表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生無双  作者: 平朝臣
133/225

第百十一話「新装備で準備万端」


 翌朝全員で準備に取り掛かる。残る者達もカムスサにいるからと言って絶対安全というわけではない。今のところ海人種は協力的ではあるが、いつ突然掌を返さないとも限らない。またこちらが動くことによって月人種や太陽人種が先手を打とうとここに攻め込んでくる可能性もある。


 だから残る者達も相応の備えというものが必要になる。残る者達の安全確保も含めて全員の生存率を高めるために新しい装備を配る。


アキラ「これが師匠が新たに織った服だ。鎧を着る者達は下に着ておけ。」


 まずは服を渡す。力の上がった師匠が前以上に妖力を込めて織ったものだ。太古の遺物を除けばこの服だけでも地上最高の防御力を誇っているだろう。


アキラ「そしてこれが俺の作った装備だ。ほとんどの物は専用になってるから順番に渡していくぞ。」


 俺が作った武器や防具を順番に渡していく。これらは俺のボックスに寝かされていたヒヒイロカネで作ったものだ。長い時間をかけてようやく完成した。これらと同等か超える可能性がある物は三種の神器くらいしかない。まさに世界最高の装備だ。


 まずは師匠。師匠はまだ体が小さいままだから今すぐ装備は出来ないが渡しておく。約二十四時間ほどで元に戻るのでそのうち元に戻るだろう。


 師匠は巫女服がお気に入りなのか新しく織ったものも巫女服だ。師匠は鎧を嫌がるので鉢金と手甲、胸当てと袴の下に脛当てをしている。金属部分は少ないがヒヒイロカネで出来ているのでクロのレーヴァテインを受けても傷一つ付かないだろう。


 首には勾玉をかけている。菖蒲の葉のような剣を持ち鏡になっている盾を持っている姿はまさに三種の神器を持った巫女の姿そのものに見える。まぁ三種の神器は俺が作ったレプリカだけどな。


 次にガウ。ガウはショートパンツとシャツに変更されている。前はかぼちゃパンツが丸見え状態だったからこっちの方がいいだろう。


 ガウも鎧をつけない。手甲は少し鉄の爪のようになっている。肘、膝、脛、腰などの要所にはヒヒイロカネで出来たプロテクターをつけているが基本的にはガウの動きを阻害しない軽装になっている。


 ミコは今回もミニのプリーツスカートだ。シャツにネクタイにプリーツスカートでまるで日本の女子高生のように見える。もう日本で言えば成人してる年齢だけど…、って言ったらミコが怒るから禁句だ。


 その上から胸の部分を覆う鎧と各関節や籠手や脛などを守るプロテクターをつけている。軽装鎧に小型のシールドと細身の剣を持つスタイルは少しクシナと似ている。


 ただしミコの剣はレイピアのようにかなり細い。もちろんレイピアと違って斬る用途にも使えるが少し頼りなく見える。尤もヒヒイロカネで出来ているから太刀の獣神の大剣よりもよく斬れるし強度も高いがな。


 フランも相変わらず魔女っ娘スタイルだ。見ようによっては俺のゴスロリのようにも見えるロングスカートにタイツに編み上げブーツを履いている。


 フランも鎧を使わないのでオペラグローブの上から籠手をしたり、脛当てをしたり、要所要所に少しだけプロテクターをつけているだけに過ぎない。


 代わりに全身に色々なアクセサリーをつけているのも前と同じだ。それから前の細い棒の杖はヒヒイロカネ製ではなかったのでヒヒイロカネ製の杖も持たせている。


 これでフランは最初から持っていた大きい木製の杖と細い棒の杖とヒヒイロカネの杖の三つも持っていることになる。細い棒は腰に差して必要な時だけ抜いて使うようだが、手持ちの二本の杖はどうするのだろうか。杖の二刀流って意味あるのか?


 ティアは………何でこんな衣装なんだろう?レオタードみたいな服にビキニ鎧のようなものをつけている。ビキニアーマーのくせに下にレオタードを着ているなんて邪道だ!って言う奴がいるかもしれない。その上から水の衣のようなものを纏っている。


 そして腰には針の剣を装備している。貧相な武器に見えるが実際はヒヒイロカネで出来ているのでこの針ですら折れる者はいないだろう。ついでにこの針にはある効果が付与されているので侮れない威力を秘めている。


 シルヴェストルはギリシャやローマの鎧のような感じだ。俺が地球の頃の記憶を頼りにそれっぽく作っただけだから実際には構造や形は違うだろう。


 そしてその手には杖が握られている。杖の上部は放射状に広がっている。何で武器が杖なのかはよくわからない。杖をチョイスしたのはシルヴェストル自身だ。


 ちなみにティアのビキニアーマーをチョイスしたのは師匠だ。師匠に言われるがままに作ったので俺の趣味で作ったわけじゃない。


 ルリはミコよりも本格的な鎧を着ている。全身鎧ではないが上はプレートアーマーと呼べる代物ではないだろうか。ただしこれも肩から胸、腹の上部までを覆うもので体全てを覆うものではない。下は腰当くらいだ。あとは他の皆と同じように籠手や脛当てや腿当てのようなものしか着けていない。


 剣も普通のサーベルのような感じだ。ミコより小さな体なのにミコより重武装で何だかチグハグな感じがする。しかし実際には腕力などはルリの方が強いので何の問題もない。盾は持たないようだ。


 キュウは縦編みセーターに白衣だ………。変わってないじゃないかって?ああ…、変わってない。ただし変わった部分もちゃんとある。


 まず兎耳に専用のプロテクターが装備されている。これで耳も安全だ。そしてお尻から出ている丸い兎の尻尾。これも専用のプロテクターで覆われている。これで尻尾も安全だ。


 うん…。全然意味ないよな。ただしそれはこのままならの話だ。実はキュウの装備はこれだけじゃない。月兎開放した時に展開される装備を渡してある。ただしそれは普段は装備出来ない。


 通常状態のキュウでは扱いきれないのだ。だから月兎開放するとそれに反応して自然と装備されるようになっている。


 普段の状態での防御力が心配ではあるが、師匠が新たに編んだセーターと白衣の防御力を信じるしかないだろう。あとは不意打ちさえ食らわなければ月兎開放が間に合うと思うしかない。


 嫁達の最後はクシナだ。クシナは元々軽装鎧のようなものに小型のバックラーと片手剣を装備していた。いきなり装備や使う武器を変えてもうまく戦えないので基本的には同系統の装備となっている。


 もちろん装備の性能自体が大きく変わっているのでそれだけでも大きな違いではあるのだが、もう一つクシナには新装備で変わった点がある。


 それは槍だ。クシナには新たに作った槍を渡している。何故槍なのか?そこに理由はない。何となくだ。そしてクシナは槍を扱えるのか?それは知らない。


 ただ俺が槍を渡すと目を輝かせて受け取っていた。ドラゴン族にとっては槍は何か意味があるらしい。詳しいことは知らない。


 嫁達の次は人間族の三人に装備を渡す。この三人はロベール流とでも言うような剣術を使う。ロベールは盾を使わないので皆盾はいらないだろうと思って用意していない。ただそれぞれに剣と鎧を渡しただけだ。


 次に親衛隊に装備を渡す。親衛隊の九人は統一された同じデザインでサイズ違いの鎧を作った。同じチームだというのなら装備も同じの方が気持ちも統一されやすいだろう。お揃いのユニフォームっていうのは案外馬鹿に出来ない効果がある。


 ただし隊長のジェイドだけは別のデザインにしている。そもそもジェイドはなで肩…、というかぶっちゃけて言えば肩がない。肩がないので普通の鎧は着れない。それに高速機動が売りの戦闘スタイルだ。重い鎧を着込んでいては折角の特性も活かせない。


 武器もジェイドだけ特注だ。他の者は基本的に短剣か長剣かの違いはあっても剣を渡したが、ジェイドは鉄の爪状の武器だ。もちろん剣も渡してはいるがやはりジェイドは爪攻撃が得意なので剣は格好で腰にさげているだけだろう。並程度には使えるがな。


 次にムルキベルにも装備を渡す。本当ならばムルキベルには装備はいらない。ゴーレムはその肉体そのものが武器だ。だがそれは使い捨ての意思を持たないゴーレムの話であって、生きているゴーレムであるムルキベルは傷つけば痛いし死ねばそれまでだ。


 だからキチンと装備を持っておく方がいい。ムルキベルの基本装備は全身鎧に剣と槍だ。ただしこれも普通の鎧じゃない。


 女型になっている時のムルキベルがそのままこの鎧を着ていれば体格も合わないし、力も足りないだろう。だからムルキベルの変化に合わせて鎧も変形するように出来ている。


 ムルキベルが女型になると全身鎧は一転して軽装鎧のようになる。そして余ったヒヒイロカネは背中に集まり鉄の翼になる。その翼を使えば空を飛ぶことが出来る。ムルキベルは空への対応能力が低かったのでこれで対空戦闘も少しはマシになっただろう。


 エンとスイにも装備を渡しておく。二人に渡したものは一見片腕分だけのブレスレットか籠手の間のような形状に見える。しかしもちろんただの籠手じゃない。


 これは鎧を展開出来る籠手だ。装備者が任意に鎧を展開して装着出来る。なぜこんな風にしたかと言えばこの二人は大きさがコロコロ変わるからだ。


 この鎧の最大の利点は展開した時に装備者にフィットするように形状が自動で合わせられることだ。だからこの二人が子供状態で鎧を展開しようが、大人状態で鎧を展開しようが、その時々のベストの状態で鎧を装備出来るのだ。


 そしてバフォーメにも装備を準備している。バフォーメも姿形が変わるので普通の鎧なんかは装備出来ない。バフォーメに渡したのはおどろおどろしいネックレスと指輪やブレスレットなどの各種アクセサリー。そして二頭の蛇が巻き付いているデザインの杖を持っている。


 指輪やブレスレットなどのアクセサリーはフランと同じで神力を取り出すためのものだが、ネックレスだけは別の能力がある。杖もただの杖ではなくある能力があるがそれはいつかお披露目する時が来るかもしれない。もしかしたらないかもしれない。


クロ「おいっ!俺は?俺には?!」


アキラ「お前はいらないだろ?レーヴァテインがあるし。」


 それにクロも大人になったり子供になったりするから普通の鎧は装備しにくい。


クロ「いるよ!俺にもくれよ!」


アキラ「うるさいな………。一応用意してあるよ。」


 クロにも用意していた物を渡す。クロに渡したのは角に巻きつけるリボンのようなものだ。パッと見には角を飾りつけるリボンに見える。だが当然ながらリボンじゃないし布でもない。


 ヒヒイロカネを細く糸状に伸ばしたものを編んだもので特殊な機能がある。それは使用者の思いのままに自由に形を変えられるというものだ。


 もちろんヒヒイロカネの質量は増えないので全身を覆う鎧に変えようと思っても出来ない。ただし薄い膜のようにして全身を覆うことは出来る。


 巨大な大剣に形を変えようと思ってもこれも質量が足りないので、出来ても精々中身ががらんどうの見た目だけ剣の形をしたものになるだろう。


 だがこれはヒヒイロカネなのだ。薄い膜にしてもそれを突き破れる者などほとんどいない。剣にしなくともてぐすやピアノ線のように細い糸状にして対象を切り裂くことも出来るだろう。発想次第で無限の用途がある非常に汎用性の高い装備だ。


 ちなみに何故リボンのようにして角に巻いているかと言うと、クロは俺から力を返してもらえば大きさが変わるために、ほとんど変化しない角に巻いておくのがいいだろうと思ったからだ。


クロ「何だよこれ!男の俺が女みたいにリボン巻くなんて変だろ!」


アキラ「………そうか。クロはいらないのか。可愛いから抱っこしたくなるのにな。」


クロ「えっ!抱っこ!?いる!いるいる!これでいい!」


 子供のクロは本当にチョロい。大人の時もこれくらいチョロかったら楽でいいんだが…。


 最後の戦闘タイプとして太刀の獣神にも装備をやる。別にこいつにまでサービスしてやる謂れはないがついでだ。


 ほとんど親衛隊の流用で作った籠手、脛当、腿当、胸当、腰当の一式を渡す。太刀の獣神も機動力を重視するスタイルだから軽装の方がいいだろうと思ってのことだ。


 そして非戦闘員としてシュリとオルカに鎖帷子のようなものを渡す。クロのリボンとよく似たもので極薄で軽量なヒヒイロカネの糸を編んだものだ。


 これならエプロンドレスの下に着ていてもまったく目立たないだろう。だがそんな極薄でも性能は折り紙つきだ。


 五龍神にはない。五龍神はそれぞれ甲殻類の殻が変化した鎧のようなものがある。これらは体の一部であり取り外すとか上から装備を着けるだとかそういうことは出来ない。ハゼリとブリレだけは変化した時から裸だったので簡単な軽装だけ渡してある。


 武器もそれぞれ生まれ持った専用武器のようなものがあるので俺からは用意していない。代わりにそれぞれアクセサリーを渡している。一応それぞれ能力が付与されているがお披露目する機会があるかどうかは謎だ。


 これで一通り全員に装備が行き渡ったはずだ。


タマ「アキラちゃん俺は?」


ミィ「ミィはぁ?」


 お前らはいらないだろ………。


アキラ「………はぁ。それじゃこれを体に巻いてろ。」


 シュリやオルカの鎖帷子と同じヒヒイロカネを編んだ布のようなものを渡す。タマとミィはこれから成長して体格も変わるだろうから体に合わせた装備を作ってもすぐに使えなくなる。


 この布状の物を巻いておくだけなら体格が変わっても、巻く時に調整出来るから長く使えるだろう。防御力は申し分ないのでこれを巻いておけばそうそう死ぬようなことはないはずだ。


ミィ「アキラちゃんありがとう!」


タマ「ありがとう!………あっ!そうだ。この光る石って何なのかな?」


 タマは俺がタマの家から立ち去った時に置いていった小袋の中に入っている石を取り出して見せてきた。


アキラ「それは神力石というものだ。今のタマには使えないかもしれないが何かの役に立つこともあるだろう。」


 この石を置いて行った当時の俺は獣力が使えなかったから、獣力を込めた物を作って置いていくということは出来なかった。


 そもそもで言えばこの当時の俺は神力石とかいう物自体知らなかった。精霊水も魔力石も何も知らないので作りようもない。


 じゃあ何故タマの家に置いていった物があるのかと言えば、これは俺のボックスの中に最初から入っていた物だ。


 当時金目の物も何も持っていなかった俺達はせめて宿代代わりになる物を置いていこうと思ったのだ。地球で言うところの貴金属や宝石のような価値があるかどうかはわからなかったが、ボックスに入っていたこの石を置いていったわけだ。


 ちなみに最初にロベールと会った時の小屋の近くにあった遮断の結界の神力石は光っていなかったし、俺が試しに小さな結界を作ろうとして作って置いた神力石も光っていない。


 なぜタマの家に置いていった神力石が光っているかと言えば、内包している神力量が桁違いだからだ。


 一体何百年俺のボックスの中で神力を蓄え続けたのか知らないが、おそらくタマが持っているあの神力石は石という物質が神力を溜め込める最大値に達していると思う。


 もしあの石の神力を全て自由自在に使えたらそこらの神より圧倒的に強いだろう。惜しむらくはタマが獣人のためにそれほど大量の神力があっても使い道がないということだろうか。


 それに獣人族は神力の扱いも得意ではないので、神力石から自由自在に神力を取り出すのも難しいだろう。宝の持ち腐れっぽい気もするが、神力石として渡したのではなく宿代として置いていったのだから、使えなくとも売るなり何なりすればいい。


 今度こそこれで終わりのはずだ。後は師匠の体が元に戻るのを待ってから出発するだけとなった。



  =======



 暫く待っていると師匠の体も元に戻り出発することになった。


 今回連れて行くメンバーは嫁達九人、五龍神、クロ、バフォーメだ。これでも多いような気はするがいつもの人数に比べれば半分以下になっただけでも減った方だろう。


アキラ「それでは行ってくる。」


親衛隊「「「「「ははっ!」」」」」


ジェイド「気をつけてな。」


ムルキベル「………。」


 ムルキベルはまだ複雑な表情をしている。元々千何百年も俺から離れていたのに今では俺の傍から離れるのが嫌らしい。


アキラ「二面機神アグニロイドムルキベル!」


ムルキベル「はっ!」


アキラ「お前にこのカムスサと、残していく仲間の安全を託す。しっかり守ってみせろ!」


ムルキベル「ははっ!この命に代えましても必ずや!」


 俺がそう言うとムルキベルは跪き頭を垂れた。どうやら大丈夫そうだな。


フリード「アキラっ!………ぐへっ!」


 フリードは後ろからそっと近づき俺を抱き締めようとした。もちろん理由もないのにフリードに抱き締められてやる謂れはない。


 さっとかわして発勁を打ち込む。拳で殴っても俺の鎧があるからダメージを与えられないからな。自分で作って渡したものだが厄介な奴に厄介な物を渡してしまったものだ。


 だが発勁なら鎧や肉体表面にはダメージはなくとも、肉体内部へと浸透してダメージを与えることが出来る。


 それでダメージを与えられるなら、じゃあ敵に発勁を使ってくる奴が居たらヒヒイロカネの鎧でも意味ねぇじゃん!って言えばその通りではあるが、着ているのと着ていないのでは着ている方がいいだろう。


アキラ「………そんなことしようとしたら俺に殴られるっていい加減学んだらどうだ?」


フリード「そんなことない!アキラを抱き締めても殴られない時もある!それは俺とアキラの心が近づいているからだ!」


 ………まぁ絶対違うとは否定出来ないところが悲しいところだな。でもちょっと間違えているところがあるから訂正しておいてやろう。


アキラ「確かにお前に黙って抱き締められてやる時もある。でもそれは俺とお前の心が近づいたからじゃない。俺に何らかの負い目がある時は少しだけお前の思うようにさせてやってるだけだ。そして今のように理由も負い目もない時は避けて殴ってる。わかったか?」


フリード「………。………。………そうだな。そう言われたらそんな気がしてきたぞ………。いや!違う違う!俺とアキラの心は確実に近づいている!」


アキラ「まぁ最初にブレーフェンで出会った時はこいつは頭がおかしいのか?と思ったくらいだからな。それから比べれば男友達としては確かに心は近づいたかもな。」


フリード「うぅぅ………。」


アキラ「ふふっ。これまで色々あったな………。」


ミコ「アキラ君…。唐突に昔を懐かしみだすとフラグじゃないかな?」


 おっと!危ない危ない。危うくフリードの死亡フラグをたてるところだった。フリードに死なれたら俺が困る。


アキラ「それじゃ行こうか。」


ミコ「ところでアキラ君…。キツネさんの庵まではどうやって行くのかな?」


アキラ「ああ。全員手を繋いで集まれ。」


 俺の言葉を受けて出発する者達が全員手を繋いで固まる。


アキラ「それじゃ行くぞ。界渡り三の秘技、大転門。」


 俺が技を使うと視界が真っ暗になり一瞬の浮遊感の後にすぐ地面に降り立つ感触が返ってくる。


ミコ「………アキラ君。前からだったけどもうアキラ君は何でもありだね。」


シルヴェストル「わしら精霊族の取り柄がなくなったのじゃ………。」


ティア「アキラ様も空間移動出来るようになられたのですね!すごいです!」


 そう。俺達は今、神山にある師匠の庵の前に立っている。理由はもちろん俺が全員を連れて空間転移したからだ。


 三の秘技大転門は俺達がカムスサについた一番最初にヤタガラスがやったのと同じものだ。技の使用者とそれに触れている者を一緒に転移させることが出来る技で、今回のように大人数で移動するためのものだ。


 触れてる物や者を一緒に転移させるなら足が触れてる地面は?と思うだろう。だがこれまで使ってきた手転門、瞬影転、大転門はどれも門を作り出しそこへ入って移動する技なので地面とかは一緒に転移しない。


 手転門以外は門らしきものがないじゃないかという話になるが実はちゃんと門が設置されている。悪魔召喚門や精霊の園の門のように物質的な門はないが、手転門を開くと出てくる空間の揺らぎのような門を足の裏や体のすぐ周りに発生させて、それを通って移動しているのだ。


狐神「それで………。到着したのは良いけどこれからどうするんだい?」


アキラ「俺が考えている場所を探す前に誰かどこか探す候補がある者は?」


 俺は二箇所目星をつけているが、それを先に言って先入観を与える前に皆が独自に考えた場所を聞いておく。


ミコ「前に全体を調べたと思うのだけれど…。」


フラン「そうですねぇ…。もう調べていない場所はないような気がします。」


 どうやら皆は思い当たる場所がないようだな。


キュウ「アキラさんのぉ~、考えておられる場所はぁ~、どこでしょうかぁ?」


 結局皆何も思い浮かばず俺の考えを聞いてくる。クイズじゃあるまいしこれ以上答えを引っ張っても時間の無駄だ。


アキラ「俺が考えたのは空の上と神山の中だ。」


ミコ「あっ!そっか~。なるほどね~。さすがアキラ君だね。」


クシナ「空というのはまだわかりますが山の中?」


 ミコが感心したような声を上げてクシナが疑問に思ったことを聞いてくる。ただ感心されてもこれが正解とは限らないからハズレてたらどうしようという気持ちが湧いてくる。


アキラ「地中とか地下とか火口の中とかだ。」


 神山は昔の分類で言えば休火山のようなものだ。今では休火山や死火山という分類は廃止されているが、この神山の状態は休火山と言えばわかりやすいと思う。


 山頂付近の火口を覗いても特に噴煙なども上がっていない。ただし神山の底の方には熱量を感じる。つまり山の下には溶岩が溜まっているということだろう。


ティア「空は見に行けますが火口の中なんてどうやって見に行くのですか?」


 ティアが驚いて俺の周りを飛び回りながら聞いてくる。


アキラ「ティアは前までの感覚が強すぎるんじゃないか?今の俺達なら溶岩の中だろうと普通に行動出来るぞ?」


ティア「………あ。そうですね!」


 昔のティアならば溶岩の中に飛び込めば溶けるか燃え尽きるかしたのかもしれないが、今の俺達なら神力を纏っていれば溶岩の中でも平気だ。一番心配なのは俺だろうが俺にはフツシミタマがあるから問題はない。


シルヴェストル「それではわしが空を見てこよう。」


アキラ「いや…。シホミも空から降ってきた。空の上は危険な可能性もある。俺が見てくる。」


クシナ「全て旦那様がされては私達のいる意味がないではないですか。」


 クシナが頬を膨らませて拗ねている。やっぱりクシナは大人っぽい見た目に反して少し仕草などが子供っぽい。まぁそういう所が可愛いわけだが…。


アキラ「そんなことはないぞ。俺が空を見てる間に周囲の警戒を頼む。」


 本当は『だから嫁達は置いて行くって言っただろ』と言いたい所だが、そんなことを言えばまた嫁達から大顰蹙を買ってしまう。


 一人寝は寂しいからこれ以上嫁達を怒らせないように役目を与えておく。全員で周囲を警戒しておけば相当強い敵でも現れない限りは、不意打ちでいきなり嫁達が死ぬということはないだろう。


ルリ「………いってらっしゃい。」


アキラ「ああ。すぐ戻る。」


 俺はそう言うと空へと飛び上がった。かなり上空まで飛んでみたが何も見つからない。空の上には何もないようだ。


 敵の気配は感じないが嫁達に何かあっては大変なのですぐに下りる。俺が戻ってくると嫁達が寄ってきた。上空には何もなかったことを告げて移動を開始する。


アキラ「やっぱり本命はこっちか。」


 山頂付近の火口へと到着した。天や光と対になり闇の属性の者なのだからやはり下が本命ではないかと考えていた。


クロ「この中に闇の魔神のヤロウがいるのか!」


アキラ「いや…。まだ決まったわけじゃないぞ…。ただもう神山で探していないのはこの中くらいだ。」


クロ「よ~し!ぶっ殺してやるぜ!待ってろよ闇の魔神!」


 そう言うとクロは火口に飛び込もうとした。俺は先走りそうになるクロをキャッチして抱っこすると火口の中へと下りて行ったのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ