12 2日目 - 午後(2)
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大学時代、仲の良い助教授に
「〇〇、この論文なんやけど」
「完璧でしょw」
「うん…内容はええやんけど…お前、これ句読点めちゃくちゃやねんけど」
「はい」
「句読点の使い方、分かってる?」
「分かんないっす(๑• ̀д•́ )✧ドヤッ」
「なんで分からへんねん!( ゜Д゜)!!」
「それが分かったら出来とるわ!!」
「…そりゃそうやな。ごめん」
という会話をしたひとりぼっちの桜ですw
本来は今回で2日目を終えようと思っていたのですが、ちょっと予定よりもページが増えたことと、今回の終わり方が凄く気に入ったので別けることにしました。
でもそのせいで別け方が歪に…(>_<)
このままだと今回8ページ、次回2ページ…どうにかせねば(笑)
では2日目午後その2、どうぞご覧くださいませ(^o^)♪
「なぜ…そう言い切れるのですか? あの4人は誰が優勝してもおかしくない、それほどに全員が強いのですよ。それに最初から決まっている戦いなんてこの世に存在するわけが」
言いかけた疑問を遮るようにマリアンヌが口を挟んだ。
「逆に貴様に問うが、昔から実力が拮抗していた4人、その内の1人が急に勝ち始めた、その段階でお前は不思議に思わなかったのか?」
「えっ、いや…このムンガルには何のことをおっしゃっているか皆目検討がつきません」
なるほど、よほど4人が上手くやっていたということか。
はたまた、誉れ高い騎士は決してやらないという固定観念から皆の目が曇ったか。
「ムンガル君、君はこんな言葉を知っているかな?」
「何ですか?」
「八百長」
「待ってください!マリアンヌ皇女殿下!」
途端、納得できないと声を荒げるムンガル。
その勢いで先ほどまで飲んでいたワインが波打つ。
マリアンヌは目を丸くするムンガルを横目に言った。
「何か疑問でもあるのかね、ムンガル君?」
「八百長などといったふざけた行為、私を含め、実力のある人間なら難なく看破できます」
それは己が目に対して絶対の自信を覗かせる言葉であった、しかしマリアンヌは無慈悲に首を振る。
「お前が実力があると評する以上、その4人、並大抵の実力ではないでのであろう?」
「もちろんです」
「では、それだけ実力がある人間達が事前に試合流れを想定し、八百長のため準備をして何度も何度も練習していたとしたら、おまえの目はそれを看破できるか?」
「そ、それは…」
言いよどむムンガル。
もちろん看破できると胸を張って言いたかった。
言いたかったが…
マリアンヌの述べたその仮定をリアルに想像すればするほど、その強靭な意思が揺らいだ。
しかしマリアンヌに嘘を言ったとて、すぐに看破される。
だからこれしか言えなかった。
「分かりません」
マリアンヌは瞳を逸らして、溜め息をするようにパラソルの隙間から空に視線を移した。
するとゆっくり動く大きな雲がちょうど真っ直ぐ上に伸びた先に差し掛かったところであった。
「そもそも殿堂入りの条件が5回連続で優勝などということは困難すぎた。この条件を考えたやつは馬鹿だな。実力が頭1つ、いや2つ3つ飛びぬけているクルウェイのようなやつを除いて不可能な難易度、しかも1年に2回しか行われない大会、30歳までしか出場できない。 まぁ、これだけ条件が揃えば八百長という行為が起こりやすい状況だわな」
無言のまま自身の靴のつま先に視線を落とすムンガル、その意味をマリアンヌは分かっていた。分かっていたからこそ、わざわざ問いただすことは無く、話を続ける。
「クルウェイ殿堂入り後、数回で4人はこのことに気付いたのだよ。『このまま全員がやり合えば泥仕合になってあっという間に30歳、共倒れになってしまうと…』そして仲の良い4人は1つの結論に行き着いた」
「それが八百長ですか」
やっと口を開いたムンガル、その口ぶりはとても居心地の悪そうなものであった。
「その通り」
「でもそんなことがバレたら!」
「バレなければいい。ムンガル君、もう一度改めて聞くが、この大会の殿堂入りした人間は何を得る?」
「莫大な報奨金や未来が約束されます」
「詳しく」
記憶を掘り起こすように額に手を当てること数秒、重い口は開かれる。
「定例化しているものでは無いので確実に何が貰えるという事は言えませんが、クルウェイの時は確か…金貨5千枚と領地1つ、奴隷100人、近衛騎士団団長の椅子でしょうか」
「我にはそんな下卑た物の価値など分からんが、一般的にそれは価値がある物なのであろう?」
それはもちろんと頷くムンガル。
「それ、あの4人で仲良く分配されるはずだぞ」
「分配されるんですか!?」
「それは当たり前だろ、殿堂入り5回連続でしようと思ったら、大前提としてラムゼスを含めて八百長を行う他3人も予選の候補達を叩いて本戦入りを果たさねばならないのだぞ。これ以上、責任がかかるチームプレイは他に無いぞ」
「チームプレイ…ですか」
思わず苦々しい声が漏れた。
やはりあの4人を信じたい、信じてやりたい。
あの若き日、ムンガルの部隊が全員揃っていた時に、笑いあった場にいた4人の若者。
そんな気持ちから出た言葉であった。
しかし
「そうチームプレイ、それも切っても切れぬほどの絆が必要となる。そもそもこの計画を完遂するためには4人のモチベーションも大事だ、2年半に及ぶ壮大な計画、それ相応の報酬、リスクにはリターンが必要だ。別け方は…仲良く4等分が妥当であろうな」
「金銭や領地、奴隷などは分かりますが、地位はどうやって別けるというんですか?」
「それは簡単だ。ラムゼスが他3人を引き上げる、クルウェイと同レベルの地位を持てば引き上げるのは容易くなるからな」
マリアンヌの推察は続く。
次に「たぶん分配される時期は…」と爪先で机を叩き計算すると、答えを弾き出してパッと指先を離した。
「人の噂も七十五日、2ヶ月半…。いや、これだけ計画を練った人間だ、念のために音沙汰の過ぎた半年後に報酬は分配されるであろうな」
「半年後ですか…」
「言っておくが分配も一気にはされないぞ、ゆっくりと、しかし確実にやっていくはずだ」
「1つだけ、質問いいでしょうか」
なんだい?と首を傾げるマリアンヌ。
「彼らの中には私の副官だったミシバが一目置いているほど賢い人間もおります」
「それで?」
「そのような賢い人間が一歩間違えれば全てを失うような事を行うとは思えません」
「たかだが20歳そこそこ小童だ」
「えっ?」
「どれだけ頭が良かろうが目の前に人参をぶら下げられれば欲に負けて飛びつくかもしれぬし、仲の良い3人に誑かされるかもしれん、その場のノリなんて事もありえる。何にしても…頭が働くのと賢いは違うぞムンガル君」
お前は16の小娘だろうが!なんて事を思う余裕も、反論する言葉も見つからなかった。
「やっとこの大会の裏で行われている全てを理解できたかね」
従順に頷くしかない、それほどにこの推理は理詰めされていた。
全てを説明し終わり、したり顔のマリアンヌ。
「その事をいち早く気付いた我だからこそ、今回カーナに魔道具を持たせる案を思いつけた。どうだ?お前の主は天才だろう? 全ては我の手の平で動く駒でしかない、最高の気分だよ」
「………」
再び黙るムンガルにマリアンヌはムッとして言った。
「なんだ、その心配そうな目は?」
「いえ、少しだけ思うことがありまして」
「許す、申してみよ」
「…このような皇帝陛下を謀る事を続けておりますと、いずれマリアンヌ様、御身自らの首を絞めるようなことになるのではないかと危惧しております」
お前がそれをいうか?皇帝を謀って己の副官の裏切りを黙っていたお前が、と鼻で笑う。
「お前が心配する必要など無い。それに、あのような老体に我が策が看破出来ようはずもない」
「恐れながらマリアンヌ様、あなた様はお父上であるグローリー・ディ・ファンデシベル様を侮っておいでではありませんか? あのお方は若干12で初陣を飾り、いくつもの戦功を重ね、それこそ兄君ロキ様と違い本当に陣の先頭に立って数多くの敵を倒し、王位継承権を持つ当時のライバルたちの策謀を看破し、跳ね除けて現在の地位に行き着いた歴戦において最強の王でございます」
「侮ってはおらぬわ」
「それならばこのような危険な橋を渡るのは!」
「歴戦最強、それはいつのことだムンガル?」
ずいっとムンガルの顔がその大きな声と共に近づいてくる。
マリアンヌはそれをシッシッと手で払いのけ、元居た場所に戻すと言った。
「今の我と同じように皇帝のいすを争い、野心という獣を父上が瞳に宿していたのは何年前だ?」
表情を崩すことなく問いかけるマリアンヌにムンガルは内心の同様を隠せず「それは…」とごもる。
「長い月日は人を変化させる。それは進化ももたらせば退化ももたらすということ。我よりも長い月日、皇帝を見てきたであろうおまえの目にはどう映る?”あの”皇帝は今もその時と同じように心眼を尖らせているか?」
そこまで口にするとマリアンヌは口を閉じて目で、この後言いたいことは分かるだろ?と語りかける。
そして頬を緩ませ、口角を上げた。
「王の椅子というのはさぞ座り心地がよかったであろうな。人を怠惰させるには十分なほどに」
「しかし、そうなるとマリアンヌ様の思い描く通り事が進んだ後、皇帝陛下の更なる怒りをかう可能性が…」
少し風で乱れた銀線の髪を手櫛で直しながら
「怒りなどという粗末な感情をいちいち憂慮していて王になれると思うか?」
と言って、マリアンヌは恐れることなく笑ったのであった。
その笑い声は何も恐れていない。
確固たる自分というものへの絶対なる自信が声になったようだった。
ムンガルは言う。
「恐れながら私がここに着たのはあなた様が心配だからです」
「我が心配?お前は異な事を言うのだな。 我に心配されるようなことなど1つとて無い」
絶対的自信は怠慢を生む、ムンガルはそれを知っていた。
それは目の前にいる16の少女に唯一無い人生経験という物を持っていたからだろう。
「何かをマリアンヌ様が企んでおられる事はあの王の間で、このムンガルにも何となく分かっておりました」
「それで?」
「私に分かるということは、他の人物にも分かるかもしれないということです」
「くだらないな。 例え分かろうが我の頭脳はその先をいく、我の目は人の心を見通す、計画の失敗などありえない」
「確かにあなた様なら企てを見事達成されるでしょう」
「なら心配事などあるまい」
ムンガルは黙った。
それは数秒を軽く越えて、数十秒になろうとするほどに。
やがて徐に口を開く。
「恐れながらマリアンヌ様、申し上げさせてください。あなたは人の心を読め過ぎるがゆえ、人というものを軽んじられておられているように思えます」
その発言はマリアンヌから初めて愉快そうな気配を失せさせた。
「なんだと」
サラサラと煌く銀の髪を掬い上げるようにして睨む。
ここ数日で何度も経験した急に変化するマリアンヌの雰囲気。
見られた人間を視線だけで刺し殺すほどの威圧感と圧迫感。
だがムンガルはあえてそれを正面から受ける、そして続けた。
「人は謀られれば恨みを持ちます。 一度勝負が終わったらそこで手打ち、これは勝者の言葉です。敗者は根に持ち、恨み続けるかもしれません、それこそ生きている間ずっと」
そこには以前のように怯えた瞳の姿は無く、それどころか親が子を案じるようであった。
「ではそいつの首をは刎ねればよい」
「それが皇帝陛下でもですか?」
その問いは比喩という加工を一切することなく直球でぶつけられた。
そして形勢逆転と言わんばかりにマリアンヌから言葉を奪い去った。
喉の奥から出てくる言葉も見つからずに黙り込むマリアンヌにムンガルは
「此度は上手くいってもそのあと恨まれ続ける、あなた様は実の父親に恨まれるかもしれない、その覚悟はございますか? もしもその覚悟が無いのであれば、今退くのも選択肢に入れるべきかと進言します」
だが、それは決して叱り付ける訳ではなく、家臣が主を慮った言葉だということは、その視線や振舞からマリアンヌには十分伝わっていた。
だからマリアンヌはその馬鹿げた提案に真剣に答えた。
「もう采は投げられた、退くという選択肢などありはしない。しかし、、、」
徐に、そして意味無く首を上に持ち上げる。
すると上空に浮かんでいた雲は遥か遠くに流されていた。
人に注意されることなど無かった人生
その家柄から親しい友人もおらず、早くに母親を失ったマリアンヌにとってそんな言葉を言った人間はいなかった。
だからこれから口にする言葉は彼女にとっておそらく最初で最後の、助言を素直に聞き入れた言葉であった。
「お前の言葉は、しかとこの心に覚えておこう」
閲覧ありがとうございました(^^♪
突然ですけど改稿しました↑↑
改稿したのは【第1章】 第一皇女 マリアンヌの『03 問う覚悟に問われる覚悟』です(^_^)
こんなことを自分で言うのも可笑しいですが、かなり自信作になりましたw
たぶん読んで頂いた方が「あ~この文章の締め方、今のひとりぼっちの桜っぽいわ~」って言ってもらえる感じになっているので、よかったら読んで頂けると嬉しいです(^△^)
ではまた次回お会いしましょう(@^^)/~~~




