閑話21「ヒデオ=セカイ」
人神「すばらしい。たった一年で習得するとは!」
人神が拍手しながら俺に近づいてくる。聖教皇国を出てから一年近く経ってる。聞いた話じゃ俺がいなくなった後でヒロミは死んだらしい。
まぁヒロミなんてどうでもいい。最初からただの肉便器にでもしてやろうかと思ってただけだ。俺のすごさもわからずに離れていって勝手に死んだってざまぁみろとしか思わない。
それよりミコだ。ミコッ!ミコッ!ミコミコミコッ!!!
勝手に俺から離れて九狐里のもとへ向かっただと!?絶対に許さない。ミコの目の前で九狐里をボコボコにしてやる!そしてその九狐里の目の前でミコを犯してやる!その後でミコの目の前で九狐里を殺してミコは俺の肉便器に調教してやる!
ははははははははははははははははっ!!!
未来を想像してたら楽しい気分になってきたぞ!俺のすごさがわからず蔑ろにするような奴らなんて死ね!俺こそが最強で最高の神だ!ははははっ!!!
人神「それではそろそろ次の………、え…?」
人神の胸から俺の剣が突き出ている。
ヒデオ「お前はもう用済みだ。もうお前から教わることなんてない。俺の方がお前より強いんだからなぁ!はははっ!!!」
人神が話している間に一瞬で後ろへと周り込んだ俺が手に持つ剣で貫いてやったからだ。もうこんな雑魚に用はない。人間族最高の力を持つ人神だってすでに俺には敵わない。
俺の移動すら見えていなかった。こんな奴にもう習うことはない以上指示されるだけのここにいるより、目障りなこいつを排除したほうがいいだろう。
人神「こんな………、馬鹿な………。ぐっ………。」
ヒデオ「お前の代わりに俺が人間族を支配してやるから安心して死ね。はははっ!!」
万が一にも復活されたら面倒だからきっちり止めは刺しておくか。俺はそこらの間抜けどもと違って頭が良いからな。俺以外の馬鹿で無能共はここで失敗する。
出来が違う天才の俺はここで油断したりしない。人神の体をばらばらに切り刻んで首も落とす。ついでに頭は叩き潰しておこう。これだけやれば復活できまい。くくくっ。さすがは俺だ!天才で最強なんて隙がなさすぎて俺の敵になる奴が可哀想なくらいだな!はははははっ!!!
よし。それじゃあ人神に従ってた雑魚の神共を従えに行こうか。いくら俺が天才で最強でも一人で全てをするのは面倒だからな。俺に使ってもらえるだけありがたく思えよ!ははははっ!!
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人神の部下共が使ってる小屋に奇襲をかける。気配を消して近づきいきなり扉を蹴破って突入したら誰も俺に気付いておらずあっさり制圧出来た。
戦闘で四人ほど斬り飛ばしたら向こうは戦意を失って俺に従うようになった。くくくっ!やはり俺は最強だ。こんなゴミ共とでは出来が違う。
ここにいた三十人の人間族の神共は俺の傘下に収まった。これで俺はこの世界最大の戦力を手に入れただろう。最早俺に逆らえるような奴はいない。世界征服でもしてやろうか?はははははっ!!!
ヒデオ「おい!中央大陸へ帰るぞ。どうやってこの空間から出たらいいんだ?」
拳神「はっ!それではこちらへ。」
こいつは拳神という奴だ。俺が人神に連れられてここで修行を始めた頃から俺の世話係をしていた。そして俺がここを襲撃して掌握した時も一番最初に俺に恭順したのがこいつだ。
すぐに俺に従うなんて見る目がある。そこそこ使える奴だからここの神共のまとめ役にしてやろう。
ヒデオ「これからこの拳神をお前らのまとめ役にする。お前らは拳神の言うことを聞けよ。」
神達「「「「「ははっ!」」」」」
本心では俺に従ってない奴もチラホラいるけどそんなことはどうでもいい。こいつらはどうせ使い捨ての駒だ。だから従わないなら従わないでもいい。どうせそのうち俺の命令で命を落とすだろう。
俺に従わない奴らは任務で使い潰してやる。そういう奴の選別も拳神にやらせよう。組織や体制について考えながら拳神に付いて移動する。
暫く進むと枠だけの門のようなものが見えてきた。俺がここへ連れて来られた時に通った門と少し似てるけど明らかに大きさが違う。
拳神「あの門を潜ると中央大陸へと出ることが出来ます。」
ヒデオ「よし。中央大陸へと戻るぞ。主の帰還だ!くくくっ。はっはっはっ。は~っはっはっはっ!!!」
俺は神共を引き連れて門を潜る。さぁ世界征服の始まりだ。
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門を潜って出た先は森か林の中だった。
ヒデオ「何だここは?どこだ?」
拳神「ここはバルチア王国南東部の森の中です。」
俺がいない間にバルチア王国は滅んだと聞いてる。なら国が崩壊した混乱を利用するか?
ヒデオ「バルチア王国が滅んだ混乱を利用して手勢を集めるか?それともいっそ国を奪うか?」
こういう時は大体元バルチア王国軍とかが征服した側のガルハラ帝国に従わずにゲリラ戦などをしているはずだ。
それにこの程度の文明しか持たないようなこの世界の馬鹿共は占領政策も知らないだろう。戦争に勝ったから今日からここは自分達のものです。とか言ってるだけのはずだ。
そんなことを言われて住人達がすぐに従うこともないだろうし行政もうまく働いてないはずだ。バルチア王国中が大混乱で徴税も出来てないだろう。
そんな中で俺が聖教の勇者として表に立てば兵士達も集まって俺に付いてくるはずだ。バルチア王国の国民達だって俺を次の支配者として望み受け入れるはずだ。
お?おっ?おおっ!おおおっ!!?
俺は全身がブルブルと震えた。別に寒いわけでも怖いわけでもない。快感?そうか。あまりの快感に俺の体が震えたんだ。
まるで全て俺のためにこの時が用意されていたかのような状況とタイミング………。やっぱり…、やっぱり俺は神に愛されている。
もちろんこの世界にゴロゴロいる紛い物の神じゃない。俺達の世界で考えられていたような、崇められていたような本物の神にだ。
国が滅んで荒れているところに真の英雄が現れてゴミのような国民達を救い導く。そして新しい国を建てて永遠に崇められる。
そうだ。それこそが俺だ。俺に相応しい。いや、俺はこのために生まれて生きてきたんだ。全てはこの時のために!俺はこうなる運命で生まれてきた。
はははっ!何だ!ヒロミがどうだとかそんな小さなことどうでもよかったんじゃないか。これから俺は女なんて選び放題だ。今まで誰もしたことがないような贅沢し放題だ。
それなのにミコッ!その正妻の座を蹴って九狐里のところへ行ったなんてな!後悔させてやる!思い知らせてやる!泣いて俺の妻にしてくれと懇願させてやる!
でも残念だったなぁ!お前はこれからずっと俺専用の肉便器だぁぁぁぁぁぁ!!!!あ~っはっはっはっ!
拳神「まずは聖教皇国へ向かいましょう。最も協力を得られる可能性が高いのは聖教皇国でしょう。道すがら途中の町や村の協力も取り付けていけばよろしいかと…。」
拳神の言葉で現実に引き戻された俺は考えを纏める。
ヒデオ「そうだな。それがいいだろう。通る先々で全ての町と村を俺の傘下に収め、周辺で活動しているであろうレジスタンスを統合して俺の軍を作り上げる!さぁ!それでは向かうぞ!いや、凱旋だ!聖教皇国まで凱旋するぞ!はははははっ!!!」
俺がこのゴミ共を支配してやることで人間族は飛躍的に進歩するだろう。このゴミ共と俺じゃ出来が違うからな。俺が導いてやればいくらこのゴミ共と言えども進歩するはずだ。
さぁ人間族の夜明けだ!いざ行かん!
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………どういうことだ。どうなってる?こんなことがあるはずはない!?
ヒデオ「どうなってる!?何故だ?」
拳神「………。」
誰も俺の問いに答えない。そりゃそうだ。俺ですら予想外だったことなのにこの馬鹿共にわかるはずはない。
俺達はここに来るまでにすでにいくつもの町や村を通ってきた。この南東地域は戦闘になる前にバルチア王国が降伏したために大きな戦火に見舞われることはなかったらしい。
普通それならもっと俺に協力してガルハラ帝国の支配から独立しようとするはずだろ?それなのにこれまで通ってきた町や村の者共は俺がそう言っても誰も耳を貸さなかった。
なんって無能だ!なんって愚かなんだ!この俺が力を貸してやると言ってるのにそれがどれほど素晴らしいことか理解出来ない。クズ共め!お前らなんか死ねばいい!もう二度と助けてやるもんか!
俺に従わない愚民共なんぞ俺の国には必要ない。俺の素晴らしさがわからない無能共などに生きる権利はない。俺の国に住めるのは選ばれし優秀な者のみだ。お前らは俺に従えばよかったと後悔しながら死んでいけ!
ヒデオ「くそっ!イライラするぜ!」
俺と周囲のゴミ共じゃ知能が違いすぎる。頭の出来が違いすぎてゴミ共の考えてることが理解出来ない。人間に昆虫や鳥の考えてることがわからないのと一緒だ。
相手があまりに下等で馬鹿すぎるために俺の理解出来ない滅茶苦茶な理論を基にものを考える。だから俺に協力しないなんていう答えが出てくる。
どう考えたってまともな知能があれば俺に泣いて縋り付いて庇護下に入れてくれと頼むのが当たり前だろう。それなのにこの世界の無能共はそれが理解出来ない。勇者で最強の神である俺の偉大さがわからない。
………もういい。もうこんなクズ共なんかいらない。こいつらを集めて俺が支配するんじゃない。俺が支配してこいつらを集めればいい。
初期の頃から反乱に加わっていれば良い地位や待遇が得られる。それなのにそれが理解出来ないこのクズ共は俺がこの世界を支配したら奴隷としてこき使ってやる。
自分達の選択がいかに愚かであったか後で思い知るがいい!はははははっ!!!
拳神「これからいかがなさいますか?」
ヒデオ「くくくっ。どうもこうもない。これまでもこれからと同じように行く先々で声をかけながら聖教皇国を目指す。そうだろう?」
拳神「………はっ!」
くくくっ。そうだ。ただの人間みたいな雑魚共なんて最初からいらないんだ。俺さえいれば世界なんて簡単に征服できる。だから全てを支配した後で思い知らせてやればいい。はははっ!
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バルチア王国王都パルまでやってきた。結局ここまで来る間にあった町や村で俺に協力する者はいなかった。それにゲリラやレジスタンスの情報を集めてみたが噂すら見つからなかった。
実際に活動していればいくら隠そうと思っても情報が出てくるはずだ。それなのに一切の情報が出てこない。
まさか本当にレジスタンスすらいないのか?そんな馬鹿な…。他国に力ずくで支配されたら反抗する者は少なからず居るはずだろ?それなのにその情報が一切ない。そんなことあるはずない。
と思うところだろ?でも違うんだな。俺はこれまで各町や村が俺に協力しないことでわかった。こいつらは俺達の世界なら小学生でもわかるようなことがわからない無能のクズ共だ。
だから俺じゃ理解出来ない行動や選択をする。主義主張誇りなど持たないこいつらは支配者が変わっても体制が変わっても何も理解出来ずにただ黙って支配され続けるだけなんだろう。
その程度の知能しかないから反乱を起こすだとか国を取り戻すだとかそんな難しいことは考えることすら出来ない。
最初こそ俺もそれが理解出来ずに怒りもしたが今は違う。天才である俺はこんな下等なゴミ共の考えすら理解出来た。
こいつらがただ黙って支配者に支配されるだけの存在だと言うのならそれはそれでいい。つまり俺の敵にも味方にもならないってことだ。そう。俺が支配者になれば次は俺に従うんだからな。
拳神「しばらく見ない間にパルはこれほど発展していたのですね。」
ヒデオ「あ?発展だぁ?何が言いたい?」
発展だと?だから何だ。そもそも占領軍が駐留する中心地なら人や物が増えて賑わうのは当たり前だ。
拳神「聖教の勇者の呼びかけに誰も応えなかったこと。それはすなわち今の暮らしに満足しているということ。バルチア国民がガルハラ帝国の支配を受け入れている証拠でぷぎゃ………。」
胸糞悪いことをベラベラしゃべってるゴミを鞘に収めたままの剣で殴ってやったら頭が潰れて死んだ。ふんっ。軽く殴っただけで死ぬなんて俺以外のやつはやっぱりゴミばっかりだ。
愚民共がガルハラ帝国の支配を受け入れているのは支配者が誰だとか、その支配者が何を考えているだとかそういう難しいことが一切理解出来ずにただ黙って支配される愚か者共だからだ。
な~にが発展してるだ。な~にが現状に満足してるだ。こいつらにそんな知能があるのなら俺の呼びかけに応じて従ってるはずだ。
こいつらにはそんなことを判断するような脳みそはない。支配者は誰だとか現状がどうだとかそんなことを判断する知能もなくただ毎日搾取されるだけのゴミ共だ。
そういえばまとめ役の拳神を殺してしまったな。代わりを選んでおかなければな。………ていうか拳神は頭を潰されて死んだのに立ったままだ。
ははっ!ちょっと面白いぞ!武道家で姿勢がよかったから頭がなくなってもバランスが取れてるのか?
………おっと、そんなことはどうでもいいな。次のまとめ役を決めよう。
ヒデオ「おい色神。これからはお前がこいつらをまとめろ。」
色神「はい。かしこまりましたわ。」
色神は妖艶な笑顔で答えた。こいつは名前の通り色情の神だ。ただのエロいお姉さんみたいに見える。まぁ力もそれなりにはあるけどな。
こいつは俺が人神を殺してこいつらを支配下に置いた初日から俺に色目を使って誘惑してきた。もちろんその日に抱いてやった。いや…、その日から抱きまくってる。
こいつは他の糞女共と違って俺が素晴らしい存在だと気付いて従った。だから毎日可愛がってやってる。とりあえずこいつに他の神共を任せておけばいいだろう。
こいつは俺に心酔してるから絶対に裏切ることなんてないはずだ。
ヒデオ「聖教皇国までもうすぐだが今日はここに泊まるぞ。さっさと宿を探してこい。」
色神「はっ!」
まだ日も高くここから聖教皇国まですぐに到着出来るだけの距離だ。でも無理に今日着かなきゃならない理由はない。
今日無理に出発して夜に向こうに着いて問題があったら面倒だ。朝から余裕を持って向かって何かあっても日中に対処出来るようにしておいた方がいいだろう。
さすが俺だ。凡人共には想像も付かないようなことまで考えて万全の対策を用意している。天才すぎて自分が怖いぜ。
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パルに滞在するようになってすでに二ヶ月以上が経過してる。それなのに何故まだパルに滞在してるのか。それはもちろんちゃんとした理由がある。
まず飯がうまい。今まで食ったことがないほどうまい飯が出てくる。地球の味に似てる料理もたまに出てくる。これは俺だけじゃなくて全員がそう思ってる。だから二ヶ月もここで滞在してても誰も早く移動しようとは言わない。
それから宿。宿のレベルが高い。地球で言えば高級ホテルというくらいのサービスを受けられる宿が結構ある。
こんな劣った文明の世界で俺達の世界となど比べようもない…、と思っていた。でも実際に泊まってみたら俺達の世界でも高級ホテルで通用するレベルだった。あまりの居心地の良さにこれまた誰も出発しようと言わない。
だから俺はここの宿で毎晩色神をヒィヒィ啼かせてる。色神はよがり声が大きいけどここの宿なら隣の部屋から壁を叩かれる心配はない。
さぁ今晩もよがらせてやるぜ。ひひひっ!
色神「ヒデオ様。そろそろ聖教皇国へ向かいませんか?」
そう思ってたのに色神から思わぬ言葉が出てきた。どういうことだ?
ヒデオ「何故だ?ここの暮らしに不満でもあるのか?」
色神「いいえ。不満などありませんわ。」
ヒデオ「だったら何故?」
色神「ふふふっ。私の聞いた情報では聖教皇国はここよりもさらに良いご飯と宿があるそうですよ。ね?それならここに留まる理由もないでしょう?向こうが情報ほど良くなければこちらへ戻れば良いだけですわ。」
ヒデオ「なるほどな。お前の言うことも一理ある。明日ここを発って聖教皇国を目指す。」
色神「まぁ!さすがはヒデオ様ですわ。即断即決ですわね。」
ヒデオ「ああ。それじゃ明日はゆっくり出来るかわからないから今晩はたっぷり楽しませてもらうぞ。」
色神「まぁ。うふふっ。」
色神は俺にしなだれかかってくる。今夜もたっぷり楽しませてもらうぜ。ひひひっ。
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聖教皇国に着いた俺達は驚いた。俺に協力する奴が一人もいなかったからだ。ここは本当に聖教皇国なのか?何故皇国が召喚した勇者である俺をまるで相手にしないんだ?
くそっ!イライラしたまま神殿を出る。………っていうかどうなってる?聖教皇国の風景が完全に変わってる。
前に俺が滞在していた時の面影は一切無い。まったく別の町になってる。たったこれだけの間にこれほど変わるようなことがあるのか?
色神「ヒデオ様。こちらですわ。」
色神が一軒の宿の前で俺を手招きしている。………ちょっと待て。これはないだろう。派手な外装に電飾のようなものがキラキラと光ってる。そうだ。これはあれだ。地球の…、いや…、日本のラブホだ。
ヒデオ「ちょっと待て。ここに泊まる気か?」
色神「もちろんですわ。ここは今話題の最新の宿で魔法で光る灯りに回るベッド、それから泡のお風呂と話題の設備が満載なのですわ。」
完全にラブホです本当にありがとうございました。
ヒデオ「本気でこんなところに泊まるのか?」
色神「本当なら予約で一杯で泊まれないんですのよ?ヒデオ様だから割り込めたのです。さぁ行きますよ。」
色神に引っ張られてラブホに入っていく。他の奴らもちょっとウキウキした顔してやがる………。
まぁ俺からすればラブホなんて安い宿だけどこいつらには珍しいんだろう。今日くらいはここでもいいか。そう思って大人しくラブホに泊まることにした。
けどここの設備は本当に良くて色神と色々なプレイを楽しめたから結局三週間も泊まってしまった。その後何軒か違う宿に泊まってみたがパルに勝るとも劣らない良い宿ばかりだった。
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もうずっとこの聖教皇国でホテル暮らししてたらいいんじゃないか?たまに飽きてきたらラブホに行って普段出来ないプレイで色神と楽しんだらそれだけで暮らしていける気がする。
………って、ちょっと待て。目的を忘れすぎだろう。俺は何のためにこんなところにいるんだ?ミコをボロボロにしてやるためだろう?
何を色神みたいなビッチババァを抱いて満足してんだ。思い出せ。ミコをぐちゃぐちゃに犯してやるんだ!
俺は全員を集めて今後について話をする。
ヒデオ「お前達は俺達の崇高な目的を忘れてるんじゃないのか?聖教皇国の宿に満足して食っちゃ寝しててそれでいいのか?」
色神「目的をお忘れだったのはヒデオ様では………。」
俺はキッと色神を睨む。色神はさっと視線を外して明後日の方を向く。さすがに色神は拳神のように殺したりはしない。こいつを抱けなくなるのはもったいないからな。
ヒデオ「とにかく旅を再開するぞ。」
色神「それではバンブルクに向かいましょう。」
明後日の方へ向かってた色神が戻ってきて口を挟んでくる。どうせこいつのことだからバンブルクにも良い宿か飯があるって聞きつけたんだろう。
でもそれも悪くない。何よりバンブルクは俺がこんな目に遭うことになった原因の町だ。あそこからやり直して新しい俺になるのも悪くない。
ヒデオ「よし。それじゃ一先ずバンブルクへ向かうぞ。」
色神「本当ですか?やったぁ~。」
色神だけ両手を挙げて喜んでる。やっぱりこいつは別の目的があってバンブルクを推してたみたいだな。無邪気に喜んでるみたいだけどバンブルクでもたっぷり抱いてやるから楽しみにしておけよ。うひひっ。
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バンブルクに向かう途中で通ったカライと言う町の近くの岬が穴だらけだった。もしかして巨大な虫の巣穴かと思って俺はビビった。
はっきり言ってあのサイズの穴を開けて住んでる虫が出てきたら俺は全力で魔法をぶち込んで逃げる自信がある。そんなのがいたら気持ち悪すぎる。
でもどうやらこれは虫の巣穴じゃないらしい。よかったぜ。これが何かはこいつらにもわからなかったけど、ここにそんな虫は生息してないのは確認が取れた。それだけでいい。
それから暫く進んでようやくバンブルクの町が見えてきた。ようやくだ。ようやく俺はここに戻ってきた。俺の人生が全て滅茶苦茶になったこの町に………。
ここに来るまでは全て順風満帆だった。超進学校の学園でも成績はトップクラス。スポーツ万能で助っ人に引っ張りだこ。俺が出れば女達が黄色い声援を上げて注目の的。
俺は全ての中心だった。俺の思い通りにならないことなんてなかった。それなのにミコは俺を捨ててあの根暗な九狐里の所へ行っただと?あり得ない!信じない!
全ての女は俺の思うがままだ。全ての男は俺につき従い従順だ。これこそが正しい世界だ。それなのにこんなことがあってたまるか!認められるか!
俺は世界の…、いや…、宇宙の中心だ。俺の思い通りにならないことなんてあってはならない。全ては俺の思い通りでなければならないんだ!!!
………そんなことを考えてた俺は雷に打たれたような衝撃を受けた。
可愛い………。いや…。綺麗………?わからない。全ての美を表す言葉に当てはまるような存在がバンブルクの町を向こうから歩いてくる。可憐でありながら妖艶に歩いてくるその少女を見て俺は動けなくなった。
マントで体を隠しているけど背の大きさと顔立ちからして少女だろう。そうだ。まだ年端もいかない少女なはずだ。
マントで体は見えないけどフードはとってるから顔はわかる。長い黒髪に金色の瞳、そして瞳と同じ金色の毛並の獣耳が頭の上についてる。
細い顎、薄い唇、小ぶりな鼻。全てが完璧だ。完全な調和のもとにその美しさが形作られている。色神なんて比較対象にすらならない。ミコだってこの少女の前じゃ霞む。まさに美の化身。
この少女を手に入れられるのなら他の何を捨ててもいい。俺はこの少女が欲しい。何をしても何を失っても欲しい。何よりも全てを優先するほど一番欲しい!!!
そう思って少女を注視していると少女も俺を見て止まった。………二人で黙って見詰め合う。他にも周囲を行き交うゴミ共がいるけどこの世界には俺とこの少女の二人だけしかない。他のゴミ共なんて気にもならない。
少女はただ黙って俺を見つめている。きっと俺があまりに格好良いから見とれているんだろう。そう思ってた。でも違った。
ミコ「どうしたのアキラ君?」
………この声。忘れるはずもない。………俺をこんなどん底に叩き落した女。ミコ=ヤマト!!!
それにアキラ君だぁ?九狐里のことか?どこだ?九狐里もここにいるのか?
………ミコは俺が見つめてた少女の肩に手を置きながらアキラ君と呼びかけてる。
まさか………。まさかまさかまさか!あの少女が九狐里だって言うのかよ!




