第八十九話「アキラ肉食化計画」
俺はまたしても正座させられてクシナに怒られている。フランは特にお咎めなしだ。早々に開放されて俺だけが怒られている。非常に理不尽だという思いしかない。
クシナ「大体貴女はですね!節操というものがありません!」
段々俺も腹が立ってきたぞ。そもそもなぜ俺が怒られなければならないんだ?
アキラ「おいクシナ。フランは俺の嫁であり嫁とイチャイチャして怒られなければならない理由はない。俺が多数の嫁を娶っていることは否定しないがそれは嫁達と俺の問題であって全員が納得しているのに部外者にそのことについてとやかく言われる謂れはない。そして今回は人前でイチャイチャしていたわけでもなく夫婦のプライベートスペースでイチャイチャしていただけだ。そこへ勝手に入ってきて人に見せ付けるなというのはお門違いだ。見たくなければ勝手に人の部屋に入ってこなければいい。」
そうだ。今回はフランと一緒に夫婦で休むようにと借りている部屋でイチャイチャしていたのだ。例えばだが夫婦水入らずでホテルに泊まっている時に勝手に他所の客が部屋に上がりこんで人前でイチャイチャするなとか言っても筋が通らない。
俺が優柔不断で女にだらしなく嫁をたくさん娶っていることは事実だがそれは嫁達と俺の問題であって誰も文句を言わず納得した上でそういう関係なのだから部外者のクシナにとやかく言われる筋合いはない。
他人の家で、とか人前でイチャイチャするなと言われればその通りだが今回はそれは通らない。ここはフランの実家であり夫婦で休む部屋として割り当てられた場所での出来事だ。
当然だが夫婦で休む部屋と言えばそういうことも起こり得る部屋ということだろう。少なくとも俺はそう解釈している。
クシナ「それは………。」
クシナは泣きそうな顔になって視線を彷徨わせながらオロオロしだした。いつもなら俺が黙って怒られているから反論されるとは思っていなかったのかもしれない。
狐神「はぁ…。しょうがないね。ちょっとおいでクシナ。」
俺とクシナのやり取りを見ていた師匠が割って入ってくる。クシナはとぼとぼと師匠に言われるがままに師匠について部屋を出て行ったのだった。
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師匠が他の嫁達や愛妾達やクシナを連れて部屋でヒソヒソ話をしている。だけど今回は遮断の結界が張られていないので俺の耳には会話が丸聞こえだ。師匠が忘れているということはないだろうからわざと聞かせているか隠すほどでもないと思っているかのどちらかだろう。
狐神「そうやって無理やり絡んでいてもアキラに呆れられるばかりでちゃんと相手になんてしてもらえないよ?クシナもいい加減素直になったらどうだい?」
クシナ「なっ、なっ、何のことですか?私は別に………。」
ミコ「クシナさん。素直にならないと自分が後悔するだけだと思うよ?」
フラン「そうですね。私も素直にアキラさんに気持ちを向けるようになってからとても幸せになりました。意固地になっても良いことはありませんよ?」
………何か三人掛かりで説得しているように聞こえるな。
ティア「わたくしとしてはアキラ様のハーレムに入りたくないと言っているような人を無理に説得してライバルを増やすよりも入りたくないのならそのまま放っておけばよろしいかと思いますが。」
シルヴェストル「わしはどちらでもいいのじゃ。受け入れるかどうかを決めるのはアキラなのじゃ。」
ルリ「………ん。あっくんが決めること。」
キュウ「私もぉ~、うかうかしてられませんね~。早く~、アキラさんとぉ~、心が繋がりたいものですぅ~。」
他の者はわりとどうでもいいみたいだな。ティアがどこまで本心で言っているのかわからないが本気で嫌がっているわけではないようだ。ティアから流れてくる感情から察するにクシナに発破をかけているようだ。ティアも素直じゃなかったから、もし皆が言うようにクシナが素直じゃないのだとすればティアはその気持ちがよくわかるのかもしれない。
ガウ「がうがう。」
………ガウはそれだけか?何かいつもがうがうしか言わないな。何も考えていないのかもしれない。
オルカ「なぜ私までこのような大事な場に呼ばれているんでしょうかぁ~?」
オルカはオロオロしている。
ブリレ「ボク達だって主様の愛妾なんだからお嫁さんが増えるかどうかはボク達にとっても大事なことだよ。」
ハゼリ「その通りです。主様のご寵愛を受けられる回数が減るかもしれないのです。」
立場を弁えてなのかクシナのことについて直接口出しはしないようだが愛妾達も自分達に関わることということで気にはなっているようだ。
だが果たして皆が言うようにクシナは俺に対して特別な感情を持っているのだろうか?今までそんなそぶりは感じなかった。
ただ俺はミコ達に言わせると恋愛事に鈍いらしいのであてにはならないのかもしれない。だがそれは決して俺が鈍感系主人公だからではなく闇の意識に感情を消されていたからだと言い訳しておく。
だったらその闇の意識の干渉がなくなった今では鈍感系主人公じゃなくなったのかと言われれば変わってはいない。そもそも恋愛経験値0の俺がいきなり女性の心がよくわかる恋愛プロフェッショナルになれるわけがない。
自分の感情が戻り人の感情もわかるようになったからと言っていきなり何でもうまく出来るわけじゃない。プロ野球選手だって生まれてすぐに野球がうまかったわけではなく才能のあった者が子供の頃から練習を繰り返してようやくプロ野球選手になれたのだ。
何が言いたいかと言うとつまり練習しなければ何事も上達しない。人の感情を読み取るようなことや恋愛の機微もそうだ。そして俺は感情が戻ってもそういう経験も練習も足りない。だから俺が鈍感なのはやむを得ないのだと言い訳しておく。
話が逸れているので元に戻す。果たしてクシナは俺のことが好きなのだろうか?そして俺はクシナのことをどう思っているのだろうか?
嫁達のことは当然愛している。嫁ではないが愛妾であるブリレとハゼリも愛している。では他の者は?
キュウは俺のことを好きだと言っているし態度でも示している。俺もキュウのことが好きだ。まだ心が繋がっていないが何かきっかけがあればすぐに繋がるだろうと思う。むしろもう嫁としてカウントしていいと思っている。
オルカはどうだろうか?オルカは俺に絶対服従しているようだ。身も心も捧げると公言している。ただ俺の方はそんなオルカにドン引きだ。オルカ自身は可愛いと思うがさすがに奴隷になりますとか言われてもこちらが引いてしまう。
それに嫁達のように愛しているかと言われれば今はまだわからない。少なくとも嫌いではない。というところだろうか。今後どうなるかはわからないが今のところあの変態性がなければオルカ自身は嫌いではない。
ではクシナは?………はっきり言ってわからない。もちろん嫌いではない。嫌いな奴を旅に同行させるほど俺も物好きではない。ただ女性として好きだとか愛しているかと言われれば今までそんなことを考えたこともない。
今までも何度か考えてきていたことをまたループするように考えている。しかし今までと同じように答えは出ない。
クシナ「………。だって………。だって私は許婚様のことをずっと想って待っていましたのにその許婚様はこんなにたくさんの女性を連れて来られたのですよ!?優れた方がたくさんの妻を娶られることは当然です。ですが私が最初の許婚ではなかったのですか?私よりも先にこんなにたくさん綺麗で可愛い奥さんを連れて来られるなんて私が拗ねるのも当然ではないですか?!」
………。クシナの心の叫びが聞こえた。普通に声がでかい。ウィッチの村中に響き渡ったかもしれない。
ミコ「クシナさんヤキモチ焼いてたんだ…。」
フラン「ただあの拗ね方だとアキラさんは鈍いので気付かないのではないかと思います………。」
狐神「………そうだね。クシナはもっと大人っぽいかと思ってたけど案外子供だったみたいだね。」
………うん。確かに皆の言う通りだ。フランの言う通り俺は鈍いからあんなのじゃ気づかなかった。そして師匠の言う通りクシナは思ったよりも子供っぽい。
ただ…。何だろう…。話を聞いてしまうとクシナのそういう態度も何だか可愛いものに思えてしまう。好きなモノを独占したいとか自分が一番になりたいなんていう思いは誰にでもあるだろう。拗ね方は子供っぽいけどそれだけ俺のことを想ってくれていたのだという意味でもある。
そう思うと急にクシナのことが可愛くなってくる。ただだからと言ってクシナのために他の嫁との関係を全て捨てるということは出来ない。もしクシナが俺を独占したいと言うのなら悪いが俺は今の嫁達をとる。
今の俺の嫁達はこの関係性を認めて納得しているから成り立っている。それを認められない者を受け入れることは出来ない。
そんなことを考えていると俺が寛いでいるリビングの扉がノックされた。声をかけて入ってきたのは気配で察していた通りドロテーだった。
ドロテー「アキラ様は本当に女性を虜にしてしまうのがお上手ですね。」
ドロテーは柔らかく微笑みながらそんなことを言ってきた。さっきのクシナの叫びを聞いたからだろう。
アキラ「フランが心配か?」
ドロテー「いえいえ。そのような心配はしておりませんよ。」
ドロテーは顔色を変えずにそう答えた。本心のようだ。俺が女にだらしないからフランが心配になって釘を刺しにきたのかと思ったがどうやらそうでもないみたいだな。
ドロテー「ただアキラ様は女性を惹きつけてしまうのにその扱いにはあまり慣れておられないご様子でしたので僭越ながら私が女性の扱いについてお教えできることはお教えしようと思ってやってまいりました。」
そう言いながら俺の向かいのソファに座る。顔は相変わらずニコニコ笑顔だ。もしかしてちょっと面白がっている?何かドロテーに少しからかわれている気がしてあまり愉快な気持ちではない。
ドロテーだって俺の後ろにくっついて追いかけてくる子供だったくせに………。と、昔を知っている俺達はお互いに思うところがあるのだろう。
ただドロテーの提案は俺にとってもありがたい。さっきも考えていた通り俺は恋愛経験値0のお子ちゃまだ。ドロテーはこの年になるまで海千山千の経験を積んできている。
前世の記憶を足しても二十年にも満たない人生経験しかなく、この世界に来るまで恋愛経験もない俺にとってはまさにうってつけの先生かもしれない。
アキラ「………それでは色々と教えてもらおうか?」
ドロテー「はい。」
ドロテーはにっこり微笑んだ。でもちょっと黒い笑みに見えたのは気のせいだろうか………。
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早くも俺はドロテーに師事したことを後悔していた………。
アキラ「なぁ………。これはどうにかならないのか?」
ドロテー「あら?女性の扱いについてお教えしている間は私の言う通りになさってくださる約束でしたよね?」
ドロテーは意地の悪そうな笑みを浮かべる………。やっぱりフランのことで俺に含むところがあるんじゃないだろうな?でなければなぜ俺をこんな目に遭わせるのか理解できない………。
俺は今何故か薄いピンクのタイトミニスカートに白いぺプラムブラウスと言うものを着させられている。このペプラムというのはウエストから裾の部分がふわりと広がったデザインのものを言うらしい。俺はあまり詳しくない上に説明もさらっと聞き流していたがミコがそんなようなことを言っていた。
それがどうしたのかと言うと滅茶苦茶恥ずかしい。今も姿見の前で嫁達やドロテーに全身チェックされている。
ミコ「アキラ君可愛い!」
アキラ「………そうか。」
確かに自分で言うのも何だが鏡に映っているその姿は可愛い。いつものゴスロリドレスと違って普通に街中にもいそうな少女だ。ただふわりと広がっているゴスロリドレスと違ってタイトスカートなどは体のラインがはっきりと出ている。
俺のプロポーションは悪くない。人の好みにも寄るがむしろかなり良い方だろう。だからそのボディライン自体には何ら恥じるところはない。問題なのははっきりと出る体のラインをジロジロ見られることに俺が耐えられないことだ。
実はここだけの話だが俺は結構可愛い格好とかするのが嫌いじゃない。っていうと女装癖の変態のように聞こえてしまうがもちろんこの世界に来てこの体になってからの話だ。
以前に南大陸で色々な服に着替えた頃くらいから可愛い服を着ること自体は嫌いじゃない。むしろちょっとそういう格好をするのがうれしい自分がいる。だけど人に見られるのは恥ずかしい。当たり前だ。普段は俺は男だ!とか言いながら可愛い格好をして喜んでいるところを見られたら恥ずかしいのは理解できるだろう。
でもそれは俺だけじゃないと思う…。思いたい………。誰だって可愛い格好とか好きなはずだ!たぶん………。自分が女装するということは少ないだろうが可愛い格好をした女の子が好きなのは男なら当たり前だろう?きっとそうに違いない。俺だけがおかしいわけじゃない!
フラン「アキラさんさっきから変な顔をしてどうされたんですか?」
………どうやら変な顔をしていたらしい。俺の葛藤が顔に出ていたのだろう。とにかく俺は可愛い格好をすること自体は嫌いではないがあまり人に見られるのは恥ずかしいのだ。そして嫁達くらいならともかくその他の大勢の人達に見られるなんて悶絶ものだ。
それなのに………。
ドロテー「それでは参りましょうか。」
俺はドロテーに引かれて連れて行かれる。ドナドナされていく俺を嫁達は手を振りながら笑顔で見送ったのだった。
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ドロテーに連行されてきたのは旅の仲間の男達の前だ………。恥ずかしすぎる!きっと今の俺の顔は真っ赤だろう。この場から逃げ出してしまいたい。だけどドロテーとの約束の手前それは出来ない。
マンモン「―ッ!―ッ!―ッ!」
………マンモンは俺の姿を見るなり顔を赤くしてビックンビックン体を震わせた。ちょっと怖いからやめてほしい。普通に何か気持ち悪い………。
ジェイド「ぶっ!」
ジェイドは鼻血を噴出した。こいつはいつも鼻血を出すな………。鼻が大事なイヌ科のくせにこんなに鼻血を出していて大丈夫なのだろうか?
ソンプー「結婚してください!」
俺がワーキャットじゃないと伝えた後でもソンプーはまだ俺に興味があるようだな………。男に言い寄られてもあまりうれしくない。
ケンテン「姫もそうやってお淑やかにしてたらもっとモテるだろうにな。」
アキラ「おい…。誰が姫だ。それに男にモテてもうれしくない。」
ケンテンは何故か俺のことを姫と呼ぶ。親衛隊内で普段俺のことをどう呼んでいるのかは知らないがもしかしたらこいつらは俺のことを姫と呼んでからかっているのかもしれない。
ダザー「素敵ですお姉さま………。」
ダザーはフードで顔を隠しているけど俺の眼にははっきりとその表情が見えている。何かうっとりした顔で俺を見ているな………。言っておくがダザーを俺の嫁にしたり愛妾にしたりするルートはないからな。
太刀の獣神「………。」
うん。太刀の獣神はいつも通りだな。何も言わない。ただじっと俺のことをガン見している。
ドロテー「それでは………。う~ん…。まずはマンモンからいってみましょうか。」
ドロテーは何か不吉なことを考えているようだ。これから何をするつもりかは知らないが俺は悪い予感をヒシヒシと感じていた。
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………。いきなりだが帰りたい。意味がわからないと思うが俺は今猛烈に帰りたい。
今何をしているのか…。それは俺とマンモンが二人っきりでデートの真似事だ。ドロテーが言うには女の気持ちを理解したければまずは自分で体験してみろとのことだった。
言ってることはわからなくもないけどこんなのでわかるわけない。相手の気持ちを知りたければ相手の立場に立ってみろ。それは確かに真理の一部ではある。だけどこれは全てに当てはまるわけじゃないということを理解しておかなければならない。
例えば男である者が女として扱われながら男とデートしてみて女の気持ちがわかるだろうか?確かにわかることもあるだろう。だがわからないことの方が多い。むしろ変な考え違いをしてしまうことの方が多いのではないだろうか?
男同士で男にエスコートされながらデートしてみても女が良いと思うことや望むことと男が良いと思うことや望むこととは違う。こんなもので女の気持ちがわかるのなら苦労はしない。
マンモン「………次はあっちへ行ってみよう。」
アキラ「………ああ。」
マンモンにエスコートされて森の中を歩く。………ん?でもドロテーにデートだって言われて来たからデートしてるような気になって気が滅入っていたけどこれはいつも通りの旅の途中だと思えば何てことない気がしてきたぞ。
旅の移動中や狩りの時も誰かと一緒にこうやって森の中を歩いたりすることはある。だけどそんな時に今みたいな憂鬱な気分にはならない。つまりそういうものだと思えば気が楽になるということだろう。
ドロテー「はい。減点です。それではいけませんよ。」
………後からこっそりついてきていたドロテーに駄目出しされた。もちろん俺もマンモンもドロテーがついてきていることは気配でわかっているし本人もついていくと公言していたのでこっそりと言う意味は少し違う意味で言っている。ついてきていることは堂々と宣言しているが俺達の邪魔をしないように姿は隠しながらついてきている、というニュアンスだ。
ドロテー「アキラ様は今これをデートではなく普段の旅の一部だと考えましたね?」
こわっ!何で俺の考えてることがわかるんだ?
ドロテー「気配です。最初のうちは良い感じに緊張されてましたのに今急にふっと普段通りになられました。つまり日常の一部だと認識することで緊張を解かれたのでしょう。」
ドロテーは鋭い…。っていうかやっぱり心読んでね?普通に会話になってるぞ!
ドロテー「読んでおりません。とにかく普段通りでは意味がないのです。男性と一緒に二人っきりでデートしているという気持ちを持って行動してください。」
アキラ「はい………。っていうかやっぱり読んでるよな?普通に心の中と会話になってたよな?」
その後いくら追及してもドロテーは心を読んでいたことについてはのらりくらりとかわしていた。
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ドロテーに何度も駄目出しされながらマンモンとのデートが終わり次はジェイド、親衛隊員、五龍王などとにかく旅の仲間達と順番に何度もデートさせられた。
そして今俺の横を歩いているのはエンだ………。何でこいつまで?
エン「なっ、何だよ!」
アキラ「別になんでもない…。」
エン「ふんっ!べっ、別にお前とデートなんてしたくてきたわけじゃないからな!あの婆さんの頼みを聞いてやっただけだからな!」
………何だろう。軽くイラッとするな。エンがツンデレさんっぽいセリフをよく吐くのも知っているし前から時々イラッとすることはあったけど何かこのイラッと感は久しぶりな気がする。
アキラ「だったらちゃんと周ったことにしてもう帰るか?」
だからちょっと俺は意地悪してやろうと思った。
エン「うぇっ!いっ、いや…、それは…、その…。」
エンはおろおろとうろたえはじめた。
アキラ「ふふっ。冗談だよ。ほら。とっとと行くぞ。」
エン「―ッ!!!」
エンは真っ赤になって俯いた。ちょっと可愛らしいな。やっぱり俺はこの体になってから子供が好きになっているみたいだ。…一応断っておくが性的な意味でじゃないぞ。ただ子供を見ていると和むという意味で好きだというだけだ。
こうして色んな奴とデートの真似事をしてみた結果………。結局俺は女心なんてわからなかった。それは当たり前だ。こんなことで女心がわかったら世の男達は女のことで悩んだりしていない。
ドロテー「それでは次は………。」
アキラ「まだあるのか?もう勘弁してくれ…。」
色々な服に着替えさせられて色んな奴とデートの真似事までさせられて結局何も得たものはない。もしかして俺はドロテーにおもちゃにされているだけではないだろうか。
ドロテー「あら…。終わりにしますか?ですが最後にこれだけは聞いてくださいね。」
アキラ「………何だ?」
ドロテー「フランに聞いたところアキラ様はいつもスピリットリンクされる時に相手の女性から迫られて受け入れるという形でしかされたことがないと聞いております。ですから次の方にはアキラ様から迫ってスピリットリンクを達成されますよう。」
確かに異性としての愛情で繋がっている者は今ドロテーが言った通り俺は相手から迫ってきてそれを受け入れる形でしか魂の繋がりを持ったことはない。だが…。
アキラ「何故だ?それに何か意味はあるのか?」
それが俺にはわからない。俺から繋げた方が効果が上がるとかそういう意味があるのだろうか?
ドロテー「迫られて受け入れるばかりではなく自ら望んで迫ってみるということも大事だと思います。アキラ様にはそういう部分が足りておりません。」
アキラ「………なるほど。」
俺はほとんど希望や望みというものがない。どうしても欲しいと望んだものもない。欲がないわけではない。ただそう強く望まなくとも手に入れてきたのだ。だから俺には渇望というような感情はない。
アキラ「でもそれだと他の嫁達が怒ったりしないかな?」
それだけが心配だ。自分達の時は俺から望んだわけでもないのに次の嫁は俺から望んで入れたとなればそれは嫉妬や怒りの対象になり得るのではないだろうか。
ドロテー「まったく何も思わない。ということはないでしょう。ですがそれを何とかするのもアキラ様の腕の見せ所ではないですか?」
アキラ「………考えてみる。」
ドロテー「はい。」
ドロテーは最初と同じ笑顔でそう言って引き下がって行った。確かにドロテーのお陰で今回俺は色々と考えさせられる切っ掛けになったと思う。
次に魂の繋がりを得て嫁にするのはキュウだろう…。今までのように相手から何か行動してくるまで放っておくのではなく俺の方からキュウを嫁として迎えに動いてみる………。
それを想像すると恥ずかしくなると同時に他の嫁達が怒らないかという不安な気持ちが湧いてくる。実際にしてみるかどうかはまだわからないが俺は脳内で色々と考えてみるのだった。




