13 カーナvs魔道具使い(4)
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今回、大変ペンが進みました_〆(`・ω´・)・゜・
ではどうぞ、ご覧くださいませ。
焼けた木材のコゲた匂いが辺り一帯に漂う。
煙はこの辺り一帯を真っ白に塗りつぶしていた。
倒壊した物見やぐらが燃えているのが一番の原因だろう。
そのような、まるで雲の中にいるような錯覚を起こしてしまうほど煙の中でカーナはまさに今隣で燃えている木材の間横で、暑さからではない、緊張からかいた冷や汗を拭う。
「さすがに危なかった」
何とか避けたカーナ。
今、踏んでいるガラスのかけらをそっと拾い上げる。
「事前にガラスを割ってなかったら、死んでたかもな」
カーナは事前に割っていた窓の中にダイブしてあの1撃を避けていた。
しゃがむ時間的余裕は無かった。
足に力を込めてその場から離脱も不可能。
だから背後の窓の中に飛び込むしかなかったのだが、、、事前にどんぐりの投擲によって綺麗に割っていなかったら窓ガラスをブチ破れたか疑問だった。
手に持っていたガラスのかけらをポイっと投げ捨てる。
そしてチッ、と舌打ちをした。
「ムンガルめ」
マリアンヌ様からは直線上に真っ直ぐ光線を放つとしか聞いてなかったぞ。
ムンガルのクソ野郎め、報告を怠りやがったな。
帰ったら殺してやる。
「にしても視界が悪いな」
煙がなかなか晴れない。
これはおそらく周りの森に煙がせき止められているからだろう。
好機
カーナの目や耳が煙の中で周囲の状態を窺う、そして同時に体の上体を屈め、両手、両足を地面に付けながら、まるで飢えた動物のように進む。
そしてカーナは白い煙が充満する空間で耳だけを頼りに飛び出した。
標的にしたのは
「なにっ!?」
部下の誰でもなく、今回の標的でもある魔道具使いだった。
敵であるカーナが部下を狙うとも取れる宣言したことから、まさか自分には来ないだろうと思っていたシェリー、反応が遅れる。
一気に魔道具使いとの距離を詰めて懐に飛び込むカーナ
そしてカーナの鋼鉄のムチのような蹴りが顔面を捉えた。
一点を振りぬくような衝撃が魔道具使いシェリーを襲う。
「グハッ!」
ブーツに仕込んだ鉛と魔道具使いの被っていたフルフェイスのヘルムが反響して鳴り響く。
不意の強烈な一撃にシェリーはフラフラと体勢を崩して膝を地につけた。
「ぐぬぅぅ」
しかし自分の急所となる首だけは、その鋼鉄の腕を交差するようにしてがっちりと守る。
つまり結果としては魔道具使いシェリーを一瞬、怯ませただけだった。
だがそれはカーナの予想通りの結果。
一瞬だが完全にシェリーの動きを止めて、自分へのマークを外させる。
カーナにとってこの結果は最善であり最良
怯んだ瞬間、カーナはシェリーを横目に踵を返して再び煙の中へ。
そして、ちょうどそこに上官の身を案じてやって来た部下
えぐる様に心臓に突き刺さる無慈悲なナイフ
兵士はうめき声を上げる間もなく絶命した。
その場にバタリと倒れる身体
カーナはその傍らで大きく声を荒げた。
「おい、聞こえているか?魔道具使い。3人目だ。 最後に残った若い兵士!後はお前だけだぞ!さぁ~どうする!尻尾を巻いて逃げるか!」
「ふざけんな!こっちに来い!俺が仇を取ってやる!!」
間髪いれずにそう返答があった。
カーナは声のする方に顔を向けると口元を緩ませた。
”見~つけた”
「モルス!今すぐこっちに来い!そいつの狙いはお前だ!」
煙の中で叫ばれる声
しかしその声に返答は無い
慌てて周囲に目を凝らすシェリー
しかし周囲の煙の中に人影は見えない
魔道具使いシェリーは覚悟を決めるようにごくりと息を飲んだ。
そして一歩、二歩と後ずさり背後の木まで行くと、その木を背に錫杖を煙に向かって構える。
「次、姿を現したとき、女、それがお前の最後だ」
手に持った錫杖は大きな音と光を発しながら、煙から出てくる敵に備える。
落ち着いてきた煙の中で耳鳴りのするような音が強く鳴り響く
1分、2分
とても長く感じられた。
そして3分に差し掛かった、まさに時、煙の端が不自然に揺れた。
シェリーは強く言い放つ。
「死ね!! なっ!?」
しかしシェリーの目の前に現れたのは自分の部下、最後に残った若い兵士であった。
咄嗟に力を緩める、そのことによって発射寸前まで収束していた熱原体が、まるで風船の空気が抜けるかのように散っていった。
「シェ…リぃ、、さ、ん」
「大丈夫か!?」
ふらつく足で寄りかかってくる若い兵士モルス
シェリーは抱きかかえるように錫杖を持ったまま部下を受け止めた。
「大丈夫か!?モルス!」
「………」
返事が無い、再び問いかける。
「モルス!」
「う…しろ」
その擦れゆく言葉に視線をずらしたシェリーの目に映ったのは…
事切れる寸前の部下の兵士
の
その背中から伸びている腕だった。
そして部下の肩越しに姿を現した鋭く血に飢えた瞳
首元が熱い
「えっ?」
シェリーが視線を落とすとナイフが自分の首に突き刺さっていた。
「っ!?」
「ほら、早死にしたろ」
そう言うとカーナは部下の男の影から出てきた
強く握られたナイフは喉元をグリグリとえぐる。
「何も守ることの出来なかった感想はどう?これがお前の理想とする騎士道の現実だ」
「ぁぁぁ」
「犬死をあの世で嘆いてろ」
言い終わると最後の生き血をすすり終えたナイフを引き抜いた。
温かい血液がドバドバと喉の元から流れ落ちる。
血だらけで倒れこんだシェリーの傍らで、道端の石ころを見下ろすようにカーナは言う。
「お前はあの場で部下ごと私を打ち抜くべきだった、そうすれが勝てたかもしれないのに…。まぁ殺し合いにおいて、たらればを言っても仕方ないか」
「死に、たく、ない」
「ん?」
声のする方を見ると、先ほど壁に使った兵士が背中から血を流しながら動かない手足を無理やり動かすように地面を這っていた。
口からは何度も”死にたくない”と呟きながら
カーナはすぐ横に立つと表情を一切変えることなく被っていたフードを脱いだ。
「これが騎士だと?」
「死にた…く、な…、俺…は、、、まだ…にい」
――グシャッ!!!
「さてっ!後はマリアンヌ様のご命令どおり死体を処理して、魔道具を持ち帰れば終了ッと♪」
鼻歌交じり完全に晴れた周囲を見回すと大きく息を吸う。
「うん、空気がうまい♪ちょっと予定が崩れたけれど、暗殺終了♪ んっ?…えっ!?」
その瞬間ドクッと心臓が跳ね上がる
カーナの耳は遠く離れた何かの音を拾い取った
そしてそのまま鼓動が加速していく
「えっ!?う、うそ、嘘だ!?」
生まれたての雛が親を探すように顔の向きを右往左往させるカーナ。
「ど、ど、ど、ど、どどどど、どうしようっ!」
いや、気のせいかもしれない。
勝利の余韻に酔いしれて、聞こえもしない幻聴が聞こえたのかも
「そうだ!気のせいだ!」
蛙のように突っ伏すと、耳をぴったりと地面に付ける
全神経を耳に集約させるように聞き入る。
明らかにこちらに向かって歩いて来る人間がいる。
数は1、2、3、4567891011…
「…間違いない。ざっと100人オーバーの人数がこちらに向かっている。終わった」
もちろん勝てない数じゃない。
でもマリアンヌ様は「暗殺」とおっしゃられた。
これはバレるなということだ
ということは、1人でも討ち漏らせばマリアンヌ様の計画に支障をきたすという意味だろう…。
全員を逃がさずにこの場で殺すというのはさすがに難しい。
全員が森の中に逃走していくと仮定すると、もう…不可能
「そうだ!今から死体を全て片付けよう!」
いや、無理だ、時間がない。
「移動だけさせて、とりあえず隠せばバレないようにすれば」
いや、カーナ!マリアンヌ様の言葉を思い出せ!
死体をいくら片付けたとしても戦闘が行われた形跡自体が問題なんだ!
カーナは周囲を見回す
なぎ倒されるように倒壊した物見やぐら
周囲の大木は軒並み倒れ
足元に広がる血溜り
そして5体の死体
その中心でカーナは言った。
「無理だ、この現状を見て戦闘が行われなかったと考えるやつなんてこの世にいない」
ど、どうすれば――
× ×
「あのメイドは大丈夫でしょうか?」
「ん?カーナのことか? 大丈夫だろ」
「マリアンヌ様のお言葉を疑うわけではないのですが…やはり魔道具使いはいないのでは?」
「完全に疑ってるよな」
「いえ、このムンガルそのようなことは思っておりません!現にあのメイドが帰ってきたら、すぐに森の中にいるという別部隊に攻撃を仕掛ける部隊は編成し終わりました!」
「我の目には、しぶしぶやっているようにしか見えなかったけどな。 まぁ、母上ですら信じなかったから今さら信じてくれとは言わんがな…ん?」
さっきまで強く感じた魔道具の反応が一気に弱くなった。
これは戦闘が終わったということだろう。
本陣のテントから一歩出ると、魔道具がある森の方角を見つめるマリアンヌ。
薄っすらと煙が見えた。
「マリアンヌ皇女殿下?」
胡乱な瞳を向けるムンガルに、マリアンヌは身体をほぐすように背をぐーと伸ばして言った。
「もう終わったんじゃないかなあ」
閲覧ありがとうございました(*- -)(*_ _)ペコリ
今回で「カーナvs魔道具使い」は終わりになりますが、いかがでしたか?
4つ全てのお話で次回が気になるように作ってみたのですが、少しでもそれが成功していれば書き手としては嬉しい限りです!(^^)!
それではまた(∩´∀`∩)ハ♪




