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転生無双  作者: 平朝臣
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第百四話「人神」


 シホミが解き放った力はやはり第二階位以上だと思えるほどの力だった。そのオーラは金色に輝いている。俺一人なら逃げることも…、いや…、勝つことも簡単だ。


 だがここで戦えば嫁達や仲間達が巻き添えになる。今までならば師匠が結界を張れば他の者の安全は確保されていたが、シホミの力は師匠を圧倒している。師匠の結界では薄い紙一枚で大砲の弾を防ごうとするかの如く一瞬で突き破られてしまうだろう。


アキラ「こんなところで戦うつもりか?」


 俺は必死に考えを巡らせながら何とか時間を稼ごうとシホミに声をかけてみた。


シホミ「あら?おほほっ。わらわとしたことが少し興奮してしまったようですわ。ご安心くださいアキラ御従姉様。貴女を殺すのはわらわではありません。」


アキラ「………どういう意味だ?」


シホミ「言葉通りですわ。……さっさと役に立ちなさい。」


人神「………この者達を殺せば私の望みを叶えてくださるのでしょうか?」


 空間が開きぬっと人が出てくる。こいつのことは知っている。


アキラ「人神………。」


人神「おや?直接お会いしたのは初めてだと思いますが?私のことを御存知で?」


ミコ「人神?アキラ君この普通のサラリーマンみたいに見えるこの人が私達をこんなことに巻き込んだ人神なの?」


 ミコは人神を指差しながらフルフルと震えている。


 確かにこいつはミコが言うように、少し頭の禿げ上がった人の良さそうなサラリーマンのように見える。だが勇者召喚でミコ達をこの世界へと呼び出した元凶がこいつだ。決して見た目通りの良い人なんかじゃない。


人神「ミコ=ヤマトですか。ええそうですよ。貴女方をこの世界に召喚してあげたのはこの私です。」


ミコ「何が召喚してあげたですか!私達はそんなこと望んでいませんでした!無理やり連れてきておいて何て言い方ですか!」


 珍しくミコが声を荒げて怒っている。だがそれは当たり前だろう。もしこいつがミコや俺達を召喚していなければこの世界で苦労することなどなかった。


 恐らくだがヒロミ=ハカナもヒデオ=セカイもあんな最後を迎えることもなかっただろう。もちろん本人達の自業自得もあるが地球にいればあんな結果になることはなかったと思う。


 俺とミコの関係もこんな形になってしまった。もし地球であのまま過ごしていれば普通に俺とミコが夫婦になっていた可能性もあっただろう。俺達の未来を奪い捻じ曲げたのは間違いなくこいつだ。


人神「まったく…。貴女方のお陰で随分と計画が狂ってしまいましたよ。役に立たないどころか疫病神でしたよ。」


ミコ「―ッ!あなたみたいな人のせいでヒロミちゃんもヒデオ君も!私だってアキラ君だって!許せません!」


 今にも飛び掛りそうなミコの前にさっと腕を出して制する。人神はともかくシホミはやばい。ここでシホミと戦いになったらこちらに犠牲が出ることになる。俺はそれは絶対に避けたい。


アキラ「お前は確かヒデオ=セカイに殺されたんじゃなかったのか?」


人神「はははっ!ヒデオ=セカイ如きがこの私を?あははっ!そんなガセネタを素直に信じていたのですね!あはははっ!とんだ間抜けだ!ヒデオ=セカイを下界に放つために殺された振りをしたにすぎませんよ。」


 俺だって別に信じていたわけじゃない。ただ時間を稼ぐのと相手から情報を引き出すために話しているだけだ。人神が今ので調子に乗ってベラベラと情報をしゃべってくれないかと思って色々と質問してみることにする。


アキラ「何故ミコ達を召喚した?」


人神「別にミコ=ヤマト達を召喚しようと思って召喚したわけではありません。平成日本からそれなりに力のある者を召喚していたら最後に出て来たのがたまたまミコ=ヤマト達であっただけのことです。」


 ………結構重要な情報を吐いた気がするぞ。


アキラ「平成日本から力の強い者を?召喚はそうやって対象を選ぶことが出来るのか?」


人神「ええ。最初の召喚術では出来ませんでしたが、私が長年召喚を繰り返し改良を重ねた結果、ある程度は狙って召喚出来るようになったのですよ。」


アキラ「それでなぜ平成日本から?力が強いか弱いかはどうしてわかる?」


人神「はははっ!平成日本から選んでいる理由は騙しやすいからですよ!平和ボケして正義と悪の二元論しか考えない現代日本人は実に騙しやすい!ちょっとこちらの世界の人間が困っていると言えばすぐに我々の思い通りに動いてくれるようになるのです。」


 確かに人神の言う通り現代日本ではゲームやラノベの影響で勇者召喚などを簡単に納得しやすい下地が出来ているだろう。


 それに深く考えず単純な正義と悪を刷り込まれているから、人間から見たら怪物のような姿の者達が、自分達と同じ人間の姿をしている者を襲って苦しめていると聞けばすぐに騙されるのもわかる。


人神「昔の武将なども召喚されたことがありましてね。ふふっ。その時は大変でしたよ。事情も理解出来ない上にこちらの言うことも聞かないで結局その場で殺してしまいました。ふふふ。その点現代人はゲームやアニメの影響なのか話がすんなり通りますからとても都合が良かったのですよ。」


アキラ「力の強い者はどうやってわかる?」


人神「さぁ?それは私にもわかりませんよ。ただ召喚魔方陣が選ぶのです。貴女方にわかりやすい言い方をすると、召喚魔方陣にHP100以上の者を召喚するように書き込めば自動的にそういう者が選ばれてくるわけです。」


アキラ「それにしては召喚される者が弱い気がするが?」


 そうだ。そんな指定で呼べるならもっと強い奴を指定すればいいはずだ。それなのに召喚された者は皆そんなに強くない。


人神「それが出来れば私も苦労しなくてよったのですがねぇ。それには二つの問題があるのですよ。まず一つ目はあまりに強い者を指定しても地球の方にそれほど強い者がいないということ。仮にHP一万の者を召喚しようとしても地球にはそんな者は存在せず召喚自体が失敗してしまうのですよ。ですからマシな者を召喚してこの世界で鍛えるしかないのです。」


 なるほど。地球人がこのファルクリアの人間族より強いと言ってもそれはこの世界に来てからいつの間にか強くなっているらしい。


 だから地球に居る状態で強い奴を指定しようとしてもそんな者はいないということになってしまう。


人神「二つ目が対価でしてね。召喚魔方陣もタダじゃないんですよ。世界を渡るわけですから莫大なエネルギーが必要になります。それも召喚の条件を指定すればするほどにね。ですから細かい指定はせずにアバウトにたくさん召喚する方が効率が良いのですよ。」


アキラ「………ちょっと待て。対価のエネルギー?」


 人神が言うまでもなく異世界間を移動するなど莫大なエネルギーが必要になるのは誰にでもわかる。俺ならそのエネルギーも自力で賄えるかもしれない。でもひ弱な人間族ならどうだ?そんなエネルギーを出せるとは思えない。


人神「ふふふっ。貴女方が使っているその力。それは一体何だとお思いですか?………それはね、生命力そのものなのですよ。この世界では生命力をエネルギーとして使うことが出来る。そのエネルギーをどう使うかは族次第ですが根源は全て生命力なのです。つまりエネルギーを集めるには生命力を集めればいい。もうおわかりでしょう?ふふふ。信者達の命を捧げて召喚を行っていたのですよ。あははっ!」


 それで騙されて殺された信者達に同情はしない。自分で考えることもせず、思考停止したまま教義だけをただ信じて言われるがままにしか行動しないような奴らの末路などそんなものだろう。


 だが召喚魔方陣のために殺された信者達が自業自得だったとしても、だからと言って人神の行いを肯定するとか、罪がなくなるというわけじゃない。


 自分の目的のために他人を騙し利用し殺す人神が一番悪いのは間違いない。こいつは生かしておいては駄目だ。今ここでこいつを始末する。


アキラ「それで…、信者まで犠牲にして異世界召喚を繰り返すお前の目的は何だ?」


人神「………。」


 今まで薄ら笑いを浮かべながら自慢気に話していた人神は怒りや憎しみの篭った表情になり黙り込んだ。


シホミ「愛しい愛しいお姫様を御母様に生き返らせてもらいたいのですよね?」


 それまで黙っていたシホミが急に割り込んできた。


人神「シホミ様…。御戯れもほどほどに………。」


 人神は苦々しい顔を隠しながらシホミを止めようとしている。だがシホミは止まらない。人神のことなど意に介さず人神のことを話し出す。


シホミ「今は滅んだとある国。その名をロベリア。ロベリアがあった時代には海人族が世界を支配していましたわ。全世界を支配する海人族を妬んだロベリアの王族達は海人種の秘技である界渡りの術を盗み出し、異世界より史上初めて勇者を召喚することに成功しました。」


人神「………。」


 人神はシホミを射殺さんばかりに睨んでいた。もう隠す気もないようだ。


シホミ「史上初めて召喚された救国の英雄。最初の勇者となった召喚者はロベリアの姫の願いを叶えるために手段を問わず行動し続けましたわ。そしてようやくその悲願が叶おうかという時に姫は命を落としてしまいました。最初の召喚者はその姫を生き返らせる方法を探します。」


人神「もうお止めください………。」


シホミ「そしてようやく見つけました。太陽人種の神であるアマテラスならば復活の秘技を持っていると………。それ以来最初の召喚者はアマテラスの言うことを全て聞き操り人形になることにしましたわ。ねぇ?哀れで可愛い無能な人神。」


 ふむ…。ぱっと聞いた感じではまるで恋人を失った勇者がその恋人を生き返らせるために、やむを得ず悪者に手を貸すことになった、という風に聞こえる。


 だが果たしてそうかな?そんな簡単な話ではない気がする。そもそもシホミの言葉が正しければロベリアの王族はその姫も含めて欲が強く、海人族に反旗を翻して支配者になりたがっていたような者達だ。


 そしてアマテラスに利用される前から『手段を問わず』と言っている。つまり人神も昔からどんな汚い手段でも平気で使うような外道だったということだろう。


 さらにシホミは両者が愛し合っていたとか恋人や夫婦、婚約者などとは言っていない。つまり人神の方だけが一方的に懸想していた可能性もある。


 見方によっては、異世界人を召喚して戦わせて利用しようとしていた悪女と、本当は相手にもされていないのにストーカーのように一方的に思いを寄せていた外道の話にも聞こえる。


人神「おしゃべりは終わりだ。アキラ=クコサト。お前はこの手で殺してやる。」


 人神はこれまでの温和なしゃべり方から一転して乱暴なしゃべり方になった。もしかしたらこっちが地なのかもしれないな。


アキラ「どうやって?」


 シホミならともかく俺が人神程度に負けるわけはない。


人神「それはな………。この力を使ってだ!」


 人神の体から橙色のオーラが噴き出す。


 ………これで九種類だ。神力のオーラには九種類あることは八尺瓊勾玉を手に入れた時に思い出していた。しかしその力がどんなものであるのかは思い出していなかった。


 だがさっきのシホミのオーラと今人神のオーラを見て九種類全てを把握した瞬間に八咫鏡が光り俺の知識が思い出される。


 人間族が持つのは橙の霊力。


 妖怪族が持つのは青の妖力。


 魔人族が持つのは赤の魔力。


 精霊族が持つのは黄の精霊力。


 獣人族が持つのは緑の獣力。


 ドラゴン族が持つのは紫の龍力。


 海人種が持つのは紺の空力。


 月人種が持つのは黒の暗黒力。


 太陽人種が持つのは金の天力。


 この世界にある九つの神力全てを思い出した。もちろん術や技まで全て知っているわけじゃない。ただ名称と力の出し方を思い出した。


 俺が海人種と妖狐の混血だとすれば妖力と空力を使える可能性はあるだろう。だがなぜ他の七つも全て使えるのかはわからない。


 ただわかることは俺は今見た霊力や天力も使える。この九つの力を思い出した瞬間胸の奥が疼き頭の中から声が聞こえた。


???『殺せ!』


アキラ(またお前か………。)


???『破壊しろ!』


アキラ(いい加減にしろ…。)


???『全てを虚無に!』


アキラ「―――ッ!!!ぐぁ……。がはっ!」


 息が詰まる。俺は両手で胸を抑えた。頭が割れるように痛い。胸が苦しい。息が出来ない。また黒い闇の意識に飲み込まれそうになる………。


人神「はははっ!私の霊力を浴びて動けなくなりましたか?どうです?素晴らしい力でしょう?」


 くそっ。うるさい。黙れゴミめ。お前の力など第九階位にも届くかどうかだ。人間族の神にしては強い方だがゴミに変わりはない。


人神「どうしました?答えることも出来ませんか?ははははっ!!!」


 うるさい…。ダマれ………。消し去っテヤロウカ………。


アキラ「ぐぅぅぅっ!!!」


 まずい…。抑え切れない。また暴走すれば今度こそ愛しい嫁達を失うかもしれない。それだけは絶対に駄目だ。


シホミ「………帰りますわよ。」


人神「………は?」


シホミ「聞こえませんの?帰りますわよ。」


人神「何故です!アキラ=クコサトを始末する好機ではないのですか!?」


シホミ「………ならば貴方だけ残って勝手になさい。わらわは帰ります。………こんなところで死にたくはないですわ。」


 最後の方はボソッと呟いて聞き取り難かった。あるいは人神には聞こえなかったかもしれない。それだけ言うとシホミは空高くへと舞い上がった。


人神「………まったく。あの我侭娘は何を考えているのでしょうね?折角貴女方を殺す好機だと言うのに………。とはいえ私の立場では命令には逆らえないのですよ。命拾いしましたね。それではまたお会いしましょう。」


 人神も何もない空に扉を出現させてそれを潜った。あれが人神の異界へと繋がる門なのだろう。


 シホミと人神がいなくなり辺りに敵はいなくなった。だが俺の暴走は止まらない。どうする?どうすればいい?


 また俺の感情を消して闇の意識と相打ちにするか?それは無駄だ。あれはあくまで俺の感情の揺らぎを失くすことで闇の意識が発現しないように抑えるための措置だ。もう既に闇の意識が出ている状態では意味がない。


 だったらどうする?このまま暴走すれば全員死ぬことになる。前回はたまたまギリギリで抑えることが出来たが今回もそう都合良く行くとは限らない。いや…、確率から考えればうまくいかない確率の方が高いだろう。


 一体どうすればいい?このままじゃ皆を殺してしまう。だが俺にはこの状況を何とかする方法がない。


最高神「困ってるみたいだねぇアキラちゃん。」


アキラ「…最…高神……。」


 蹲って苦しんでいる俺の前に最高神が立っていた。嫁達が何も言わないのが不思議だと思ったがどうやら俺と最高神以外は時間が停止しているようだ。仲間達も全員が完全に動きを止めて固まっている。


最高神「まだ運命も決まってないのにここで世界を滅ぼされたら僕としても歓迎出来ない結末なんだ。だから今回は手を貸してあげ………。」


???『邪魔をするな観察者よ!』


最高神「うるさいなぁ。君こそまだ運命も決まってないのに干渉しすぎじゃないの?ちょっと黙ってなよ。」


 最高神が手を翳すと闇の意識の声が聞こえなくなり、俺の苦痛も和らいだ。


アキラ「お前の方が劣るはずなのになぜあれを抑えられる?」


最高神「ああ。さすがにバレたか。いや、さすがだねアキラちゃん。あれに勝てる者はいないからね。僕だってあれには負けるよ。だけどまだ完全な状態じゃないからアキラちゃんの力も使って抑えるくらいは出来るよ。」


 あの闇の意識の力はまだほんの一端に過ぎない。最高神は確かに隔絶した力を持っているがそれでも俺からすれば底が見えるレベルだ。


 だがあの闇の意識の力の底は見えない。いや…、底なんてない。あれの正体は………。


アキラ「俺の力を使って?」


最高神「う~ん………。簡単に言えばあれを抑える重しがアキラちゃんなんだよ。だからその重しが解かれていない今なら僕の力も貸してあれを抑えるくらいは出来るんだ。これ以上詳しいことは教えられないけどね。」


アキラ「それならなぜもっと完全に抑えてしまわない?いや…、それどころかお前はあれを解放させようとしている節もあるんじゃないのか?」


最高神「それは誤解だよ。僕はただ眺めるだけさ。………信用出来ないなら少しだけ僕のことを教えてあげるよ。それはね………。」


 最高神は宇宙せかいの始まりを語り出した。


 最初は何もなかった。虚無だ。そこに最高神達の祖父母が現れる。祖父母の世代の神々は虚無から混沌を作った。この祖父母達は第一世代であり始祖の世代と呼ばれている。混沌を作り出す力を持っていたと考えられている。


 次に父母の世代の神々は混沌から宇宙せかいを作った。このファルクリアもそう。俺達がいた地球のある宇宙もそうだ。父母達は第二世代であり創造の世代と呼ばれている。全てが混ざった混沌を分離して世界を作り出す力を持っていたらしい。


 そして現在が最高神達、子供の第三世代だ。この世代は父母達が創造した宇宙を監視し管理する力を持っている。この世代は今の世代であり特に呼び名はない。通称や呼び名は後で他の者が付けるものだ。


 現代は現代としか呼べず未来になった時にその時の者達が後で呼び名をつけるのだ。現代では近世と呼ばれる時代でもその時代の時には現代だったわけだからな。


 そしてここに出てくる神々はファルクリアに溢れている神とは違う。第一世代から第三世代まで最高神達は本当に創造神であり宇宙の運行を行っている神だ。


 対してファルクリアに溢れている神格や神はこのファルクリアの中だけで神を名乗っている。例えば日本で死んだ者は全て神や仏になると言うのと似ている。ファルクリア内に置いてそのルールの下一定の基準を満たした者はファルクリア内では神と名乗って良いですよと言っているだけのことにすぎない。


 創造の世代が作った宇宙は無数にある。そしてその創造した宇宙を管理する子供達が現在のそれぞれの宇宙の神だ。


 だがそれで終わりじゃない。宇宙はいずれ死ぬ。同じ第三世代でも最高神や地球があった宇宙の神はまだ若いそうだ。もっと年上の宇宙の神達はすでに寿命を超えて死んだ者も多数いるらしい。


 宇宙が死ぬから管理者の神が死ぬのか、神が死ぬから宇宙が死ぬのかはわからない。ただ一つ言えることは神と宇宙は同時に死ぬ。


 もちろん人間の寿命から考えれば無限とも思えるような長い時間があるがそれでもいずれ確実に死が訪れる。


 つまり今宇宙はどんどんその数を減らしている。今いる宇宙の神が死ねば全ての宇宙はなくなるということだ。


 ならば増やせばいいじゃないかというほど簡単なことじゃない。まず新しい宇宙を作る能力は既にない。混沌を分離して新しい宇宙を作れる能力は第二世代にしかなかった。最高神達第三世代はあくまで管理する能力しかないのだ。


 ならば管理者の跡継ぎを作ればいいのかと試したそうだ。異なる宇宙の神同士が子孫を残した。だが第三世代である親が死ぬと子供ごと宇宙も死んだ。


 様々な神同士を掛け合わせてみたが第三世代同士の親から生まれる子供の能力は親と同じ管理の能力しかないそうだ。


 新しい宇宙を作る方法もない。子供に宇宙を引き継がせようと思っても親が死ねば宇宙も死に無理だった。もう八方塞だ。どうしようもない。


 ただ全ての宇宙が穏やかに滅びて行くのを眺めていることしか出来ないのか?


 神達だって色々と試した。それでももうどうすることも出来ないと諦めた者もいるそうだ。だが最高神や地球の神達若い者は諦めなかった。


 そこで新しい試みを始めた。それはお互いの宇宙同士の交流だ。


 地球もファルクリアも何度も星が出来、消滅し、生命が生まれ、絶滅している。今のこのファルクリアの生命も何万回、何億回と繰り返された生命の誕生と絶滅のうちの一度らしい。


 最高神が前に言っていた何度も繰り返しているっていうのはそういうことだ。


 だが同じ閉じられた自分の宇宙の中で何度繰り返しても結局似たような進化を辿り滅びを迎える。自分達の寿命が尽きるまで繰り返し続けたところで変化など見込めないと思った若い神達はお互いの宇宙から人材を交換することにした。それが召喚や転生などだ。


 ミコ達が呼ばれた勇者召喚もその交流の一環として開放された力の一つらしい。だが実はそれ以外にも多くの方法で多くの者が行き来して交流しているらしい。


 例えば地球で突然文明や技術が進歩した時がないだろうか?何故急激にこれほどの進歩を?と思うことがあるだろう。それらは異世界から来た者達の知識や技術によって齎されているのだ。


 そして当然それは地球に齎されるだけではなく、俺達のように地球から他の宇宙へと出される者達もいる。こうしてお互いの宇宙を交流させることでこれまでなかった変化がないかと期待しているのだ。


 だが神達の思惑を超えたことをする者達も現れ始めた。そう。例えば人神だ。本来は宇宙間の交流が目的であった召喚を使い異世界人を呼び出し戦争に利用し始めた。


 もちろんだからと言って最高神は干渉はしない。第三世代はあくまで管理者であり監視者なのだ。そこに住む者達がどのようにするのかをただ見つめるだけにすぎない。あるいはそれも変化として受け止めているかもしれない。


 それからもう一つ。宇宙を破壊しようとする意思が存在しあちこちの宇宙を既に滅ぼしてしまっている。そうだ。それが俺の中にいるあれだ。


 あれは全てを滅ぼし虚無へと還そうとしている。混沌ではなく虚無へだ…。つまりあれは………。


最高神「………ね?わかってもらえた?僕は敵じゃないんだよ。まぁ味方でもないけどね。」


アキラ「………お前の言葉が全て本当だったとしてもまだ話してないことがあるよな?敵じゃないのなら何故俺を騙そうとする?」


最高神「別に騙そうとしてるわけでもないし嘘も言ってないよ。ただ言えないことは言ってないだけ。」


 ………それはそうだろうな。ファルクリアにいる偽物の神じゃなくて本当に宇宙を管理している神が、その世界に住んでいる者に何でも全てを教えるということは出来ないだろう。


最高神「僕のことを信用してとは言わないけど、せめて話くらいは聞いてもらおうと思って言える範囲で本当のことを言ったんだよ。それをどう判断するかはアキラちゃん次第だけどね。」


アキラ「………いいだろう。その話は信じてみよう。ただしだからってお前自身を信じたわけじゃないぞ。」


最高神「まぁそれでいいかな。とにかくね。あの意思が宇宙を滅ぼすか存続するかで僕達管理者とあれが直接戦うことは禁止にしたんだよ。」


アキラ「どうしてだ?あれからすれば戦いになってお前達神を殺せば宇宙も滅ぼせるんだから戦いになった方が手っ取り早いんじゃないのか?」


 あれは宇宙を滅ぼして虚無へと還したいんだ。なら神を殺した方が手っ取り早い。


最高神「あれも万能じゃなくてね。例えば僕達が何人かで協力してあれを封じたらうまくすれば何兆年も封じたり出来るわけなんだ。もちろんあれにとっても僕らにとってもそれくらいの時間なんて大した時間じゃないんだけど、それでもそんなに長い時間何も出来ないなんて嫌でしょ?」


アキラ「なるほど………。」


最高神「それにあれが直接僕らを殺したら虚無に還すのが難しいみたいだね。出来るのかどうかはわからないけどあれにとってもあまり望ましくないみたい。だからお互い無駄な殺し合いはやめようってなったわけ。」


アキラ「ふむ………。」


最高神「それで滅びる運命か存続する運命か。それが決まったら両者ともそれに従うことになったんだ。だから滅びると決まれば僕は黙ってこの宇宙と一緒に死ぬよ。存続すると決まればあれはこの宇宙を滅ぼすことを諦める。尤もあれに滅ぼされなくてもいずれ寿命でこの宇宙も死ぬんだけどね。それまでの猶予の問題かな。」


アキラ「………それで?」


 もう話が見えているが一応最後まで聞く。


最高神「うん。それでね?まだ運命は決まってないのにあれに滅ぼされちゃったら僕も困るわけなんだよ。だから今回はアキラちゃんに干渉してでも止めたいわけなんだ。」


アキラ「古代…、いや、海人族達が動き出しても干渉しないのにか?」


最高神「もちろんだよ。僕は観察して管理するのが仕事であって干渉して君達を動かすのは僕の役目じゃないんだ。ただ滅びの運命でもないのに滅ぼされるのは困る。それだけ。」


アキラ「だから俺の暴走と止めてくれると?」


最高神「うん。止めるよ。………あっ。でも変な期待させないように先に言っておくね。僕が干渉するのもタダじゃないから。僕が世界に干渉しなければならない分ちゃんとアキラちゃんに対価を払ってもらうよ。それとそれを止めるのに相応のリスクと支払いがあるからね。」


アキラ「おい…。ちょっと待て。俺が頼んだわけでもないのに勝手にやってきて勝手に行動してその対価を払えって言うのか?どんな押し売りだよ!」


最高神「でも僕が止めないとこのまま世界は滅んで終わりだよ?どの道選択肢はないんだよ。それにアキラちゃんがきちんと抑えていればこんなことしなくてよかったんだから、自分の力のなさが原因だってのも忘れないでね。あとは僕が抑えてあげるから。それじゃまたね。」


アキラ「おいっ!ちょっ!まっ!―ッ!」


 最高神が眩しく光り輝いたかと思うと俺の暴走は収まり最高神は消えていた。


 そして俺は重い支払いを課せられたのだった………。



 あぶねぇ!ごめんなさい。更新忘れるところでした!


 遅くなったけどギリギリセーフ!(何が?

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