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魔女と呼ばれた少女 -少女は死体の山で1人笑う-  作者: ひとりぼっちの桜
【第8章】 偽りだらけの旅芸人

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06 ラン

クリックありがとうございます♪ブリーチで一番好きなセリフは藍染の『一体いつから鏡花水月を使っていないと錯覚していた?』のひとりぼっちの桜ですw 私は学生の時このセリフを初めて読んだのですが、当時、週刊少年ジャンプ手にしながら「な、なんだ・と( ゜Д゜)!?」ってなりました(笑)カッコイイよね~あのセリフ♪私も死ぬまでにこのセリフを使ってみたいな~~(*‘∀‘)でも機会が無いしな~wいや、機会は待つものではない、作るものだ!!(=゜ω゜)ノ



さて今回のお話ですが、前回のお話と今回のを合わせて100点の出来だと思っております(個人の感想であり効果効能を保証するものではありません(◞‸◟))今回のお話の為に私はこの章を書いたのだ(>_<)皆さんが少しでも楽しんで頂ければ幸いです。

ではサンティエール到着前最後のお話、今回もどうぞお楽しみくださいませ~♪



 その言葉は森の中で重く響いた。


「違う。俺は、カラスのお前に聞いてるんじゃない。 ”アトラスの10英雄、その第2席であるお前がなぜここに居るのか?”と聞いているんだ」


 瞬間、場の空気と共にランの表情が一瞬だが硬く強張った。

 あまりに突拍子のない言葉に瞳が揺らぐ。

 だが、すぐにいつもの余裕たっぷりな瞳に戻った。

 妖艶な笑い声をともなって。


「何を馬鹿な事を言っているの? 私が、アトラスの10英雄の1人だなんて…馬鹿も休み休みにして欲しいものね」

「俺は、確信を持っている」


 オムの言う通り、彼の瞳は確信を持ちランを見据えてはなかった。

 一方、ランもランで慌てふためいた様子など一切見られない。

 彼女は心から”何を言っているんだ?この男は…”という顔をしている。


「なら、その確信は的外れとしか言いようがないわね。確か聞いた話だと、アトラスの頂点に位置する10英雄というのは女性は居なかったはずだけど?」

「ああ。俺がアトラスに居た数年前は、間違いなく10英雄は全員男だった。だから俺も、今までお前と10英雄の第2席がどうしても結び付かなかった」

「なら、なぜ私が10英雄なんていう奇天烈きてれつな発言に行き着くのかしら?」


 それとも、私が本当は男だなんて言うつもり?と妖艶に笑うラン。

 踊り子特有のスリットが深く入ったスカート裾から生足が艶かしく見え隠れする。


 オムは、疑いの眼差しを強く、


「俺が、アトラスで中隊長をしていた時、数回だけだが10英雄、第1席の男を見たことがある。今思い出しただけでも寒気がするぐらい不気味な刺青男だったんだが、その側近として居たのが第2席だ。そいつは、俺達カラスと同じように仮面を被り、フード付きのローブを常に羽織っていた」

「つまり、あなたの目からは、顔は仮面で隠されていて、身体のラインもローブで隠されていたから、男性か女性か判別すら出来なかったと?」

「ああ。実際、アトラスの騎士達の間でも、『第2席は顔に大怪我を負っている』といった噂が何処からか流れてきていた。だか、そんな噂を信じ切って疑っている者など、誰一人としていなかった」

「喋ったら男か女かぐらい分かるでしょ?」

「第2席は喋らなかった。俺の知る限り、2席の声を聞いた者は居ないはずだ。たぶん、他の10英雄の奴らも聞いてないんじゃないか? まぁ常に一緒に居た第1席は、聞いているかもしれないがな」


 それは、とても含みのある言い方だった。

 ランは、当然とも呼べるの反論をする。


「私は、数年前からここプルートに居るわよ。アトラスに10人しか居ない最大戦力である10英雄が、数年間もその席を空け、最大の敵国であるプルートに居るなんてありえないわ」

「第2席は、俺がプルートの捕虜になる少し前に戦闘で死んだと聞かされていた。今は、違う第2席がその席に座っているだろうよ」

「じゃあ、あなたが言う当時の第2席は死んでるんじゃないの?」


 首を横にするオムは断言した。


「死体を見ていない」


 それに対しては鼻で笑えるような回答だった。

 ランは呆れたように肩をすくめた。


「あなたって確かアトラスにいた時、中隊長だったのよね? そんな下っ端じゃ10英雄の死体なんて見れなくて当たり前ではなくて?せめて大隊長にでもなってから―」

「大隊長という言葉は知っているんだな」

「鎌を掛けたつもりかもしれないけど、そんなものは教養レベルとして最低限の知識よ。それに私は、プルートの支配下にある国の中では、どちらかというとアトラスよりの国の出身だもの」


 そして、これ以上つまらない話をするなら私もシャルドネの所に行くわよ。と、口にするラン。

 オムは、指を3本立てた。


「理由は3つある」

「………」

「最初にあれ?おかしいな、と思った。1つ目は、お前が暑さに対して慣れている点だ。プルートの周辺は、四季の変化が乏しい。逆にアトラスは、四季の変化がハッキリしている。お前は、俺と同じでこの暑さに慣れていたよな?」

「全体的にそうだというだけで、プルートの支配下の国にはいくらでも暑い国はあるわよ。あなたは、プルートがどれだけの国と地域をその支配化に置いているのか、私がどこの国の出身なのか知っていて物を言っているの? そもそも、暑さに対する反応なんて人それぞれ。その程度の事で疑われるなんて、言い掛かりもいいところだわ」


 オムの言う根拠で容疑者を探し始めたら、一体どれだけの人間が10英雄の第2席候補になるのか分かったもんじゃない。

 根拠の乏しい当て付けも良い所な推理。

 いや、推理と呼ぶのもおこがましいだろう。


 ランは、呆れ声で言う。


「あなたの推理なら、生まれてからずっとプルートに住んでいるような生粋のプルート人は、全員10英雄の第2席に当確ね」

「2つ目は戦い方」

「戦い方?」

「10英雄の第2席は、強力な魔道具使いだとアトラス兵の中では有名だった。手の甲に備え付けられた蛇腹剣じゃばらけんという刃の部分が等間隔で分割されワイヤーのような線によって変形し、むちのような動きをする独特の魔道具。世界に数個しかないと言われる黄金シリーズの魔道具の使い手」

「私は、蛇腹剣なんて魔道具は持っていないわ」


 ランの反論を無視するように、オムは言葉を続ける。


「どれだけの大群が押し寄せて来ようが、一兵たりとも近づけさせる事も無く惨殺ざんさつする。そんな圧倒的な魔道具使いである当時の第2席だったが、たった1回だけ奇襲を受けた事があってな。あれは、俺が他の部隊と共に作戦行動していた時の事だったんだが、その奇襲を受けた時、第2席はいつも腕に付けていた魔道具を付けていなかった。そんな2席が襲われた時に護身術として使っていたのが…」


 確信を持っている目は、ランを見据え。

 男性特有の低い声は断言する。


「お前が使った柔術とやらだよ。しかも、その時見た技も、先日お前が使ったのと同じだった」

「………」

「人間、不意を突かれた時に咄嗟に出る技なんて、長年使い慣れたものと相場が決まっているが…。お前にとって、あの敵の足を払って空中に浮いた所にそのまま掌低しょうていを繰り出す技は、得意技か何かなのか?」


 今度は、何も反論する事無く無表情で黙って話を聞いているラン。

 オムは、尚も続けた。


「3つ目はウィノの存在だ」

「ウィノ?」

「アトラスの10英雄には、それぞれ副官が付くんだが、当時の第2席の副官はウィノだった」

「………」

「最初は、ウィノも俺同様プルートに捕虜にされたのかとも思ったんだ、そもそも、第2席が女なんてつゆほども思ってなかったからな。実際、アンジェラ皇女に捕まっていた時、牢の中で当人に聞いたら”自分も捕虜にされた”と言っていたしな」

「………」


 3つの根拠。

 それを全て羅列したオム。

 最後に全てを纏めるように言った。


「お前が第2席だと考えると、しっくりくる事も沢山あった。お前は、他のカラスのメンバーとも積極的に会話をしていたが、よくよく思い返すと、その中でも特にウィノと喋っていた気がする。そう言えば数回だが、お前はウィノと一緒に外に出かけていたよな?。あれは、何処に出かけていた?」

「………」

「それだけじゃない。あの訓練と称した拷問のようなボスとの戦い。カラスの中で、ボスと戦って唯一戦いになっていたのはお前だけだった。 本来なら、お前も言った通りアトラス最大の敵国である超大国プルートの、しかも次の皇帝になるであろう皇族に10英雄が近づくなんてバレたら国際問題ではすまない。即休戦解除の大陸全土を巻き込む大戦争になりかねない愚かな行為だ。でも、第2席が女であったと仮定した時、あの全てを見通すような不気味な1席の側近として動いていた当時の2席なら…。1席の命令で自身は死んだ事にして、実はこの場にカラスとして何食わぬ顔でウィノと一緒に居てもなんら不思議ではない。これが、お前が10英雄、第2席だと俺が考えた全てだ」


 オムの推理は終わった。

 過去と今を結び付ける推理。

 そこから、しばらく無言のまま時間が続いた。


 セミの鳴き声だけが嫌に五月蝿く聞こえる。


 …やがて、長い、本当に長い溜め息。

 ランは、静かな声色で言った。


「やれやれ。あなたの事は本国から聞いていたけど、手癖だけじゃなくて案外頭も切れるのね。しかも目敏めざとい。あんたが、本国から早く死ねと思われているのも納得だわ」


 心の温度が下がっていき、冷え切った瞳は真っ直ぐフードの奥に隠れているオムの瞳を射抜くように見ている。


 オムの頬にツーと冷や汗が伝う。


「認めるのか?」

「認めないと言ったらあなたは自分の意見を曲げてくれるのかしら?」

「俺は、確信を持って言っているからな、曲げようが無い」

「でしょ?なら意味無いじゃない」

「なら、自分が2席だと認めるんだな?」


 薄く妖艶に笑うラン。


「ええ、認めるわ。というか…あなたが今言った推理をマリアンヌかカーナに披露したら、どのみち私は終わりだもの。だから、ここは平和的にいきましょう」


 まるで、平和主義者のような物腰だが、マリアンヌを呼び捨て、ボスではなくカーナ。

 これだけでランという人物が、今本当はどこに属しているか、それを雄弁ゆうべんに語っていた。


 身構えるオムにランは言った。


「で、あなたの要望はなにかしら? 私に聞ける事だったらいいのだけれど」


 その時のランにいつもの妖艶な笑みは無かった。

 有るのは暑いはずの周囲の空気が冷めていくような鋭い眼光。


 恐怖から手が震えた。

 改めて目の前の女がアトラス最高戦力の10人の1人であったと思い知らされる。

 オムは言った。


「俺の要望はただ1つ。俺の邪魔をするな」

「………?」


 ランは、困惑した様子で首を傾げる。


「どういう意味かしら?」

「お前の目的が何であれ、何の目的でプルートに居るかなんて、俺としては興味ないし知りたくも無い。ただ、今回のマリアンヌの慰問。これの邪魔だけは絶対にするな。俺が大金を手に入れる邪魔をしなければ、それだけでいい」


 マリアンヌの一件もある。

 今度は自分に対して、どんな交渉…、

 いや…。今回、奴が掴んだ情報を鑑みれば、どんな脅しをしてくるのか予想が付かなかった。しかし、警戒していたランに対して、投げかけられた要望は「邪魔をするな」だけ。


 面を食らったような状況になったラン。


「私が何もしなければ、あなたは何もしないし、誰にも私の事は言わないという事かしら?」

「ああ。もちろんマリアンヌは元より、シャルドネにも決して何も言わない。アトラスに置いてきた娘に誓ってもいい」


 赤く塗られた口元に手をやって少し吟味するように考え込むラン。

 やがて彼女は、


「本国のお金を横領した人間の約束なんて、本来は信用できないけど、、誓いの方はある程度信用できそうね。ええ、いいわよ。この慰問中は、私は何もしない。そして、あなたがマリアンヌからお金を手に入れられるように、最大限努力してサンティエールへの潜入任務をする事を私も誓いましょう」

「その誓いは、信じてもいいんだな?」

「ええ、もちろん。私としても、真実を知るあなたにはお金を得てもらって早々に私たちの前から退場してもらいたい所だもの。本来なら、この場で即殺したい所だけど、それも出来なからね。それにしても意外ね」

「何がだ?」

「あなたの事だから、てっきりマリアンヌの時と同じように、法外な金額を私に要求してくるのとばかり思っていたのよ」

「お前に金なんて要求したところで、マリアンヌと違って大した金額を得られないだろ。それに、元とはいえアトラスの10英雄を揺すろうものなら、首がいくつあっても足らないよ」


 なるほど、確かに。と、薄く笑うラン。


「じゃあ、もうこの無駄話は…」

「ああ、今後する事は無いだろうな」


 先ほどまでの張り詰めた空気はどこ吹く風。

 2人はクスクスと笑う。


「それにしても貴方。マリアンヌに交換条件を持ち掛けるは、私にも脅しのような交渉をしてくるは、本当に心臓に毛でも生えているんじゃないの?しかも全て成功してるし…。案外、あなたは兵士じゃなくて交渉役をしていた方が、本国でも大成したような気がするわね」

「勘弁してくれ。マリアンヌの時は、自ら選んで命を懸けたが、お前の場合はやりたくてやったわけじゃない。今回のサンティエールへの潜入任務は、俺にとって絶対に失敗出来ない重要案件だ。にも関わらず、この地はサンティエールに近い。あの不気味な1席が何かしてこないとも限らない。万が一、億が一、お前に何かされては困るんだよ」

「…なるほど、あなたの身になってみれば確かにそうね」


 そして、まるで先ほどの会話が無かった事のように、2人はシャルドネの居る商人達のキャンプ地の方向へ足を向ける。

 実に平和的な会話をえながら…。


「じゃあ、俺達も商人達の居る所に行こうか、カラスの同僚であるラン」

「ええ、シャルドネの無駄遣いを少しでも防がないと、私たちの宿泊費も使い込むかもしれないものね。フフフ」



閲覧ありがとうございました(^^)皆さん、前回の章でマリアンヌとランたち3人が合流した時、実は裏ではこんな事があったなんて夢にも思わなかったんじゃないですか?(・∀・)ニヤニヤ。そして私は皆さんに言いたい「皆さん、、一体いつからランがマリアンヌの味方だと錯覚していた?」……言ってやりましたよw死ぬまでに言いたいセリフ、言ってやりましたよwワイはもう満足や(笑)


次回はサンティエールに3人が潜入してからのお話になるのですが、、私としては潜入からマリアンヌ到着までを1話で纏めたいと思っております( ー`дー´)キリッ。今考えているアイデアもあるからきっといけるはず……、皆、その「無理だって、どうせ少なくとも5話はかかるでしょ(T_T)」みたいな顔をするのは止めて頂きたい(>_<)

やってやんよ!…まぁ出来るかは知らんけどw


ではまた次回お会いしましょう♪(^_^)/~




本来これを言うべきか非常に悩んだんですけどね…(><) 実は今回のお話の伏線は今までに色々散りばめられていたのですが、その中でもこのお話を読むことで更に面白くなるよ~('ω')♪って箇所があるのね。でもそれは同時に、私が皆さんに自分の手で探してもらいたい箇所でもあるわけなのです(>m<)私の小説はそういう所を大事にしているのでw

だから1つだけ。ここは簡単に探せるしここはマストだよってとこだけ紹介しておきますね。もしもランの目的や伏線を自分で探したい方はこの後読まないでね♪






………


……



いいですか?


今回のお話を10倍楽しむために読んでおいた方が良い箇所は「【第5章】 3日物語(表)の第97部分33 裏話 暗室の会話」です。

これを読むことで今回のお話も更に面白くなるかと思います(^v^♪

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ランとウィノは、プルートへスパイ活動する為にわざと捕まって潜入したのかな。でも、アンジェラが、現カラスメンバー含む死刑囚を捕らえていたけど、下手したら死刑執行されていたかもしれないんだ…
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