28 3日目 - 午後(11)
クリックありがとうございます(^^ゞそして遅れちゃいましたが新年明けましておめでとうございます♪
新年始まってすぐに遂にPS4を購入したひとりぼっちの桜ですw
皆さん、ヤバイですよ!私の知らない間にゲームはとんでもない進化を遂げていた!(◎o◎)!
こんなに楽しい物が世界にあったとは…
ではこの物語も遂に最終局面、どうぞご覧くださいませ。
――まるで胸に突き刺さった黒い棘が綺麗さっぱり消え去ったかのような気分だ。
お腹の辺りは未だ内臓をえぐられたかのような痛さはまだある。
息をするたびに激痛が全身を駆け巡る。
指先1つ動かすごとに身体が悲鳴を上げる。
でも、、、、
身体は自分の思ったとおりに動く。
敵の動きはよく見えている。
それを証拠に今まさに目の前にいるラムゼスが少しだけ腰を落とし、右手がピクリと動く、視線が自分の腰にある魔道具へ。
たったそれだけの、蚊の命の儚さほどの変化。
それをカーナは瞬時に感じ取る。
そして回答を導き出した。
今から魔道具に手を触れて即座に発動、こちらに全力で向かって来ると…。
「………」
次の瞬間、掛け声無く、号令無く目の前から消失したラムゼス。
その姿は一瞬でカーナの視角となるとなる斜め背後15メートルの位置へ。
普通の人間なら急に目の前から消えた対戦相手、それを探す為、顔の向きを右往左往するだろう。
しかし焦る素振り1つ見せないカーナ、それどころか棒立ちのまますっと目を閉じた。
戦闘放棄とも取れるその行動
もちろん背後にいるラムゼスからはその奇行は見えない。
だからこそ迷う事無く魔道具のナイフを強く握った。
そして赤い髪の後頭部めがけてもう一度魔道具を発動させるのであった。
着ている服の布切れの擦れる音。
鎧の鈴鳴りのような金属音。
小さく空気が破裂する音。
風を切る音。
それらの音をカーナの耳は拾い取る。
そして自身の脳に伝える、敵の正確な位置と速度。
その対処方法。
斜め背後から突っ込んで来たラムゼスは鉄拳をカーナの後頭部に振り下ろす。
しかしカーナはそれをあざ笑うようなベストのタイミングで身体の重心を真横に傾けた。
大きくスカるラムゼスの拳。
全速力で通過したラムゼスはリングを滑るようにしながら振り返る。
そして驚愕する。
「あ、当たらねぇだと!?ならもう一度…っ!?」
魔道具を使用、カーナの背後へ。
そしてもう一度挟撃しようとするラムゼスであったが、その足は動かなかった。
理由は既にカーナは地面との摩擦が感じられないほどのターンで真後ろに向き直していたから。
その瞳は無感情にラムゼスの姿を映し続ける。
静かな立ち姿。
まるで実験動物でも観察しているかのように…ただ視ている。
明らかにカーナが何かを狙っているのは対面しているラムゼスが一番分かっていた。
若くしていくつもの戦いを経験したラムゼスであったが、目の前の敵が何をしてくるのか全くビジョンが見えない。
だから足が動かなかった。
「クソクソクソ」
騎士学校を卒業した時から大っぴらには出さないと誓っていたが、つい出てしまった悪態。
親指の爪を噛みながら思案する。
なぜカーナは自分の位置を特定できたのか?
実をいうとカーナ、あの魔道具のスピード、目で追うだけであれば十分追えていたのだ。
卓越した動体視力に天性のセンスとも呼べる勝負勘、
なんと言っても殴るよりも速く動く
目で追って殴った所で当たらないのでは意味も無い。
だからカーナは目を開いている意味が無いので閉めた。
いや、正確に言うと目を開けている利点より、閉めていた時の恩恵を取ったのだ。
あの魔道具は超加速する際、背後の空気を収束、爆発させるように空気の流れが変わる。
それを視力に頼って目で追ったところでいくらカーナでも後手に回ることは否めない
だからこそ視覚情報を遮断して、より聴覚を鋭敏にさせる選択を選んだ。
魔道具の特徴を誰よりも知っていたから取った行動。
あの魔道具に対してなら最善の行動。
その結果カーナはラムゼスの居場所が判ったのだ。
そしてその勇気ある行動は最良の結果を残した。
それを何となくだが理解したラムゼス
「マジかよ…クソ」
この後、舌打ちも挟もうとしたがカーナはそれを待ってはくれなかった。
ひたすらに直線的に攻めてくるカーナ。
もはや退く理由は無いと言っているような直進。
ラムゼスはそれを魔道具を使いながら捌く
いや、正確に言うと魔道具を使って逃げていた。
カーナのように技術で持って捌くのではなく、ただ逃げる。
一瞬で距離を開ける、それをカーナの止まることの無い足が追走する。
そして殴りかかる、ラムゼスはまた逃げる。
これではどちらが魔道具を持っているのか分からない。
このままだと自身のプライドが揺るがせられかねない。
だからラムゼスは己を鼓舞するように拳を握った。
だが
応戦しても次の瞬間には鮮やかに捌かれて逆にカーナのカウンターをもろに喰らう。
その精度、威力はさっきまでとは別人。
カーナの鋭い蹴りとしがラムゼスの頬をかすめた。
耳元で風を切る重低音がもしも当たった時の威力の凄まじさを物語る。
「っ!?」
もう、プライドがどうこうなんて言ってられない。
ラムゼスは咄嗟に魔道具を使用、カーナから距離を取った。
後方へ飛び退いた距離はおよそ10m。
それは単に攻撃を避けたり、追撃を逃れるため、と言うにはあまりにも長すぎる距離であった。
「なんなんだ、こいつ」
不気味だ。
そうラムゼスは思った。
スピードでは自分が完全に上回っている。
でも先読みされているようだった。
攻撃を仕掛けようとした先にはことごとくカーナの拳や足がある。
圧倒的に有利なのは手傷も負っていない、魔道具も持っているラムゼス。
にも関わらず勝てる気がしない。
この魔道具を使わない限り絶対に届かない間合い、安全を確かめるとそっとラムゼスは自身の手を見た。
手の平は汗ばんでいた。
ラムゼスはカーナの一連の動きを思い返し短く息を飲む。
そして一段と真剣な面持ちになった。
荒い息を吐いてナイフを持つ反対の手を背負った愛刀へ。
一方カーナは息1つ乱さない
ラムゼスは上着を脱ぎ捨てた。
頬を伝う汗、それは冷や汗であった。
今までと違って少しでも気を抜けば殺られる。
「覚悟を決めてやるしかない」
覚悟を決めたラムゼスが仕掛ける事を決意した。
しかし、あくまでも慎重に…
(次は魔道具発動で奴の目の前、でも攻撃が届かない場所まで行って殴るフリをしてフェイントをかます。そして真横に一度、前進に一度、魔道具を発動、背後からやろう)
この辺りの慎重な性格は実に顔とは真逆なラムゼス。
床を強く蹴って魔道具を発動、迎え撃つカーナの拳の前で急停止
「いくぜ!」
と言いながらもピタリとカーナの前で拳を止め、小刻みな魔道具発動を3度、回り込むようにして背後へ
「こっちだ、ボケぇ!」
やつは俺のフェイントに引っかかった!
これは勝った!
放たれるラムゼスの拳。
力強く吼えた言葉は今度は勝利を確信したからこそ出た言葉、、、
しかし、その確信はすぐさま崩れ去る
ラムゼスの目の前にあったのは振り返る事無く最短距離で肘をこちらに向けてくるカーナの姿であった。
偶然か?
振り向こうとしているだけか?
ラムゼスは咄嗟にそう思った。
いや、思おうとした。
しかし、あまりにも奴の肘がこちらの顔面を捉えるタイミングがドンピシャすぎた。
だからラムゼスは思わず驚いて声を上げた。
「嘘だろっ!?グハッ!」
上空を見上げるように大の字で倒れこむ。
だがすぐさまに起き上がるラムゼス。
屈強でイケメンな顔からツーと流れる鼻血
だがそんなことどうでもいい。
咄嗟の後頭部の衝撃に手に持っていた魔道具を放してしまった。
そしてそれは軽快なリズムを奏でてカーナの足元へと転がっていた。
「マズイ!!」
これを拾われたらこの女には絶対に勝てない!
絶対に先に拾わないと!
瞬時に察したラムゼス。
拾うために情けなくも四つんばいのままナイフに飛びつく。
そして全神経を引き伸ばすように右腕を伸ばす、その指先がナイフの柄に届く、そして掴んだ。
ホッと胸を撫で下ろす。
「あれ?」
おかしい…
いくら急いで拾いにいったとしても足元にある物を拾い上げるスピードに勝てるわけが無い。
本来なら先にこの魔道具を拾うのは自分ではないはず、、、でも今、この手には魔道具が握られている。
足元から舐め上げるように見上げた。
カーナは拾う素振り1つ見せずにその情けない行動を無感情な瞳で見下ろしていた。
周りから向けられる視線に羞恥するよりもプライドが傷つけられたことに表情が歪む。
「何で拾わねぇんだ!!」
眼光を強め、逆ギレのような物言いにカーナは平然と答えた。
「そんな”物”に頼って勝つことに意味はありませんので」
「意味が無い…だと」
これが欲しかったのでは?とラムゼスは眉間に青筋を立てる、カーナは相変わらずの無表情で首を振った。
「マリアンヌ様のご命令に魔道具を奪ってという文言は無かった。つまりマリアンヌ様は魔道具無しであなたに勝つという未来を望んでいらっしゃる」
「ああ?これを欲しがってたのはお前だろうが!」
「いいえ」
強く見る。
「マリアンヌ様が欲した、だから手に入れる、今の私にあるのはそれだけです、それ以外の感情など粗末なもの。ですから…」
好戦的に睨むわけでもなく、はたまた馬鹿にするわけでもなく。
カーナは、機械的に、業務的に、作業的に、
「どうぞ、それはあなたの物です、拾ってお使いなさい。それを持った状態のあなたに勝たないと意味が無いので」
と、言った。
閲覧ありがとうございましたm(_ _ )m




