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転生無双  作者: 平朝臣
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第百八話「三女神」


 さらに五日が経過している。しかしタキリもヤタガラスも戻ってこない。界渡りの秘技の練習をしながらそろそろこちらから動いた方がいいかと考えていた時に、外からこの本殿に近づいてくる者の気配を感じた。


アキラ「タキリやヤタガラスじゃない者が近づいてきている。俺が対応するから皆は何かあってもいいように安全な場所にいてくれ。」


 タキリとヤタガラスならば俺達に敵意はない。だが見ず知らずの海人種ならば、俺達が勝手にここに住み付いていると勘違いされたらいきなり攻撃される可能性もないとは言えない。


 嫁や仲間達を後方に置いておき俺が本殿の入り口の方へと向かう。ただの参拝客のようなものならば本殿まで入らずに帰って行くかもしれない。


 そう考えてこちらからは動かずに相手の出方を本殿の中でじっと待つことにした。


イチキシマ「失礼致します。こちらにアキラ=クコサト様がおられると聞き、そのお世話をするよう申し付かりやってまいりました。イチキシマと申します。」


 俺が入り口の前で相手の出方を窺っているとやってきた者はそう声をかけてきた。


アキラ「誰に言われてやってきた?」


 俺がいることを知っているのだからタキリかヤタガラスであろうとは思うが一応確認しておく。もしかしたら敵が俺達を油断させるために言っているかもしれないからな。


イチキシマ「タキリに言われて参りました。」


 タキリ…。呼び捨てか?聞いた話ではタキリは一応この海底都市カムスサのリーダー的存在だったはずだ。そのタキリを呼び捨てとは…。


 呼び捨てにし合うほど親しい者であるという考え方も出来るし、敬称をつけたくないほど仲の悪い対立している者という可能性もある。


 まぁこの状況で俺の想像だけで考えていても埒が明かないな。一先ず中へと入れてみることにした。


アキラ「入れ。」


 俺は扉を開けてイチキシマを本殿の中へと招き入れる。


イチキシマ「はい………。………まぁ!貴女様がアキラ=クコサト様でしょうか?」


アキラ「………そうだが?」


イチキシマ「まぁまぁ!!!なんて可愛らしい。タキリがあれほど夢中になっている理由がよくわかりました。」


 こいつ………。イチキシマは黒髪のおかっぱ頭で振袖っぽいものを着て、今の俺より少し年上に見える。そうだ。誰かと同じ説明だと思うだろう?実際にタキリとそっくりだ。瓜二つすぎる。双子か?


アキラ「タキリとそっくりだな。双子か?」


イチキシマ「いえ。私達は三つ子なのです。タキリが最初の姉。私が二番目。そして一番下にタギツという妹がおります。」


 そう言ってイチキシマはにっこりと微笑んだ。クール系で無表情で無愛想なタキリと違ってイチキシマは愛想が良いようだ。


アキラ「タキリの妹ということはお前も俺の異母妹ということか………。」


イチキシマ「はい!国津神では異母兄弟姉妹は結婚出来るのですよ。」


アキラ「………だから何だ?」


イチキシマ「ですからアキラ様と私は結婚出来るのです。」


 ………何でタキリといいイチキシマといい、こいつらは一番最初にそれを言うんだ?


アキラ「制度上可能か不可能かで言えば、お前達の制度上では可能なのはタキリにも聞いた。でも可能だからってタキリやイチキシマとは結婚しないからな。」


イチキシマ「それはこれから考えましょう。」


アキラ「考えるまでもないから。これ以上嫁を娶る気はないから………。」


 とにかくこうしてイチキシマがやってきて俺達の世話をし始めたのだった。



  =======



 イチキシマは滅茶苦茶愛想が良い。そして可愛い。姿形はタキリとそっくりなのだからタキリも可愛いということになるが、イチキシマは愛想も良いので輪をかけて可愛く感じる。


 じゃあタキリは可愛くないのかと言えばもちろんそんなことはない。ルリもクール系で無表情だ。でも可愛い。俺はクール系の女の子も好きなのだ。


 ………結局美少女なら何でもいいのかということになってしまうな。


 イチキシマが来てから早五日が過ぎている。タキリからの連絡は一切ないがイチキシマがいると時間を忘れてしまいそうになる。


イチキシマ「あっ!アキラ様はそのようなことをなさってはなりませんよ!それは私が致します。」


 俺が昼ご飯の食器を片付けようとしたらイチキシマが飛んできて俺から食器を取り上げる。何が楽しいのかいつもニコニコしていてハキハキと明るい。


アキラ「………また誰か来たな。」


 この五日の間にタキリやヤタガラスも含めて誰一人この本殿に近寄ってくる者はいなかった。だが今日は誰かが近寄ってきている。俺の知る気配ではないのでタキリやヤタガラスではない。


イチキシマ「あっ!私が出ますね!」


???「あ~け~ろ~!」


 本殿の前にやって来たであろう人物は扉をドンドンと叩いてそんな声をかけてきた。俺の性格からするとこんな態度でこんなことを言われたら入れてやる気がなくなる。


 しかしイチキシマはすぐに扉を開けた。俺とは違って素直な性格だからな。


イチキシマ「タギツちゃん。そんな言葉遣いをしては駄目ですよ。」


タギツ「ぶーぶー。いいじゃん。………あっ!もしかしてあれがアキラ=クコサト?」


 イチキシマは扉の前に立っていた者をタギツと呼んだ。その姿は黒髪のおかっぱで振袖のような物を着て今の俺より少し大きいくらいの少女だった。


 以前に名前が出てきていたからわかっているよな。そうだ。タギツもタキリやイチキシマとそっくりだった。三つ子だって言ってたからある意味当たり前だろう。


 そのタギツは自分の前に立つイチキシマの横から顔を覗かせて本殿の中を見渡すと俺を見つけてそう声を上げた。


イチキシマ「タギツちゃん!アキラ様に何て口の聞き方をするの?!」


タギツ「いいじゃん別にぃ。アキラ=クコサトってそんな小さなことで怒るような器の小さい奴なの?」


 ………それは器が大きい小さいの問題なのか?タギツ自身の礼儀の問題じゃないのか?相手が気にしないからといって無礼な言動をしても良いということにはならない。


 まぁ…、そうは言っても実際俺はその程度のことを気にしたりはしないし、現時点では特にお互いの立場に違いはない。タキリが言っていたように、もし今後俺がこの海底都市カムスサのトップになれば相応の態度を取れと言えるが、今は俺とこいつらに立場の違いがないのは事実だろう。


アキラ「俺がアキラ=クコサトだが…、何か用か?」


 俺は昼ご飯を食べたテーブルに座ったままそう答えた。向こうが無礼な態度なのにこちらが椅子から立ち上がって対応する必要はない。


 そもそも入れてもらってもいないのに、入り口からああやって覗き込んで声をかけてくるなど礼儀以前の問題だろう。


タギツ「ああやっぱりっ!そうだと思ったよ!」


 そう言うとタギツはドスドスと足音を立てながら勝手に本殿に入ってきて俺の前に立った。


タギツ「可愛いぃ~~っ!これから私のことはタギツおねえちゃんって呼んでいいからね!」


 タギツは俺の頭を撫でながらそんなことをのたまった。


アキラ「何で俺がお前をおねえちゃんなんて呼ばなきゃならないんだ?」


タギツ「私の方がおっきいから!」


アキラ「今は体が縮んでるが俺は本来お前らより大きいが?」


タギツ「そんなの関係ない。タギツがおねえちゃん。アキラはいもうと。ねっ!」


 『ねっ!』て言われても知らんがな………。


イチキシマ「タギツちゃん!アキラ様に何てことをしてるの!」


 タギツはずっと俺の頭を撫でているからな…。


アキラ「それより何しに来たか聞いてるんだが?」


タギツ「アキラ=クコサトがやってきたってタキリお姉ちゃんから聞いたから見に来たの!これからは私もここで一緒に暮らすからね!」


アキラ「………何で?」


タギツ「イチキシマお姉ちゃんだけアキラと一緒に暮らしてるなんてズルイから!」


 ………何がズルイのだろうか?


アキラ「イチキシマは俺達の身の回りの世話をしてくれているがタギツも俺達の世話をするのか?」


タギツ「え~?するわけないじゃ~ん。私家事とか出来ないしぃ~。ただアキラを可愛がるだけだよ?」


アキラ「………帰れ。」


タギツ「またまた~。本当はタギツおねえちゃんと一緒に居られてうれしいんでしょ~?うりうり~。」


 タギツはそれほど豊かじゃない胸を俺の顔に押し付けてくる。


アキラ「ふんっ。その程度など慣れっこだ。俺の愛しい嫁達にそうされたらこちらもうれしくて恥ずかしくなるが、見ず知らずのお前の貧乳でそんなことをされても何も感じない。」


 嫁達とそうやってイチャイチャしてたら俺の方も赤面してくるが、タギツにされても何も感じない。ちょっと少女特有の芯があるような少し硬い胸でぐりぐりされたくらいで………。されたくらいで………。


狐神「アキラ………。顔が真っ赤だよ………。」


 師匠に突っ込みを入れられてしまった。どうやら俺にはまだ女への耐性が足りないらしい。


シルヴェストル「アキラは女に弱すぎるのじゃ。」


アキラ「うぐっ………。」


 シルヴェストルは少し拗ねたような表情をして俺から顔を背けた。言われたことは事実なので反論の余地はない。だがこのまま引き下がるわけにはいかない。


アキラ「確かに俺は女に弱いが女だけじゃない。無性のシルヴェストルにも弱い。可愛いものにも弱い。」


シルヴェストル「………わしを慰めるつもりなのか呆れさせるつもりなのか微妙なのじゃ。」


アキラ「………そうだな。思ったままを言ってみただけだ。」


 実際俺が思ってる通りに言ってみただけだが、そういう言い方をすると何か俺って物凄く優柔不断で女にだらしない奴っぽいな。


狐神「まぁまぁ。別に愛妾にするならこの三つ子たちを全員はーれむに入れたっていいんだよ?」


アキラ「これ以上いりませんよ。それでなくても多すぎて優柔不断なのにこれ以上増やしたら管理し切れません。」


ミコ「その言い方だとアキラ君の気持ちとしてはもっと増やしてもいいと思っているように聞こえるのだけれど?」


アキラ「………そうだな。」


 ミコの鋭い突っ込みに何とかそれだけ返す。確かに今の言い方だと状況的な理由があるから断るだけでそれがなければ俺の気持ちとしてはもっと増やしたいと言っているようにも取れる。


クシナ「私とオルカさんが入った時がほとんど一緒だったのですから、せめて他の方を入れるのはもっと後にしてくださいな。私が甘える時間が短すぎます。」


 クシナがそっと俺の手を握りながらそんなことを言い出した。あのクシナが変われば変わるものだ。これがツンデレってやつか?


ティア「だからもっと早く素直になれば良いと言ったのです。クシナの自業自得ですよ!」


 ティアが俺の胸に潜り込みながらクシナを責める。


クシナ「うっ…。ティアさんの言う通りですわ………。私はいつも素直になれずに後悔するのです…。」


ルリ「………あっくん。あまり増やしたらルリと一緒にいる時間が減る…。」


 ルリがそっと俺の横に座ってしなだれかかってくる。


アキラ「わかってるよ。もうこれ以上増やさないから。………たぶん。」


キュウ「いつも通りですねぇ~。」


フラン「そうですね。」


ガウ「がうがうっ!」


 キュウとフランはまったりとお茶を飲んでいる。ガウはそんな二人のお茶請けをつまみ食いしていたのだった。



  =======



 結局タギツも一緒に本殿で暮らすようになって十日が経っている。未だにタキリからの連絡は一切ない。もしかしてイチキシマとタギツに俺を監視させてこのままここに監禁しておくつもりかと言う考えも出てくる。


アキラ「いくらなんでも遅すぎる。そろそろ一ヶ月になろうかというほどの時間が経っているのにタキリからもヤタガラスからも連絡がないというのはどういうことだ?」


タギツ「アキラはわかってないね~。海人種にとって一ヶ月や一年なんてついさっきみたいなもんだよ?どういう約束をしたのか知らないけど百年くらいは待たないと話が進まないんじゃないかなぁ。」


 ………やっぱりそうなのか。本当にこのまま待ってるだけなら百年待たされそうだ。それならこちらから動くことにするか。


アキラ「いい加減これ以上待つだけなのも飽きた。俺達の方から動いて海人種を掌握しようと思うがどうだろう?」


 俺は嫁と仲間達に相談してみる。


狐神「それはいいけど勝算はあるのかい?私らじゃ役に立てないよ?」


 確かにその通りだ。この中で一番強い師匠ですら三つ子達やヤタガラスとでは勝負にすらならない。


アキラ「どうやら海人種は俺がスサノオの子だとわかれば納得しそうなのでそうそう戦闘にはならないと思います。」


ミコ「それで具体的にはどうするのかな?」


アキラ「ああ。それはな………。」



  =======



 俺達は今本殿の上に立っている。


アキラ「聞け海人種達よ。俺の名はアキラ=クコサト。お前達の主スサノオの娘だ。これから月人種と太陽人種を打ち倒そうと思う。そこでお前達の力を借りたい。詳細について交渉したいから賛同出来る者の中から代表者を出してここへやってこい。」


 俺は神力を乗せてこのドームの中全てに聞こえるように声を上げる。音声自体はそれほど大きくない。ただ声に神力が乗せられているので建物の中にいようが、ドームの一番遠い場所にいようが、全ての住民に聞こえているはずだ。


 今まで滞在していたこの一ヶ月近くの間でこのドームに住んでいる者達はほとんど動くことがなかった。それなのに俺の声を聞いてあちこちの気配が今までにないほど動いているのがよくわかる。


スクナヒコナ「俺の名はスクナヒコナだ!お前みたいな小娘がスサノオ様の後を継ぐという気か?だったらまずは俺に勝ってみろ!それすら出来ないような奴が俺達の主だなんて認めねぇぞ!」


 早速一人の男が飛び出してきた。顔はまぁ普通だ。野性味溢れる感じがする。体はそれほど大きくないしムキムキのマッチョでもない。ただ内包する神力量はかなりのものだ。第四階位の上か第三階位の下というところだろう。


 うまく戦ったとしても師匠でも勝ち目がなさそうなほどの力を持っている。これほどの者からすれば確かに今の俺など小物だと思うだろう。


アキラ「それは逆から言えば俺が勝てば俺を認めて協力するということでいいんだな?」


スクナヒコナ「はははっ!面白れぇ!俺に勝てたら俺と俺の一党はお前に従ってやるよ!いくぞ!」


 それだけ言うとスクナヒコナはいきなり襲い掛かってきた。せっかちな奴だ。だが最初からこういうことがあるだろうと思って備えていたのだから不意打ちでいきなりやられるなんてことはない。


アキラ「俺の勝ちでいいな?」


スクナヒコナ「………え?」


 今スクナヒコナは地面に倒れ伏し俺に背中を踏まれている。スクナヒコナの頭に向けている俺の掌からはいつでもスクナヒコナの頭を吹き飛ばすことが出来るだけの神力が溜められている。


 一体何が起こったのかスクナヒコナにはわからなかっただろう。それほど今の俺とスクナヒコナとでは圧倒的な実力差がある。


 俺に向かって飛び掛ってこようとしたスクナヒコナの後ろに周りこみ、地面へと倒して叩きつけてその背を踏んで抑え、いつでも神力の塊を撃ち出せるようにしたのだ。


 何故今の力を失った俺がこれほど圧倒的にスクナヒコナを倒すことが出来たのか。それは加速を使ったからではない。俺はもう一つの方法を使ったのだ。


アキラ「今の俺の力がわかるか?」


スクナヒコナ「………なんだよこりゃ。さっきまでと全然神力の質も量も違うじゃねぇか…。こんなの勝てるわけねぇ………。」


 俺が使ったもう一つの方法。それは複数の神力を合わせるということだ。俺はすでにこの世界に存在する九種類全ての神力を使うことが出来る。


 そして複数の神力を混ぜ合わせ同時に出すともとの何十倍も何百倍もの力になる。それは掛け合わせる神力の種類が増えるほどに爆発的に上昇するのだ。


 それでは九種類全てを掛け合わせれば一体どれほどの力になるのか。それが今の俺の状態だ。俺は今ほんの少しの九種類の神力を混ぜ合わせただけにすぎない。


 一つ一つの時の量で言えば普通の人間族の神力量程度だ。それがどれほど弱いものであるかはこれまでの旅でよくわかっていることと思う。


 その神力量で九種類を混ぜ合わせただけで、第三階位ほども力があるスクナヒコナが手も足も出ないのだ。今の俺はすでに第一階位くらいの力はある。


 これがもし全力で全ての神力を混ぜ合わせたらどれほどの力になるのか想像するだけでも恐ろしい。今の第九階位程度の力しかない状態でも、全力で全ての神力を混ぜ合わせたらそれだけで月人種と太陽人種を合わせた全世界と戦っても楽勝出来るだろうとわかる。


 さらにもし失った力を取り戻して、俺が本来持っていた第一階位相当の力を全て混ぜ合わせたら最高神とも対等に戦えるだろう。それほどにこの神力を混ぜ合わせるという力は危険なものだ。


アキラ「俺の勝ちでいいな?」


スクナヒコナ「ああ………。俺の負けだ。」


 スクナヒコナがそう言うと俺達の様子を窺っていた他の海人種達から歓声が上がった。


タキリ「アキラお異母姉様………。」


 いつの間にかタキリとヤタガラスが俺達の方へと歩いてきていた。


アキラ「お前達があまりに遅いからこちらで勝手にやらせてもらったぞ。」


タキリ「それは構いませんが………。フツシミタマが出来るのならば何故私に教えてくださらなかったのでしょうか?」


アキラ「フツシミタマって何だ?」


タキリ「アキラお異母姉様が今纏っておられるものです。」


 どうやらこの複数種類の神力を混ぜ合わせるのを海人種ではフツシミタマと呼ぶらしい。


アキラ「それでこのフツシミタマっていうのが出来たからって何でタキリに教えておく必要があったんだ?」


タキリ「フツシミタマはスサノオ様しか出来ぬ秘技だったのです。それを見せれば海人種の者もたちまちのうちにアキラお異母姉様にひれ伏したことでしょう。」


アキラ「………なるほどな。でもスクナヒコナはそうじゃなかったみたいだが?」


 倒したスクナヒコナは俺の神力を見ても質と量が桁違いになったとは言ったが、スサノオの力だとかは言わなかった。


タキリ「若い者はスサノオ様と直接お会いしたこともなく知らぬのでしょう。古き者共はそれを見てアキラお異母姉様がスサノオ様を継ぐ者だと認めたのです。」


 それであの歓声だったわけか。スサノオの再来であると皆が思ったということだろう。


アキラ「それにしても………。スサノオしか出来なかった秘技とやらがあれもこれもとどんどん出てくるな。」


タキリ「それは当然でございます。スサノオ様はこの世の全ての力と技を知り尽くしたお方。その上それらの技術から独自に編み出された技術も数多くありスサノオ様の真似が出来る者などいなかったのです。」


 ふむ………。それはそれで少し不思議なことがあるな。


 才能として生まれた時から同じことが出来る可能性を持っていることはあり得るだろう。だがそれは教えを受けて訓練して初めて出来ることであるはずだ。


 それなのに俺は両親となど会ったこともなく技術も教えられていないのにいきなり出来ている。これはどう考えてもおかしい。


 身体能力などの先天的才能ならば確かに受け継ぐこともあるだろう。だが訓練してようやく身に付く技術などが遺伝することなどあり得ない。


 俺はどこかでこれらを習うか、少なくとも知る機会があったからこそ身に付けたはずだ。だが今の俺にはその記憶はない。いつ、どこで、どうやって訓練したのか、あるいは人に教えてもらったのか。それが一切わからない。


スクナヒコナ「小難しい話は終わりにしようや。これから月人種と太陽人種をぶっ飛ばしに行くんだろ?だったらその話をしなくちゃな!」


 ひっくり返ったままのスクナヒコナは顔を上げながら俺達の会話に割って入ってきた。


アキラ「女を下から覗くな!このボケ!」


 顔を上げたスクナヒコナの頭を思い切り踏みつけ顔を地面に押し付ける。俺が穿いているものはパッと見ではミニスカートのように見えるがキュロットパンツなので下から覗いても丸見えではないだろう。


 だがそれでも下から覗かれるというのは良い気持ちはしないしキュロットパンツでも隙間から見えてしまう可能性もある。


 タキリは足首まである振袖っぽいものだから覗かれる可能性はほぼないだろうが、俺とタキリが頭の上で話しているのにそこへ顔を上げるなど言語道断だ。


タキリ「頭を押し付けるよりも立たせた方が良いかと…。」


アキラ「ああ…。そうだな。根本的に解決するつもりならそうだろう。だがこの頭を踏みつけているのは下から覗かれないためじゃなくて、一度覗いた罰としてやっている。」


タキリ「………それではアキラお異母姉様の思し召しのままに。」


 とは言えこのままスクナヒコナの頭を踏み続けていても問題は解決しないし先にも進まない。スクナヒコナの頭から足を上げて振り返る。


 俺の力を見てスサノオの継承者だと認めた者達の中から代表者のような者達が数名こちらへ歩いてきていた。その者達を連れて本殿の中へと入って行ったのだった。


 その後本殿で色々な話をしてみた。まずはタキリが遅かった件について問い詰めてみる。


タキリ「それは………、明日集まるようにと主要な者達へ知らせて回っていたところですが………。」


 やっぱりな…。こいつらはのんびりしすぎだ。このドームの中を隅から隅まで全て歩いてもそんなに何日もかかるとは思えない。それなのにタキリは主要な者達に集まるようにと触れて回るだけで一ヶ月近くもかかっていたのだ。


 まずはこののんびりとした意識の改革から始めなければならないだろう。いくら不老不死で悠久の時を生きてきたとは言ってもこのままでは流石に使えない。


 敵も同じような感覚を持っているのだとすれば、こちらが意識改革をしてテキパキ動くようになればそれだけで大きなアドバンテージを得られるだろう。


 海人種の主要な者達と会談をしながら俺はこれからどうやってこいつらを鍛えてやろうかと頭を働かせていたのだった。



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