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魔女と呼ばれた少女 -少女は死体の山で1人笑う-  作者: ひとりぼっちの桜
【第5章】 3日物語(表)

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31 3日目 - 午後(14)

クリックありがとうございますm(_ _"m)ペコリ

2周年2話目ですね♪ひとりぼっちの桜ですw

1周年の時とは違っていい感じの2周年記念のお話になりました……まぁ調整したから当たり前なんですけどね(笑)


ではこの章も遂に最終話(裏話はあるけどねw)魂こめて書きました_〆(`・ω´・)・゜・

どうぞお楽しみ下さいませ。



 威風堂々(いふうどうどう)、その言葉がぴったりと当てはまるようにゆっくりとラムゼスとの距離を詰めてくるカーナ。

 誰の目にも明らかな傲慢なまでの態度だった。

 観客、、は置いといて、皇帝陛下も見ているに王者として、男として、ラムゼスが逃げる事などできようか? 答えは否


「くそがぁぁ!!」


 突進を敢行かんこう、もちろん魔道具を使って。

 大振りで殴るモーション、そしていくつものフェイントを入れる。

 魔道具を使いながらのフェイントの数は今まで最多、その動きに思わず反応するカーナの指先。

 上手くいった!?そんな事を思ったラムゼス。

 だが無駄だった。


「左…と見せかけて右」


 言う必要の無い言葉をわざわざ言いながら向けられる拳。

 ギリギリまで引きつけて放たれる裏拳は再びラムゼスの顔面を捉える。

 明らかに重くなったカーナの打撃に顔が苦痛に歪む。


「ヌグッ!」


 だがまだ耐えられる。

 打ち返せる。

 剣のリーチがある。

 魔道具もある。


 ラムゼスはあごを引いてしっかりと足に力を入れた。


 この攻防が数回。

 一連の攻防は時間にすれば10秒もかかってはいないだろう。

 しかしこの攻防はラムゼスに絶対的な力の差を思い知らせた。

 それだけじゃない、カーナの手や足の届く間合いに入ると、それだけで霧深い森に足を踏み入れたような錯覚に陥った。


 そう、なにをしても自分の攻撃は当たらないという感覚。

 それでもラムゼスは膝を折る事無く、絶望から目を背けるように叫ぶ。


「まだ、負けてねぇ!」


 だがその後も戦えば戦うほど広がっていく戦力差。

 苛立ちと、あせりが織り交ざった表情でラムゼスは一心不乱に攻撃をし続けた。


「うおぉぉぉぉぉ!!!」


 スピードには自信があるカーナであったが魔道具との、取り分け今敵対しているスピード特化型の魔道具相手では自身のスピード3人分以上の差が生まれていた。


 通常ならサンドバッグ

 だがカーナはその攻撃を毎回、毎回、紙一重でかわしていく。


 カーナが自分の中で決めた、魔道具を使ってこられた時の対処方法は大きく別けて2つ。

 1つはカーナ十八番おはこの紙一重で避ける神がかり的な回避術。

 2つ目は避けることができない攻撃が来た時に取る防御、時に腕を折りたたみ、時に足を折りたたみ、緩衝材かんしょうざいのように衝撃を和らげ、致命傷を防ぐ。


 それだけ、だがそれだけで十分であった。

 既に避けることの出来ない攻撃など皆無かいむ

 完全に見切っていた。全てを。

 カーナは肩でぜぇぜぇと息をするラムゼスに向かって言った。


「もう十分です」

「…何がだ?」

「もう十分あなたを痛めつけたのでこれ以上、時間をかける事に意味は無いと言っています。終わらせます」

「え? …あ?」


 一瞬だった。

 ラムゼスが少し視線を外してまた戻す。

 すると戻した位置には確かにさっきまでいたはずのカーナがいなくなっていた。

 ラムゼスは言った。


「…っ!?消えた!!」


 赤い残像だけをその場に残して忽然こつぜんと消えたカーナ。

 慌てて周囲を見渡すが姿は全く見えない。

 その答えはラムゼスの視線の端に映っていた。


 予備動作はほとんど無い。

 なめらかに走り出した、しなやかな足はラムゼスの視線を避けるように今尚加速し続ける。

 そして視線が戻った時には既にその身体は正面3メートルにまで迫っていた。

 同時に姿勢を低く、地面を這うように懐に飛び込む。

 もはや人間と言うよりも得物を狩るときの獣のような反応速度。


 カーナは拳を振り抜く瞬間、更に姿勢を深く下ろす。

 そして一気にラムゼスの視線、斜め下に滑り込む。

 既に伸びきった膝から先は地面をるほど低い。


 そこまできてやっとラムゼスは気が付いた、己の直前にカーナがいることに。


「っ!?」


 恐怖から魔道具を使おうとした、しかしカーナはその行動を予期していたかのようにラムゼスの後頭部を鷲掴みにするとそのまま渾身の力を込めて飛び上がり、膝蹴りをラムゼスの分厚い板のような顔面に叩き込んだ。


 大きく揺らぐ身体。

 しかしラムゼスは後退しそうとなる足をぐっと耐える。


 が。


 耐えた後に待ち構えていたのは止めを刺しにきた一本の槍、そう、総称してもいいナイフの先端であった。

 小型の果物ナイフのようなものであったがその切っ先は確実にラムゼスのあらわになった首元、命を取りにきていた。


 当たれば、間違いなく命に関わる一撃。

 ならばラムゼスの取る行動は1つ。


「緊急回避をっ!」


 ラムゼスは視線を進行方向横へ、視界が開けた方向へナイフの柄部分を向けようとする。


「ッ!?」


 だが逃げようとした方向には行く手を阻むようにカーナのムチのようにしなって向かって来る回し蹴りが迫っていた。

 急な事態に頭が追いつかないラムゼス。

 しかし後頭部めがけて迫る鉄板入りの蹴りは止まってはくれない。


「クソッ!」


 慌ててラムゼスは上空へ飛び上がる。

 空中で安堵あんどの溜め息を吐く。


(仕切り直しか)


 ラムゼスだけじゃない、アリーナにいる誰もがそう思った。

 しかしカーナだけは違った。

 的を絞るような瞳はこう語っていた。


(この1試合、ずっと待っていた。お前がその選択を取るのを)


 あなたはこの試合中ずっとそのナイフだけは決して手放さなかった。それが…その魔道具が自分の生命線だと自分自身で自覚している証拠だ。

 だから弾き落としたりするのではなく、追い詰めることにした。

 逃げおおせたと油断するであろう空中にあえて追い込んだ。

 全ては安心して下にいるであろう私を確認する、その一瞬を引き出す為に…


 当然、魔道具による超加速、取り分け加速というのに特化した魔道具と生身の足では勝負にならない。

 そんなことは魔道具の特性を誰よりも知っているカーナなら分からないわけがない。

 ただ、上空に浮かび上がった場合は別だ。

 加速量にもよるが到達点に至った使い手はその動きをピタリと止める。


 予想通りラムゼスは上空へ

 カーナは、素早くコマのように回し蹴りの終着点を地面に向け、身体を小さく屈む。

 そして足が地面についたと同時にそのまま全力で地面を蹴ってラムゼスを追いかけた。


 とりあえず絶対絶命の事態から逃れたラムゼスの身体はアリーナの上空で浮遊している。

 そしてすぐにでも空中で方向転換をしなければならなかった、この魔道具ならそれが可能だった、しかし出来なかった。

 なぜなら手に持つナイフは次に行きたい方向と逆へと持っていこうとした時、まさにその時だった。

 ラムゼスが背後に気配を感じたのは。


 そして同時に自分の肩に強い重みを感じた。

 肩越しに聞こえたのは深い穴から這い上がってきたような声であった。


「つかまえた」


 ラムゼスにとって今、一番聞きたくない、恐怖をき立てる声が鼓膜に届く。

 心臓が大きく1つ鳴った、その瞬間こそカーナが完全にラムゼスを捉えた瞬間であった。


「っ!?」


 すぐさま首だけ振り返るラムゼス。


 視線の先には。


 そこには確かに。


 手があった。


「なっ!?」


 全力ではないとはいえ、こちらは魔道具を使って上空へ飛んだ。

 にも関わらずこいつは上空で俺を捕らえた!?

 どんな脚力してんだよ!


 と叫びたくなったが、それより先に地上の引力に引っ張り込まれるような力が肩にかかった。

 そして体勢が崩れるラムゼス、同時に身体は平衡感覚を失ってバランスを完全に崩した。


「ヌグッ!やめ」


 次の言葉を待つわけが無い。

 カーナは強く握った拳を顔面に叩き込む。

 普通の人間ならばこの一撃でしまいであろう

 だが殴られた顔面、咄嗟にカーナの腕を掴むラムゼス。

 これによって次の攻撃が弱まる、または限定される。


 握りこぶしの隙間から見えたラムゼスの瞳にはまだ十分な光が灯っていた。

 そして叫ぶ。


「クソガァァァ!!!こんな所でっ負けてたまるかぁあ!!!」


「黙れ、勝つのは私だ」


 カーナは強く握られた腕に更なる力を込める前に即座に振り払うと次のラムゼスの行動を起こすよりも早く、自身の身体を丸めるように一回転、全体重をかけたカカト落としをラムゼスの胸元へと振り下ろした。


 大木をも真っ二つにするようなカカト落とし。

 渾身のカカトが胸部分を覆う鎧にミシという音を立てた。

 同時にその奥に待ち受ける強靭な筋肉をも悲鳴を上げる。

 ラムゼスの目が大きく剥ける。


「カッ!?」


 その衝撃は凄まじく、無骨な鎧を通り越し鍛え上げた筋肉に届いた。

 骨をへし折る「べきべき」という音と共に更に深くめり込むカカト。


「グォォォォぉぉぉ!」


 まるで断末魔のような声がアリーナに轟き、空気全体を震わせるような振動が鳴り響く。


 アリーナを震えさせるほどの轟音と共に落下したラムゼス。

 身体は地面に叩きつけられ横たわる。

 そして、そのあと音も無くストンと降り立つ人影。

 沈黙の中に立つのは赤い髪の女。


 足元で転がっているラムゼスは、ピクリとも動かず、ただ天を仰ぐ。

 それを見たカーナはホっとしたように大きく息をついたのであった。


「終わった」


 ホッとした表情で頭のてっぺんから順に首、肩、腕と力を抜く。

 そうして全身の力を抜いた頃に巻き上がる周囲から聞こえる大歓声。


 顔を上空に持ち上げる。


 感情という色が戻った瞳に映るのは何処どこまでも広がる青色。


 目蓋を優しく閉じると気持ちいい風がアリーナの壁を乗り越えてリングに下りてきた。


 ゆっくりと口を開ける。


 溢れてくる気持ちはたくさんある。


 でも、一言


 一言だけ、カーナは力強く


 でも決して音にすること無く言葉を発した



「この身、この命、流れる血一滴に至るまでマリアンヌ様のために。任務…完了」



 言い終わった言葉は風に乗って上空へと舞い上がる。

 そして勝者を称えるコールがプルート全土に響くように叫ばれた。


「勝者!カ~~~ナぁぁ!マキシマ~~~ム!!」



閲覧ありがとうございました─☆*:;。(○`・∀´・)ゞ☆*:;。

以上がカーナが魔道具を手に入れるお話になります。

いかがでしたか?面白かったですか?


私の中でカーナほど強い人間が魔道具を入手する際、簡単に手に入れるのは面白くないと思っていたので困難を乗り越える感じにしてみましたw

少しでも読んで頂けている方が面白かったと感じて頂けたなら、書いた身としてはこれ以上ないほど嬉しいです(^^)

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