも受け入れてもいいかと思っていた部分があるが異母妹ではそうはいかない。


玉藻「別にいいんじゃないかい?ファルクリアじゃほとんどの種族が異母兄弟姉妹の婚姻を認めてるよ?むしろ私からすれば何でアキラやミコがそんなに反対してるのかそっちの方が不思議だけど?」


 ふむ…。確かに地球の倫理観とファルクリアの倫理観の違いだけだと言えばそれまでだろう。そもそも前にも言ったが地球でも昔は異母兄弟姉妹の結婚は比較的広く認められていた。


 けどそれはそれ、これはこれ。例えこの世界でそれが許されているとしてもこの一線は俺は越えない。嫁全員が認めて積極的に介入してきたとしてもだ。今回は今までと違って三女神のことはこれからも妹として通す。


 そんなことをしながら歩いているとかなり洒落にならないほどでかい穴を見つけた。本当にでかい。パルの郊外から外に向けて大きな穴が空いている。


 広さで言えばドーム何個分とかいうレベルじゃない。そうだな…。山何個分とかそんなレベルだ。実数でどれくらいかは伝わらないと思うがそれがどれほどでかいかはわかっていただけると思う。


アキラ「これか。かなりでかいな。伊達に八百万やおよろずが住む都市ではないということか。」


 俺はぽっかり空いた穴に下りてみた。ゲッカと違ってここに入ったからといって敵がいるわけじゃない。そんなことはわかっている。俺が穴に下りたのは別の目的があってのことだ。


クシナ「何か探しておられるのですか?一緒に探しましょうか?」


 俺が穴に下りてあちこち見て回っているとクシナがそう聞いてきた。


アキラ「探してると言えば探してるが…。具体的に何を探しているというわけじゃないんだ。ただ何かテンショウ関連の痕跡が残ってないかと思ってな。」


 ここで敵の何かを探してるわけじゃない。ただ…、何か敵の痕跡が…、それこそ敵の秘密や弱点に繋がるようなものがあればいいなと思って見て回っているだけだ。


玉藻「ふぅ~ん…。皆で手分けして探そうか?」


アキラ「……いや。もういいよ。ありがとう玉藻。何か探してるわけでもないのに、あるかどうかわからない物を探して人手と時間を使うことはないだろう?もう移動しよう。」


 そう言って穴から出ようとした時………。


ミコ「アキラ君、これは?」


 何かを見つけたミコが拾って俺の前に持ってきた。


アキラ「これは………。」


 ミコが持ってきたのは勾玉?だが紐の部分はなく玉だけしかない。俺がそれを受け取ると……。


アキラ「―――ッ!!!」


 俺の体が電気を流されたようにビクビクと無自覚に反射を繰り返す。


ミコ「え!?アキラ君?大丈夫?」


アキラ「あぁ…。大丈夫だ…。」


 皆が何事かと俺を心配してくれたが体に異常はない。ただこの勾玉に触れた瞬間にある映像が頭に流れて反射的に体が勝手にビクビクと反応してしまっただけだ。


 そうか…。やっぱりそういうことか…。後は本人に聞くだけだな………。


アキラ「それじゃ行こうか。太陽人種との戦争に決着をつけよう。」


 ………もしかしたら、この勾玉はアマテラスが敢えて置いていったのかもしれない。俺が必ずここを調べるとは限らない。調べたからと言って見つけるとも限らない。


 それでももしかしたら俺が見つけるかもしれない。そう願ってアマテラスが置いていった。そういう可能性もあるかもしれない。


 だが俺が見た映像から考えるとアマテラスはこの秘密を墓まで持って行く気のはずだとわかる。それじゃこれを置いたのはアマテラスではない?だとすれば他にこんなことをしそうな者を俺は一人しか知らない。


 恐らくテンショウに行けばあの娘にも会えるだろう。その時余裕があれば確かめてみるのもいいかもしれないな。


 海人種達はパルにテンショウへの侵攻拠点を築き準備を進めていた。テンショウは浮かび上がってからほとんど移動していない。つまりパルの上空に漂っている。


 前線基地となる拠点を築き防衛部隊が整い後はテンショウへと乗り込むだけとなった。本当はこんな拠点なんてなくても一回攻め込んで落とす予定だから必要ないのだが海人種達がやりたいようにやらせている。


アキラ「いいか。これがこの戦争の最後の戦いだ。空中都市テンショウを落とし、この戦争を海人種の勝利で飾る。全員出撃!」


海人種達「「「「「おおっ!」」」」」


 まぁテンショウを落としてもまだ敵はいるだろうし一悶着も二悶着もあるだろうが、国規模の集団はゲッカとテンショウが落ちればいなくなる。


 国家規模での戦争はこれが最後だ。ゲッカでの戦いで相性の悪い月人種とでも圧勝していたのだから相性の良い太陽人種にそうそう遅れは取らないと思うが、油断せずにきっちりと終わりたいものだ。


スクナヒコナ「それじゃ行きますぜ姐御。」


 スクナヒコナとその舎弟達が先陣を切って飛び上がる。それに続き三女神と正規の海人種の兵士達が飛ぶ。テンショウは名前の通り空中にあるから飛べない者は今回の戦いに選ばれていない。


 飛べない者は下の拠点の防衛部隊にでも回されているか、そもそもヤタガラスが選んでいないだろう。


 最後に俺と嫁や仲間達が飛び上がる。海人種達は短い距離の界渡りを上に向かってしている。つまり上に転移して落ちる前にまたさらに上に転移することを繰り返して飛んでいるのだ。


 俺の仲間達は全員何かしらの方法で空を飛べるから海人種達のような変則的な飛び方はしていない。


 それにしても界渡りは汎用性が高過ぎる。はっきり言って便利すぎてチート級だ。戦闘においては月人種の『死』を操る能力もチートだが、あれは一種の即死攻撃なので手加減したり戦闘以外で使ったりというのが難しい。


 界渡りは戦闘でもそれ以外でも発想次第でいくらでも使える能力だ。この便利さは戦闘以外にも影響し、海人種達の経済や文化の発達にも大いに役立っている。


 だが本来種の全体が持っていると思われる特殊能力で、海人種だけは何故か少し他の種と違う点がある。海人種は全員が界渡りを自由に使えるわけではないということだ。


 全員が一応使えるが習熟に差があるというのならまだわかる。だが海人種はそもそも界渡りを持っていない者もいるのだ。


 空力自体は持っているので海人種だとは言える。しかし海人種の特殊能力である界渡りが使えない。未熟だったり力が弱すぎてほとんど効果がないというわけではなく能力そのものを持っていない。これはどう考えてもおかしい事態だ。


 そのことから考えると恐らくだが海人種は本来一つの種ではなかったのではないか?例えば様々な集落が寄り集まって大きな集落群となり、その集落群がさらに寄り集まって国となる、というようにいくつかの種が寄り集まって出来ているのではないだろうか。


 その中で海人種と呼ばれる主要な者達が界渡りを持っていて、周辺の他の種を統合していった。そうして出来たのが今の海人種ではないだろうか。


 だがそれならば何故他の種でも似たようなことが起こっていないのだ?という疑問が沸く。他の種は不寛容で自分達以外の種は全て滅ぼしていったから?海人種だけが周辺の少数の種を統合していったのか?


 そんなことはないだろう。そもそも猫人種でも犬人種でも同じ獣力を扱い獣化やチャクラを使うことが出来る。それなのに月、太陽、海はそれぞれ違う能力を持ち、さらに海人種の中ですら持つ能力に違いがある。


 それなら皆もともと別種だったのか?だが空力を扱えるという点では同種なのだ。この違いが何なのかわからない。


イチキシマ「それは神が違うからです。」


アキラ「……びっくりした。急に何だ?」


イチキシマ「今のアキラ様の疑問です。神格を得て神になるということは自らが庇護者となり加護を与えるのです。その神がどのような加護を与えるかでその者達がどのような力を持つか変わるのです。」


アキラ「ふむふむ……。ん?何でイチキシマが俺の考えていたことをわかるんだ?口に出していたか?」


 俺はしゃべってなかったよな?それなのに何故イチキシマが俺の考えていたことをわかっているんだ?


イチキシマ「アキラ様の御心が流れてきましたので………。」


 イチキシマが赤くなりながら両手で両頬を押さえている。………心が流れる?まさか……。


アキラ「………いつからだ?」


イチキシマ「アキラ様が私の上に界渡りしてこられた頃からです。」


 あんなものでか?肉体的なスキンシップでは繋がらないはずだが………。俺とイチキシマはいつの間にか魂が繋がっていた。


 もちろん異性への愛で、ではない。異母妹への姉妹としての愛情だ。そしてそれに気付いて良く見てみればもう一人増えている。


タキリ「………私も先ほど繋がりました。」


 そう。タキリも繋がっている。こちらももちろん異性への愛ではない。妹としてだ。聞く所によれば先ほど手を繋いだ頃らしい。


タギツ「何それ!タギツだけ仲間はずれなんてやだよ!アキラ!タギツお姉ちゃんともそれして!」


 タギツが三女神で自分だけ繋がっていないことに気付きおねだりしてくる。でもおねだりされてもどうしようもない。それにタギツはこの魂の繋がりのことをよくわかっていないようだ。ただ何となく自分だけ他の二人と違うと気付いて拗ねているだけだ。


アキラ「これは狙って出来るものじゃない。タギツが素直になって俺がそれを受け止めればそのうちそうなるだろう。」


タギツ「ぶーぶー!何かその言い方だとタギツが素直じゃないみたいじゃん!」


 タギツがまだ何か言って俺のゴスロリドレスを引っ張っているがもう気にしないことにする。こいつに付き合っていたらキリがない。


 それよりも重要なことがある。さっきイチキシマは何と言っていた?神が加護を与えてそれにより力が変わる?


 『守護者の祝福ギフト』ってやつのことか?神々の盟約の話の時も似たようなことを聞いた。つまり各集落にそれぞれ神が生まれて、その神が『守護者の祝福』で自分の集落の者達に何らかの能力を与える。


 だから空力を持つ海人種というのは同じでも使える能力に違いがある?そして最終的に主要となった者達の持つ能力が界渡りだった?


アキラ「それならば何故それが海人種だけ起こっている?他の種族でもそういうことが起こってもおかしくないんじゃないか?」


イチキシマ「まず…、海人種達は神が生まれるのも早く多かったのでしょう。そう…。それは集落が纏まり国となり海人種全てが揃う前に加護が与えられるほどに。他の種はほとんどの者が集まるまでそういうことがなかったのでしょう。」


 なるほど。『守護者の祝福』は対象にする相手は自分の庇護する者達にしか与えられないと言っていた。つまり自分の村だけしか庇護していなければその能力も村の者にしか与えられない。


 他の種族が国が出来てほぼ一つに纏まり自分の種や族全体を庇護する神が生まれるまで『守護者の祝福』が与えられることがなかったのに、海人種はその前の集落の段階ですでに神が『守護者の祝福』を与えていたというわけだ。


 その話は結構説得力がある。それが事実かどうかはともかく俺はイチキシマの説明を最有力として覚えておくことにした。


 そんな話をしているとあっという間に雲の上にまで上昇し、雲を抜けるとすぐに空中都市テンショウが見えた。


アキラ「あれか。下りるぞ。」


 はっきりいって滅茶苦茶でかい。空の上を漂っている城とか比較にならないだろうと思うほどにでかい。こんなものがどうやって浮いているのかと思う。


アキラ「………やはりいたか。」


シホミ「御機嫌ようアキラ御従姉様おねえさま。」


 俺達が空中都市テンショウの正面入り口と思われる辺りに下りるとシホミが待ち構えていた。と言っても別に兵士などを連れているわけではない。一人でポツンと立っているだけだ。


 いくらシホミでも俺達全員を相手に一人で戦うということはないだろう。つまりここに立っているのは戦闘が目的ではないということだ。


アキラ「何の用だ?」


シホミ「アキラ御従姉様は御母様をしいするおつもりですか?」


 シホミがしおらしくそんなことを聞いてくる。ちょっとクラッとくるがそんな場合じゃないから気を引き締めなおす。


アキラ「それはアマテラス次第だが…?」


 確かに最初は殺そうと思っていた。しかし今はアマテラスに直接話を聞いてみたいと思っている。その結果場合によっては殺さないかもしれない。


シホミ「そうですか……。よかった…。それではわらわの願いを聞いていただけますか?」


 何がよかったのだろうか?アマテラス次第では殺さないと聞いて殺される心配はないと受け取ったのか?俺がアマテラスを殺さない判断をするという自信があると?


アキラ「何で俺がお前の願いを聞く必要があるんだ?と言いたい所だが話だけなら聞くだけ聞いてやろう。」


 実際にどうするかはわからないがな。もうこんな局面だ。慌てることもない。聞くだけ聞いてみればいいだろう。


シホミ「それでは……、わらわを殺すか娶ってください。」


アキラ「………はい?」


 殺すか娶れ?意味がわからない。そもそもその二択はあまりに選択肢が違いすぎるだろう。


シホミ「わらわを殺すことで太陽人種の罪を許してください。それが出来ないと言われるのでしたらわらわを娶ってアキラ様の子孫として太陽人種の血を引く子を残させてください。」


 ふむ?つまりシホミを殺すことで全てを許すか、許せず太陽人種を滅ぼすのなら代わりにシホミに俺の子を産ませて俺の子として太陽人種を残してくれと?


アキラ「言ってることがおかしくないか?何で太陽人種を滅ぼす選択をした場合にシホミだけ生き残って俺の妻になることになるんだ?絶滅させるならシホミも消すだろう?」


シホミ「はい。わらわも殺されても構いませんわ。ですがわらわを殺す前にアキラ御従姉様の子を産ませてください。その子をアキラ様の子として育ててください。その後でならばわらわは抵抗することなく殺されましょう。」


玉藻「シホミは従妹なんだから何の遠慮もする必要なく娶れるね。」


 そりゃ地球でも直系三親等でなければ結婚出来る。だから傍系四親等である『いとこ』同士ならば結婚は可能だ。けどだからって何で俺がシホミを娶らなきゃならないんだ?


アキラ「太陽人種が降伏するのなら皆殺しにはしない。だからシホミが俺の妻になる必要もない。」


シホミ「いやですわ!わらわも娶ってください!」


 シホミが俺に駆け寄ろうとした所で三女神が飛び出した。


タキリ「止まりなさい。それ以上アキラ異母姉様に近づくのではありません。」


イチキシマ「あなたはお呼びじゃないのよ。」


タギツ「しっ!しっ!あっちいけ!」


シホミ「ふぅ…。まったく。貴女方如きがわらわを止められると思うのかしら?」


 俺の前を塞いだ三女神に対してシホミが天力を開放して威圧する。確かに第二階位のシホミと第三階位の三女神ではシホミの方が強い。


 ただしそれは一対一で戦った場合の話だ。第二階位の下のシホミが相手ならば第三階位の上の三女神が三人いれば絶対勝てないというほどの差ではない。


 そして三女神は三人揃っていれば滅茶苦茶強い。単純に一人で戦う時の三倍というだけではない。この三人は三人一緒に戦ってこそその真価を発揮する。


シホミ「そもそも何故貴女方が邪魔をするのです?わらわ達四人がアキラ御従姉様の妻になれば良いではありませんか。それともわらわだけ除け者にする気かしら?」


タキリ「アキラ異母姉様は私達を娶りません。ですから貴女も娶らせません。」


 う~ん?何の争いだこれは?確かに俺は三女神を娶らない。そしてシホミなら娶れる。実際に俺が娶りたいかどうかという意味じゃなくて血縁上の話だ。


 だからシホミに抜け駆けされないように妨害しているのか?何か最終決戦に来たはずなのにくだらない理由で争うことになったものだ。


 しかし俺のそんな感想とは裏腹に海人種達は三女神とシホミの戦いに大きな声援を送っていた。実際戦闘のレベルは高い。このレベルの戦闘は滅多に見られないだろう。


 何しろゲッカに行った時は敵の中にこれほどの者がいなかったためにあっさり勝ってしまっていたからだ。この三女神とシホミの争いは両者が拮抗しており見応えも十分にある。


 けどこんな争いを見ているほど暇でもない。ここは海人種達に任せて俺達は先に進もうか。


アキラ「あいつらはここで遊んでるみたいだし先に行こうか。」


キュウ「ですねぇ~。」


スクナヒコナ「俺達も行くぜ。」


 どうやらスクナヒコナとその舎弟もついてくるようだ。ここに残るのは三女神と海人種の正規兵達だけだな。俺達はここで争っているシホミ達を置いてテンショウへの入り口の門を潜ったのだった。


 テンショウが飛び立った場所に置いてあった勾玉の件をシホミに聞けなかったがもういいだろう。アマテラスに本題を聞けばそれでいい。勾玉を誰があそこに置いたのかなど重要ではない。


 かなり巨大な門を潜ると整然と並んだ巨大な町並みが見えた。もともと巨大な都市ではあったがこれほどの広さがあるなどおかしい。


 理由は毎度お馴染みだな。そうだ。海人種の界渡りで空間が歪められている。しかもこの空間を歪めたのはスサノオだ。力の波動からこれをしたのがスサノオだとすぐにわかった。


 過去の映像で空中都市テンショウを建造中にスサノオがやってきた映像はなかったが、俺が観ていない所でやってきてこの場所を歪めたのだろう。


 そこには大勢の者が住んでいた。それも太陽人種だけじゃない。ここには月人種も海人種も分け隔てなく一緒に暮らしている。


 そうだ…。つまりアマテラスは海人種を差別もしていないし対等に扱い保護している。何かどんどんアマテラスが悪い奴という気がしなくなってくる。


 しかしまだ油断するのは早い。これらも全て演技で俺達を騙すためにやっているという可能性を捨て切れない。だからよ~く確認しなければな。


 それにしてもテンショウ内を俺達が闊歩しているというのに兵も襲ってこないし、中で生活している普通の住民達も俺達を見ても何の反応も示さない。


 反応を示さないと言うと、まるで催眠状態のように自我がないのかと思われてしまいそうなので補足しておく。住民達は決して感情がないとか自我がないとかそういうわけじゃない。


 住民達は幸せそうな顔で普通に生活している。俺達が闊歩していることにも気付いている。ただ誰も俺達のことを気にしないだけだ。いきなり俺に襲われるなんて考えもしていないという風だ。


 つまりそれはこの町が争いや犯罪もなく他人に襲われる心配などない町だということだろう。だから誰も他人を警戒したりしない。


 そしてそれはつまりアマテラスの政策の良さが表れているということだ。何種でも分け隔てなく平和に暮らせる町。この町を破壊したいとは思わない。願わくばアマテラスが俺達と争う道を選ばないことを願う。


 もう戦争にはなってしまっているが、無駄な争いを避けて降伏してくれれば一番被害がなくて済む。そう思いながら俺達はアマテラスへと続く最後の門を開いたのだった。



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