第八十六話「デルリンの休日」
フリード達の謎の悪巧みでヘンテコな手料理を食わさせられた。とは言え俺のために一生懸命作ってくれた料理だ。何を企んでいるのかは知らないが料理に罪はないしその想いを無下にするわけにはいかない。
ほとんどは食えた物じゃない料理とも呼べないようなものだったけどそれぞれが気持ちを込めて作ったのはわかった。一応一通り味見だけはした。………マンモンのが一番ひどかった。あれはもう思い出したくもない。
その後なぜかフリードとクロが戦うことになったが俺はそれを好都合だと思った。フリードの腕がどれくらい馴染んでいるか確かめるためにここに寄ったというのもある。クロならうまく戦ってくれると思ったがちょっと考えが甘かったようだ。
まずフリードが強くなりすぎていた。第五階位並みの者でなければ今のフリードの相手としては役不足だろう。
ただフリードも完全に力を使えてるわけじゃないようだった。もし第五階位相当の力を使い続ければフリードの体の方が壊れる。クロと戦い始めた最初の頃はもっと低階位の力しか出していなかったし体もついていっていた。
だけど途中からどんどん体の耐えられる上限を超えて力を出し始めて最後にはクロとなんとか戦えるほどの力を放出していた。ただしその代償としてフリードの体はボロボロになった。俺が止めに入らなければフリードの体は自身の力でバラバラに裂けるかクロの炎に焼き尽くされるかどちらかだっただろう。
いつかと同じくフリードは自分がどんな状態になっていたのか自覚がないようでケロッとしていたけどとても正視に耐えないような状態だった。俺が回復しなければ確実に死んでいただろうな。
フリードの腕には本人が耐えられない以上の力が漏れ出ないように俺が封印をかけているはずだ。その効果は今もきちんとある。それなのにあの戦いの最後では明らかに本人の肉体の限界を超えた力を出していた。
クロとの戦いの後に気を失ったフリードをベッドに寝かせて俺はフリードの体と腕を確かめる。封印に異常はないし理由はさっぱりわからない。俺の力で強制的にフリードの腕の力を解放してみる。徐々に腕の力に体を蝕まれていく。やっぱり今のフリードの体では第八階位相当でも限界だ。
とてもじゃないが第五階位の力に耐えられるとは思えない。それなのにあの時は僅かとは言え耐えていた。引き出せるはずのない限界以上の力を引き出し、耐えられるはずのない力に耐える。どうしてこんなことが可能だったのかは理屈で説明出来ない。
ただ不思議なことが当たり前のように起こる世界だ。そういうこともあると思うしかない。俺はこの世界の全ての真理を究明しているわけじゃない。
フリード「うぅ…。」
アキラ「おっと!」
腕の力を解放しすぎたようだ。フリードの体が自壊し始め呻きだした。力を抑えて体を癒す。こんなことを繰り返していたら体の方が限界を迎えてフリードの命を縮めてしまうかもしれないな。あまり無茶させるのはやめよう。
その後暫くフリードの様子を窺ったり調べたりしている間にいつの間にか俺の意識は眠りに落ちていた。
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誰かに撫でられている気がする。嫁達じゃない。もっと大きくてゴツゴツとした硬い手だ。だけど何か安心する。大きくて温かい手に撫でられて俺の気が緩む………。
アキラ「………。」
フリード「あっ…。起こしちゃったか?」
俺はフリードが眠るベッドに上半身を預けて眠っていたようだ。目を開けると俺の方を見ているフリードと目が合った。フリードの腕は俺の頭へと伸びていて髪を梳いているところだった。
アキラ「………どれくらい眠ってた?」
フリード「さぁ…?俺も起きたらアキラが眠っててずっとこのままだったからな。」
アキラ「そうか…。」
それはそうだろうな。さすがにフリードが起き上がったら俺も目を覚ます。俺はベッドから体を起こしてフリードを見つめる。
フリード「そんなに見つめられたら照れるぞ…。」
ほんのり頬を赤く染めてフリードがふざけたことを言う。
アキラ「気色悪いわ。あまりふざけてると…。」
フリード「待って待って!ごめん。冗談です!」
俺が拳を振り上げるとフリードは即座に謝ってきた。こんなのが次期皇帝でいいのか?まぁいいか。俺の国じゃないし知ったことじゃない。
アキラ「目が覚めたなら俺はもう行くぞ。」
フリード「ああ。俺もちょっと出るよ。」
フリードが起き上がり服を着替える。いや、着替えるというより着るだな。戦う前に着ていた服はクロの炎に焼かれてほとんど消し炭になっていた。だからフリードは全裸でベットで寝ていたことになる。
フリード「………あまり見つめるなよ。」
俺がフリードの着替えをじっと見ていたらフリードは少し体を隠すようにくねらせた。
アキラ「だから気色悪いっつってんだろ。風呂に入れば男同士で体くらい見ることになるんだから大したことじゃないだろ。」
一応言っておくが男の体に興味があって見てるわけじゃない。表面的には俺の治癒で体の異常は治してあるが内部的な異常があった場合に本人が体を動かしてみないとわからない。だからフリードが体を動かして異常がないか見ていただけだ。
フリード「…ん?まず男同士で風呂なんて入らないだろ?それにアキラは女で俺は男だ。」
アキラ「………この国には公衆浴場というものはないのか?」
俺が男か女かはこの際置いておこう。ただ俺が疑問に思ったのはウィッチ種は皆で共同風呂に一緒に入ることに抵抗感がなかった。俺達が造った風呂を皆で一緒に入っていたのだから公衆浴場と言えるだろう。もちろん男女は別だったけどな。
それなのにフリードの言い方だとこの国では男同士でも一緒に風呂に入ることはないような言い方だった。皇太子邸にある大浴場はフリードなどの高い地位の者とその御付や妾くらいしか一緒に入れないのだろうがこのデルリンにいる一般市民達が共同で使う銭湯はないのだろうか?
フリード「公衆浴場って何だ?」
アキラ「それはな………。」
俺は銭湯について大まかに説明してやることにした。
フリード「なるほどな。それは面白いけど現実的じゃないな。そんなに湯を沸かそうと思ったら大量の薪が必要になる。そんなに薪を確保出来ないしそんなにあるなら暖炉や竈に優先的に使う。風呂にそんなに使っていられる余裕はないぞ。」
アキラ「ふむ………。」
まずウィッチ種は森の中に住んでいたから薪は確保しやすいだろう。ほとんど林や森のないデルリン周辺とは事情が違う。だけどそれでもウィッチ種ですらそんなに頻繁に風呂に入れる余裕はなかった。とてもじゃないがデルリンの住人達が入れるだけの風呂を沸かす薪は確保できないだろう。
………薪で風呂を沸かすのならな。薪が足りないのなら魔法で沸かせばいい。ウィッチ種もそうだがなぜ誰も魔法で風呂を沸かそうとしないんだ?
アキラ「魔法で風呂を沸かせばいいだろう?」
フリード「無茶言うなよ。風呂の湯を沸かすほどの火を使ったら風呂場が消し炭になるぜ。」
そうか…。どうやらこの世界には熱という概念はあまりないようだな。水を温めるには火、という考えしかない。だからそれだけの火を起こし管理するのが大変という結論に至る。
だが俺のように地球での標準的知識があれば火を起こさなくても熱を利用すれば湯が沸くことを知っている。俺が生み出した所謂熱魔法とでも言うべきものをフリードに見せてやる。
アキラ「これでどうだ?これなら危険な火を使わなくても湯が沸かせる。」
フリード「確かにこりゃすげぇな。だけどこんな魔法を使える人間はいないぞ。」
アキラ「教えれば大丈夫じゃないのか?」
フリード「アキラはわかってないな。人間族は一応魔法を使えるけどまるで理解出来てない。俺はアキラと接するようになってから段々わかってきたけどはっきり言って人間族の魔法はとんでもなく遅れてる。人間族は魔法を理解出来てないんだ。ただ無理やりなんとか使おうとしてるだけにすぎない。」
アキラ「ふむ…。まぁ思い当たる節はある。ミコが知っていた魔法もそんな感じだった。人間族に魔法で風呂沸かしは無理か。」
ウィッチ種は魔法が得意だから俺の魔法を真似ることが出来たんだろう。他の者達にはそう簡単に出来ることじゃないようだな。
人間族に風呂を普及させることは暫くは無理なようだ。…いや、待てよ。シロー=ムサシならどうだ?あいつなら何か地球の知識を使って考えるかもしれない。
アキラ「シロー=ムサシに何か開発させてみたらどうだ?」
フリード「あ~………。あいつは逆十字騎士団の奴らを纏め上げて扇動して反乱を起こしたぞ。だから今は北大陸で新兵器開発をしながらそれを自分達の命懸けで魔獣相手に試してるはずだ。」
アキラ「何だと?そんな話は聞いてないぞ。」
フリード「言ってなかったからな。」
俺はフリードにシロー=ムサシのことの顛末を聞いた。
アキラ「………なるほどな。それならやむを得ないな。むしろ措置が温すぎるくらいだ。死刑にしてもよかったくらいだろう。」
フリード「使える男なのは確かだからな。アキラが言った通り忠誠心は欠片もないけどあいつらの力じゃ北大陸では生きていけない。流刑地は影から大ヴァーラント魔帝国の手の者が守ってくれてるから数を制限して魔獣が多すぎたら魔人族が狩ってくれたりあいつらじゃ勝てないような魔獣が入ってこなかったりしてるけど万が一脱走出来たってすぐに死ぬだけだ。」
アキラ「それもそうか…。まぁお前がうまくコントロールできるのなら好きにすればいいさ。お前の国の家臣だからな。」
シロー=ムサシは面白い奴だとは思っていたがここまでお馬鹿だとは思ってなかった。本人が選んだ道なのだから後は本人がその報いを受ければいい。
それ以上はシロー=ムサシにも興味はなくなりフリードと一緒に皆の下へと向かったのだった。
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リビングのような部屋に皆集まっていた。
狐神「どれどれ…スンスン…。う~ん?ちょっと男の臭いはするけどあれの臭いはしないね。」
部屋に入った俺に師匠がいきなり鼻を近づけて何かを言い出す。
アキラ「………一体何の話ですか?」
あまり良い予感はしないけど聞いておいた方がいいだろう。
狐神「あのケダモノとお楽しみだったんじゃないのかい?」
アキラ「………何で俺がフリードとお楽しみしなきゃならないんですか。フリードと何かするくらいなら師匠を押し倒して襲いますよ………。」
俺は一気に疲れた。何故男の俺が男のフリードとあんなことやこんなことをしなければならないのか…。そんなことをするくらいなら綺麗で可愛い嫁達にあれこれする。
狐神「いつもそう言うけど一度も襲ってくれてないじゃないかい………。」
おお?何か師匠がしおらしく俺の袖を握って腕をプラプラさせてるぞ。ちょっと可愛い。
アキラ「そうは言いますけどそういう行為はしてませんが一緒に抱き合って眠ったりしてますよね。」
狐神「それはそうだけど…。そろそろ次に進んでも良い頃じゃないかい?」
師匠は期待を込めた目で俺を見つめてくる。
アキラ「俺もそういうことをしたくないわけじゃないですけど…。今はそんな時じゃないでしょう?俺達には無限の時間があるんですから今の問題が解決した後にしましょうよ…。」
狐神「うぅ~…。それはそうなんだけどね。だけど折角アキラと一緒にいられるのに…。何ていうか…、生殺しというかねぇ…。」
師匠はまだモジモジしながら俺を説得しようとしてるようだ。やばいなぁ…。最近俺は段々歯止めが効かなくなってきている。あまりこう誘惑されるとそのうち本当に襲ってしまいそうだ。
クシナ「貴女はまた!皆さんのいる前で!ちょっとは慎みというものを持ったらどうですか!」
またクシナに怒られてしまった。ただ最近のクシナの言い分はまったくもって正しい。例え夫婦でも人目も憚らず真昼間に人前でいちゃいちゃしだしたらそれは怒られても仕方がない。今は昼じゃないけどティアの時はまさに真昼間だったし今は大勢の人前だ。お小言がうるさいと感じることもあるけど言ってることは正しいので素直に怒られるしかない。
フリード「まぁそう怒るなよ。あんただって自分の番の日はアキラとイチャイチャしてるんだろう?」
クシナ「…へっ?」
一瞬固まったクシナの顔が見る見る赤く染まっていく。
アキラ「あ~…。クシナは別に嫁じゃないからそんなことはしてないぞ。」
フリード「え?そうなのか?へぇ…。」
フリードは最初驚いた顔をしていたが後半はニヤニヤしだした。
フリード「早く素直になってアキラに甘えておかないと自分が後悔するだけだぞ?それにもうすぐアキラは俺の嫁になるからな。俺がアキラを可愛がってる間はアキラの嫁達といえどもアキラに甘えられないからな。」
クシナ「なっ、なっ、何を言っているのです!私はこのような不埒な方のことなど…。」
フリード「へぇ?本当にぃ?いいのかぁ?んん~?」
フリードは尚もクシナをからかう。
アキラ「おいフリード。誰がお前の嫁になるって?それからあまりクシナをからかうなよ。まだ本気になったクシナの方がお前より強いからな。ボコボコにされても知らないぞ。」
フリードがクロと戦っていた時と同じくらいの力を発揮すればフリードの方が上回っている。だがそれは極僅かな時間しか体が持たないようだしいつもコントロールして発揮出来るとは限らない。普通にフリードがコントロール出来ているであろう範囲の力で言えば変身しなくともクシナの方が上回っている。
クロ「おいフリード!あまり調子に乗るなよ!戦いに勝ったのは俺だからな!」
クロがフリードに蹴りを入れる。いくら体が小さい状態とはいえ力は十分戻っているクロの蹴りを受けたらかなりの衝撃だろう。だがクロが手加減している以外にもフリードの能力が高いことでダメージを受けていないようだった。
フリード「おいっ!俺をフリードって呼ぶな!俺のことはフリッツと呼べ。」
クロ「なんでだよ。アキラはフリードって呼んでるじゃねぇか。」
確かに俺はフリードと呼んでるな。フリードリヒだったから最初に適当にフリードなんとかさんって呼んだらそのままフリードになった。愛称はフリッツだからフリッツと呼んでくれと言われた覚えがあるが無視してそのままフリードと呼び続けたら定着してしまった。
フリード「俺はフリードリヒ。だから俺の愛称はフリッツなんだよ。フリードって呼んでいいのはアキラだけだ。」
クロ「なんだとぉ~?わかった。それじゃこれからはフリードって呼ぶ。」
フリード「おい!全然わかってないだろ!フリッツだっつってんだろ?」
ジェイド「そうカリカリするなよフリード。」
マンモン「………フリード落ち着け。」
太刀の獣神「………フリード。」
フリード「おいぃっ!お前らわざとだろ!絶対わざとだよな!」
男共が皆フリードフリードと呼び出した。あまりしゃべらない太刀の獣神まで混ざってる。
クロ「当たり前だろ。アキラだけが呼んでいい呼び方だぁ?ふざけんなよ!てめぇはこれからフリードだ!皆でそう呼んでやる!大体俺のクロだってアキラが名付けてくれたんだぞ!それを呼んでも良いってことにしてやったんだから俺だってフリードって呼ぶのがフェアってもんだろ!」
フリード「うっ…。じゃあ百歩譲ってクロはそれでいいとしよう。…お前らは駄目だろ?お前らはフェアじゃない。」
ジェイド「じゃあ俺のことはジェイドと呼んでいいぞ。」
マンモン「………マンモンでいい。」
太刀の獣神「………。」
フリード「お前らはそのまま本名じゃねぇか!それから太刀の獣神は何か言えよ!」
騒がしいことこの上ない。俺はもうこいつらの漫才は見る気がないので嫁達と寛ごうと思ったところへロベールがやってきた。
ロベール「おいフリッツ。パックスが呼んでるぞ。」
入室してきたロベールはフリードに近づきながら声をかける。と、そこへ師匠がロベールの足を引っ掛けた。俺以外に見えた者はほとんどいないだろう。気付けた可能性があるのは第五階位以上の者だろうがクロはフリードと遊んでいたから気付かなかったようだ。あとはガウか五龍王達くらいだろうな。
ロベール「うおっ!」
師匠がどういうつもりでロベールの足を引っ掛けたのかは知らない。だけどロベールは一直線に俺に向かって倒れてくる。こんなことで転びそうになるなんて剣聖も大したことないなと思ったら大間違いだ。この場にいる俺以外の者は皆師匠に転ばされるだろう。それほど無駄にすごい足引っ掛けだった。
師匠の狙いはわからないがあまり良い予感はしないので避けようかなと思う。だが俺の周りは嫁達だらけだ。もし万が一だが俺が避けて他の嫁達にロベールが抱きつくようなことになったら俺はきっと我を忘れてデルリンを灰燼に帰すだろう。それがわかってる師匠はニヤニヤしながら俺を見つめてる。やむを得ず俺はロベールを抱きとめた。
ロベール「うおおおっ!………ってあれ?痛くない。どころか柔らかくて気持ち良い?何か良い匂いもするぞ…。」
アキラ「………。いつまで揉んでるつもりだ?とっとと自分の足で立て。」
ロベールは俺の胸に顔を埋めながら一人で勝手にもがいていた。俺に声をかけられたロベールは落ち着いたのかゆっくりと顔を上げて俺と目が合う。
ロベール「…あれ?お嬢ちゃんの顔がこんな間近に…。………これってもしかしなくてもお嬢ちゃんのおっぱいか?」
アキラ「だから揉むなっつってるだろ。いい加減その腕を引っこ抜くぞ。」
その言葉を聞いたロベールは慌てて立ち上がる。
ロベール「待って待って!わざとじゃないから!許してくれ!頼む!」
アキラ「だからどいたら怒らないからさっさとどけっつっただろ。わざとじゃないのはわかってる。」
何しろ師匠が無駄に物凄い足引っ掛けで転ばせたからな。
フリード「あっ!おい!ロディてめぇ!アキラに何してやがる!」
クロ「俺のアキラのおっぱいを揉むなんて良い度胸してるな人間。」
ジェイド「ロベール…。ちょっと向こうで話そうか?」
マンモン「………無に帰るがいい。」
太刀の獣神「………。」
ロベールは男共に囲まれる。これはやばいな。フリードも最近人外になりつつあるからロベールじゃ誰の相手も出来ない。ちょっと撫でただけでも普通の人間なら殺してしまいかねない面子ばかりだ。
ロベール「ちょっと待ってくれよ!事故だって!俺のせいじゃねぇよ!助けてくれ!」
ロベールは必死に謝ってる。そりゃそうだな。自分が一番弱いことをよくわかってる。仕方がないので割って入るか。
アキラ「あまりロベールをいじめるなよ。お前達の方が強いのはよくわかってる。さっきのは事故だったんだからもう許してやれよ。」
俺がロベールの前に立って庇ったら全員の視線が俺に集まった。
フリード「おい…。アキラ…。おっぱいまで揉まれたのにロディを庇うのか?俺ならぶん殴るのに?」
アキラ「何を勘違いしているのか知らないがお前だって散々俺の胸に顔を埋めたり揉んだりしただろ?すけべ心でわざとやれば殴るけど事故でそうなった時は最初は殴ってない。調子に乗ってそのままどかなかったり手を離さなければ殴ることもあるけどな。」
フリードはその時のことを思い出そうとして黙り込んだ。
クロ「アキラ抱っこ!」
アキラ「………はいはい。」
クロは俺に抱っこされて機嫌よく眠ろうとし出した。このまま放っておいて寝かしつけたほうがいいだろう。
ジェイド「俺はそんなことしたことないぞ。」
アキラ「そうか?頭を抱き締めるような格好になったことはある気がするが。それはまぁいいだろう。お前には伴侶のシュリがいるんだからいいだろ?浮気するなよ。」
ジェイド「えっ?ちょっと待ってくれ。シュリとはそういう関係じゃ…。」
シュリ「ジェイドさん…。」
その言葉を聞いてシュリは目に涙を浮かべてジェイドを見つめる。
ジェイド「あっ。いや…、その…。」
しどろもどろになったジェイドはシュリに詰め寄られて戦線離脱だ。
マンモン「………っ!」
マンモンはじっと見つめ合うと顔を赤くしてインビジブルアサシンで消えてこの部屋から脱出していった。もうマンモンのこの技は見切っているから姿が消えてもどこにいるかはわかっている。
太刀の獣神「………。」
アキラ「………。」
太刀の獣神も暫く見詰め合うと何も言わずに立ち去った。どうやら満足したようだ。
ロベール「すまねぇなお嬢ちゃん。助かったぜ。」
アキラ「あいつらが相手じゃ今のロベールは冗談でも簡単に死にかねないからな。」
狐神「ロベールもアキラが気になりはじめたかい?」
師匠はニヤニヤしながら俺とロベールに近寄ってくる。どうやら俺とロベールをお互いに意識させるのが師匠の狙いだったようだ。
ロベール「う~ん…?確かに立派なおっぱいだったが…。やっぱり俺はもっとムチムチのバインバインのお姉ちゃんがいいな。そうそう。そっちのお嬢ちゃんの新しい嫁さんみたいなな。」
キュウ「キュウ?」
急に話を振られたキュウは可愛い鳴き声をあげながら小首を傾げた。
アキラ「おいロベール。俺の嫁に手を出したら………。」
ロベール「わかってるわかってる。わざわざお嬢ちゃんを敵に回すほど馬鹿じゃないし俺は横恋慕も嫌いなんだ。お嬢ちゃんと好き合ってる相手に何かしようとは思わねぇよ。」
アキラ「師匠には粉をかけていたのに?」
ロベール「別に手は出してないだろ?それにちょっと様子を確かめただけで無理に誘ったりもしてないだろ?」
確かにそれはロベールの言う通りだ。その人に好きな人がいるかどうかを確かめようとしただけで横恋慕したとかストーカーだとか言われたら恋の一つも出来はしない。
フリード「ああころんだぁ~。(棒」
アキラ「アホか…。わざとだったら殴るって言っただろ?」
わざと転んだ振りをして俺に抱きつこうとするフリードをかわしてボディブローを叩き込む。
フリード「ぐへっ!」
手加減なしの俺の一撃を受けてフリードは悶絶したのだった。




