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魔女と呼ばれた少女 -少女は死体の山で1人笑う-  作者: ひとりぼっちの桜
【第4章】 初陣!三日月峠の戦い
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08 敗走の代償 ※挿絵あり

クリックありがとうございます!ヾ(〃^∇^)ノ♪


今回、挿絵というか、地図を入れています。

簡易的な物ですがマリアンヌたちがどういう地図を見ているか、そして文章を読む際の助けになれば幸いです(^^♪

あっ!もちろん、マリアンヌたちが見ているのはもっとちゃんとしたやつですよ(笑)


ではどうぞご覧ください(^_-)-☆


 ダイアル城塞を確認後、マリアンヌの軍は森の中に本陣を設置するべく移動していた。

挿絵(By みてみん)

 その最中さいちゅうのことだった。

 最前列を進む兵士の規則正しく動いていた足がピタリと止まった。


「な、なんだ、これは?」


 兵士達の足元に現れた巨大な穴に隊列の進行は完全に停止する。

 それは落とし穴というにはあまりにも大きすぎる、まるで崖と崖の間に出来た溝のようなものだった。

 兵士の1人が覗き込むと中は闇のように深く、一切何も見えなかった。

 兵士はたいまつに火をつけて穴の奥を照らす

 視界ギリギリに何かがいる。


「何かが、います」


 それが何なのか分からない兵士はそうぼやかして言うしかなかった。

 だが次の瞬間、穴から凄い勢いで影が飛び出してきた。

 影はそのまま上空を滑走する。

 皆が見上げるとそれはカラスだった。


「カラスかよ」


 そんなしりもちをつく覗き込んでいた兵士を冷やかすような言葉が飛び交う中、当の本人は恥ずかしがるわけでもなく、反論するわけでもなくただ、ジッと穴の中を見ていた。

 そして


「う、、うわぁぁああ!!!!!」


 兵士が叫び声を上げた。

 先ほどカラスに驚いた拍子にたいまつを穴の中に落とした、それによって見えるようになった大穴の中。

 その光景を見たからだ。


 大穴の中には1千や2千では収集がつかない量の死体の山が折り重なるようにして息絶えていた。

 死体の間からは数千の先端が鋭く尖った刃がギロリとこちらを睨んでいる。

 そして兵士達は皆甲冑を着けていたが、それを物ともしない刃は易々と体を貫き、無残にも死体には獣やカラスがたかっていた。


 兵士達の喉がごくりと鳴る

 目の前に広がっていたのは、、、


 敗走という行動を選択した後の『残酷』という名の現実だった。


 血が染み込むことによって赤黒く腐食した刃の上でこれでもかと横たわるおびただしい死体の山

 血が滞留たいりゅうするように充満する鼻をつんざくにお

 死体に群がる耳障りなハエの羽音

 ぐちゅぐちゅと音を鳴らして鎧の隙間をえぐる様にクチバシを突っ込むカラス

 二度と出れないであろう翼を持たぬ獰猛どうもうな獣はそのことを悲観ひかんするわけでもなく、一心不乱に死体の肉を食いちぎる。

 既に頭が獣に喰われて、首から上が無いものなんてざらだ。


 兵士たちは口に手をやって、吐きたくなる衝動を抑える。

 そして同時に自分達が撤退した後の光景に目を背けるように気持ちを押し込んだ。


 あの時は撤退するのに精一杯だった

 自分達があの劣勢で残ったところでどうにもならなかった

 そう言い訳するように兵士達は黙り込む


 祖国のため、愛する家族の為に命を燃やして戦い抜いた男達の成れの果て。


 穴の中から逃げようとして穴を登ろうとした後が無いのは、ほとんどの兵士が痛みを感じる前に息絶えた証拠だろう。

 それほどに下に設置された刃の数はまるで剣山けんざんのようにビッシリと敷き詰められていた。

 しかしある意味それは幸運だったのかもしれない、なぜならこの場で1人生き残ってしまったらそれは地獄だったろうから…。


 皆、何を言っていいのか分からず、ただ息を呑む。

 その緊迫感のある空間に近づいてくる感心する声


「ほぅ~よくまぁ、こんな物を作ったもんだ。なぁムンガル?」

「おそらく作るのに最低でも半年は要したかと思います」

「そうだろうな、ダイアル城塞にお前達がいたことを考えると徐々に掘っていったんだろうな~。ご苦労なこった」


 どうやって4千もの兵を殺したのかと考えていたが落とし穴とは、また古典的な方法を


 マリアンヌも大穴を覗き込もうとすると、慌てたカーナが必死になってそれを止める。


「マリアンヌ様、危ないです!」

「大丈夫、大丈夫。それでムンガル、なぜこの穴の中には馬の死骸が1つも無いのだ?」

「副官が4千の兵を連れて出た時、今回は必要ないと言ったので全てダイアル城塞に」

「なるほど」


 では馬も全て向こうの手にあるのか。


「いよいよもって今回は正面きって戦いたくはないものだ。に、しても…」


 凄い臭いだな。

 事前に刃の下にでも油を入れるなりして火でも投げ入れればよかったものを…

 いや、周りが木々に囲まれている森の中でいくら深い穴の中とはいえ、火を使うのは躊躇ためらわれたのか?


「油の入れる量さえ間違わなければいらん心配だろうが」


 マリアンヌの眉間に深いシワが刻まれる。

 そして鼻と口をハンカチで押さえながら吐き捨てるように言った。


「この穴の中に油を入れて燃やせ」


 部隊で爵位を持つ、3人の騎士。

 その中の1人がマリアンヌの前でひざまずいた。


「マリアンヌ様、どうかこいつらを弔う時間をください。部隊は違えど共に戦った戦友なのです、そして亡骸を国に持ち帰る許可を」

「!?」


 その騎士の発言に言葉を失ったマリアンヌ。

 空腹もどこかにいったかのように、心の奥底からマグマのようなグツグツとした怒りがマリアンヌの細くしなやかな指を震えさせる。


「ふ、、、、ふざけるな」

「はい?」

「ふざけるな!と言ったんだ!!!」


 兵士達を吹き飛ばすような怒号。

 怒鳴り声は津波のように、発言した騎士のみならず、同じことを考えていた兵士全員に襲い掛かった。

 あまりの勢いに驚いて飛び立つカラス、森に姿を隠す獣達、当然ながら言われた当人である兵士達も体が凍りついたように動きを止める。

 先ほどまでは悪臭にしかめっ面だったマリアンヌの表情が完全に怒りに変わっていた。


「何が弔いだ!寝言は寝て言え!!」


 憤怒の形相で騎士を睨みつけるマリアンヌ。


「そんなことに何の意味がある!?死んだ人間が蘇るのか!?あぁ~!言ってみろ!!蘇んのかよ!!」


 弔いだと!?

 そんな事をしてたら1日は過ぎるだろうが!

 お前らはわれを餓死させたいのか!?


「そして死体を持ち帰るだと!?損傷の激しい死体を持ち帰って誰が喜ぶか!!」


 腐食ふしょくした肉だぞ!?

 この距離でこのにおい!

 これと共に地獄の帰り道を帰るなど考えられん!


「お前達は何をしにこの場に戻ってきた!? 死んだ兵士達の同情か? それもと贖罪しょくざいか? 違うだろ!? 弔うなどという行為は自分が逃げ帰った罪悪感をやわらげたいだけだろうが! そんなことをしている内に戦況が悪化したらどうするつもりだ!!どう責任を取るつもりだ!!」


 早く帰りたい、早く帰りたい、早く帰りたい


「そろそろ自覚しろ!お前達のせいで戦で負けたんだ!4000の兵を殺したのはムンガル、そしてお前達に他ならぬ!ここで我の計画を中断して更に死体を増やしたいのか!?」


 ごはん食べたい、ごはん食べたい、ごはん食べたい


「分かったらすぐにこれらのゴミを燃やせ!従わぬ者は全て首を跳ねるぞ!!」


 あまりの空腹で、

 いや、怒りで最後には思っていたことをぶちまけるマリアンヌ。


「はぁはぁはぁ」


 誰も言い返せなかった。

 それは相手が皇女殿下だからという理由ではない

 皆が心に持っていた罪悪感、それをマリアンヌに言い当てられたからに他ならなかった。


 罵倒するだけ罵倒して肩で息をするマリアンヌにムンガルは頭を下げる。


「申し訳ありませんマリアンヌ様、部下の失言は全てこのムンガルの責でございます。 しかしながら燃やすのはアトラスの軍勢に我らの場所を知らせる可能性がございます」


 そのムンガルの言葉にハッと我に返ったマリアンヌ。

 まだ怒りが引ききらない顔で舌打ちを混ぜながら小さく頷いた


「いいだろう、これらの後処理はお前に任せる。ただし、時間をかける事は許さん、砂でも土でも何でもいいから被せて埋めておけ」

「御意」

われは先に本陣用のテントに行っておくから、お前も爵位を持つ3名の部下をつれて来い」

「ハッ!」


 マリアンヌはイライラしながら目を尖らせて本陣方向に歩いていくのであった。


閲覧ありがとうございました(*- -)(*_ _)ペコリ


今回の簡易的な地図は、今後必要に応じてプラス書き足していこうと思っています(∩´∀`)∩


それではまたヾ( ´ー`)ノ

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