09 マリアンヌの能力 ※挿絵あり
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皆様にとってこのワンクリックは小さい物かもしれませんが、私にとっては偉大なワンクリックです。と昔の偉いアームストロング的な私は言ったそうな(笑)
それはそうと今回ついにマリアンヌの能力が明かされます。
能力の意外性、出すタイミング、もの凄く考えました(。-`ω´-)
物語り上、マリアンヌの能力は強すぎるわけにもいかないし、かと言って主人公らしい何か他の人間とは異なる能力は欲しかったので(>_<)
タイミングに関してはこういったサイトの場合は「主人公の能力は早く出した方が集客が見込める」などということを聞いたのですが、そうすると能力だけで成り上がるみたいになって嫌だったし(>_<)
だから自分の納得いく形で能力の紹介が出来てよかったです。
これもひとえにブックマークや評価、感想をして頂いた方のおかげです<(_ _*)>
では、ここまで付いてきて頂いた方々に贈る今回の物語「09 マリアンヌの能力」どうぞご覧ください。
本陣のテントにムンガルたちが行くとそこにカーナの姿は無く、椅子に座って地図を見ながら今後について思考をめぐらせているマリアンヌの姿だけであった。
手には細やかな指示を出す為、地図を指し示す為の差し棒を握り、考え込むように銀線の髪の間を縫うようにこめかみをその細く長い指で押し付けながら地図の1枚に目を伏せる。
「ムンガル、以下、爵位を持つ3名ただいま参りました」
「来たか」
「はい、遅れて申し訳ございません!」
「よい、早く座れ」
ムンガルたちは真ん中には木製の円卓の上に腰掛ける。
目の前には所狭しと周辺の地図や資料が広げられていた。
「さて、まずなのだが…」
これからの策を命令するためにマリアンヌが地図から顔を上げると、ムンガルが割り込むように口を開いた。
「マリアンヌ様、私の部下が申し訳ありませんでした。先ほどのマリアンヌ様のお言葉に皆、反省しておりました」
「へっ?」
謝られる心当たりが無かったのでマリアンヌは戸惑った。
だって腹が減ってボロカス言っただけなのだから。
「そ、そうか、それは何よりだ。我の気持ちが伝わってよかったよ」
何の気持ちかは知らんが
伝わったならそれでいいや
「それでは作戦伝えたいのだが、その前に…」
マリアンヌは一度頭の中を整理するように息を吐く
そして徐に立ち上がるとテントの外へ
「マリアンヌ様?」
「ちょっと待ってろ」
外に出るとマリアンヌはゆっくりと視線を一度ダイアル城塞の方へ向けた。
当然だがここからは鬱蒼とした木々によってその雄大な姿は見ることは出来ない。
しかしマリアンヌはそんなことはお構いなしと言わんばかりにただその方向を見続けた。
そして首を少し傾げて、次に何かに視線を引っ張られるように左へ顔を向けると、またしばらく森の奥を見続ける。
「うん、間違いないな」
そう呟くと再びテントに戻ってきた。
「待たせたな」
「いえ、問題ありません。何をなさっていたのですか?」
「まぁ、いろいろだ」
椅子に座ると視線を再び地図へと落として、道を挟んだ森の一箇所を差し棒で叩いた。
「今いる森を挟んだ道の逆側の森の中、正確に言うと『この』場所には何がある?」
その問いに考え込むムンガル、横から爵位を持った騎士が言った。
「ただの深い森です。数年前、我が軍が調査した時は魔獣の姿もなくこれといって目立つ物は何もありませんでした」
「数年前か…」
確かムンガルは昨夜こう言っていたな。”4千の兵は急に背後から強襲を受けた”と
自分の中にある感覚と事前情報を擦り合わせながら地図を見て思考する。
先ほどの大穴、この森に入って来たプルートの4000の兵を取り囲んで倒そうと思うのであれば、ある程度の戦力を事前に森の中に潜ませておく必要がある。
そのために必要となるのはある程度の大きさの本陣
この森の中にはそれらしい本陣となる場所、野営した後も無い。
「ということは、この辺り」
マリアンヌは地図にペンを持った手を伸ばすと、反対側の森の中に薄く『?』と記載した。
「あの…このハテナマークは?」
「お前達は気にしなくてよいことだ。 よし!カーナ、準備は出来たな?」
主人の問い掛けに反応するように開かれる本陣のテント
「はい、もちろんですマリアンヌ様」
入って来たカーナ、いつもと違いメイド服ではなかった。
体全体を覆い隠すような黒装束のような上下の服、動きやすそうだがよく目を凝らすと特殊な繊維が何重にも織り込まれているのが分かる。
手には黒い手袋がピシッと張り付き、体中あちこちに貼り付けられるようにナイフが仕込まれ、足は動きやすそうなゴツく黒いブーツ、ただしつま先とかかと部分には分厚い鉛が貼り付けてられている。
目立つ赤い髪はフードで隠され、俯くと表情すら窺えない。
「着心地はどうだ?まだ試作品だが、お前の要望は一応全て入っているはずだが」
「若干普通の服よりも違和感がありますが、いつものメイド服に比べたら何倍も動きやすいです」
「それはなによりだ。それで地図は頭に入っているか?」
「もちろんです」
「よろしい」
そして次の瞬間その場にいた誰もが驚くことを言い放った。
「ここから北西に4キロほどいった先、道を挟んだ森の奥深くに”魔道具が1つある”。おそらく形状は前回の戦で使われた錫杖形、行って回収して来い」
「了解」
なぜ分かるのかと目を丸くして息を呑むムンガルと爵位を持つ騎士達。
一方マリアンヌに不安げな表情は一切見受けられない
それどころかまるで決められた公式に数字を当てはめていくかのように、淡々と指示を出していく。
「たぶん一緒に使い手もいるであろうから、そいつも殺しておけ。ムンガルによると使い手の背格好は、おそらく30代、声の質から男、中肉中背、ムンガルと同じく顔まで隠れているフルアーマーを着込んでいるそうだ」
「分かりました」
「魔道具使いが単独ではなく、そこが敵の別働隊の本陣…つまり100人以上の規模の物だった場合、見つからぬように忍び込んで魔道具使いだけを暗殺しろ、そして魔道具を持ち帰って来い。すぐに準備していたムンガル率いる別働隊で包囲して潰す」
「私が全て殺さなくてもよいのですか?」
「さすがにお前でも全部は無理だろ。それよりダイアル城塞にいる人間に応援を要請されるほうが厄介だ、言わなくても分かっているだろうが殺した死体は全て隠しておけよ」
「はい、それはもちろんですが、本当に魔道具使いだけでよいのですか?」
「ああ、それだけで十分だ。あ、ちなみにたとえお前であろうが魔道具を持たぬ人間が魔道具持ちに正面からぶつかるのは分が悪い、特に今回の魔道具と使い手は相性がいい組み合わせの可能性もある、暗殺が失敗したら無理せずに帰って来い。すぐに控えていたこちらの部隊で数の力でかたをつける」
「了解しました」
即答するカーナにマリアンヌは顔を上げることなく資料と地図を見詰めたまま
「では行け」
「はい」
呆気にとられて黙っていたムンガルたち
今にも出て行きそうなカーナを呼び止めるようにマリアンヌに口を開く。
「えっ!このメイド1人に行かせるのですか?」
驚きの声と共に上がる疑問。
マリアンヌはごく自然に首を立てに振る
「ああ」
「森には少なからず敵がいる可能性があります」
だから行かすのだが?
「戦闘になる可能性もあります」
あ~そういうことね。
女1人で何が出来るのか?そう言いたいわけか。
「お前はこのカーナのことを知らんのか?」
「なんとなくの…うわさは聞いておりますが、、、、その」
言いよどむムンガルの表情を見てフッと笑いがこぼれた。
いい噂ではないのであろうな。
「その感じだと戦闘能力に関してはそんなには知らんようだな。この女は結構強いぞ」
「恐れながら申し上げます! もし本当にマリアンヌ様の言う通り魔道具使いがいたのならば、単純な戦闘能力だけで戦いは決まりません。そもそも魔道具を持つ人間は戦闘に慣れた人物が多い、元々の戦闘能力プラス魔道具の戦闘能力も足されます、ちょっと腕が立つ程度では簡単には倒せません」
ちょっと腕が立つ程度…か。
たしかにカーナが実際に戦っている所を見た人間はそうは多くないからな。
その考えも頷けるといえば頷けるな
「しかしお前は勝てるのだろう?」
「私は…それは、まぁ、、多くの経験もありますので」
「最初は誰でも経験など無いだろう」
「いや、そういう問題ではなく」
「ムンガル将軍。あなたは私の戦闘能力に疑問を持っておられるようですが、もしそうなら証明してみせましょうか?この場で」
露骨にムッとするカーナにマリアンヌは言う。
「やめろ、カーナ。誰がそんな事をしろと命じた?」
「も、申し訳ありません。でも今のはムンガル将軍がっ!」
叱責混じりの言葉にカーナは少し早口で弁明したが、マリアンヌは呆れたように首を横に振った。
「もうよいからさっさと行け、時間が惜しい。お前の無駄口のせいで作戦が無に帰す可能性すらあるのだぞ」
その言葉に黙ったまま頭を下げるカーナ
そして怒りのこもった目でムンガルを睨むと、そのまま本陣のテントを後にした。
それを確認すると空気を入れ替えるようにマリアンヌは手を「パンッ!」と合わせる。
「さて!それではムンガル卿、カーナが帰ってきた後、森の中にいる別働隊を駆逐する部隊編成をどうしようか? 君の意見を聞こうじゃないか」
「いえ、その前に説明をお願いしたい」
このままうやむやにしたかったマリアンヌだったが、やはりというか、ムンガルが許さなかった。
問い詰めるように机に手を置いて身を乗り出す。
「敵の別働隊がいる可能性は理解できます。しかし!なぜ魔道具までもがそこにあると断言できるのですか!?」
「いる可能性は高いだろ?今の我らと同じように陣をひいているかも」
「お言葉ですが、私なら魔道具使いは城塞の中で防衛に徹しさせます。しかも我らに一度勝利している時点で臨時の本陣など捨てるはすです」
臨時なら、な。
だが数年間を要して徐々に準備した本陣ならどうだろうか?
はたしてアトラス軍は捨てれるかな?
そもそもいくら副官を裏切らせることに成功したとしても、ムンガル要する5千の兵と戦うのに準備しすぎてしすぎということは無い。
副官を裏切らせてプルートの兵を森へとおびき出し、数年を要して完成した本陣から大量の兵で取り囲んであの大穴に叩き落すほうが安全で効率的だ。
「ではムンガル将軍、もしも君を裏切った副官が今回の我らの進行を想定していたとしたらどうだね?」
「そ、それは…たしかに。しかし!セオリーを考えればすぐにダイアル城塞の奪還があるとは誰も考えません。今回の奪還作戦は皇帝陛下のお心を知らない限りは予想などつきようもありません!」
「プルートの兵ならば現皇帝の性格ぐらい熟知しているのでは?そして攻め込んでくることも容易に想像できると思うがね。少なくともお前の話を聞く限り、お前の元副官はそれぐらい考え付きそうな感じだが」
そう、もしも我がその副官ならプルート皇帝の性格を考慮してそのまま森の中の本陣に魔道具使いと戦力を残しつつ、のこのことやって来たプルートの軍勢を背後の森から挟撃して、大穴に気を取られている間に火でも放つね、そして残りのプルート軍をダイアル城塞からの逆落としにて叩く。
そう考えるとあの死体の山がそのままだった理由は頷けるしな
「ダイアル城塞には魔道具は1つも無い」
「なぜ分かるのですか?」
「なぜと言われてもなぁ…分かるのだよ、我には。としか言えないんだよ」
「ですから、なぜですか?」
マリアンヌは居心地悪そうに眉を顰める。
「このことを言っても信じた人間がいないので言うだけ無駄だと思うがな」
「言って頂かないと、このムンガルには分かりません」
「どうしても?」
しょっぱそうな顔をしながらため息をつき、頬に手を当てるマリアンヌ
仏頂面のムンガルは頑なに詰め寄った。
「はい!」
巨体のせいか圧迫感もハンパない
仕方ない、と諦めついでにため息を漏らす
そして観念する様に手に持っていた木製の差し棒を机に置くと、こう口にした。
「昔から、我には聞こえるのだよ」
「…何がですか?」
その困惑した問いにマリアンヌはすっと目を細めて、いつもより低い声で言った。
「魔道具の声が」
閲覧ありがとうございましたヾ(○´□`○)ノ
次回からはかなりアグレッシブになっていきますが、よかったら次回も読んで頂けるとうれしいです(^^♪




