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魔女と呼ばれた少女 -少女は死体の山で1人笑う-  作者: ひとりぼっちの桜
【第1章】 第一皇女 マリアンヌ
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05 さぁ、殺し合いを始めましょう

クリックありがとうございますm(__)m

今回は少し長いのでマリアンヌの家族構成?みたいなのを書いておきます。

楽しんで読んで頂ければ幸いどす(´∀`*)



皇帝 ― グローリー


第一皇子 ― アール

第二皇子 ― ロキ

第三皇子 ― シン

第四皇子 ― ミナト


第一皇女 ― マリアンヌ

第二皇女 ― アンジェラ

第三皇女 ― ナミ


ここまで書いて思ったんですが、この内4人は今回ほとんど喋んないです(´;ω;`)

まぁ、今後名前を思い出したい時にここを見ようかな(笑)

って、それだと、ただのメモじゃん!


 (改稿済み。2016.10/29)



 怒号が飛び交う王の間。


「では兄上様はご自分が相応しいと思っておられるのですか!?戦にも出たことがないのに!?」

「もちろんだ~ロキよ~、王位継承権第2位は私だからな~」

「王位継承権の順位は関係ないとマリアンヌにおっしゃられたのは兄上様ではないですか!」

「あれは女だからな~、別件だ~」


 ちなみにこの争いはマリアンヌが部屋を出てから既に1時間繰り返された文言だった。


「父上様、私を次期皇帝に!」

「お父様~、このわからずやに言ってやってください~弟が兄に歯向かうなと~」


 不満を口には出さないが、集まった人間全てが痺れる足を我慢しながら小さくため息をした。

 それを表立って表さないのは皇帝がいたから、この人間を前にして何か無礼があればそれは即打ち首を意味する、だから客品たちは客という枠組みにいながらも囚人のように耐えるのだった。

 それを気遣って、というわけではもちろん無いが、ついに皇帝がその重たい口を開くのだった。


「ふむ、お前たちの意見は分かった。実を言うとわれ自身、お前たちのどちらかが次の皇帝になるべきだと考えておった。政治・経済に長け、近隣の部族を纏めこのプルートをより一層強固にした第1皇子アール、幼きときから戦場を経験し武功を重ねる第2皇子ロキ。2人とも甲乙つけがたく悩んでおったが、今決意が固まった」


 どよめく王の間の住人達。

 それもそうだ、次の皇帝の一言でこの国の次世代を担う新皇帝が決まるのだから。

 皇帝は息1つほどの間を置いて


「次期皇帝は……ん?」


 扉に目をやる。

 表立った変化は無い。

 しかし確かに声が聞こえた。

 それも口やかましい声が


「マリアンヌ様いけません!ここから先は」

「………」


「どけ!劣悪種!」


 大きく口を開ける扉。

 そこから現れたマリアンヌであった。

 この場にいる全員、親・兄弟すら持ち得ない自身を象徴する銀線のような髪を見せ付けるようになびかせる。

 そして孔雀の羽が装飾された扇子せんすを艶かしく広げると、ほんの少しだけ唇の端を上げた。


「どうもみなさん、ひさかたぶりです」

「姉さん」

「マリアンヌ姉さま」


 腹違いの弟達のその言葉には気遣いが含まれていた。

 それはもちろん”なぜ、もう何をしても無駄なのに戻ってきたのですか?”という意味。

 まだ年端としはもいかぬ第三、第四皇子が戸惑うように黒目を動かす中、第一、第二皇子が共闘するようにまたマリアンヌの前に立ちはだかる。


「マリアンヌ~、また来たのかい?ダメだよ時間は有意義に使わないと」

「兄様の言う通りだ、まだ女なのに皇帝になりたいなんて思ってるのか?」


 やれやれとマリアンヌと同じぐらいの長髪をかき上げる第二皇子ロキ。

 このムカつく言動にイラつく行動を見た瞬間、正直殴ってやろうかとマリアンヌは拳に力を入れた。…が、ここは押さえねばと心に言い聞かせるようグッと耐えて首を振った。


「いえいえ~、わざわざ貴重な時間をいてゴミに釈明する人間なんていませんよ」

「ゴミというのは誰のことを言ってるのだマリアンヌ?」

「言わなくては分からないから、ゴミというのは度し難いですね。いっそのこと可燃ゴミとしてリサイクルされてはどうですか?我が国の燃料問題が一気に解決する。 私がここに来たのはただ皇帝陛下に宣言したいことがあったから、あなたたちと争う気は毛頭ありません。分かったら視界に入らないでいただきたい、そしてそのうっとおしい長髪で自身の首でもくくっておくのだな」

「……っ!!」


 目の端がピクピク動く第2皇子ロキ、拳なんて今から石でも握りつぶすのか?と問いたくなるほど強く握られていた。

 そのプレッシャーを物ともしないマリアンヌは目をゆっくりと閉じる。


「ふぅぅぅ」


 真っ暗な視界

 息を大きく吸い込む

 肺に決意という名の空気が入り込んでいく

 ここから全てが始まるのだと毛細血管を通じて全神経に廻っていく



 ――勇気を持てマリアンヌ このまま傀儡かいらいのように生きていく事に意味があろうものか 座して生き残るよりも 立ったままの死を選べ



 なんて声が聞こえたら頼もしいな。


 軽く唇を舐める、案の定、唇はかわききっていた。

 ここからが勝負だ。

 

 指と指で押さえるようにして閉められる扇子が着火点となったかのように開けられたマリアンヌの瞳に強い火がともる。

 そしてふっと表情を緩めた。


「私、マリアンヌ・ディ・ファンデシベルは敵国アトラスに亡命いたします。みなさまハブアグッドディ♪」


 この時、この場にいた全員の口はこのように形どられていた。


「「は??」」


 意味の不明確なその言葉。

 静まり返る王の間。

 しかし、徐々にその意味が何となく分かるにつれて動揺が広がり始めた。

 一同の頭の上に浮かび上がる疑問符。

 全員が目を丸くしたことは説明するまでもないだろう。


 ただ1人を除いて


 実の父である現皇帝グローリーは怒りで激震する腕を座っている王座の肘掛に振り下ろす。


「ふざけるな!!」


 地震のような振動と音が王の間に響き渡る。

 空気が電気を帯びたかのようにその場にいる全員の動きを止め、吸い込む空気が重力がかかっているかのように重くなった。

 そこにいたのは60を過ぎ、その座を譲ろうとしている老人ではなく、大陸半分を統べる現皇帝だった。


「マリアンヌ、貴様はわれの意に反し、刃向かう為にわざわざ戻って来たのか?」

「いいえ皇帝陛下、私はあなたの意になど反しておりません。 昔あなたが私に言ったことを体現したまでのことでございます」


 激昂した瞳と、妖艶で全てをあざ笑うような瞳が対峙する。


「ふざけているのか、マリアンヌ。 われがお前に亡命しろなどとふざけた事を言ったことなどない」

「欲しいもはいかなる方法をもっても己が手で手に入れろ、それが皇帝の血筋の証だ。 ですよね?幼い頃からあなたの英才教育で耳にタコができましたよ。ですから私はその皇帝の椅子を手に入れる手段を講じたにすぎません」

「それが亡命などという下らぬ選択だと?」


 ええ、そうです。と、黒く縁取ふちどられたアイシャドーが涼しく囲い込むように皇帝の瞳を捕らえる。


「貴様の身分を考えよ、マリアンヌ。お前は一民草ではない、第一皇女だ、そんな人間が亡命など馬鹿げたことをしたら国が揺らいで」


 怪訝けげんな様子の皇帝が話し終える前に、マリアンヌは口を差し挟む。


「ええ、揺らぐでしょうね。そして今、皇帝陛下の頭をよぎった事が起こるでしょうね。大国プルートの第一皇女であるわれが敵国のアトラスに亡命すれば、国中に留まらず近隣諸国にまで伝わり不安から暴動が起こる可能性すらある。 そしてアトラスはその機を好機として我が大国に乗り込んでくるでしょう。 大変だ~100年続いた大戦がまさかこんな形で幕を引こうとは~。どちらが勝つか、楽しみだぁ!」


 マリアンヌは万歳ばんざいをする直前のように両手をパッと開いてわざとらしく驚いてみせる。

 皇帝陛下は目のシワを強ばらせた。


「お前1人で何が出来る?」

「私1人?おかしなことをおっしゃられますね。皇帝陛下におきましてはご年齢から体力の衰えは感じ取れましたが、まさか視力にまで多大な影響があったとは、私の後ろに1人いるではないですか」


 一斉に注目を浴びるメイド。

 メイドは俯いたまま微動だにしない。

 周りから笑がクスクスと漏れる中、皇帝陛下も例に漏れず笑う。


「そのメイドがお前の亡命に役立つのか?」

「ええ、もちろん」


 真顔で答えたそれを、皇帝陛下はいっそう豪快な笑い声で返した。


「まったく笑わせてくれる。面白かった、もう下がれ、今回は不問としてやる」

「そうですか?喜んでいただけるのは私としても嬉しいのですが、残念ながらこのメイドを見て面白くない人間もいるようですよ、なぁ右大臣よ」


 右大臣は「えっ」と驚いた後、苦々しそうにカーナに目をやる。

 一日10食、昼寝たっぷりと言わんばかりの腹がだらしなく揺れた。


「いいえ、マリアンヌ様には申し訳ありませんが、私はその女に見覚えはありません」


 大臣は顎鬚あごひげをさすりながら涼しい顔で答えた。


「そうか、では思い出させてやろう。この者の名はカーナ・マキシマム。 皇帝陛下、あなたも良くご存知であろう元近衛部隊隊長ストロング・マキシマムの1人娘。 最強と歌われた父親の技術を全て受け継いだ唯一の存在」


 だったらいいな。知らんけど


われの右腕であり、最強の騎士」


 に、なるかはどうかはわれに今後があればの話しだが。

 まぁここでは希望的観測を述べたに過ぎぬわけだ


「右大臣、お前は覚えているはずだろ? なんと言ってもお前が正騎士の団長を辞めたきっかけを作ったのはこいつなのだから」

「なぜそれを!?全員に口止め、あっ、カーナ」

「どういうことだヴァン?」


 話の輪にいなかった第三者である右大臣、皇帝の視線と発言に体がビクッと反応した。

 脂ぎった汗が右大臣の首筋を伝う。


「いいえ皇帝陛下!私には何のことだか!」

「思い出させてやろうか?皇帝陛下やその事を知らぬ多くのやからに聞こえるよう大きな声で、事細ことこまかに」

「止めろ!!!」

「止めろだと?貴様、誰に向かって口をきいている。われに命令する気か、右大臣ごときが?」


 鋭い眼光に大臣は肩すくめる。

 空気がよどんでいく、まるでマリアンヌが操作したかのように。

 右大臣は思った。


 今、横にいる皇帝と同じ目だ!?


「マリアンヌ様!申し訳ありません!止めてください!!」

「……右大臣お前は予想できるはずだ、この者があれから10年でどれだけ強くなっているか、そして嫌でも想像するはず、最悪の事態を。そこで君の仕事は何だ? そこでぼ~と俯瞰ふかんすることか?違うだろ?皇帝陛下に勝算の無い戦いなどすべきでは無いという進言こそが君の仕事ではないかな? 右・大・臣よ」


 まるで黒い重力が身体を押し潰すような圧迫感だった。

 マリアンヌが意味ありげな目を細めると大臣は苦しそうに頷いた。


「こ、、皇帝陛下、私は…この国を預かる右大臣として、お2人が、、そのお2人が、仲たがいするのは国の為にならないかと思います…はい。 ここはどうでしょう、話し合われては?プルートに住まうみな兄弟、ラブ&ピース的なアレで」

「お前がそのような弱腰でどうする!!」

「申し訳ありません!!」

「小娘相手に情けない! もういい!右大臣お前は少し黙っていろ!!」

「はい!!」


 仕切りなおすように皇帝はマリアンヌに視線を戻す


「マリアンヌ、この状況、お前を軟禁すれば全てかたがつくと思わないのか?」 

「まぁ皇帝陛下にその決断が出来ればですがね。自分の可愛い可愛い愛娘まなむすめにそのような非人道的な行動をあなたは出来るのですか?ふふ、出来ないでしょう?いいえ、しかしそれは恥ずべきことではない、あなたも人の子だという、ただそれだけのことです」


 その言葉に皇帝陛下の瞳が熟考じゅっこうすることは無かった。

 真っ直ぐに目を合わせて言った。


「プルート第六皇帝グローリー・ディ・ファンデシベルの名を持って宣言する。マリアンヌ・ディ・ファンデシベル、お前の王位継承権を剥奪する。 そこの憲兵2人、マリアンヌを捕らえよ、頭が冷えるまで地下の牢獄にでも入れておけ」


 この時、マリアンヌはその言葉を待っていた。

 実の父親である皇帝が一呼吸も考える余地が無かったこと、娘としてはいささかショックだが、予め予想はしていた。


 ここまでの話の流れは全てマリアンヌの計算の上に成り立ち動いてた。

 だが、ここからはそうはいかない。

 不確定要素の追加。

 それは時間が無かった為、確認作業が出来なかった懸案事項けんあんじこう


「ふぅ~」


 マリアンヌは最後の休息を取るように唾を飲み込んだ。


 さてさて、問題はここからだ。

 勝てるのか?

 もしテレパシーが使えるのなら即カーナに問いかけたい文言だ。

 そして「無理」という回答がなされたらすぐにでもバックれたい。

 だからこそ、これは大いなる賭けだ。

 相手は騎士といってもそこまで腕がたつ訳ではない憲兵

 だがここで簡単にカーナが負けるようなことがあったらハッタリも全てが無駄になる。


 そういえば女は度胸だと母上は言っておったな…。

 母上、未だに”度胸”と”やけくそ”の違いがよく分からないですよ。


「やるしかないか」


 亡者のような声で呟くマリアンヌ

 その背後から近づいてくる2つの足音

 徐々にその音は音量を増していく

 そして憲兵の1人がマリアンヌの肩に触れようとしたその時、マリアンヌは決意を言葉にするように口を開いた。


「カーナ」


 その言葉はマリアンヌの目の前を一陣の風を起こした。


 え?とマリアンヌと周囲の人間がパチパチとまばたきをする中、今まで居たはずの憲兵の場所には真っ赤な髪をしたメイドが澄ました顔で立っていた。

 そのメイドの視線の先

 マリアンヌが顔をやると壁に無残に叩きつけられ、頭から地面へヘチャリと落ちていく憲兵の姿がそこにはあった。


 そして次の瞬間

 近づいてきたもう1人の憲兵の顔面を風車のような蹴りが捉えていた。

 ここまできてやっと手練てだれの騎士たち以外がその状況を理解した。


 皆、疑問符の霧が晴れたように赤い髪のメイドを見る。

 この涼しい顔をしたメイドがやったのだと。

 メイドは感情の無い機会のように、抑揚よくようの無い声で言った。


「マリアンヌ様、あなた様に触れようとする下賎な輩の処理を完了しました」


 マリアンヌは言った。


「おっ、おう、よくやった」


 そしてマリアンヌは思った。


 やったぁぁぁぁ!!


 素人のわれでも分かる。

 こいつは強い

 名のある騎士程度では太刀打ちできない、下手をすると今、皇帝の周りにいる近衛兵このえへいいや、もっと上のクラスで無いと相手にならないのではないか。

 嬉しい誤算、無意識に口元が緩むのが自分でも分かる。


 だからこそ自分の計画は上手くいくと確信した。


「カーナ、次に襲ってきた人間は皇帝陛下でも構わん。容赦なく殺せ」

「了解しました」


 これを聞いた皇帝の周りの近衛兵たちが自分の剣に手をやろうとした、しかしそれよりも先に皇帝グローリーは手で押さえるように制止させた。


「逆賊にまで成り下がるつもりか、マリアンヌ?」


 その問いへの返答は用意していた。


「今から亡命しようとしている人間に逆賊になるつもりか?などという質問はあまりに滑稽こっけいな質問です」

「そのメイド1人を使って亡命出来ると?」

「ここを出て1時間、私が何も策をろうしていないとお思いですか?ここを出て1時間なにをしていたと思います?」

「まさか」

「ええ」


 怒りに身を任せて物にあたっておりました。


「私の忠実な騎士たちに召集をかけていました」

「箱入り娘のお前に賛同してわれに歯向かう輩がいるわけが」


 マリアンヌはそれを聞くなり鼻で笑いながら親指をカーナに向けた。


「ではあなたはこのメイドの存在をご理解していたと? このメイドは例外? こいつだけ? そんな楽観的な理想論、語るあなたではないでしょう? 私が捕まる覚悟を持ってまでここに来て無策なわけがないでしょう?嘘だと思うのならどうぞわれを捕まえようとしてごらんなさい、ただし騒ぎは起こさないほうが身のためです、騒ぎが起こると踏み込むように言っております、まぁこのカーナ相手に穏便にすますことが出来ればですが」


 皆たじろぐ様に扉を見る。

 マリアンヌは咳払いを1つ挟んで「繰り返しましょう」と一呼吸おいた。


「私は私に賛同する人間をカーナ以外に複数人所持している。そしてそれらはいつでも私の指示で動く、さぁ、みなさま、、殺しあいましょう」


 有無も言わせぬマリアンヌの言葉の数々、緊張感で強ばる部屋の中の住人達。

 しかしつぎの瞬間ニパッとマリアンヌは表情を緩めた。


「な~んてね♪ われとて馬鹿ではない、ここでことを起こせばわれ自身も無傷ではいられない、そこで皇帝陛下、私と取引いたしませんか?」

「取引だと?」

「ええ、正当な取引です。しかも皇帝陛下のお望みの通り、より強い次期皇帝を決めるこれ以上ない方法です」

「…申してみよ」


 その言葉を聞くなりマリアンヌは天高く扇子を振り上げる


「これから兄弟全員、戦場にて功を競うのです。年齢、性別、問わず戦いの陣頭に立ち、戦に身を投じる、そしてその結果で決めるのです」


 右大臣とは体格が真逆な骨と皮だけで構成された左大臣が口を開く。

 その薄い手の平はマリアンヌを制止するように前へ


「お待ちくださいマリアンヌ皇女殿下! それでは皇族の皆様方が危険に晒される可能性がございます。第2皇子ロキ様以外は武芸もたしなまれていません、万が一ということが起こってからでは」

「それに何か問題があるのか?」

「えっ?」

「それは単に皇帝に立つ器でなかっただけという、ただそれだけのことではないか。それに、ただ死ぬより戦死のほうが民たちも復讐心にかられ戦いに奮起するのではないかね?」

「恐れながら、皇帝陛下」


 今までその身を丸めるようにしていた右大臣が皇帝にそっと耳打ちをする。


「マリアンヌ皇女殿下の案はこの国にとってもよき案ではないかと考えられます。騎士たちも皇女や皇子が戦場に立つことによって、より感化されるかと。 元より皇帝陛下にとって何のマイナスにもなりません。ここはこの案に乗りましょう」


 皇帝は目を少し厳しくした後、歯をギリギリと噛んだ。


「よかろう」


 皇帝は重く答えた。



              ×            ×



 客人として呼びつけられた有名貴族たちや皇帝が帰ったあと、兄弟達だけが残っていた。

 マリアンヌが帰ろうとすると第2皇子が呼び止めた。


「うまく立ち回ったな、マリアンヌ」

「おや、お兄様。そんな表情で何かご不満な点でも?」

「お前のおかげで私が皇帝になるのに時間を要する、不満そうに見えるならそういう理由だろうな」

「その言葉口ことばぐちだと自分がなるのが決まっているように聞こえますね」

「”ように”ではない、決まっているのだ。そもそも功を競うなど、皇族で俺以外、戦場に出たことも無いのだからな、結果など決まっている」

「出たことが無いということは可能性が分からないということと同義では?」

「経験に勝る才能など無い。剣を握って敵と対面する、湧き出る冷や汗に沸騰する血潮、それをどれだけ経験するかで勝敗は決する。少なくともそれがお前にあるとは思えない」

「その理屈だと老戦士は最強ということになる。戦場においての平均年齢が何歳になることやら。いっそのこと剣を捨ててゲートボール大会などしてはいかがですか?ふふふ」

「言葉遊びをするつもりは無い」

「こちらもそんなつもりは無い。そもそも自分が戦場に出るからといってあなたのように大将が剣を握る必要などどこにも無い。剣が苦手なら後方にいればいいし、戦略が苦手なら良き軍師を手元におけばいい、それだけのことです」

「ではお前は戦場で何をする?」

「それが分からないなら、そこがあなたの限界でしょう。どうぞ剣を握って用兵風情に成り下がるがよい。 それではな、お兄様」

「今さらお前に兄扱いされたくはないな」

「そうですか、それは残念。せっかくあなたが簡単に皇帝になれる方法をかわいい妹が教えて差し上げようと思ったのに」


 そう言いながら不敵な笑みを浮かべ、王の間を出て行こうとするマリアンヌ。

 エサを待ちきれない犬のように慌てて第二皇子は問いたてる。


「う、うそをつけっ! そんな方法があるのなら今ここで言ってみろ!」


 マリアンヌは重厚な肉厚の扉を手にかけながら言った。


「私が不慮ふりょの事故で死ねば、この話は流れる…」


 その言葉に兄弟全員がゴクリと唾を飲む、そして示し合わせたように目をキョロキョロとさせて互いの反応を見あう。

 そんな一部始終を見ていたマリアンヌの妖艶な瞳

 その動きを確認すると、連動するように頬を吊り上げた。


「わけないではないかぁ。 既に集められた客達、大臣、何より皇帝が自分の口から発した発言だ、ひっくり返ることなど無い、くだらない話に飛びついてんじゃね~よ、バーカ」

「マリアンヌ、貴様」

「おっ、よい表情をするようになったなロキお兄様。 その表情が見たかったのだ、爽やかと誤解しているその長髪からくる流し目ではなく、憎しみでヒシャげた顔面、最高だ♪ お礼にいいことをお前達に教えてやる、皇帝になりたかったら他の全員を殺せばいい、簡単なことだ」


 それを聞いて一番年若い第4皇子が慌てふためくように口を開く


「しかし姉さま、皇族同士の殺し合いは固く禁じられてます。それに兄弟で殺し合いなんてぼくはしたくないです」

「バレなければ何の問題もなかろう。死人に口なしって言うであろう? それにお前が望もうが望むまいが運命はすでに廻り始めた。さぁ、兄弟同士の骨肉の争いとやらを始めようではないか」



今回は長かったのに読んでくれてありがとうございます。


そういえば、チェインクロニクルVで「ムジカ」当たりましたo(^o^)o

無課金の私に虹がさしたよ。

でっけぇー虹がね(☆∀☆)

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