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転生無双  作者: 平朝臣
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第八十三話「変態が増える」


 ここの所大きな戦いが続いていたので兎人種の村でのんびりすごすことにして数日が経っている。


ティア「………アキラ様。」


 俺がごろごろと寝転がっていると大きい姿になったティアが俺の上に跨ってきた。


アキラ「どうした?」


ティア「何かなければ…、アキラ様に甘えてはいけませんか?」


 俺に跨っていたティアは体を倒して俺の上に重なってくる。顔が近い。ティアが潤んだ瞳で俺を見つめて………。


ツノウ「失礼します。アキラ様お昼ごは…ん………。はわっ!はわわわわっ!ごごごご、ごめんなさいぃぃぃ!」


 昼ご飯に俺を呼びに来たらしいツノウが扉を開けて俺とティアの姿を見て慌てている。


ツノウ「ああああ、どどどっ、どうしたら…。あっ!閉めますね!」


 ツノウはパニックになって自分も部屋の中に入ってから扉を閉めた。


ツノウ「………。」


アキラ「………。」


ティア「………。」


 暫く三人で無言で見つめあう。


ツノウ「はわわわっ!間違えました!ごめんなさい!」


 自分まで部屋に入ってから扉を閉めたのは失敗だったと思ったツノウは慌てて出ようと扉の方へと向き直った。しかし扉はさっき自分で閉めたのにそのまま出ようとしても当然扉が閉まっていて出られない。その扉に思い切り頭をぶつける。


ツノウ「いたぁいっ!」


 頭をぶつけたツノウはよたよたと後ろによろめき俺達の方へと倒れこんでくる。


ツノウ「ひぁ!うきゅう………。」


 結局ツノウは寝転がっている俺に圧し掛かっているティアの隣に倒れこんできて目を回していた。


クシナ「一体何事です…か……?」


 ツノウが暴れてひっくり返った音を聞きつけたらしいクシナが扉を開けて固まる。


 ………何かついさっきも似たような場面を見た気がするな。


クシナ「あっ、あっ、あっ、貴女は一体何をしているのですか!」


 俺は何もしていないのだが女を二人も俺の上に乗せて寝転がっているので誤解されても仕方ない。クシナの叫びを聞いて皆も何事かと集まってきたのだった。



  =======



 俺は今なぜか正座させられている。昼ご飯もまだおあずけだ。


クシナ「一体どういうおつもりなのですか!こんないたいけな少女にまで手を出して!」


ツノウ「はわわ!ちがっ、違うのです。」


キュウ「ツノウちゃんまで玉兎の巫女をやめてしまったらぁ、巫女がいなくなってしまいますねぇ。」


狐神「早速押し倒しちまったのかい?」


 皆好き放題に言っている。だが待って欲しい。俺はツノウに何もしてないしすることもない。旅にも連れていかない。一番のハーレム推進派の師匠もツノウは嫁には入れないと言っているから俺が入れると言わなければ師匠がいつものごり押しをしてくることもないだろう。まずは誤解を解くところから始めよう。


アキラ「ティアとはイチャイチャしてたがツノウが転んだのは事故だ。その点ははっきりさせておく。ツノウからも説明してやれ。」


ツノウ「はっ、はい!えっと…、あのですね…。私が呼びに行くとお二人が抱き合っていまして……、それを見た私が慌ててしまって……、えっと、それで頭をぶつけて倒れたところにクシナさんが来られたんです。」


クシナ「………。」


アキラ「………。」


 クシナがジロリと俺を睨む。


クシナ「この子にそう言えと圧力をかけたのではないでしょうね?」


アキラ「なぜ俺がそんなことをしなければならない?本当に手を出すつもりならそんな言い訳なんてしない。俺は嫁達を可愛がっているしハゼリとブリレも可愛がってる。そこに他の者を加えたければそうする。嘘も誤魔化しも必要ない。」


狐神「アキラも成長したね。」


アキラ「………どういう意味ですか?」


 師匠の言っている言葉の意味がよくわからずに問い返す。


狐神「ちょっと前までは嫁はとらないだの愛妾はよくないだの言ってたのに今じゃはっきりと認めるんだね。」


アキラ「………そりゃ認めますよ。俺は皆のことを愛してますから………。」


 ちょっと恥ずかしくて顔が火照ってきている自覚がある。だけど嫁達を愛しているのは本当だし何だかんだでハゼリとブリレを愛妾として囲っているのは事実だ。そしてだからこそ俺はそういう立場にしない者には手を出していない。


 ………ん?そういう言い方だとまるで嫁達や愛妾には手を出しているみたいだけど嫁達にだってまだ手は出してない。言い方が悪かった。ちょっかいをかけるとか粉をかけると言えばいいのか。俺は囲う気のない相手にはそういうことはしない。最近俺は何でもかんでも囲う奴だと思われてそうなのでその点は皆にもきちんと説明しておく。


ミコ「そんなに必死に弁明しなくても皆わかっているよ。」


アキラ「えぇ…。わかってるどころかむしろミコはいつも俺にそういうことで色々言ってくる方じゃないのか?」


ミコ「それはアキラ君が女の子を見て鼻の下を伸ばしたりするから………。私だってヤキモチくらい焼くよ。」


アキラ「うぐっ…。そうか…。それは俺が悪い………のか?っていうか俺そんなに女の子見て鼻の下伸ばしてるか?」


フラン「時々はありますね。」


 フランの言葉がグサリと刺さる。………そうなのか?俺はそんなつもりはないのに………。でも心が繋がってる相手にそういう心情が流れてきていると言われたら言い逃れのしようはない。自覚はなくともそういう気持ちがあるのかもしれない。


シルヴェストル「そもそもそんなことは些細な問題なのじゃ。アキラが誰を好きになろうと誰と抱き合おうとわしらの相手もきちんとしてくれればそれで良いのじゃ。」


 シルヴェストルが正座させられている俺の太ももの上に乗ってくる。


ルリ「………ん。ツノウが入るかどうかはあっくんとツノウが考えること。ルリ達はただ受け入れればいいだけ。」


アキラ「んん?いつもは俺はルリのものとか言うのに受け入れればいいだけって矛盾したこと言ってないか?」


ルリ「………もちろんあっくんを独占したい。だけどあっくんがお嫁さんを増やしてもそれを拒否したり邪魔したりはしない。」


 ルリは正座させられている俺の横に座って頭を俺の肩に預けてくる。


アキラ「あと俺はツノウと何でもないからな。ツノウを嫁に加えることはない。」


ツノウ「もっ、もっ、もっ、もちろんです。」


 ツノウもカクカクと首を縦に振る。ツノウは確かに可愛いが俺はツノウに妙な感情は持っていない。いつもそう言いながら嫁にしてるじゃないかって言われそうだがそんなことはない。


 今まで他にも可愛い者や綺麗な者達がいたが全て娶ってきたわけじゃない。そもそもリカやダザーだってかなり良い線をいっている。リカはともかくダザーは俺が押し倒しても受け入れるだろう。だが俺はダザーに何かしたことはない。ツノウにだって何かするつもりはない。


 そしてツノウも俺にそういう感情は持っていない。憧れとか敬愛とか尊敬とかそういう感情を持っていることは伝わってくるが異性として好きとかそういう感情はまるで持っていないことがわかる。


クシナ「もうわかりました!私が悪かったのです。それでいいのでしょう?!」


 クシナが急に怒り出した。急にじゃないか。俺を正座させたのもクシナだしさっきから俺を糾弾して怒っていた。


クシナ「どうせ私には関係ないことです!もう勝手にすればいいではないですか!」


 それだけ言うとクシナはドスドスと足音も荒く去って行った。…立ち去る時に一瞬見えた目に溜まっていたのは涙か?


アキラ「なんだあれ…。」


狐神「何してんだいアキラ。早く追っかけないかい。」


アキラ「え?何で俺が………?」


狐神「いいから。ほらっ、早く。」


 師匠に追い立てられて俺はクシナの後を追っていったのだった。



  =======



 俺はすぐにクシナを追いかけたがクシナは村を出てさらに移動していく。クシナは例の湖の畔に座っていた。


クシナ「どうしてついてくるのですか………。」


 クシナは後ろからそっと近づいていた俺に視線も向けずに湖を見つめたままそう声をかけてきた。


アキラ「………。」


 師匠に追いかけろと言われたからとは言えずに何と答えたものかと返答に困りながら俺も湖を眺めたままクシナの隣に腰を下ろす。


クシナ「………。」


 クシナは一瞬俺の方を見たが俺が何も答えないのでクシナも何も言わずに二人で並んで座ってただ湖を眺める。


 どれほど時間が経ったのか二人とも一言もしゃべることなく長い時間が過ぎていた。


クシナ「………私は戻りますが貴女はまだそうしているのですか?」


アキラ「そうだな。もう少しこうしている。戻るのなら先に戻ればいい。」


クシナ「………はい。」


 クシナが戻っていった後も俺は一人で湖を眺め続ける。それは何かキュウの先祖の巫女と別れた時と同じような気がした。



  =======



 それからまた数日経ち俺達が旅を再開しようと思っていた日のことだった。


アキラ「誰か近づいてきているな。」


 兎人種の村に気配が近づいてきていた。それほど強くも無いし一人だ。前回のように大樹の民が攻めて来たとかいうわけではない。


狐神「ここを発つのはもう少し後にしようかね?」


 師匠がどういうつもりでこの件を見届けようと思ったのかはわからない。ただいつもは他種族のことには無関心で干渉しようとしない師匠がなぜかこの相手が来るのを待っているようで不思議だった。


 暫くして現れたのはパグのような三角形の垂れた耳をした一人の獣人の少女だった。ピンクの髪のショートカットで愛嬌があって可愛らしい顔をしている。背は俺より少し高いが胸は俺より少し小さい。俺とミコの間くらいだろうか。タンクトップのようなものとショートパンツのようなものを着ているが丈が短くて色々と見えそうでセクシーだ。


 ただし所々薄汚れていて軽い怪我もしている。こんな軽装で森の中を歩いてきたのだから擦り傷くらいつくのは当たり前だがそれとは違う怪我もある。首輪のようなものを巻いていてそこから垂れているロープのようなものは途中で引きちぎったように不自然に切れていた。


???「あっ、あの………。わたし怪しい者じゃないです!助けてください!」


 森から村に出て一瞬驚いた顔をした少女だったが開口一番にそう言ったのだった。


キュウ「ここでは何ですのでぇ、詳しい話はこちらでぇ………。あぁ~!そうでしたぁ。私はもう巫女ではないのでしたぁ。」


ツノウ「いえ。キュウお姉さまの言われる通りです。お話を伺いますのでこちらへ。」


 ツノウはキリッとした顔でそう言って家の中へとその少女を案内した。俺とティアがイチャイチャしていたのを見てはわはわ言っていた娘と同一人物とは思えないほどしっかりしている。


 ただまだ年若いツノウにはやはり似合わない。この冷静で落ち着いている姿はそう演じているだけの仮初の姿ではないだろうか。本当はあの時の慌て者の姿こそが本当のツノウなのかもしれないと感じた。


 ツノウの家に皆で入って席に着く。少女はツノウが出した水を慌てて飲もうとして途中で手を止めた。コップの中の水を眺めるその顔には少し警戒の色が見て取れた。


 俺はその少女の手からコップを奪って口をつけて飲むと少女の手へと返した。驚いた顔をして俺を見つめた少女だったが俺がそのコップの中の水を飲んだことで少しは警戒を緩めたのか残った水を一息に飲み干したのだった。相当喉が渇いていたのか少女はもう一杯水を一気飲みしてからようやく落ち着いた。


オルカ「あの…、ありがとうございます。わたしはオルカと言います。」


 そこから軽く自己紹介し合ってオルカと名乗った少女が少しずつ話し始めた。


 どうやらこの少女は自分の村を出て旅をしている途中で盗賊か奴隷商か何かに捕まったらしい。捕まって首輪をはめられて奴隷にされそうになったのだがすんでの所で逃げ出してここまで逃げてきたそうだ。


 何かよほどこっぴどく騙されたのか自分で助けを求めてきたくせに俺達のことも警戒している。ツノウが出した水も警戒していたし何か食べ物か飲み物に薬でも盛られて攫われたのかもしれない。


ツノウ「それでその奴隷商というのはどこにいたのですか?」


オルカ「わかりません………。わたしは道に迷ってどこであいつらに捕まったのかも、それからどこへ連れて行かれたのかも…。ただわたしを味見するとか言って襲おうとしてきた時に抵抗したら運良く男が転んで頭を打って気を失ったんです。それからは急いでこの縄を切ってひたすら逃げてきて…、どこをどう通ったのかもわかりません。」


 オルカは目に涙を湛えて体を震わせながら話し続けた。どうやらその盗賊か奴隷商の上役の者がオルカを襲おうとしたようだ。その際に部下達を遠ざけていたのでオルカが抵抗して男が気を失ったのに誰も気付かなかった。男が目を覚ます前にオルカは逃げ出して難を逃れたということらしい。


 この手の話はこの世界じゃ珍しくもなんともない。人間族と獣人族は特に奴隷という階級が当たり前のように存在していて奴隷商に捕まって奴隷に落とされてもそれは自分の身も守れない本人の責任ということになっている。


 ただもちろん街中でいきなり奴隷商に捕まるようなことはない。町に住む住民達は滅多なことではそんな目には遭わないわけだ。旅の途中の者や街中でもスラムや路地裏など寂れて人のいないところへ行くと攫われて奴隷にされることがある。オルカも村を出て旅をしている間に攫われてしまったのだ。


アキラ「こんな可愛い女の子を攫って奴隷にしようなんて奴は地獄に落としてやりたいところだが相手がどこにいるかもわからないんじゃどうしようもないな。」


 それにさっきも言った通りこんなことは日常茶飯事で奴隷商なんて掃いて捨てるほどいる。盗賊や奴隷商を全て殺してまわっていたら何年あっても時間が足りない。


キュウ「あぁ~…。アキラさぁん…。それは禁句ですぅ。」


アキラ「………え?」


 キュウが片手で顔を覆いながら『あちゃー。』という感じで声を出す。


オルカ「………じーっ。」


 オルカがじっと俺を見つめている。………何だ?


オルカ「何人でも産みます!肉奴隷でかまいません!だから孕ませてくださいぃぃぃっ!」


 オルカはいきなりわけのわからないことを叫びながら俺に抱き付いて来た………。


アキラ「何だ急に………。どういうことだ?」


キュウ「オルカさんの種はぁ、そういうことを言われるとぉ、すぐに惚れてしまう種なんですぅ。それにぃ、一度そうと決めた相手を~、生涯変えることなく尽くすそうですぅ。」


アキラ「そういうことを言うって?」


キュウ「可愛いとかぁ…。褒めたりぃ守ったりぃしてあげるとぉ、すぐに惚れられてしまうそうですぅ。」


アキラ「………。それなら奴隷商もそう言って捕まえればよかったんじゃないのか?それなら逃げ出す心配もないんだろう?」


 俺に抱きついてきているオルカをげんなりした気持ちで見ながら思ったことを聞いてみる。


キュウ「その人のためだけに仕えるのでぇ、奴隷商の方がぁ、そうしてしまうと今度は売れなくなってしまいますぅ。」


 ああ………。そうか…。だから奴隷商はこいつらに酷い扱いをしてそこを買い主に救わせて何かこいつらが喜びそうな言葉をかけてやると生涯裏切らない奴隷に仕上がるということだそうだ。


アキラ「こうなったらもう手遅れなのか?」


キュウ「手遅れですぅ。アキラさんがぁ、責任を持ってぇ、生涯仕えさせてあげるしかありません~。」


 オルカの種は生涯たった一人に尽くすそうなのでもう俺がオルカを捨ててもオルカは一生俺だけを想って俺のためだけに生きるらしい。気持ちだけ俺に向けさせて捨てて行ってしまったらオルカはこれから一生自分の幸せを追うことも出来ずに俺を想い待ち続けるだけになるそうなのでもう俺が面倒を見るしかないと嫁達全員に言われてしまった。


狐神「新しい愛妾が増えてよかったね。」


アキラ「師匠………。」


 師匠はオルカを嫁に入れるのは駄目だと言った。だから愛妾として囲えということだ。………師匠はオルカが接近している時に急に出発を待とうと言い出した。まさかとは思うがこうなることがわかっていたんじゃないだろうかという疑問が沸いてくる。


アキラ「ところでオルカの種って何だ?生涯一人に忠誠を尽くすって…。それにこの可愛い耳からして犬系統か?」


 オルカのパグのように折れた耳を触りながら聞いてみる。


オルカ「ピィー!またっ!また可愛いってぇぇ!ご主人様ぁ!十人でも二十人でも産みます!孕ませてくださいぃぃぃっ!」


 ………普通にオルカの言葉と行動にドン引きだ。這い蹲って俺の足でも舐めそうなくらい顔を俺の足に擦りつけている。顔は普通に可愛い。美少女だと言っても誰も否定しないだろう。見た目的にはルリやフランよりさらに少し幼いくらいに見える言葉通りの少女の姿なのだ。それなのにこの言葉と行動にはドン引きせざるを得ない。


キュウ「オルカさんの種はぁ、豚人種ですぅ。」


アキラ「豚………。」


 俺は改めてオルカをマジマジと見つめる。折れ曲がった耳は豚というより俺には犬の耳のように見えた。鼻も所謂豚鼻ではない。蹄もない。豚?どこが………。あった。一箇所だけ豚と言われれば確かに豚っぽい部分があった。それは尻尾だ。尻尾は細く短くクルンと巻いている。よく見る豚の尻尾そのものだった。


アキラ「豚って…この可愛い尻尾くらいしか豚っぽい特徴がないんだが?」


オルカ「ピィッ!またまた可愛いってぇぇっ!五十人でも百人でも産みますぅぅぅぅっ!」


アキラ「………なんで豚人種はこんななんだ?」


キュウ「それはですねぇ………。」


 キュウによると豚人種というのはかなり迫害を受けてきた種だそうだ。豚人間ということで魔獣のオークから変化した種だと見られることもあり討伐対象として追われていた時期も過去にはあったそうだ。公式にはすでにオークの一種ではないと証明されて討伐対象からは外れているが世間というのは一度根付いた差別をそう簡単には払拭できない。肌の色の違いで地球でも未だに差別が起こることからもよくわかるだろう。


 それに豚人種は旺盛な繁殖力であっという間に増えるらしい。もちろん無計画に増えすぎたら食料が足りなくなり飢えて死ぬわけだが繁殖力旺盛なため減ってもまた増える。それが周囲の他の種からすればまるで何もかも全てを根こそぎ食べて害を齎す蝗のように映るそうで食糧危機や飢饉を引き起こす原因として忌み嫌われているらしい。


 そういう様々な歴史的経緯などがあって豚人種は獣人族の中にあっても人として扱われていない。だから奴隷のように扱われたり忌み嫌われて罵声を浴びせられるのが豚人種にとっての普通でありちょっと優しくされたりするとすぐにコロッと騙されてしまう世間知らずで初心な娘が出来上がるらしい。


 まぁ地球でも似たようなことがあるからそれ自体は豚人種を馬鹿にはできないだろう。地球でだって箱入り娘ほど馬鹿な男にコロッと騙されて痛い目に遭う。それに豚人種は一途な気性で生涯伴侶は一人しか持たない。あるいはその価値観は無計画に増えすぎる繁殖力を少しでも抑えるためにそういう風になっていったのかもしれない。


 ともかく普通の獣人族は豚人種など人としてすら見ていないので優しくして騙そうだとかそういう感覚さえないらしい。つまりただ力ずくで奴隷にすればそれでいいというわけだ。豚人種も遥か昔からずっとそんな扱いを受けて暮らしてきたのでそれを当たり前のように甘受しているらしい。


アキラ「でもそれなら何でオルカは危険とわかっていて村を出たんだ?」


オルカ「それは………、わたしは豚人種の村でもつがいがいないほど醜いからです…。オルカという名前もオークからとった名前で………。」


 どうやらオルカは元の村でもさらにあまり良い待遇ではなかったようだ。オークから変化した種だとして追われた歴史もあるのだからオークに因んだ名前なんて普通は付けない。そんな名前をわざわざつけられるほど両親からもあまり良く思われていなかったということだとオルカは涙ぐみながら答えた。


アキラ「う~ん?でもそんなに醜いか?普通に美少女だと思うけど?」


オルカ「ピィーッ!びっ、びっ、びっ、美少女!ご主人様!卑しいわたしの処女を奪ってくださいぃぃぃっ!」


 またオルカは大興奮して俺の足元に這い蹲る。


キュウ「普通の豚人種の方はぁ、オルカさんとは少し姿が違いますぅ~。」


 キュウから聞いた豚人種はもっと豚鼻で足は蹄らしい。俺達の美的感覚から言えばオルカの方が遥かに可愛いのだが普通の豚人種の価値観や美的センスからするとオルカは不気味な奇形として見られるそうだ。それが原因で仲間であるはずの豚人種からも疎外されて村を出たらしい。


オルカ「村で疎外されたことも奴隷商に捕まったことも不幸だと思ってました。でもそのお陰でこうしてご主人様にめぐり合えたんですからわたしは幸運でしたぁぁぁぁ!!!」


 オルカはピィピィ言いながら俺の足元に這い蹲り顔を擦り付ける。これは一体何なんだろうか?豚人種特有の何かの表現か?


クシナ「貴女という人は………。貴女という人はどうしてこんないたいけな少女ばかりそんな風に扱うのですか!」


 クシナが急に怒り出した。急にでもないか。何かクシナはいつも怒っている。


アキラ「そんな風に扱うって言ったって俺がやらせてるわけじゃないぞ。それにこの行動には豚人種なりの意味があるのかもしれない。俺には理解不能だけど………。」


キュウ「豚人種にはぁ、ちょっと変わった性癖があるそうですぅ。」


アキラ「………それがこれか?」


キュウ「はぃ~。恐らくぅ~。」


クシナ「人前で何て破廉恥なんですか!今すぐやめなさい!」


アキラ「俺のせいじゃないし俺に言われてもな………。」


クシナ「貴女のせいでしょう!なんとかなさい!」


 こうして俺はまたクシナに怒られながらオルカを愛妾に加えることになったのだった。



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