16 深緑からの襲撃者
数ある作品の中からクリックして頂き、本当にありがとうございますm(_ _ )m
では、どうぞご覧ください。
―――2時間後のマリアンヌ本陣
……
…
「あの、、マリアンヌ皇女殿下…あれから結構立つんですけど、メイド帰って来ませんね」
気まずい空気が流れる中、ムンガルはそう口にした。
その言葉と何ともいえない視線に、マリアンヌもこれまた気まずそうに視線を明後日の方向へ向ける。
「え、ああ…そうね」
「えっと、私はどうしましょう」
「そ、そうね~、と、とりあえず待機かな」
「了解いたしました」
離れていくムンガルの後姿に我に対する疑念しか感じ取れない
「う~む、どうしたものか…」
そういえば今日は太陽がまぶしいな
「直、昼時だな」
ということは、またごはんのにおいが漂ってくるから離れないといけない
いかに下賎な食べ物とはいえ、この飢餓状態にも近い我の状態を考えると手が出ないとも考えられぬ。
あんな物を食べるぐらいなら死を選んだほうがマシだ
「空腹を紛らわすために少し昼寝でもするかな、夢の中にダ~イブ♪」
って、おい!
そんな現実逃避をしている場合ではないではないか!
これだけカーナが遅いのはさすがにおかしい!
まさか、カーナが負けたのか?
あの戦闘能力を持っていて負けるものなのか?
しかし相手が魔道具持ちだと考えると負けもありえる話か
「我はカーナを過大評価しすぎたのかもしれない」
どうやら今回、我はミスをしたようだ。
よし、カーナは死んだものとして考えよう。
そして念のために用意しておいた第2、第3の策に移行しよう。
そう考えて指示を出そうとムンガルのいる方向へ顔を向けた時であった
「っ!?」
マリアンヌは急な音に驚いたかのように目を丸くして顔の向きを変える
そして思考が追いついていない口で言った
「な…にが?」
森の奥、カーナが向かった方向から魔道具が1つこちらに向かってきている
それもすごい速度で
「カーナか?」
いや、カーナだとするとなぜ2時間も帰って来なかった?
帰って来なかったことに対する整合性がとれない、つまりは不自然すぎる、ということは向かってきているは敵か?
敵だとするとなぜ敵がこの場所を特定できた?
「いや、落ち着け、可能性は2つある」
マリアンヌは細くしなやかな指を少し噛んで無理やり脳に刺激を与える。
そして思考を廻らす
可能性①
カーナが尋問を受けて喋った。
しかしこの可能性は低い、というか0と言ってもいいだろう。
やつが我を売るとは考えづらい、そんなことをするぐらいなら舌を噛んで死を選ぶだろうからな。
可能性②
カーナを尋問したが喋らなかった、もしくは魔道具使いとの戦闘で死んだ。
その場合はもちろんカーナから情報は得られない。
だが敵は何らかの方法を用いてこの場所を特定できた。
この場合はどうやってというのが問題になるが
ムンガルは敵が我らの進軍に気付くとは考えられないと言っていた
ということは一体どうして…
「クソッ!考えが纏まらない!」
マリアンヌは迫ってくる脅威を睨みつけるように先の見えない森の奥に視線をやる。
「チッ! 思ったよりも早いな」
速度が速い、これが敵だとすると我が逃げる時間的余裕は無い
おそらく3分とかからんうちにこの場に到着する
とりあえずこの場をどうにかして凌がなければ、話はそれからだ
「ムンガル!至急森の中に防衛線を張れ!敵が来る!」
「なぜ敵がこちらの位置を把握できるのですか?」
「うるさい!今、説明している時間が無い!!ムンガル将軍、これは命令だ! マリアンヌ・ディ・ファンデシベル、プルート国・第一皇女として命じる。お前は直ちにこの場に陣を構えて、森から来る襲撃者を迎え撃つ準備をしろ、敵が来るタイミングは我が指示する」
血相を変えて命令するマリアンヌにムンガルもこれはただ事ではないと感じ取った。
背筋を正して周囲の兵士たちにも聞こえるように言った。
「了解しました、マリアンヌ皇女殿下!」
そしてさすが歴戦の将とその部隊と言うべきか、ムンガルの指示によってものの2分ほどでマリアンヌの前方に放物線上の陣が出来た。
前方には鋭利な有刺鉄線、その後ろには身体を隠すほどの盾を持つ兵を配置し、更に後ろには大量の弓兵。
「用意完了いたしました! これでいかなる敵が来ようが迎撃可能であります!」
「うむ、よくやった! ちなみに来るのはこちらの方向だ!」
マリアンヌはコンパスのように敵の来る方向を指差すと、念のため…というか身の安全を最優先するために少し…いや、かなりその場から離れた。
そして魔道具の反応が目の前に来ると、手で三角を作り、口の前に持ってきて最前線にいるムンガルに向かって言った。
「みなのものぉ~~! 来るぞ~!」
「全員、弓を構え!!」
弓の弦がいっぱいに引っ張ったピーンという音がこの場を支配する中、前方の森の中からガサガサと葉が揺れる音が
そして
そこからヌルッと手が出てきて、襲撃者は顔を出した
そして言った
「あっ、すいません。帰りが遅れてしまいました」
そのとぼけたような口ぶりを聞いた瞬間、緊張は安堵のようなものに変わった。
森から出てきたカーナは身体に付いた葉や泥をはたく様にして落とす
ムンガルは一斉射撃の号令をかけるために振り上げた腕をやれやれと下ろした
「ムンガルー!どうなった!?」
遠く彼方からマリアンヌの声が
ムンガルは答える
「メイドです!敵ではなく、メイドが帰って来ただけです!」
「えっ!?本当に!?」
臨時で引いた陣形の更に後ろ、本当の最後列まで下がっていたマリアンヌはそういってカーナの前まできた。
「遅かったなカーナ」
「すいません、少し予定外の事態が重なりまして」
「まぁよい、それで例の物は?」
「はい、ここに」
マリアンヌは表情をパッと明るくする。
「よくやった!カーナ!」
平然と簡単なお使いから帰ってきたかのように手渡される魔道具
自身の細腕には少し重量感のあるそれをマリアンヌはそれを青空広がる上空に掲げた
「皆の者、やったぞ! 我らは勝利のピースの1つ目を手に入れた!」
兵士全体から湧き出る歓声、それはいつもは無表情のムンガルですら実際に魔道具を見るや否や、言葉にならない驚きの表情だった。
「な?ムンガル、我の言ったとおりだっただろう」
「ハッ!少しでも疑ったこのムンガル、己を恥ずかしく思います!」
「その通りだムンガル君、全ては我の頭の中で完結しているのだよ。 そしてこれから起きる出来事も同様だ」
マリアンヌは自分の身長よりもはるかに高いムンガルの額を指でひとつき
「ムンガル将軍、よく頭に叩き込んでおけ。 これから我らは、そのあなぐらでこそこそ隠れている敵の本体を叩く、こちらに犠牲者はほとんど出ないほどの完全勝利、これはもはや決定事項だ。 見せてやろう、神の采配というものをな」
「えっ!?」
相対するマリアンヌとムンガルの後ろから放たれる内臓が口から出てきたような声
マリアンヌが振り返るとカーナがまるで池に石を投げ込まれた魚のような目をしていた
「『え!?』って何んだ?我の言葉に不満でもあるのか?」
「いや、別に何でも…ありません。申し訳ありません」
煮えきれない回答にマリアンヌは「?」と疑問符を浮かべる
しかし、まぁとりあえず魔道具は手に入れたのだし細かいことはいいかっ♪と話し方を軽くする。
「まぁよい、お前も疲れているだろうから今回は我の横で休んでいろ」
「マリアンヌ皇女殿下、敵が300ということですが、強襲部隊の編成はいかがしますか?」
そう問われるとマリアンヌは首を振ってムンガルに「変更は無い」と言い切った。
「予定通り800で叩く。残り200は敵兵の取り逃さぬように周囲を固める。 ムンガル、敵の本陣を奪い取りに行くぞ!」
「了解しました! では準備が整い次第、お声をおかけします」
「うむ」
「あの…何て言うか…その、、強襲の必要は…たぶん、、、無いかと…」
いつもにまして申し訳無さそうに、顔を背けるカーナ。
聞き取りにくいぐらいの小声だった
「は? その拠点には300人以上がいたんだろ?」
「はい、いました」
「では魔道具使いは排除したとしても300人が森の中にいるのは脅威ではないか」
「あ、まぁ、、そう、ですね…」
「我の計画上、その300は捨て置けない」
「で、でしょうね」
「だからそれを排除、本部ごといただく。これの何が不満だ」
「いえ、不満なんてとんでもない! ただ、私は必要ないかと」
質問の内容と噛み合わない回答。
というか、質問に回答が返ってきていない感じ
「マリアンヌ皇女殿下!森へ向かう精鋭部隊の準備、整いました!」
「うむ、今行く」
「待って!マリアンヌ様!!」
いい加減めんどくさいと言わんばかりに振り返るマリアンヌ
「なんだ?」
「あの…ご命令とは少し異なった結果というか…色々予定外がありまして…」
一体さっきから何が言いたいんだ、この女は?
「で、お前は何が言いたいんだ? 簡潔に述べろ」
「その…終わりました」
今度は簡潔すぎて言葉の意味がまったく分からない。
それは横にいたムンガルも同じだったようで、首を傾げる。
マリアンヌは腕を組んで眉を曇らせながら言った。
「何が終わったのだ?」
「戦闘が」
「「は???」」
我とムンガルの声が完全にシンクロした。
そしてちょっと時間が止まった
「えっと、何が?」
もう一度聞いてみた
やつはやり過ぎを恥じるように視線を落としながら答えた
「せ、戦闘が終わりました。 300人以上のアトラス兵、全員私が殺してしまいました」
その発言にマリアンヌとムンガルは絶句した。
そして今度はマリアンヌとムンガルが池に石…いや、巨大な岩を放り込まれた魚のように目が見開くのであった。
その後、あたったことをありのまま記そうと思う。
最後まで閲覧ありがとうございました(^_^.)
前回、ああいった終わり方をすることで今回のお話が引き立つかな~と思ってやってみましたが、少しでも皆様が楽しんでもらえたのならば幸いです(^^)
もうそろそろクリスマスですね(´・_・`)
カップルがいちゃつく季節です
………
……
キーーー( `°罒°)!!
ではまた!




