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魔女と呼ばれた少女 -少女は死体の山で1人笑う-  作者: ひとりぼっちの桜
【第4章】 初陣!三日月峠の戦い

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22 月夜の夜に・アトラス編(1)

クリックありがとうございます(*_ _)ペコリ


大学時代、というか私は基本的に遅刻というのをほとんどしたことがありません。そんな私が大学時代、よりにもよって「絶対に遅刻してはいけない」と念押しされた講義であろうことか遅刻してしまいました(>_<)


私は目が覚めて頭が真っ白になりました(・o・)

時計の針はすでに30分は過ぎていたのです。

私は1分で着替えて1人暮らしをしていた部屋を出ましたε=( ゜д゜)┘;

走っている最中も頭の中では「時間が!時間が!」と何度も叫んでおりました。

そして階段を下りて地下1階にあるドアを開ける私。

静まる教室、集まる視線、教授は冷たい目で言いました。

「今日、絶対遅刻したらあかんて言ったよね?」

そもそも遅刻をほとんどしなかった私、まだパニック状態です。頭の中では「時間が!時間が!」とメリーゴーランド状態ですヽ(゜○゜ ;ヽ)三(ノ; ゜□゜)ノ

そして私の言った台詞は


「すいません。じ、時差で遅れました」

「お前ん家からここまで走って10分やろうが!時差なんぞおこるかぁ!」


何かこの後、教室全体が笑いでいっぱいになったよ+.(*`・∀・´*)゜

遅刻扱いになったかは未だに分かりませんが、とりあえずこの後、怒られることは無かったというハートフルな思い出を持つ「ひとりぼっちの桜」ですww



さて今回は19「月夜の夜に」20「ムンガル編の前半」、アトラス軍では何が起こっていたかというのを描いてみました。

これを書くことによって物語全体が引き締まってさらに面白くなったらいいなと思っています(*^_^*)


それではどうぞご覧ください(^^♪

 その男はプルートにいた頃は副官と呼ばれていた。

 数多くの功をあげた彼は天才とも呼ばれた、それはあの皇帝に何度か謁見えっけんできるほどであった。

 だが今は難攻不落のダイアル城塞の外殻塔がいかくとうの上でアトラスの軍服に袖を通している。


 唯一、プルートから持ってきたのは年季ねんきの入ったパイプ1つ

 気持ちを落ち着かせるように葉っぱを入れると、近くにあったかがり火の火を入れた。


「フ~」


 たそがれる夜風と共に吐き出す煙

 煙も今の自分と同じなのか、行き場所が無いと飛散する

 ふらふらと目的地も設定してない足はただただ適当に方位磁石を向ける。

 ムンガルより少し若い30代の背中には哀愁あいしゅうのような寂しさを感じられた。


「今日で何日目だ?」


 日夜続く宴会にうんざりだった。

 城塞内に漂う肉や魚の食欲のそそるにおいも、これだけ連日だとにおいだけで胸焼けしてしまう。

 宴会をもよおすのに一番必要な主役はそう思った


立役者たてやくしゃと言えば聞こえはいいが、裏を返せば裏切り者」


 愚痴ぐちるように

 しかし自分の罪と向き合うように

 蚊帳の外の自分に居場所など無いと言わんばかりに


 ここ数日、彼は外郭塔の周りをただ歩いている

 目的も無くただ歩いた


「月はどこにいても変わらないね」


 空に浮かぶ月を眺めながらそう1人呟つぶや


 目をつぶると”あの頃”の風景が蘇る

 そんな感覚が意識を支配する

 でも後悔は


「していない」


 すると1人の兵士が小走りでこちらにやって来た。

 そして元副官よりも2回りは若い兵士は気さくに言った。


「上官殿、またここにいらしたのですか。飲まれないのですか?酒美味しいですよ♪」

百薬ひゃくやくの長も適量を超えるとただのよろずやまいの元だよ」


 その気さくな態度に怒るわけでもなく、とても穏やかな声でそう返答する元副官


「それにしても君は私に対して普通に接してくるね」

「自分はあなたの部下ですから」


 その答えをきいた元副官、自虐的じぎゃくてきに笑う


「つい先日からの、が抜けてるよ」

「えっ!?いや、それでも部下ですし」


 焦る部下を冗談だよと小さく手を挙げてジェスチャー混じりに言うと兵士はホッと胸を撫で下ろした。


「上官殿、失礼ながらお聞きしてもよろしいでしょうか?」

「なんだい?」

「ずっと気になっていたのですが、なぜ上官殿はプルートを裏切ってこのアトラスに来られたのですか?今まで亡命した人間はいましたがどれも国を追われた様な身分の低い人間ばかりで、上官殿のような爵位の持つ方は稀というか…それに亡命したことによって立場も」

「確かに君の言う通り、待遇面はだいぶ落ちただろうね」


 清々しい表情でにっこりと微笑んだ

 そして手にしていたパイプを口にくわえると煙をゆっくりと吐いた


「君は自分が当たり前だと思っていたことが根底から崩れたことはあるかい?」


 若い兵士にはこの質問の意味が分からなかった。

 戸惑いながら首を振る


「君は軍に入って何年目だい?」

「今年からであります」

「歳は?」

「16であります」


 若いとは思ったが、まだ子供じゃないか


「軍には自分の意思で?」

「えっ?も、もちろんそうですけど、それが普通なのでは無いのですか?」


 普通…か


「君ぐらい若いと民主化という考えを素直に受け入れられるんだね…いや、その考え方は間違っているのだろうね。考え方を受け入れるのに年齢は関係ない、そう思ったからこそ私は亡命したのだから」

「??」

「いや、すまない、独り言だよ。 それでさっきの話の続きだけど、普通ではないよ、少なくともプルートではありえない。君はプルートという国をどんな国だと思っている?」

強靭きょうじんな兵を用いて我々の国の平和をおびやかす蛮族ばんぞくだと教えられました!」


 軍の模範解答を噛むことなくスラスラ言った兵士


 おそらく上官の質問にはそう答えるように言われているのだろう

 そういった所はどこも同じか


 少し懐かしさを覚えながら元副官は言う


「まぁ、どちらが攻めているか、というのは見解の相違だから何とも言えないけれど、プルートを一言で言うと井戸だよ」

「井戸、ですか?」


 あまりにも突拍子も無い一言

 言葉の疑問符と同期どうきするように首を傾ける兵士


「私は農民の出なんだよ。それも相当に貧しい…ね」

「そうなんですか、でもそれが井戸とどんな関係があるんですか?というか実力があれば別に関係ないのでは?」


 フフ、と少し笑う元副官


「アトラスは民主化される前からそこまで厳しいわけではなかったけど、まぁプルートに関しては本当に農民の出だと爵位を得るといったことは難しいんだ」

「それはどれだけ優秀だとしてもですか?」


 もちろん、と肯定する元副官。


「”努力が認められるのは権力者のみ”これは昔からプルート内で言われていた言葉だが、皮肉ではなく事実から出来た言葉」

「でも上官殿は爵位を手に入れたんですよね?」

「私は運がよかった…のと、死に物狂いで努力したからね。 ただ剣の才能はてんで無くてね」


 元副官は口にくわえていたパイプを剣に見立てて軽く振って見せた

 その振りは剣を学び始めてまだ数週間と言ってもいいぐらいのぎこちない動きであった。


「お恥ずかしながら見ての通りだよ。だから私は成り上がるために知識をつけてきた。剣に磨きをかけれないなら知識に磨きをかけた」


 剣に見立てたキセルを苦笑い混じりに再び口にくわえる元副官


「程なくして私の村に有名な軍の軍師がやってきた、そこで私は認められて付いて行くことを許された。 プルートに着いたときは天国かと思ったよ、暖かくて美味しいごはんにフカフカのベッド、ただそこから大変だった。 私だけじゃなかったんだよ、そうやって集められた子供はたくさんいたんだ」

「たくさん…10人ぐらいですか?」

「ざっと100人」

「100!?」

「その100人が蹴落としあうのはなかなかにスリリングだったよ」


 空に浮かぶ月を見上げる


「その過程で私は何人もの人間を蹴落としてきた、脱落者がどうなったかは知らない、元いた場所に戻ったのか、それとも…まぁ私自身、後悔はしていない。それが幸福への最短の道だと信じていたからね。そして勝ち残った私はその数年後に軍へ」


 半分かけた月を見ていると、今までの人生を生きたプルートと、これからの人生を生きるアトラスをあらわしているようだった。


「私は配属されたのはまだムンガル将軍が将軍と名乗る前の部隊だった、そして私はそこで功を重ねた、幸いムンガルは功に感心が無くて私の功は私の功として計上された、それ自体も幸運だった、それでも長かったが私は爵位をついに手に入れた。もちろん望みが叶ったわけだから満足感もあったが、同時にむなしさもあった。そんな時に事件が起こったんだ」

「事件?」


 視線を下ろす

 そして兵士の目を真っ直ぐ見た


「もう1年ほど前になるか。公式にはされていないからほとんどの兵は知らないだろうが、私は作戦中、自分のミスから君達の住むアトラスに捕虜として捕まっていたんだよ」

「えっ、本当ですか!?」


 驚きで目を大きくする兵士に元副官は続ける


「ふふ、公式にはされてないからね、開放される時もプルートとアトラス間の裏取引による捕虜交換だったし。まぁ最初はいきどおっていた、不満もあった、でもその時”ある人に出会ってね”監視つきだったけどある程度の自由を与えられたんだ。 そして私はアトラスに訪れた民主化の、その変化をの当たりにしたんだ」

「変化…ですか?」

「アトラスに住む人間全てがとても幸せそうな表情だった。それまでの自分の生き方が馬鹿馬鹿しく思えるほどに。 その時、思ったんだ、自分は井の中のかわずだったのだ…と」


 その時の感情を思い出すように肩の力をスッと抜く


「捕虜にされていたのはほんの数ヶ月だったのだけど、私が見たのはアトラスの人々が自由に生きている姿。 自由な考えを持ち、自由にものを言える、そして自由に自分の未来を選べる。 こんな世界が本当にあるのかと驚いた、そして同時に自分自身の価値観が完全に壊れた」

「自分にとっては当たり前のことなんで、あんまりピンとはこないですが」

「まだ若い君にとっては既に当たり前のことなのかもしれないが、当時の私にとってはそれはとてもまぶしく思えた。上官の顔色をうかがって、その上の爵位のある人間の顔色を窺う、そしてさらに上の皇帝の顔色を…、その繰り返し。 皇帝の考えが全ての世界、それはとてもちっぽけな世界だ、まるで井戸の中だよ」

「なるほど、だから井戸」


 納得したように頷く兵士


「私はその時アトラスの国を見て思った、プルートも変わらなければいけない。そして君たちは新しい時代の象徴なんだよ、そしてそれはアトラスだけに留めていていいわけがない」


 皇族による独裁国家は滅びるべきだ

 それが人類が幸福を得る最善で最短の方法


「私の亡命はそのための第一歩」

「それなら上官殿の仲間達も一緒にアトラスに亡命したら-」


 兵士の言葉が言い終わる前に首を横に振る元副官

 彼は断言する


「彼らは絶対無理だよ」


 そう、彼らは私と違って根っからの騎士

 王のために生きて死ぬ、それを心の底から受け入れられる生き物

 根底から私とは構造が違う

 私の考えを話したところで彼らが受け入れられるはずもない


「少し長話がすぎたようだね。 ともあれ、これが私がアトラスに亡命した理由だよ。どうだい?納得できたかな?」


 ちょっとした暇つぶし、愚痴のつもりで話した私の言葉に目の前の兵士は目を輝かせて答えた。


「はい!自分は目から鱗が落ちました! 自分もその理想の実現に協力します!」


 現段階でこの若い兵士が何の役に立つかはわからない

 ひょっとしたら何の役にも立たないかもしれない

 でもその逆かもしれない

 だからこそ、今はこう言っておこう


「期待しているよ。 では私はそろそろ寝るとするかな」


 その言葉を最後に自室に戻って枕を高くして眠りにつこうと思った時であった、高くそびえる城壁塔じょうへきとうの番人が詰め所の窓を勢いよくバン!と音を立てて開けた。

 そして顔を出した兵士は大声で叫んだ。


「奇襲であります!!敵はプルート軍です!!」


 あまりに意外だったので、普段冷静な元副官も声を裏返した。


「バカなっ!?早過ぎる! 誰がひきいているか分かりますか!?」


 下に見える元副官に向かって番人はハッキリとした声量で言った。


「鉄壁のムンガルです!」

「な、なぜ…」


 いや、それ以前になぜここに来れた?

 あの皇帝が敗北した兵士を許したのか?


「そんな…ありえない」


 そもそも私の計画では国に帰ったムンガルは処刑され、部下はりとなり、怒り狂った皇帝はこのダイアル城塞を奪い返すために大軍を差し向ける。

 おそらく数は数万はよこすだろう

 そしてその大軍は大量の死体がある森の中に陣を作る。

 森の中の死体の山を見て更に怒りを誘い、シェリー殿率いる部隊に火を放たせて数を減らす。その頃にはアトラスからの増援が到着する。そういう手はずだった。

 それがムンガルがこの地に来たことによって根底から崩れた。


「お前の計画ではムンガルは放っておいても死ぬのではなかったのか?」


 わざとらしいまでの嫌み口

 あまりの予想外の事態に棒立ちになる元副官の元に髭をたくわえた老人がほろ酔い気味にやって来た


 元副官はまだパニックから立ち直っていない口で言う


「いや、私にもどういうことなのか…」


 老いていると言うには若干若いが兵士としては老兵に部類される彼は、手にはまだ飲み足りないと言わんばかりに酒瓶が握られていた。

 そしてグイっと酒を胃の中に流し込む。


「やはりプルート人の言うこと、信じると馬鹿をみるようじゃな」


 そう言って向けられる視線はとても味方に向かって向けられるものではなかった

 対面する2人の間に流れるピリピリした空気

 ドドリスは馬鹿にするように鼻で笑うと視線を外すように顎を斜め上に持ち上げる

 顔を向けた先には城壁塔


「おい!城壁塔におるやつ! 攻めてきとるのはムンガルで相違ないのであろうな!」

「はい!その間違いありません!!」

「ムンガルか…」


 酒瓶さかびんを手にした老人兵はそう呟いた


 この時、元副官は嫌な予感がした

 限りなく嫌な予感


「門を開けよ!まだ破られていない第六の門もだ!」

「ドドリス殿!そんなバカなマネを!?」

「馬鹿だと?」


 マズイ、今のは自分の立場を忘れた発言だったか。


「いえ、申し訳ありません失言でした。 しかしながら定石じょうせきかんがみれば門を開けるなど失策といわざる得ない」


 身分をわきまえるように心にも無い謝罪を述べる元副官

 その白々しさに苛立ったようにドドリスは声を荒げる


「問題ななど何も無い!そろそろ酒の味にも飽きていた頃だ!どれ、ワシがムンガルの首を取ってきてやろう!」


 この男は酔っているのか?

 そう考えてしまう

 いや、ろれつは回っているし、確かに逆落としである以上、分はこちらに有利なのだが…

 だがそれでも


「ドドリス殿!ムンガル将軍の隊に対して正面から当たるなど自殺行為です!ここは森に潜ましている尖鋭部隊と10英雄のシェリー殿を待ちましょう。幸いまだ最後の6の門は破壊されていない、今から門を固めて徐々に体力を奪っていけば―」

「新参者のお前のめいなど受けぬわ!そもそも歴戦の勇士、ムンガルをそのような形で討ち取るなど恥ずかしくはないのか!? やつの首はこのワシの物だ、1千の兵を使うぞ!元々は全てワシの軍勢なのだから問題は無かろう!!」

「ではせめて兵を倍、使ってください!1千では分が悪い」


 元副官の懇願こんがんにも似た助言を怒り肩で返すドドリス


「貴公はワシを馬鹿にしているのか!一昔前ひとむかしまえは10英雄の1人に数えられるほどだと言われたワシを! 絶対的有利である逆落とし、しかも相手も同じ1千だというのにこの私が遅れを取るなどありえぬわ!!」


 まずい、今の私ではこの人を止められない

 いや、この軍の暴挙を止めるとこが出来ない

 理詰めで言ったところで、階級はこの人のほうが上

 そもそもこちらの階級が上であったとしても言うことを聞きそうに無い人相手ではどうしようもない


 止める間もなく酒瓶を剣に持ち替えた男は馬に跨った

 そして大きく号令をかける。


「我が隊はこれより単独、逆落としにて猛将ムンガルの首を討ち取る!者共!私に続けーー!!」

「ドドリス殿!!」


 必死の声はかけていく馬の足音に無情にもかき消された。 

 成す統べなく止めることが出来なかった元副官、「クソッ」と小さく呟くのであった。



閲覧ありがとうございました!(^^)!


次回は20「ムンガル編の後半」、ムンガルがドドリスを討ち取った後のアトラス軍の様子を描こうと思っています。

どうしてアトラス軍は1千もの兵が残っていたのに門を閉めたのか、そんなお話が書けたらな~と思っています。

よかったら次回も読んでいただけると嬉しいです(^_^)

それでは次回お会いするまで皆様どうか寒い日が続きますが風邪な召されぬようお元気で~ヾ( ^ -^)ゞ

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