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魔女と呼ばれた少女 -少女は死体の山で1人笑う-  作者: ひとりぼっちの桜
【第9章】 英雄の必要条件

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01 左大臣の独り言

クリックありがとうございます♪久しぶりにアップしたら小説家になろうの仕様がめっちゃ変わってて慌てふためいたひとりぼっちの桜ですw何これ(`・ω・´)??いつから変わったの??

前回のアップで章終わったから1カ月くらい休んでて、2月に入って「また書きたくなってきたぜ!(; ・`д・´)φ」ってなったから、どういう方向性の章にするかを明確に決めて、ストック40ページ書いて「よし!アップしよう!」と思ったら仕様が変わってたのw完全に浦島太郎状態の私ww今回のお話がちゃんとアップ出来ているか不安過ぎる(笑)



さて今回のお話ですが、新章の開幕でございます(^^♪今回は序盤から一気に加速するよw因みに文字数は原稿用紙12ページ、8千文字オーバー(^v^)…40ページストック作ってもこれではダメな気がするw

では今回のお話もどうぞお楽しみくださいませ~♪



 由緒正しいプルートの王城。

 マリアンヌとその義理の兄弟達が出払った王城。

 その1室、執務室と呼ばれる1室にて、机や椅子、床には毛足の長い絨毯、本棚に至るまで超一流の品で揃えられた空間。

 そんな一流の椅子に1人座っているのはこの超大国プルートで皇帝の次の地位に位置する左大臣と呼ばれる男であった。


「ふむ」


 お腹に脂肪を蓄え、人をよいしょする事を極めた太鼓持ちの権化ごんげである右大臣の出世コースと違い、正当な実力が認められて大臣にまで上り詰めた男。

 胸に付いた数多くの勲章が今までの彼の功績を物語っている。

 超大国プルートにて、その政治を一手に引き受けている国のかなめである彼。

 年の頃は右大臣と同じくらいの中年、50過ぎだというのに右大臣と違いスラッとした体型で大人の色気が漂う彼は今、本来の冷静沈着な彼らしくない狐につままれたような表情で手元の文を読んでいた。


「これは私の見間違いか?」


 低い声、目頭を押さえて、先ほど帰って来た伝書鳩の文をもう一度読む。

 今度は時間をかけて一字一句しっかりと。

 しかし。


 ………やはり見間違いじゃない。


 左大臣は不可解なものを見るような目で文から目を離すと小首を傾ける。


「理解の外側の出来事だぞ、とても信じられない事態だ。マリアンヌ皇女殿下が紛争を1週間で解決したと書いてある」


 ありえるのか?

 今までこの国において懸案事項だったサンティエールの紛争問題。

 それをあの温室育ちのお姫様がたった1週間で解決した?

 己の目を疑いたくなる報告だ。


「いや、既にダイアル城塞を短期間で取り戻すという偉業を既に成しているからマリアンヌ皇女殿下を”ただの温室育ちのお姫様”と形容するには無理があるか。だが、それにしてもこの報告は…」


 軍事大国プルート。

 大陸のほぼ半分の領土を持つ超大国。

 情報の価値はどの国よりも知っている。

 それはイコール優秀な密偵が領土中…いや、最大の敵国であるアトラスにさえ居る事を意味している。


 その情報網はもちろんマリアンヌが今回訪問したサンティエールという片田舎にも及ぶ。

 つまり日夜、国内外から正確な情報が左大臣の元に入ってくるわけだ。

 それほど優秀なプルートの密偵が寄こした今回の報告文。



『マリアンヌ皇女殿下は1週間で紛争を解決させた。これは疑いようもない事実である。ただし方法は不明。どの村人達に聞いても皆、詳細については口をつぐむ。現地におもむいた時に既に数日経過していた事もあり、あったのは酷い異臭の死体の山、焼け焦げたナント村の家々であった。マリアンヌ皇女殿下はナント村の200名全員を虐殺して家々を焼いた模様。また領主であるヤン・メイザールはマリアンヌ皇女殿下在住中に反乱軍によって殺害され、マリアンヌ皇女殿下の立会いの下、新領主であるフイレルン・トルトン元軍師が着任した。生き残っているオート村、トゥール村の住人達は以前の内乱が嘘のように新領主フイレルンに従っている。どうやらマリアンヌ皇女殿下は2つの村人達に金を渡した模様。マリアンヌ皇女殿下は反乱軍を全て殺したと言っている、残った村人達も口々にそう言っている。だが本当にそうなのか?という疑問が残る。事前の調査ではこの3つの村と領主達及びプルートの間には相当な確執があり、3つの村人の誰が反乱軍でもおかしくはなかった、それは敵国アトラスと通じで居る噂すらあったほどに…。それがナント村の全員が反乱軍で他の村人は無罪だったとは到底信じられない。また領主を変えた程度で、金を渡された程度で、これまでの恨みを全て忘れて全員がプルートに忠誠を誓うのも些か疑問がある。だがしかし、村人達が口にする忠誠の言葉に嘘があるようにも思えない。最後になるが、話を聞いた新領主及び屋敷の住人達、村人たち全てに至るまで”マリアンヌ”という言葉を聞いたら酷く怯えたような、恐れているような、そんな印象も受けた。以上、報告を終了する』



 不必要な挨拶など無い。

 ぎっしりと書かれた文はただ密偵が見聞きした事だけが書かれていた。


「紛争解決の方法は不明か」


 左大臣は念のために文の端を見る。

 そこには暗号のようなものが小さく書かれていた。


「間違いなく私が放った密偵が書いた文だ。他の者が書いた偽造ではない」


 口の中が異様にかわいたので高級な香り漂う紅茶を一口飲む。


「それにしても死体の山か…年頃の少女のする所業とはとても思えないな」


 しかし同時にあの皇女殿下ならありえると左大臣は思う。


 小さい頃から蝶よ花よともてはやされてきた麗しき銀髪の皇女。

 それがアンジェラ皇女との1件で完全に別物へと変化した。


「あの目、あの纏った雰囲気、若き日の皇帝陛下を見ているようだ」


 見た人を有無も言わさず畏怖いふさせ、従わせる。

 あの独特の雰囲気。

 あれは遺伝か何かなのか?

 こんなふうにあのお姫様が成長するなんて思いもしなかった。

 小さい時は周りが見えない独裁者のわがままお姫様だと思っていたが。


「領主の変更、以前までのマリアンヌ皇女殿下なら領主の変更なんてしなかった、感心・そんな考えすら持たなかったはずだ。人が成長するというのは視野が広がるという事か」


 ただ…それにしても前任者のヤン・メイザールの王印を持って、マリアンヌ・ディ・ファンデシベル皇女殿下の立会いの下、新領主を軍師フイレルンを任命ね。


「結果から見ればマリアンヌ皇女殿下の采配は正しかったわけだ、フイレルンとやらが新しい領主になって村人達はそれを認めているのだから。だが、そもそも領主を任命した程度であの紛争がどうにかなるとは到底思えない」


 お姫様が勝手に決めた新領主をなぜ村人達が認めたのか?

 それが分からない。

 フイレルンというやからも領主側の人間だぞ。

 そもそも、


「村人達は全員、口をつぐんで分からずじまいなのはなぜだ?」


 皇女殿下が脅している?

 いや、紛争とは根が深い問題だ。

 恨みつらみが何重にも重なって起こる。

 特にサンティエールは飢餓で苦しむ村人達、私腹を肥やす領主という構図の最悪の状態だった。

 そんな状態で大国から姫が来ようものなら村人達の気持ちを逆なでするだろう。しかも金なんぞ渡そうものなら…。


「更に民衆が怒り狂う未来しか想像できない」


 ならば力で、暴力で押さえつけた?

 権力者ならばよく取る愚かな行動。


「マリアンヌ皇女殿下には”あの赤髪の女”が居る」


 もう、20年以上前になるが。

 あの時代を知っている人間なら誰でも知っている。


 赤い髪と目。

 狂気の戦闘民族とまで言われた戦闘狂の化け物たち。

 カーナと呼ばれているメイド。

 目こそ普通だが、御前試合で見たあの動き、あの化け物たちと無関係とは思えない。


「それに暗殺部隊だったか?あの黒い奴らも相当な使い手だろうし、あいつ等を使えば辺境の村人達なんて造作もなく虐殺できるだろう」


 虐殺は出来る。

 そう難しい事では無いだろう。

 だが、それがなぜ残った村人達がプルートに忠誠を尽くすなどという結果になる?


 いくつもの国をその支配下に置いてきたプルートの舵取りを長年してきた経験から断言できる。


 少なくとも力だけで紛争を押さえつけたりなんてしたら、こちらの密偵の問い掛けに村人達がプルートへの忠誠なんぞ誓う言葉なんて言うわけがない。

 更に憎しみの連鎖が生まれるだけ。


「こちらの密偵が現地民にバレて嘘を言っている可能性はあるだろうか?」


 いや、こちらの密偵は現地民に疑われない人間を送っている。

 今回で言えば行商人だ。

 1ヶ月に1度ほど訪れる行商人。

 長年に及ぶ諜報活動で現地民の信頼は得ているはず。

 にも関わらず、全員が憎いであろうプルートに忠誠を誓う?


 ありえない。

 ありえな過ぎる。


 金や暴力で民衆を押さえつけられるのは期間は一時的。

 マリアンヌ皇女殿下がサンティエールを離れてから密偵は現地民に話を聞いた。

 その結果がプルートへの忠誠なのだ。


「嘘ではない…本心からの忠誠」


 私自身、サンティエールの紛争はもう手が付けられないとさじを投げた。

 領主と村人達、修復不可能な人間関係の末路に出来る事なんて何も無い。

 と、同時に考えを変えた。


 紛争を解決できないなら、あえて状況を悪化させてアトラスとの戦争に持ち込めばいいのでは?と。

 幸い、密偵の報告でアトラスと領主が接触しているという事は分かっていた。


 どうせ辺境の地だ。

 アトラス側も本気では落しに来まい。

 大した大戦にはならんだろう。

 ちょっとした小競り合いだ。

 そして、その方が勝とうが負けようがいらないあの土地を処理できる。


「実に私らしい建設的な判断だ。100点と言ってもいい」


 あの皇帝陛下も私の案に賛同していた。

 大袈裟だと思うぐらい喜ばれていたのは若干違和感を持ったが。

 だがあの地の処理方法としてはこれ以上の結果は無い。


 と、思っていたのだが。


「それがまさか1週間で紛争解決…」


 どの軍師も匙を投げた。

 滅ぼす方法は思いつくが平和的な解決は不可能。

 私自身も解決出来ないと踏んでいた案件を解決。


 1週間で。。


「信じ難い。まるで3つの村人たち全員を洗脳して善と悪に別けて悪だけ罰して終わらせたような…マリアンヌ皇女殿下は人々の心を操り、意のままに操る事ができ」


 小さく呟いた左大臣は口を押さえた。

 と、同時に椅子の肘掛に置いていた肘を左大臣は思わず離して腕をさするが、その身に覆う寒気はねっとりと纏わり付いて離れなかった。


「何を世迷言よまいごとを言っているんだ私は。不可能な事柄があったからといって洗脳なんてありえない」


 いや、そもそも、


「不可能…か」


 グシャグシャと綺麗に整えられた白髪混じりの黒髪を指でかき回し、左大臣は天井を見上げる。


”不可能”


 そんな言葉が自然と出てくるなんて自分も歳をとったものだ。

 そんな事を思い、軽く笑う。


「私は不可能や常識なんてものを置き去りにして全てを叶えてきた人間を間近で30年近く見てきたのにな」


 そう…かつてはこの国と敵対する国に私は居た。

 もう30年以上前の話だが。

 現皇帝、グローリー・ディ・ファンデシベル。

 彼は不可能を全て可能にしてきた。


 欲しい物は全てに入れる。

 物だろうが、人だろうが、国だろうが。

 当時20そこそこだった私すら使えると思ったら敵国を滅ぼしてでも引き抜き重用ちょうようする。

 敵を重用、懐が広いという意味では聞こえは良いが、その一方、邪魔者は味方であろうが全て排除する。

 それが例え血を別けた兄弟であろうが容赦なく。


 そう言えば今の皇女殿下に思想が似ているな。


 だからこそ娘であるマリアンヌ皇女殿下も不可能を可能にするとでもいうのか?


「と、言う事はこれも皇族という血の成せる卸業みわざか」


 別に左大臣は大国プルートでは9割以上が入信している皇神教の敬虔けいけんな信者というわけではない。

 1割の少数派だ。

 でもだからこそ30年ほど前、この国に初めて来た時にはそのシステムに心底驚いた。


 皇神教こうしんきょう


 皇族を神と崇拝する宗教。

 この国の9割以上が信者。

 この国では皇族に対して反逆行為はおそらく起こらないだろう。


 メイトル・ディ・ファンデシベル。

 数百年前のプルートの初代皇帝。

 当時はまだ小国であったであろうプルートを建国した時に、彼は宗教を作った。


「宗教とは人を盲目にさせる。今日は良い事があった、皇族の方々のおかげ。今日は悪い事があった、皇族の方々への信仰が足らないからだ」


 こんなイカれたシステムが数百年前に作られた。

 そしてそれは時が経つほどに強固に土地に根付いた。

 結果として大国プルートは超軍事国家であると同時に超宗教国家になった。


 建国時、初代皇帝はもしかしたら自分の血を絶やさないようにするためだけの施策しさくだったのかもしれないが、結果としてこの国では皇族に対しての反乱なんて起きない。

 徴兵、皇族の人の為に死ぬのは名誉な事であり税に対しての文句も起こらない。

 金持ち連中による脱税もほぼ起こらない。

 そんな事をしたら国民がその人物を袋叩きにするだろう。

 皇族の幸福こそ全て、皇族は神、皇族に敵対する事は絶対悪。


「考えれば考えるほど恐ろしいシステムだ。初代皇帝がここまで予想していたというのなら、その血が不可能を可能にすると言われると納得せざるおえないかもな」


 皇族を過度に崇拝するつもりも無い。

 だからこそ客観的にこの国の形態を見たとき、その悪魔性が分かるのだ。

 まぁ逆に大臣になって税の取立てがこんなにラクな国もあるというのだから嬉しい限りなのだが。

 なんと言っても税以上に寄付する国民がほとんどなのだからな。

 体制批判も起こらない。


「宗教とは本当に悪魔的なシステムだ」


 左大臣は一息つくように紅茶を一口飲む。

 温かさに身体から力が抜ける。


「さて、密偵の報告によればマリアンヌ皇女殿下がサンティエールを出て今日で6日ほどになる。もうじきプルートに帰ってくる頃合だろう」


 一足早く帰って来た伝書鳩。

 その頭をそっと撫でる。


「ロキ第二皇子とマリアンヌ第一皇女の王位継承権を賭けた戦い。王の間で聞いた時は万が一にもマリアンヌ皇女殿下に勝ちの目はないと思っていた。なんと言ってもロキ皇子は行って帰ってくるだけ。対するマリアンヌ皇女は何年も何年も紛争が収まらない案件」


 正直、あの2人が王位継承権を賭ける戦いをすると言い出した時、マリアンヌ皇女殿下は終わりだと思った。

 マリアンヌ皇女の皇帝への道筋も途絶えた。

 ダイアル城塞から始まった快進撃もここまでか…と。


「だが実際はどうだ?」


 蓋を開けてみたらマリアンヌはたった1週間で紛争を解決。

 行き帰り含めて3週間。

 対するロキ皇子は今頃慰問先に到着した頃合だろう。

 マリアンヌ皇女殿下の圧勝だ。


 ロキ皇子は行って帰ってくるだけ、紛争とは名ばかりで実際には平和だから。

 ただし、ここプルートからあまりにも遠い地。

 その欠点とも呼べない欠点を今回マリアンヌ皇女殿下は突いた形になるわけだが…。


「結果だけ見るとあまりにもマリアンヌ皇女殿下にとって出来すぎた逆転劇だ。まるでロキ皇子に勝負を持ちかけられる前から全ての情報を持っていたかのような」


 だがこの推理には1つ大きな問題がある。

 事前に皇族の慰問先をマリアンヌ皇女殿下が知っている、ロキ皇子が勝負を持ち掛ける事を知っている必要がある。


 だがそれはありえない。

 皇族の慰問先、軍事国家であると同時に宗教国家でもあるプルートにおいてその情報はトップシークレット。

 警備上の問題もあるから知っているのは上層部の一部だけ。

 もちろん皇帝陛下以外の皇族には知らされていない。

 皇族の方々がまだお若い事もある、どこから情報が漏れるか分からないから。


「なら偶然か?だが、ただの偶然と片付けるにはあまりにもマリアンヌ皇女殿下にとって都合よく事が進んでいるように思えるだが。いや、そもそもなぜ皇帝陛下はそこまでマリアンヌ皇女殿下を皇帝にするのを嫌がっているのだ?」


 以前から皇帝陛下がマリアンヌ皇女を毛嫌いしている毛はあったが。

 客観的に見たら皇帝陛下の血を一番色濃く受け継いでいるのはマリアンヌ皇女殿下だ。

 個人的に心の奥で推しているのは商売上手なアール第一皇子だが、マリアンヌ皇女殿下が次代皇帝というのは悪くない選択肢の1つにも思える。


 何よりも大英雄とも呼ばれた母親譲りの銀線の髪にあの美貌だ。

 さぞ民衆受けするだろう。


「昔のマリアンヌ皇女殿下なら不安もあったが、今のマリアンヌ皇女殿下ならプルートを更なる強国に持ち上げられるかもしれない」


 まぁ、それと引き換えにそれ相応に血は流れそうではあるのだが。。

 それでも現在の皇帝陛下からすれば今までの自分が取ってきた手法だ。


”欲しい物があれば如何なる方法を持ってしても己が手で手に入れる”


 昔は事あるごとに口癖のように言われていた言葉。

 その教えをその身で体現している王位継承権第一位であるマリアンヌ皇女殿下。


 どれだけ非道な行いをしようが、歴史は勝者を称える。

 なぜなら勝者が歴史を作るから。

 それを誰よりも知っている現皇帝。


 それでも尚そのマリアンヌ皇女の存在が気に入らないというのであれば。。


「それは同族嫌悪と呼ばざるおえない。…フ~、まぁ何にしてもロキ第二皇子はここで脱落か」


 あのロキ皇子が自分の腕か王位継承権、どちらか失う選択で腕を捨てるほど覚悟があるとは思えない。


「いくつもの謎が横たわってはいるが…まぁ、私は私の仕事をこなすだけだ。 私の夢は今も昔も変わっていない。強い国を造ること、何者にも屈しない、強い国。そう思い続けてここまで来た。私にかかればこの国を更なる強国に、それすら造作ないだろう。そう…例え誰が次の皇帝であってもな。。」


 30年以上前、とある国で天才と称された若い若者が居た。

 その若者を手に入れるために現皇帝は戦争を起こしたほどの逸材。

 そう…彼こそ役に立たない右大臣横目に1人プルートをここまで強国に持ち上げた立役者でもある。

 経済に精通し、内政・外政すら一手に引き受ける彼にかかればどんな小国も大国に引き上げるだろう。


 左大臣は職務に戻ろうとしてふと手を止めた。

 

「ああ、そうだ。急ぎ、この事を皇帝陛下にお伝えしておかないとな、実の娘なのだから心配はしているであろうし。それにこれだけの功績だ、マリアンヌ皇女殿下が帰って来た時は盛大にお迎えしないといけない。ふむ、予定通りなら明日の昼にはプルートに帰ってくるか…報告に驚いて呆けていたが、急に忙しくなりそうだな」


 左大臣は立ち上がり、左大臣の職務室を出て行く。

 そしてちょうど王の間に居た皇帝陛下と右大臣に今回のマリアンヌの功績を伝える。

 すると両者の反応はまちまちであった。


 青天の霹靂へきれきと言わんばかりに絶句する皇帝。

 何か気まずそうに目を伏せる右大臣。


 事前に想定していた反応と違う…?


 この2人の反応に違和感を覚えながら左大臣はマリアンヌ凱旋の準備を整えさせるために部下のもとに行くのであった。


 そして次の日、左大臣の予想通りマリアンヌがプルートに帰って来た。


 ………

 ……

 …


「マリアンヌ様!万歳!!」

「お帰りなさいませ!マリアンヌ様!!」

「サンティエールの紛争解決お見事でございます!!」

「マリアンヌ様はこの国の救世主だ!!」


 国の正門から城に向かうまでの長く真っ直ぐと続く道。

 馬車の車輪が石畳をカラカラと叩く中、国民全員が一週間で紛争解決という前人未踏な功績に目をキラキラさせ崇拝するようにひれ伏してマリアンヌの帰還を歓迎する。

 何千、何万と続くまるで崇拝者達のビクトリーロード。

 視界に広がる圧巻の風景。


 それを馬車の中から見たマリアンヌとカーナ。


「マリアンヌ様!見てください!凄い人の数ですよ!」

「ほぉ~関心関心。急ぎ帰ってきたというのに、われの帰還を歓迎する体制がここまで整っているとは褒めて使わしてやりたいものだ」

「ダイアル城塞のときよりも凄いですね!それに、みんなサンティエールでマリアンヌ様が紛争を解決した事を知ってるみたいです!」


 マリアンヌは昔からよく知る王都のニオイ、それを馬車の窓から感じながら言った。


「それだけこの国には耳の早い優秀な人間が多いという事だよ、カーナ。まことに喜ばしい事だ♪」


 勝ち誇った顔で、


「さぁプルートとその国民よ。 喜べ、次代の王の帰還だぞ」


 全てが計算通りと笑みを浮かべて。



閲覧ありがとうございました(/・ω・)/ある意味今回のお話がこの章で1番穏やかな回かもねw

ではまた次回お会いしましょう♪( ´Д`)ノ~バイバイ







以前今年手術するかも…って言ってたけど、何とか手術は回避出来そうです(^_^)だけど入院はほぼ確定のようです(>_<)……良い事があれば悪い事もある。皆さん、そういう事です(*ノωノ)諦めて受け入れる。それが私の運命なのです。因みに入院日は4月の中旬です。注射やぁぁぁ(´;ω;`)ウゥゥ

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― 新着の感想 ―
[一言] いやね、もう、くっそおもろい。 語彙力が喪失するくらいには面白かったです。 すごく読み応えがあって、なかなかエグい世界設定に頭のネジが外れてる登場人物達、そしてなんといってもこのカラスの性癖…
[良い点] お久しぶりです! 更新してくださりありがとうございます(≧▽≦) 前章のランの正体にも驚きましたが、新章ももっとすごいことがおこりそうで、楽しみです!! [気になる点] 皇神教すごいです!…
[気になる点] お身体の方、お大事に!! [一言] >小さい時は周りが見えない独裁者のわがままお姫様だと思っていたが── ──蛙の子は蛙!? >小さい頃から蝶よ花よともてはやされてきた麗しき銀髪の…
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