07 決戦前夜、明かされる真実 ※挿絵あり
クリックありがとうございます(*- -)(*_ _)ペコリ
すいません今回はちょっと長いです(>_<)最初は切ろうかと思ったのですけど流れ上、切るのは嫌だったのでちょっと長いですがそのままアップします。
あっ、ちなみに今回は挿絵を入れていてます。
下手な絵ですが生暖かい目で見て頂けるとうれしいです(^^♪
それではどうぞ~ごらんください。
「山道を突っ切ったことによって予定より早く進んだ結果、明日の午前中には三日月峠に到着するとのことです」
その言葉を聞いた時はホッと胸を撫で下ろして安堵した。
これでこの耐え難かった試練が終わるのだと、しかしここで大変なことに気付いた。
”行きが地獄なら帰りも地獄なのでは?”
絶望したね。
分かっていたけど
そう、、、
我の試練はまだ折り返し地点に達したに過ぎなかったのだ。
「それは何より、では明日は早いのか?」
「はい、早朝にはここを出発したいとの旨がありました」
「わかった。それでいいとムンガルに伝えておけ」
3回目の野営、っていうか野宿。
野営を野宿と言うことに対して絶対に譲れん。
だって野宿じゃん!!
またも空腹の1日が過ぎ、3日目の夜中に差しかかろうとしている時刻。
腹が減りすぎて寝れない。
胃を締め付けるような感覚にグルグルと泣き喚く腹
「眩暈がする、それに風呂にも入っていないせいでベタベタする」
風呂のことを気付いたのは初日の寝る前であった。
しかし、トイレの一件に比べたらまだ心が乱されることは無かった。
慣れたのかな?この劣悪な環境に…
「でもやっぱり気持ち悪い、、、腹も減ったし…」
気を紛らわすべくマリアンヌは馬車の外に出た。
するともう春先だというのに、体を通過していく夜風は少し肌寒かった。
そして、その夜風を受けながら力なく首だけの力を活用して上空を見上げると、真っ暗な闇の中には無数の星がこれでもかと満ちていた。
「何度見ても綺麗なものだな」
3回目の光景だと言うのに、上空を見上げるだけで一瞬空腹を忘れることが出来た。
でも一瞬だった、つまりはマリアンヌにとって無数の星もその程度の価値だということだろう。
「マリアンヌ様、どちらに?」
馬車の中から聞こえるカーナの声に、マリアンヌはさらりと流れる髪を手で撫でるように押さえながら答えた。
「ちょっと自分探し…かな」
カーナは馬車の中で「自分探しですか?」と復唱した後、よかれと思って言った。
「鏡、持って来ましょうか?」
こいつに冗談は通じないと確信した瞬間だった。
× ×
虚ろなまでにぼんやりとした瞳
足元がぐらぐらするような感覚にとらわれながらも、夢遊病者のように足を進める。
カーナも後ろから心配そうについていく。
焚き火のパチパチという音だけが響いていた。
周囲を見回すとポツポツとたいまつの炎が闇の中で揺れていた。
また少し歩く
すると兵士達の中で聞き覚えのある野太い声にマリアンヌの耳がピクリと反応した。
「この声はムンガルか?」
近づいていくと焚き火の周りを取り囲むように座っている兵士達
その声に目を細めると見慣れた鎧と巨体が目に入った
マリアンヌは思った。
これが噂に聞く無我の境地か!?
ではなく、腹が減りすぎて五感が鋭くなっていると
「マリアンヌ様!?」
急に目の前に現れたマリアンヌの姿に驚く兵士達
襟を正すように今まで持っていた酒を地面に置き、ビシッと背筋を伸ばした。
背景の闇に同化するような漆黒のドレス
透明感のある肌に月の光に反射するマリアンヌにしか持ち得ない銀色の髪がサラサラと夜風になびく。
少し虚ろな瞳も、女を絶っている男達の性欲を刺激する
だがマリアンヌのすぐ後ろに控えるカーナの睨みつけるような視線を受けると瞬時に我に返ったように立ち上がって頭を下げた。
「マリアンヌ様、ご苦労様です!」
そしてムンガルも兵士達と同じようにその巨体で立ち上がると頭を下げた。
「こんな夜遅くにどうかされたのですか?」
「え?…ああ、ちょっと夜風に当たりたくてな」
あ~ダメだ。
腹が減りすぎて会話の反応が少し遅れている。
「まぁ散歩だよ、邪魔して悪かったな。ではな」
マリアンヌがそうめんどくさそうに返答してこの場から離れようとすると野太い声がそれを呼び止めた。
「1つお聞きしてもよいですか?」
マリアンヌは減った腹を落ち着かせるように大きく息を吸って吐き出す
そして振り向くことなく背中越しに答えた。
「何だ?」
「マリアンヌ様はどうして私どもを助けようとしてくださっているのですか?」
その瞬間マリアンヌの眼差しに光が戻った。
そしてしっかりとムンガルに向き直る
「質問の意味が分からないな。理由は既に答えたはずだ」
マリアンヌは考える。
もしかしたらこいつは我の考えているよりも頭の回転が速いのかもと、そして本当にそうなら決断力もあり、部下からも慕われる人物、今後使えると…
「ここ3日お近くでご一緒させていただきましたが、マリアンヌ様が出陣前におっしゃられたお言葉が本当なのかこのムンガル疑問を持ったので、無礼ながらご質問させていただきました」
実に拍子抜けで残念な回答だった。
マリアンヌは残念そうに少し視線を落とした。
あ~そういうことね
しかし納得するマリアンヌの背後でワナワナとカーナの顔が険しくなっていく
そして凄い剣幕で叱り付けるように言った。
「ムンガル卿!あなたはマリアンヌ様の慈悲によって汚名返上の機会が与えられたにも関わらず何ですか!その言い方は!? しかもマリアンヌ様のお言葉を疑うなんて、恥を知りなさい!!」
「失礼なのは重々承知しております!しかしこのムンガル、一軍を率いている身としては聞かずにはおれぬのです!」
「失礼だと分かっていて、あなたは!」
「カーナ、よい。少し下がれ」
今にも殴りかかっていきそうなカーナ
マリアンヌはそんなカーナの体を手で軽く払いのけると、正面にいるムンガルに対した。
「ムンガル卿、今、お前は一軍を率いている身としては、と言った。それは一軍を率いている過程において”嘘”などがあったら士気に関わり采配を振るえない、そういう意味かね?」
横から鬼の形相で睨み付けるカーナ
しかしムンガルはその視線に臆することなく答えた。
「はい!」
「…その言葉、忘れるなよ」
そこまで言うとマリアンヌは言葉をやめた。
そして周りの兵士達を目で確認すると、ムンガルに向こうで話そうと親指で伝える。
ムンガルは黙って頷いた。
「カーナ、お前は先に馬車に戻れ」
「えっ!しかしそうなるともしもの時のマリアンヌ様の護衛が」
マリアンヌはその値踏みするような瞳でムンガルを流し見る
「その時はお前が身を挺して我を守ってくれるのであろう? なぁ、歴戦の将、ムンガル卿」
「もちろんです!マリアンヌ様!」
「ということだ、分かったなカーナ?」
納得できないのだろう、表情全体からしぶしぶという雰囲気を前面に押し出しながら、しかし主の言いつけを享受するためにカーナは頷いて「了解しました」とだけ言った。
「ムンガル卿、くれぐれもマリアンヌ様に傷1つ無きように」
この言葉と共に見送られるために下げられた頭。
しかし前髪の隙間から覗き見れる瞳は言っていた
”マリアンヌ様に傷1つでもつけてみろ、お前を殺す”
と
「ここまで来たらよいだろう」
人通りが無い場所まで移動するとマリアンヌはそう言った。
とあるテントの裏
おそらくこのテントの中には数多くの兵士達が寝ているのだろう。
微かに届くたいまつの明りに顔を綻ばせるマリアンヌ。
「で、用件は何だったかな?」
「マリアンヌ様の目的を今一度お聞きしたい」
「ああ、そうか。だがその前に我からも1つ聞きたいことがあるのだがよいかな?」
「え、ああ、もちろんです」
「ふふ、まぁ大した事じゃないからそう肩に力を入れずに答えてくれ」
真夜中の野営地の一角で2人以外誰もいない。
そして向かい合う両者
その静かな空気を破ったのはマリアンヌの一言であった。
「ダイアル城塞を失った本当の理由はなんだね?」
「っ!?」
その瞬間マリアンヌの雰囲気がガラッと変わった。
乾いた声に生ぬるい蛇が纏わりつくような視線。
ムンガルの背筋にゾクッと冷たい悪寒のようなものが走った。
ムンガルは急に砂漠のように乾いた唇を潤す様にひと舐めする。
「本当も何も、あの場で言ったとおりの理由です」
「既にこの場に父、皇帝の姿は無いぞ」
その言葉に一瞬だが動きが硬直して口ごもるムンガル。
マリアンヌはその反応に目を細めると更に続ける
「聞いたぞお前の噂『鉄壁のムンガル』そう呼ばれているらしいな。城塞防衛においては負け無しで、しかも魔道具の素養こそ無かったが、その武勇によって魔道具使いを何人も沈めてきたとか…。 そのようなお前がいかに強力な魔道具を用いられたとしても簡単に敗走するとはどうしても思えないのだよ」
「敵将の使う魔道具が今までの物よりも強く」
「それならなおのことではないか、強力な魔道具になればなるほど使用者の体力を大きく削る、そう何発も多用は出来ない、でもそんなことは我よりもお前のほうがよく知っているだろう? それにお前に聞いた今回の魔道具の特徴、形は僧侶などが持つ錫杖で、頭部の丸い錫部分から高熱を帯びた光線のようなものを撃ち出す。 たしかに強力そうだが4千の兵を殺せるほどとは思えないなぁ、錫杖の大きさを人が持てる程度だと仮定すると頭部の錫部分から撃ち出される光線の範囲もたかがしれている、いいとこ一発につき殺せるのは10人ぐらいだろ、一騎当千とは程遠い。 ということはムンガル君、誤差である3990人を君はどうやって失ったのかな? そして…」
マリアンヌの首は大きく傾げる
「なぜ君の部下たちは”全員無事だった”のかな?」
この後訪れたのは長い沈黙だった。
夜風が鳴く「ヒュー」という冷ややかな音、遠くにぼんやりと揺れるたいまつの火だけの暗闇。
沈黙が何よりも恐かった
いや、本当に恐かったのは沈黙することによって、本格的に目を離すことが出来なくなったマリアンヌの瞳だったのかもしれない。
「あ、あの…」
躊躇うように口を開くムンガル
それを見てさらに一押し
「どうした?新しい嘘でも思いついたか?それなら次は出来る限り面白いものにしてくれ、くだらない嘘だとすぐに見抜いてしまって時間つぶしにすらならないからな。それに…」
マリアンヌは組んだ両手に顎を乗せて、うっとりとまるでムンガルの心を弄ぶように微笑んだ。
「すぐにバレてしまう嘘なんかついたら、軍の士気に影響して采配を振るえないかもしれないぞ。 そうだろ”嘘が大嫌いな”ムンガル卿」
必死に目を逸らそうとするムンガル、しかしマリアンヌの絡みつくような瞳は決してそれを許さなかった。
今ほどムンガルはこの分厚い鎧を着けていてよかったと思った事は無い。
なぜならこの分厚い鎧が無かったら、この年端も行かない少女の視線にとっくの昔に射殺されていた、そう錯覚を起こすほどの威圧感がこの少女にあったからだ。
それはまるで皇帝陛下の映し鏡のように…
この方からは逃げられない
そう思った
だから汗ばんだ手をギュッと握った。
「申し訳ございません」
「なぜ謝る?」
「あなた様に黙っていたことがあるのです」
「ほぅ~それはよくないな~、事と場合によっては死罪だが…今回は許してやろう。我は心優しいからな」
さぁ~言えと手をこまねくマリアンヌ。
「その前に、1つお約束していただきたき事があります」
「ん?」
「今からお話することはここだけのお話としていただきたい」
少し考えたマリアンヌ。
軽く頷いた。
「まぁ、いいだろう」
ムンガルはありがとうございますと頭を下げると、振り返るようにあの日、あの敗戦のことを話し始めた。
「我々は当初、アトラス軍はダイアル城塞の東から進行してくると考えていました」
「アトラス領が東側だから自然な考えだな」
「はい、ダイアル城塞のある三日月峠はその三日月のような形状から崖を登ることは難しく、城塞攻略にはまず川を渡った後、迂回した後、三日月峠の西方面から登るしかない。だから我らは5千の兵全てをダイアル城塞の中に収容して、登ってきた敵を逆落としにて撃退しようと考えました」
実に面白みの無い策だとこ。
セオリー通り、教科書にでも載ってそうな策だが、それが通用するからこそダイアル城塞は難攻不落といったところか。
「しかし想定よりも多い敵が押し寄せてくるという情報が寄せられ、作戦を変更しました」
「予想よりも多いとは?」
「3万の兵と魔道具使い5名です」
その珍回答に華奢な肩を震わして笑うマリアンヌ。
「実際は3千に魔道具使い1名、えらくひらきがある情報だな。で、お前達は結果、どういう策を講じたのだ?」
「私の部隊1千は城塞内から逆落とし、皇帝陛下にお貸しいただいた残りの4千は、敵が登ってくる背後の森から挟み撃ちという策です」
意味が分からない。
確かに挟み撃ち、奇襲といったものは魔道具には有効な戦法だがダイアル城塞からの逆落としに比べたら必勝とは程遠い。
それにそんな事をしたら地の利が生かせない、そもそも下に味方がいる状態でどうやって逆落としをやるんだ?
もはや笑うしかない策だな。
「結果は大敗でした。いえ、戦にもならなかった。アトラス軍が来る前に4千の兵を潜ませた森には既にアトラス軍が取り囲むように控えていてそのまま4千の兵を失いました」
ん?
と言うことは、背後の森には既に敵兵が控えていたのか
「話を聞く限りその情報に踊らされなければ勝てていたな」
「…はい」
全体を通して歯に衣着せぬような、ぼかされた言葉が目立つ
マリアンヌは違和感の正体を口に出す。
「裏切り者がいたんだろ?」
その言葉にムンガルの声に自責の念が帯びていく。
「はい」
こぶしを強く握るムンガル。
その行動は、まるで部下の裏切りを見抜けなった自分の曇った目を、そして上官としての不甲斐無さを戒めているようだった。
「しかも裏切ったその人物は5千もの兵を自由に動かせて、大将のお前にまでありえない策を進言できる人間」
「おっしゃる通りです」
なるほどな。
これでやっと繋がった
4千もの兵を失った理由が…
そして裏切った人間は
「軍師を兼務していた副官かな?」
「さすがです、マリアンヌ皇女殿下。そこまでお気づきになられるとは、、、、」
「まぁ最初からおかしいと思ってたからな」
「えっ!?さ、最初ですか?」
「正確に言うと城を出たとき」
呆気に取られ、目を大きくするムンガル。
マリアンヌは続ける。
「一番最初にアレ?と思ったはこの部隊にはいなければならない人間がいなかった時だ」
「いなければいけない人間?」
「副官と軍師。通常こういった戦を行う場合、大将、そして補佐する副官、それに策を練る軍師、最低でも3つの役職が必要になる。まぁ、軍師は兼務できるが、副官はそうはいかない。にも関わらず今の今までお前以外、副官も軍師も我は会ってすらいない。こんなバカなことありえない」
記憶を掘り起こすように矛盾を1つ1つ突いていく。
これがマリアンヌの推理する手順。
ムンガルは硬直する表情のまま聞き入る。
「お前が軍師を兼務することは出来ても副官の空席がそのままなのは部隊としてのそもそも体を成していない。最初は討ち死んだのかと思ったが特にお前も何も言わなかった。死亡したわけでもなく、この大事な戦にいない理由、移動中に考えたのだが裏切り以外思いつかなかった。 まぁ、おいそれとあの場で確証の持てないことを言うべきでは無かったから、今の今まで言わなかっただけだよ」
まるで見てきたかのように的確に当ててくる言葉の数々
ムンガルはただ驚くことしか出来なかった。
「さすが…です。たったそれだけのことでそこまで見抜かれるとは…」
「お褒めの言葉、素直に喜んでおこう。それで?その先は?まだ話は終わっていないであろう?最後、どうなった?4千の兵を失ってもまだ1千も残っているではないか」
早く言えと急かすマリアンヌ
少し肌寒くなった両手を抱え込みながら言った。
「やつは、、、私の元副官は4千のと共に城塞を出て、自分以外の全てのプルート兵を殺した後、峠を登ってきて城砦の門の前で我らにこう言いました」
『俺は元であろうが仲間は殺せない。ムンガル将軍、既に勝敗は決した、すぐに撤退してくれ、そうすればこれ以上無駄な血は流れない』と
嘘だな
とりあえずその場を収めるために言った方便といった所か。
おそらく副官はムンガルの傍で戦場を駆けた経験から、たとえ1千であろうがムンガルの城塞防衛能力を恐れたのであろう。
なんと言っても『鉄壁のムンガル』と言われるほどだものな。
国にさえ帰してしまえば、放っておいてもムンガルの処刑は決まる。
戦わずして勝つ、自分の国の皇帝の性格もよく熟知している素晴らしい策略だ。
「相手には魔道具使いがいること、そしてこちらの全ての情報を握っている副官、ほとんど無傷の相手戦力、それらを考えると、どう頑張っても1千の兵では城塞の防衛は不可能です。むざむざ勝機の無い戦いに部下を投じる事ができませんでした。城塞を放棄、そして撤退を選択しました」
「ふ~ん、なるほどね。なかなかに頭のキレる副官だこと」
そのずる賢さ、用意周到さ、狡猾さ、口のうまさ
本当に我の右腕に欲しいぐらいだ。
だが裏切ったという許されざる前科、そしてムンガルという将軍と、共に戦場を駆け抜けてきた1千人の兵士、天秤にかけて副官を取る道理も理由も我には無い。
やはり当初の予定通り敵兵は全員死んでもらおう。
速やかに、そして盛大に、、、。
「フフフ」
マリアンヌの色々な意味を含んだような笑い。
ムンガルが不思議に思い、問いかける。
「マリアンヌ様?」
「いや、すまない。少し考え事をしていた。まぁでもお前の、いや、この軍の今抱えている状況はだいたい把握したよ。でもそれならなぜ皇帝にそのことを言わなかった?」
「どのような事態があろうが結果が全てです、そのような言い訳を騎士として、プルートに住まう男として言うことなど出来ませんでした。それに現皇帝は裏切り者を極端に嫌います、決して許すことはしません」
「まぁ、そうだろうな」
ただし皇族は例外らしいがな。
「10年ほど前、我が軍に裏切り者が出ました。その時、皇帝は裏切り者が出た部隊を全て処刑しました」
「その出来事に照らし合わせるのであれば、お前達の部隊は全て処刑だな。まぁ大国プルートにとって1千程度の損失、大したことではないだろうし、今後の裏切り者を抑止できる効果を考えれば右大臣も左大臣も止めぬであろうしな」
「私どもは誇り高きプルートの騎士です、誰1人として死など恐れてはいません。しかしそれは戦場で祖国、そして皇帝陛下のために死ぬのであらばという意味です。1人の裏切り者によって全ての兵が汚名をきさせられ、死ぬなど耐えがたき事なのです!」
力強くそう言い切るムンガル
マリアンヌは思った。
それは違うよムンガル
死の意味に違いなど無い
「馬鹿だと思われますか?」
「騎士という立場でありながら仕える主人の命よりも部下の命を優先する行動。愚かしいな」
「申し開きもありません、罪ならばこの身で」
「しかし、馬鹿だとは思わない」
きっぱりと言い切った。
目を丸く驚きの顔を浮かべるムンガル。
マリアンヌは言う
「お前にとってはそれが何よりも大事だった、それだけのことであろう?」
そう口にするとマリアンヌはしっかりとムンガルの目を見て更に続ける。
「なら尚のこと、皇帝に謁見したあの場で弁明しろ、嘘でもいいから生き延びる手立てを講じろ、男だから言い訳をしないなどというくだらぬプライドを捨てろ、お前が責任を取って死んでしまったら、国を裏切ってまで守ろうとした部下達はどうなる?死刑は免れても迫害を受ける、結果的に自ら死を選ぶものすら出るやもしれない、もし本当に大事なら生きて守りぬけ、死んで守れる物などこの世には1つとて無いのだから」
寂しそうな瞳で視線を落とすマリアンヌ
2度と振り返らないと心に決めた記憶から蘇るようにチラつく人影。
気持ちを切り替えるように一度頭を振ってすぐにかき消した。
そして視線をムンガルに再び戻した時にはさっきまでの表情に戻っていた
「お前は我の目的を聞いたな? しかし君が本当に心配しているのは自分の目的である部下達の安全の確保と、自分の副官が反逆者となったことを国に知られる前に速やかにその副官を抹殺すること。つまりは自分の目的の本懐を遂げられるかどうか、その一点だ」
「そ、そんなことは」
「無いと言うか?国まで裏切って皇帝に歯向かったのに?副官の反逆という大事を我に今の今まで説明別もしなかったのに? 大方、我の目を盗んで副官を殺すつもりだったのだろう?」
「それは…」
「別に責めてはいないよ、それこそ全うな人間の思考回路だ、そして今、君の心にある不安の正体は我の目的などでなく、『本当に目の前のこの女は城塞を攻略できるのか?』というものだ。不安になった要因はこの3日間の我の言動に行動、だからこそ本当のお前の問いに答えるのであれば、”我は勝機の無い戦いは決してしない”、だ。 安心しろ、勝たせてやるよ、お前はただお前の目的の為に死力を尽くせばよい。明日の出発は早いのであろう?お前も早く寝ろ、お・や・す・み」
マリアンヌは最後に「ではな、くれぐれも大切な物が何なのか見誤るなよ」と言うと、ムンガルの肩をポンと叩いてクスクスと艶やかな笑みを浮かべながら馬車のある方、闇の中に消えていった。
「は、はい。お休みなさいませ、マリアンヌ皇女殿下」
額を流れる嫌な汗を出しながらムンガルはそう答えた、そしてマリアンヌの姿が見えなくなるとやっと金縛りから開放されたかのように体中の力を抜くことが出来た。
「全てを見透かされるような目だった、、、」
そして重々しい声を絞り出す。
「私はあの方を頼ってよかったのだろうか? いや、このムンガルに唯一手を差し伸べてくれたお方だ、ついて行こう。それがたとえ皆が言う通り、本当に”魔女”だったとしても」
そして物語は次の日を迎える。
まだ朝露が残った木々の隙間から見えてたのは、目的のダイアル城塞。
ついにマリアンヌの初陣が今、始まろうとしていた。
閲覧ありがとうございましたm(_ _"m)ペコリ
生まれて初めて「城塞」を書いてみました。φ(^∇^〃)
私の中にある、なんとなくのイメージを伝えるために書いたのですが、お見苦しくなければ幸いです(^^)




