18 手に入れた拠点
クリックありがとうございます(^^)
もう年も明けてけっこうたちますが、本年もよろしくお願いします(*_ _)ペコリ
今回のお話は「15 カーナの決死行(2)」の後も少し描いているので、初見の方はよかったらそのお話も一緒に読んでいただけると嬉しいです(^^♪
では今回も少し長いですがどうぞご覧ください。
「ゴホッ!ゴホッ! オエッ」
「マリアンヌ様、大丈夫ですか!?」
荒れた岩肌の中腹に掘られた大穴からは、今まさにといった具合に黒い煙がまるで狼煙のようにモクモクと外に湧き出ていた。
マリアンヌは何ともいえないコゲたにおいにむせ返りながら顔を背ける
「何だ、この臭いは?」
少し吸っただけで吐き気を催す様な臭いが山からの吹き降ろす風と共にマリアンヌの一団を通過していく
その問いにムンガルが手をパタパタと散らしながら答えた
「これは色々な物が燃えているにおいですな」
「色々なにおい? 暈した言い方はよせ人間だろ」
ほんの300人ほどのな
「いえ、それだけとは思えません。原油…とは違うようですが、この煙の色を見る限り何か油のような物も混ざっているかと」
人の血は理解できるがなぜ油?
まさか…
「カーナ、お前、まさか!300人を殺すために火を放ったのか!?」
「いえ!そんな!まさか!」
ブンブンと音を切るようにカーナの首は左右に揺れる
「じゃあこれは弁明するのだ?」
「えっ!…え~と、ちょっとした手違いによって引火した薬品とか、あと諸々です」
「薬品?」
「それが、なんと言いますか…火の回りが速い、そして消えにくい薬品だったのかも?」
パチパチという音は聞こえないが、今なおモクモクと湧き出てくる黒い煙
マリアンヌは恐る恐る横穴を指差した
「…もしかして、まだ燃えてたりするのか?」
チラッと洞窟の入り口を見たカーナ
「おそらく」
その答えに
「それ、もうボヤレベルじゃないよな?」
「…はい」
「いやいやいや! 早く消そうよ!?」
「マリアンヌ皇女殿下、危のうございます。 念のために私の部下を確認に出しましょう」
「う、うむ」
数名の兵士がムンガルの命令で横穴の中に入って行った。
そして少しして出てきた兵たち
「どうだった?」
「大災害だそうです」
「マジかぁ~、外からはそんなに燃えているように見えないが、、、大災害レベルなのか」
「はい、いかがいたしますか?」
「すぐ消せ、兵を何人使ってもよい」
「了解いたしました」
「マリアンヌ様お茶をどうぞ」
「いらない」
――1時間その場にて待機
「マリアンヌ皇女殿下、消化完了いたしました!」
1時間かかっての消化、、、中の状態を考えると入りたくないな
「マリアンヌ皇女殿下?」
「ああ、今行く」
「マリアンヌ様、この先は足元が危険ですのでどうぞお手を」
「うむ」
闇に吸い込まれるように一歩洞窟に足を踏み入れると濃い血のにおいが身体に纏わり付いてきた、見えるのは前を歩くムンガルが持つタイマツの灯りのみ。
道幅はそれなりにあるが、左右の岩や木の壁によって息苦しい
それに足元に広がるお世辞にも綺麗とは言えない岩だらけの道、そのしんと静まり返った洞窟内に足音だけがこだまする
マリアンヌは数ある死体と死体の隙間を縫うように跨ぎながら言った
「これ、全員死んでるのか?」
タイマツの灯りに照らされたムンガルの巨体
背中越しに断言する
「はい、生存者はおりませんでした」
という明確な回答であった。
しかし確認作業などそもそも意味は無いのだと、我の手を取って横を歩くこいつを見て思い出した。
カーナが仕損じるようなヘマをするとは考えられないことはこれまでの…
いや、実際にこの洞窟に一歩足を踏み入れれば誰でも分かる、そう思わせるような凄惨な現場であった。
全員、首を横一文字に裂かれていた。
致命傷が他にあるであろう者もいたが、念のためと言わんばかりの徹底よう
一目で生存者などいないことが分かるほどの殺し方だったのだから
「どんどん臭いが醜悪になっていくな…」
「マリアンヌ皇女殿下、この先が火元です」
奥に進んでいけばいくほど、地面のくぼみに溜まった水たまりの量、深さが増加していく。
あっ、水しぶきが飛んだ
我の為に作られたヒールの靴、我の為に作られた特注のドレスに泥水が…
不愉快そうに眉をしかめるマリアンヌ
「ムンガルよ、ここまで水をまく必要があったのか?」
「これでも最小限に抑えた結果です。燃えていたのは最深部の辺り、特にこの医務室でしたが燃え方が酷かったので水を大量に要しました」
「水って、どこから用意したのだ?」
「それは…そこのメイドが」
そこまで言うとムンガルは喋るのを止めた
カーナも無言でムンガルの前をすり抜けると、丸コゲになった死体をマリアンヌが通れるように足で除けるような動作をしながら答えた。
「全員を殺すときに全部の部屋を見回ったので、敵の飲み水が大量に備蓄されていた場所も確認したので、その場所をムンガル将軍に伝えました」
水がある場所を知っているなら、殺した後にでもお前が水をまいてから帰ってこいよ
そう思って憤慨したのは我だけだろうか?
いや、我だけじゃないはずだ!
我の代わりに泥水を浴びた靴やドレスもそう言っている!
「水をまいたせいで、死体の臭いと血のにおい、薬品、油、その他諸々、、、もう我慢ならん臭いだ」
「マリアンヌ皇女殿下、この先が火元です」
そう言って止まるムンガルの足
すると目の前はグツグツ煮たっているような蒸気が部屋を埋め尽くしていた。
モヤっとした空気を手で払うムンガル
視界が徐々に晴れていく
「っ!?」
つかの間、マリアンヌは完全に放心したように動きを止めた。
なぜなら前方に広がっていたのは全てが真っ黒に焦げきった空間だったから
まるで炭で真っ黒になった釜の中のようだった
マリアンヌは煙から目を背けながら問う
「カーナ、何でここだけ”こんなに”燃えているのだ?」
そう問いかけるとカーナは思い出すように
「ああ…それですか、それは、ここで――」
× ×
「この剣で腕ごと切り落とすんじゃ」
ええええええええええええ!!!!!!???????
振り上げられる剣
もうダメだ!
殺るしかない!
そう覚悟を決めて甲冑の拳部分が強く握り締められた時であった
他4体の死体を連れて行った扉が勢いよく開かれた
「報告します!」
「どうした?」
「モルスが我が軍の物ではないナイフを握っていました!」
えっ?ナイフ?
私のか…?
「ナイフだと?」
老人とは別の声、カーナのすぐ隣の男がそう問い直した。
「はい!小型の果物ナイフのような長さなのですが、我が国では見たことも無い形状でおそらく敵の武器かと思われます!」
私が持つ数種類のナイフはマリアンヌ様にお願いして特注で作っていただいた品物。
そのどれもが特注であることからプルートと関連するような証拠は無いはず…
別にそんな急に報告するような内容でも無いと思うが、何はともあれこいつのおかげで助かった。
「確かにアトラス領では見ない形状だ、一度刺すと簡単には抜けないようになっているな」
「ここから敵の特定が出来るかもしれません!」
せいぜい無駄な努力に勤しめ
さて今の内にやれることをやっておこう、とカーナは今まで魔道具を固く握っていた手の力を緩める。
悔しいが仕方ない、魔道具はあとですぐに回収しよう
ここで腕を1本持っていかれたら魔道具をマリアンヌ様にお持ちできない
それが最悪の未来だ
そう思い、断腸の思いで魔道具から手を放した
しかしその時の放しかたが不味かった
魔道具への執念か、放すとき力が強すぎたのだ
――ガン!という投げつけられる強い音、そして薄いガラスが割れる音が聞こえた
その場にいた全員の身体が音に反応する。
「なんだ!?」
「魔道具!?」
「なんで!?さっきまで取れなかったのに!?」
見えはしないが、さっき放り投げた魔道具の錫杖が落ちる強い音
そしてその後に”小さなガラスのような物”がいくつか落ちて割れる音が聞こえた。
まぁ何かに当たっただけだろう
カーナは甲冑の中で余裕だった
しかし、安堵の息を漏らす間もなく更に続けて何かが崩れ落ちる音が連鎖するように耳に入って来た。
――ガシャン!
これに関しては大した音ではなかったと思う。
ただ『何か』が倒れただけ
その『何か』がこの状況では私には分からないが大したものではないだろう。
しかし老人の声は”たかが”レベルではないと大声を上げた。
「いかん!引火するぞ!!」
いんか?
「シーツに燃え移りました!」
シーツって、まさか…私の乗っているベッドにひいているコレ?
「一気に周りの薬品に燃え移りよった!」
燃え移った!?
「早く消せ!」
「消えません!」
消えないのか!?
「そこにある薬品に着火すると簡単には消えん、水を用意するんじゃ!」
カーナは甲冑の中で話についていけなかった。
しかし、1つだけ確かに感じたことがあった。
それは…
空気が尋常じゃないぐらい熱くなっているということであった
「もう無理です!」
「貯水槽から水を持って来い!今ならまだ間に合う!」
「ワシは先にこの奥にある部屋にいるやつを呼んでくる! この部屋より奥はその部屋しかない!」
「魔道具はどうしましょう!」
「それはワシが持っておく!」
「では俺たちはこのことを皆に伝えて消化作業に移ります!」
そうこうしてまた部屋から人はいなくなった。
1人残されたカーナは心から思いました
だから隠れてるのも忘れて声を張り上げた
「私はこのままか!?魔道具を持っていくなら私も連れて行ってくれ!!…誰かぁーー!!」
もちろん返答は無く、その代わりにカーナの心に訪れたのは命の危機を知らせる鼓動の五月蝿さであった。
「やばい、このままだと一酸化炭素中毒で死ぬ」
いや、それ以前にこんな蒸し風呂上だ、焼け死ぬ。
早くこの鉛から出ないと
私は起き上がろうとした
しかしその時、ある違和感を感じた
「くそっ!起き上がれない!」
継ぎ目のところ念入りにぶち壊した時に関節部分が一緒にイカレたようで、左足がピクリとも動かなかった。
「くそっ!くそっ!」
少し頑張ってみたが、結果は乗っているシーツに大量のシワが出来ただけであった。
「これは…本格的にまずいかも」
暗闇を押しのけるように迫ってくる炎の赤色
上しか見えないけど近くまで迫っているのが暑さと共に分かった、というか足の辺りは既にものすごく暑い。
まるで火あぶりの刑を受けているようだ。
「何とかしなければ!」
しかし焦って事態は好転しない
カーナは自身の心を落ち着かせるように大きく深呼吸をする
灼熱の空気が胃の中に流れ込んできた
「大丈夫、まだ私が蒸し焼きで死ぬまでの時間的余裕はある」
動く箇所を改めて確認
………
……
うん、左足以外は問題なく動く
起き上がることは難しいがまったく動けないわけではない
するとカーナは自由に動く右足を少し浮かせると振り子の感覚で左右に揺らした
「思った以上に可動域はあるな、これなら」
カーナは宙に浮かせた右足を勢いよく蹴りだすように左足を飛び越えさせた。
ドスン!という音とガシャン!という音が連動するように灼熱の部屋で鳴る
「っ!…痛いな」
私の思惑通り、鉛のように重い甲冑はベッドから落ちる形ではあるが、その場から離れることに成功した。
しかし思った以上にうまく事が運んだせいで、甲冑の身体は一回転こんどはうつ伏せという形になってしまった。
「今度は地面しか見えない…」
まだ天井だけのほうがマシだな
膝が、というか関節が少し痛めたようだが蒸し焼きからは逃れた。
カーナは背筋運動をする要領で上体を起こすと両手を地面に立てた
「さて、ここからどうしたものか?」
結論から言おう
私は甲冑からの脱出に成功した、しかし私には何の策も無かった。
つまり私が取った方法とは…
「やるしか…ないようだな」
私はここに連れてこられる前、外れないよう念入りに甲冑の繋ぎ目を壊した。
結果、甲冑は外れなくなった
つまりこの甲冑を外す方法はただ1つ
「クソッ!コレでもか!!」
壊す
そう、ただそれだけのこと
人間がたどり着く答えとは最終的にシンプルなものなのだ
「コレでもか!!コレでもか!!」
激しく燃え滾る部屋の一角でカーナの発狂するような声と甲冑の色んな部位を地面に打ち付けるガンガン!という音が響いた。
そして数十秒後には早くも最初の鉄の壊れる音、続いて外した甲冑を投げ捨てる音が
カーナは自分の皮膚を引き剥がしていくように、身体に密着したパーツを外していった。
そして…
「はぁはぁ、あと1個か」
ここまでおよそ2分と少しといったところだったが、顕になった顔からは大量の汗が流れ出ていた。
既に立ち上がった状態のカーナ、最後に残った例の壊れたレギンス(左足)部分を力ずくで引き剥がして投げ捨てると、虚ろな目で背後を振り返る。
「…火の海」
状態っだ。
「危なかった、あと数分遅かったら…」
安堵の息を吐くカーナの肩
力を抜いたその時、驚きの声が上がった
「誰じゃ!?おぬし!?」
視線を横にすると、今まさに開いたドアと少し腰の曲がった老人医師の姿
老人は続く言葉が見つからないほどに目を丸くしていた
そしてその手には無造作に握られた魔道具が
カーナの言葉は背後でメラメラと燃えたぎる炎とは真逆に涼しげだった
「初めましておじいさん。早速ですが、その魔道具はマリアンヌ様の物です、返してもらいますよ」
× ×
「…何から説明すればいいやら、、、ほんと、もう…紆余曲折あって更に色々あってこうなりました」
「またそれ!?」
マリアンヌは黒コゲになった幾人もの死体を見下ろす。
兵士とは違う鎧も着けていない線の細そうな老人らしき死体がクの字に折れ曲がって、やはり黒コゲで横たわっていた。
「まぁ何となくの予想はつくからいいけど、1つだけ聞いていいか?」
「はい」
「この状況を見ると火の海というのは分かったけど、そうなるとお前はどうやってこいつら全員殺したんだ?」
「はい、時間との勝負でした」
なんてシンプルな答えだ
マリアンヌとムンガルはその答えを聞いて
「「おっ、おう」」
マジかよ、と頷くことしか出来なかったそうな
「まぁ、何はともあれこちらの被害は0で、敵の本陣となっていたこの場所を押さえることが出来たのは僥倖」
「マリアンヌ様」
「ん?なんだ?」
「すいません、私の無計画な行動のせいでせっかくの策が水泡に帰してしまって」
「別によい、これはこれでよき結果だ」
「でもマリアンヌ様の神の如き策が」
「もうそこ掘り下げなくていいから」
神の如き策でも被害0とか無理だから!
「えっと、、、マリアンヌ様、それでここを本陣にするというお話は…」
水浸しになった地面に立つカーナは恐る恐る言った
もちろんマリアンヌの足元もべっちゃりと塗れている
マリアンヌは異臭に口元を抑えながら笑顔で答えた
「こんな場所に我が長居できるわけないだろ、ボケ♪」
最後まで読んでいただきありがとうございましたm(_ _ )m
おそらく今後の展開を考えるとコメディー要素を入れられるのは今回が最後になるかもしれないので、ちょっと頑張ってみましたww
少しでも楽しんで頂けたなら嬉しいです。
ではまた次回ヾ( ´ー`)ノ♪♪♪
そういえばチェインクロニクルVですが、急遽来週から「羽ばたく自由の鷹」イベントが実施するらしいです(^.^)
1年先をいっている本家のスマホ版を考えるとあと2ヵ月後ぐらいだと思っていたのでちょっと驚きです(◎o◎)!
さて、問題はどうするか…「清廉の泉騎士団長ミノア」これは強い(; ・`д・´)…ゴクリ。騎士ではおそらく最強クラスです、しかし私にはあと数ヵ月後に来る戦士の最強クラス「再興の海賊姫マレーナ」を引かなければいけないし、、、
数回だけ引こうかなwwいや、数回で7%を引き当てる自信が私には…無いし(>_<)当たらなかった時に残るのは減ったチケットの枚数を見ながら悔やむ私(ノ△・。) 悩みは尽きません(笑)




