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魔女と呼ばれた少女 -少女は死体の山で1人笑う-  作者: ひとりぼっちの桜
【第8章】 偽りだらけの旅芸人

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04 弱肉強食

クリックありがとうございます♪ステーキはウェルダン以外認めない!で有名なひとりぼっちの桜ですw私、基本的にちゃんと火が通って無かったらダメなんですよね(-"-)なのでステーキは焦げるぐらいの方がちょうどいいまである(笑)ミディアム?ミディアムレア?レア?ノーサンキュですよ(。◕ˇдˇ◕。)/


さて今回のお話ですが、なぜシャルドネとオムが山賊ルートを選んだのか?その理由も分かるお話となっておりますので、原稿用紙12ページ8千文字ほど(ちょっと増えちゃったw)と多いですがゆっくりでもいいので読んで頂けると幸いです。


では今回のお話もどうぞお楽しみくださいませ~♪



 道中、急に1本の大きな倒木があった。


「大きな木が横たわっている。これでは邪魔で通れない」


 オムはそう言って手綱を引く。

 馬車はゆっくりと止まる。


 すると前から横からぞろぞろと出てくる武器を構えた山賊たち。


「ここは通行禁止だ兄ちゃん」

「金目の物、女、それを置いていけばお前の命だけは許してやるよ」

「分かってると思うがお前に拒否権なんて無いぜ。弱肉強食、諦めな」


 山賊たちは首や腕、所々に貴金属や宝石類をジャラジャラと付けていた。

 どれもこれもが山賊らしからぬ品ばかり、村や商人を襲って羽振りがいいのだろう。


「………」


 全く怯えている様子も無くケロッとしているオムは黙って周囲を冷静に見回す。


 するとあっという間に自分達の馬車の周りをぐるりと10名ほどの山賊が武器を持って取り囲んでいた。

 オムは鼻で軽く笑い肩をすくめる。


「なるほど、まず大木を使って馬車の通り道を塞いでその隙に取り囲む。そうやって商人達を襲っているのか。しっかりと統率も取れているし、素晴らしい手際の良さだな」


 まったく恐怖しないどころか自分達を小ばかにするような発言に素振そぶりり、山賊たちは目に見えて苛立ちの雰囲気を発し始めた。

 この中で一番偉そうなサル顔の男が一歩前に出てくる。


「お前分かってんのか? 俺達は泣く子も黙る三猿だぞ!」


 夏の森に響くどう喝の声。

 自分達の実力を疑わない、疑ってこなかった声だ。

 一般人なら恐れ慄いて腰が抜けていた事だろう。

 だが、やはり一切気にする事無くオムは平然と馬車から見下ろす。

 しかも声に小さな笑い声を混じらせて。


「そうか、お前達が…それはよかった。万が一の話だが他の山賊と出くわしていたならどうしたものかと思っていたんだ」

「それはどういう意味だ!?俺達に会いたかったってか!」


「狩人が狩人でい続ける為に必要なのは、用心深さと獲物の実力を見極める為の目だ」


 唐突な話題転換、山賊の誰もが「何を言っているんだ?」と動揺を隠せなかった。

 いつも自分達が襲ってきた獲物とあまりに違う態度に言動。

 サル顔の男は言った。


「何を小難しい事を言ってる?俺達に勝てる奴らなんて誰もいやしねぇ、お前だって今から怯えて」

「運が悪かったのは俺たちか、それともお前達なのか…っていう話だ。因みにつかぬ事を聞くが、お前たちの中に魔道具を持っている者はいるか?」


 急な問いに疑問符を浮かべつつ先頭にいるサル顔の男は答えた。


「は?あ~大兄貴の事を言ってんのか?」


 ”大兄貴”その言葉を聞いたオムはあからさまに肩を落とした。

 長い溜め息、その後に小さく舌打つ。


「大兄貴…はぁ~そうか、我々は3分の1を外したわけか。まことに残念だ。持っているなら奪い取ってマリアンヌ様のご機嫌を取るための献上品しようかと思ったんだがな」


 サル顔の男の額、血管がビキビキと浮かび上がった。


「兄貴じゃなくて悪かったな、御者ぎょしゃの兄ちゃん。お前はもう逃がさねぇぞ。死刑だ!死刑決定だ!」

「この人を誰だと思ってんだ!この人は三猿のビネガーさんだぞ!」


「あ~、そこのサル顔の名前はどうでもいい。それにお前達が、どれほど束になろうとも物の数にすら入らない。さっさとやろうか、ハズレども。時間が惜しい」


 オムは軽い身のこなしで馬車から夏の乾いた土の上に降りる。

 だがフードを奥の瞳は周囲全てに警戒は怠らない。

 山賊たちは各々の獲物を持つ手に力を入れた。


「へ~そうかよ。1人でこの人数、相手にする気かよ?」

「俺は、護衛も兼務しているからな。職務は全うしないと俺の命が危ない」

「今更命が危ないだって?俺様にあそこまでの口を叩いたんだ。もう命乞いなんて遅せぇぞ~!」

「お前達如きに命乞いなんてしないよ」


 軽口を止めることは無い。

 オムは、今まで被っていたフードを脱ぎ捨て、隠していた素顔を晒した。それが、彼にとって何かのスイッチになっているかのように空気がピンと張り詰める。


「お前達に同情する価値は無さそうで良かった」


 構えは剣を立てたまま真っ直ぐ前へ。足は肩幅。肩の力を抜いて片足を半歩前へ。アトラスの騎士が、最初に覚える王道と呼ばれる構え。

 その構えを知ってか知らずか、サル顔のビネガーは向かい合うように剣を構えた。


「お、御者の兄ちゃん。ただの御者にしては良い構えしてるじゃねぇか」

「フフ、お前らに褒められても俺は全く嬉しくは無いが。まぁ、それでも死に行く人間達の最後のお褒めの言葉は受け取っといてやる」

「俺が行きますよビネガーさん!ビネガーさんが出るまでもないっすよ!お前ら手ぇー出すなよ!」


 だいぶ血を吸い、使い込まれた大きな斧を片手に部下の山賊に命令する大柄の男。

 態度や言動から察するにコイツがこの中で2番目の地位に位置しているのだろう。

 大柄の男はオムを見下ろし、目をギラつかせる。


「逃げるなら今のうちだぜ!」

「逃がさないんじゃないのか?」

「うるせぇ!!ビネガーさんにデカイ口叩きやがって!!」

「口上が長い。早く来い、三下」

「ぶっ殺してやる!!」


 大木を一刀両断するような一撃。

 だが、その後に起こったのは、まるで騎士学校の新人と教官との戦いのようだった。

 全力で力任せで切りかかった山賊に対して、オムは、まるで剣で撫でるようにいなして、そのまま逆に山賊の腹から肩に向かって切り上げる。


 流れるような剣捌き。アトラスが長い歴史を積み重ねて熟成されてきた剣技がそこにあった。


「グハッ!!」


 吹き上がるなまめかしい血吹雪。

 誰もが一見して分かるほどの深い傷。致命傷であった。

 鮮血は地面に広がり瞳は力を失う。

 巨漢は伏した。


 生臭い風、血の香りを残して。


 目の前の状況に呆気にとられ言葉を失う山賊たち。

 自分たちの中で2番目に強い人間が、こうも簡単に返り討ちにあったのだ。言葉を失うのも仕方ない。


 しかも、オムは呼吸1つ乱す事無く、まるで当たり前の状況だと言わんばかりに「次はどいつだ?」と指をクイクイと折る。

 ビネガーは言い淀んだ。


「お前、何なんだ?」

「これでも、剣1本で中隊長まで上り詰めたからな。お前ら如きに後れを取るわけにはいかないよ」

「中…隊長?お前」


 緊迫した夏の空気。

 そんな中、それは期待に胸を躍らせた声であった。


「あれぇ~、オムさん。素顔を晒しちゃっていいのぉ~?」


 踊るような足取りで馬車から降りてくるシャルドネ。

 オムは周囲の一瞥いちべつして答えた。


「問題ない、全員殺すんだからな」

「ふ~ん、そうんあんだぁ~。そんな事よりも…」


 つばの広い吟遊詩人の帽子。そこから覗くどす黒い粘液のような視線。

 その瞳は山賊たちが付けている宝石しか映っていなかった。


「やったぁ~、やっぱりだぁ~。商人を襲ったりするぐらいだから、宝石いっぱい持ってるんじゃないかと思ったんだけどぉ~。当たりっぽいね♪」

「大ハズレだ。魔道具は持っていない」

「魔道具なんてどうでもいいじゃんかぁ」


 オムとの会話中も、決して値踏みするような目はもう山賊を逃さない。


「ねぇ~、オムさぁ~ん。こいつら全員わたしが殺しちゃってもいい? こいつら気持ち悪いよ汚いよぉ。しかも、汚いのに宝石持ってるし。早く殺さなきゃ」

「勝手にしてくれ」


 剣を鞘に戻し一歩下がるオム。

 入れ替わるようにシャルドネが山賊の前に出る。


 あまりにおかしな状況だ。

 今しがた自分達の№2を赤子の手を捻るように簡単に倒した男を下げて出てきたのは吟遊詩人の格好をした女。

 そう体格が良いとも思えない普通の体格の女。

 なのに、襲っている自分達が、襲われている側なのだと思わせる傲慢な会話に、圧倒的な強者の風格。


 ビネガーの胸がざわついた。

 こいつはヤバイ。


 昔から上2人の兄が強かったから強者を嗅ぎ取る才は持っていた。

 だが、その自分より強い存在が実の兄で殺意を弟に向けなかったこと。この辺り一帯を拠点とした山賊として勝ち続けた、勝ち続けてしまったという事実。

 それらが、ビネガーの強者を嗅ぎ取る才を衰えさせてしまった。


「………」


 もっと早く、こいつが馬車から出る前に気付いて逃げるべきだった。

 もう逃げられない。


 暑さから来る汗ではなく、未知の強敵に対する焦りから出てくる汗が頬を伝う。


「お、お前らはいったい何者なんだ?」

「では、ここから山豚さんたちの相手をするのは、このシャルドネ・リングスでございまぁ~す♪」


 ビネガーの問い掛けに返答は返って来なかった。


 360度全てのお客にお辞儀をするようにクルッと回るシャルドネ。

 だが、その目は狂った人殺しの目。

 その目を見た瞬間、ビネガーを含む山賊たちは喉が干上がるのを感じた。

 自分達を完全に獲物としてしか見ていない目。


「暑くて寝苦しい今日この頃でございますが、どうかわたしの演奏で深い眠りにお付きくださぁい。お代は…皆様の命でお支払いくださぁいませぇ」


 そう言ってシャルドネは腕を持ち上げ、左の手の平を山賊の方に向けると、そのままもう片方の手を吟遊詩人特有の広い袖をゴソゴソとまさぐる。


「ん~ん~ん♪ これかな、うん。 山豚さんたちにはこれでいっかぁ~♪」


 誰もが聞こえるように機嫌よくそう口にすると、内に入れた何かを勢いよく引いた。

 正面にいたビネガーの目が見開く。


「お前ら!こいつ何か服の中に隠してー!?」

「遅いぞぉ」


 ビネガーが言い終わる前に放たれたのは、袖から空気を切り裂くように百本以上の”何か”。

 その”何か”は小さな痛みを伴い正面に居るビネガーを含む山賊たち、そしてそのまま袖を左右、背後に振り分ける事でこの場にいる山賊たちの肉にも満遍なくめり込んだ。


「「っ!?」」


 1人最低でも10本以上。

 それらが当たった事をしっかりと確認。

 シャルドネの笑みと共に痛みの襲撃は収まった。


 山賊たちは自身に刺さったそれを見た。


「痛ってぇ、、こ、これは」


 それは、ボウガンの矢と言うにはあまりにも小さく細い。まるで刺繍に使う針のような、人を殺すにはあまりにも殺傷能力が乏しい矢であった。

 実際、山賊たちは全員針に当たったものの誰一人死んではいない。

 山賊の1人が身体に刺さった1本を引き抜く。


「矢…いや、針か? ビネガーさん!コイツ、服の中にボウガンみたいな物を仕込んでやがる!」

「こんな小さな針、ちょっと刺さってるだけだ!!お前ら気合ですぐ引き抜いてその女をとっ捕まえちまえ!押さえつけちまえば所詮は女だ、何も出来やー」


 だが、その言葉お言い終える前にビネガーはその場で膝を付いてしまった。


「あれ?なんで?足に力が」


 ねっとりとした声は上から笑う。


「ちょっと、この豚さんたち頭弱すぎない?質より量の殺傷能力の低い武器を使っている以上、咄嗟にその武器には何か有ると考えようよぉ」

「え?」


 言われて山賊の1人が引き抜いた針。

 その尖端には血以外になにかドロッとした緑色の液体が付いていた。

 と、同時に矢が刺さった山賊がグラリと体勢を崩して地面に転がった。

 他の山賊たちもそうだ。

 足に、身体に力が入らない。


 カラカラと笑うシャルドネ。


「毒だよぉ。と言っても毒性自体は、そんなに高くは無い麻痺毒なんだけど。わたしお手製の毒なんだけどね、身体は動かないけどギリギリ喋れはするでしょ?ほら、すぐに死なれると、豚さんたちが商人から奪った宝石たちを助けてあげられないからねぇ♪」


 そうこう語っている内に、取り囲んでいた山賊たちも全て倒れ込んでいった。

 うめき声のような擦れた声が聞こえてくる。

 そして、計算どおりの時間で倒れたと言わんばかりにシャルドネは山賊たちに寄って行く。

 吟遊詩人の服を見せびらかすように、


「この服、本当に良いよね。わたし、お手製の暗器がいっぱい仕込めるし♪普段から着ちゃおっかな~?な~んて♪ じゃあ、わたしはぁ、今からこの山豚さんたちが付けてる宝を奪って、宝を隠しているか聞いてから殺しちゃうから、埋めるときはオムさん手伝ってねぇ♪」

「なんで俺が?」


 追い剝ぎ、拷問、殺害。

 今から平然とそれらを行なおうとしているシャルドネはニッコリと微笑んだ。


「わたしの腕って細いからさぁ。オムさんが居ないとこんな多くの人数埋めれないよ。それに…、いいの~?わたしがちゃんと証拠隠滅出来なかって作戦が失敗したら、オムさんも困るんでしょ?」

「チッ、分かったよ。その代わり分け前は貰うからな、タダ働きはゴメンこうむる」


 渋々了承すると、シャルドネは意地の悪い笑みを浮かべた。


「ええ~~もう仕方ないな~ちょっとだけだぞ♪ じゃあ始めますか♪」


 まずは、身ぐるみを剥ぐ。指輪、ネックレス、耳についているピアスが外れにくかったら耳ごと引きちぎる。

 そして、何処からか取り出した木の枝のような特殊な形状のナイフを片手に拷問しながら宝の隠し場所を聞いて殺して、聞いて殺して。

 その一連の作業を心から楽しそうに行なうシャルドネ。


「痛いでしょ?痛いでしょ?」

「ゃぁぁぁごぁぁぁ!!!」


 苦痛に、声にならない叫び声をあげる中、無邪気な笑顔で観察するようにぐちゅぐちゅとナイフを抜き差しし肉をえぐる。

 山賊たちはあまりの激痛で気を失っても、それを超える激痛ですぐに目が覚める。

 繰り返す繰り返す地獄の傷み、そして喋る前に死に絶える山賊たち。

 カラカラと笑う声だけが森に木霊こだまする。


「因みにこのナイフは、拷問用の特別製なんだぁ~。一回刺すと剃り返しの部分が抜けにくくなってそれを無理矢理抜くと激痛が身体を襲うのだぁ~」

「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

「商人の豚さんたちからお宝はど~~こ??」

「いヴ!ぃぶかぁ!」

「え?何ぃ?」

「いヴぅ!いぶうかぁ!!!やぇてぅれ!!!」

「あ~、ろれつが回ってないな…頑張って汚い豚たちで調整したんだけど毒の分量間違えたかな?1人10本程度なら身体はすぐ動かなくなるけど口は普通に動くはずなのに。。それとも個人差があるのかな?はたまた温度で毒性に変化が?毒調整はあんま得意じゃないからな~。にしても、もう言っちゃうのぉ?」


 とても残念そうに「まだ4人目なのに…」と山賊の口元に耳を傾けるシャルドネ。


「ふむふむ、なるほど。オムさーん、この森の少し先に隠れ家みたいなの作ってるみたいだから一緒に行こ~う」

「別に構わないが。こいつらは、放置でいいのか?」

「問題ないよぉ~3~4時間は動けないからお宝確認してから殺しちゃおう♪ ランさーん!」

「なに?終わったの?」


 ランは気だるそうな瞳で馬車から降りてきた。

 シャルドネはブンブンと首を振った。


「今からが本番だよぉ!この山豚さんたちが隠してる宝を取ってくるからその間、この豚さんたちを頼んだぁ。大丈夫、ちょっと間は起きないから。あっ、まだ取り忘れの宝石見っけ!」

「ええ、分かったわ。行ってらっしゃい」


 ランは、優しげな声で言った。

 その時だった。背後で倒れている山賊の1人がランに襲い掛かってきたのは。


 その男は、シャルドネの毒針を受けてはいなかった。

 当たったフリをして倒れていただけ。

 最近、山賊に入った新人の男。


 彼は、パニックになったかのようにランに手を伸ばす。


「動くな!!動いたらこの女を!?」


 だが、その手がランの肩に触れようとした瞬間。山賊の身体は180度回転、そして視界が反転した胴に向かってランは掌低しょうていを打ち込まれた。

 内臓を全て口から吐き出すかのような悶絶の一撃。

 山賊は、背後の木に向かって吹き飛んで背中から衝突した。


「グハッ!!??」


 女性がやったとは思えない巨体の山賊を吹き飛ばす諸行。

 最小限の力を使って足を腕を払うようにして180度回転した所に、その瞬間だけ力を100%込めて打ち込む巧みの技。


 ピクリとも動かなくなった山賊。


 それらを軽々やってのけたラン。

 彼女は、長いため息を吐いた。


「はぁ~~~。シャルドネ、宝を奪うために山賊狩りをするのはいいけど、やるなら全部受け持ってくれるかしら?1人取りこぼしているわよ」


 ランが襲われている最中も、死んだ山賊の死体から宝石や貴金属を笑顔で剥ぎ取っていたシャルドネは、口をまったく悪びれる様子無く答える。


「ごめんね♪1人だけ毒針を当て損ねてたみたいだねぇ。でもさ~今の敵がランさんに触れた瞬間にグルン!って回って木にドン!って飛んでいったあれ、あれってなぁ~に?ランさんってあんな戦い方しなかったよね?確か…オケトラさんみたいに踊って戦ってたような」


 オケトラ…。

 同僚のカラス。

 少し思い出すように視線を上に、そして「あ~あの子ね」と、


「あの子の戦い方は、文字通り踊りながら戦う。私の場合は、戦っていると踊っているように見えるだけ。あの子のやっていたものと、私の戦い方は根本から違うわ」


 そして、ランは「あの子、あんな無駄な戦い方を続けていたらいずれ格下の相手にでも足元をすくわれて死にかねないわよ」と付け足す。


「ふ~ん。まぁわたし以外のカラスがどうでもいいけどさ。で、話を戻すけど、あのグルンって技は何ぃ?」


 この時、ランが少し目を伏せたような気がした。


「…柔術と言って私の国の護身術みたいなものよ」

「へぇ~そんなの出来るなら前からやればいいのに。そうすればボスにだって勝てたんじゃない?」

「無理よ、護身術って言ったでしょ?それに私が使っているのはあくまで初級の初級、自分のみを守る程度の錬度よ、あの化け物じみたボス相手に通用するはずが無い。それはボスと手合わせした誰もが分かっているでしょ?もちろんあなたもね、シャルドネ」


 シャルドネは、過去にカーナと行なった訓練という名の拷問に近いそれを思い出して苦笑う。


「そりゃそうか♪ じゃあ行ってきます」

「ええ、行ってらっしゃい」


 一方、少し離れた所でオムが「柔術…」と呟いていた。


 その後シャルドネとオムはサル顔のビネガーたちが隠した財宝を恙無つつがなく手に入れた。

 そして帰って来た後、毒で痺れている山賊たちを全て殺して、全て埋めた。

 慈悲なく、笑顔で。


 弱肉強食。

 三猿の三男坊、ビネガーが好んで使っていた言葉である。

 強者こそ正義、強者こそ全て、弱者は強者にいられるもの。

 そんな彼の最後が自分より遥かに強い人間達に殺されるのもまた世のことわりだったのかもしれない。


「わぁ~、このサル顔の豚さんが首に巻いているスカーフ。サルの刺繍が付いてるよぉ。お洒落だなぁ~。ねぇ、ランさん、これ」

「ダメよ。そんな目立つ証拠品は持っていけないわ。一緒に埋めなさい」

「ちぇっ!残念。じゃあバイバイ♪」


 かくして、三猿の一角とその部下達は、この世から姿を消した。

 誰に知られる事も無く。

 もう二度と地面から出てくる事は無いだろう。。


「ぁぁぎぁぁぁぁ!!」


「あははははは♪」



閲覧ありがとうございました(^○^) ね?シャルドネとオムらしい理由だったでしょ?

そして三猿の三男坊が行方不明になった事で次男が探しに来る、そこにマリアンヌが出くわしてその後にアジトで三猿自体を潰す…こういう誰から何かをした結果、主人公に影響を及ぼすバタフライ効果的な物語、私大好きだったりしますw

あと今回のお話の個人的な目標としましては、3人の旅芸人、それぞれの見せ場をしっかりと描く事…って感じでしょうかwつたない文章ですが、少しでも3人の巳直が皆様に伝わっていれば嬉しい限りです(__)


ではまた次回お会いしましょう♪(^n^)






暑さ厳しく寝苦しい日々が続いていますね。私も同じく暑さに耐え抜いて生きております(x_x)マジキツイw

なので今回、皆様が少しでも涼しくなるよう私から皆様への暑中見舞い代わりに怖い話を1つさせていただければと存じます。



突然ですが皆様は【鳥頭】という言葉をご存じでしょうか?

鳥頭とは3歩歩けば鳥のように物事を忘れてしまうという意味なのですが…しかし実際にはどうなのでございましょう?

本当に鳥は3歩歩けば物事を忘れてしまうほど記憶力が無いのでしょうか??

案外それは人間が鳥の事をそう思っているだけで、あいつらは我々人間の事を覚えているのかも…。


これからお話いたしますは、とある男の子の身に起こった嘘のような本当のお話、世にも奇妙な鳥物語でございます。。


………

……


男の子はその日お休みでした、なので朝から1日ゲームをしていました。


「ふ~結構ストーリー進んだな♪ちょっとトイレ行こうっと(^c^)」


そうしてトイレに行こうとしたら、その男の子の父親が何やらカニばさみのような猫の罠片手にブチ切れていたそうな。

男の子は問いかけます。


「どないしたん?なんで猫の罠なんて持ってるん?」


すると父親は言いました。


「カラスがうちの野菜食いよってん!捕まえたんねん!」

「猫の罠でカラス捕まえれる(。´・ω・)ん?」

「知らん!!でも何かせな気が済まん!!」

「そっか~頑張れよ~」


正直、カラスって頭良いって聞くし、流石に猫の罠には捕まらんやろwってせせら笑いながら私、じゃなかた、男の子はトイレに行って再びゲームを再開させました。

それからだいたい夕方ぐらいだったでしょうか。

急に父親が呼ぶのです。


「カラス捕まったぞ!!」

「え!?猫の罠にか!?」

「ああ!アホやなw」

「へ~捕まるもんやんな。で、どうすんの?殺すん?」

「近づいたら危ないし今んとこ放置やな。でもな~どうしよっかな~」

「ふ~ん、そうなんか~」


男の子はこれはカラス餓死コースやな(^v^)と、思いながらゲームを再開させました。

そしてそこから更に1時間後、事件が起こったのです。

男の子がゲームをしていると窓の外から聞こえるおびただしい数の『カーカー!!』というカラスの鳴き声、しかもそれは1羽2羽なんてもんじゃない、10羽以上は同時に叫ぶような鳴き声が聞こえてきたのです。

男の子は流石にゲームをしていた手を止め、外に出ました。


すると我が家の上空には20羽以上のカラスがグルグルグルグルと旋回して飛んでいました。

一面真っ黒、恐怖映像でした。周囲の家の人たちも『何事か!?』と飛び出てくるほどに…。

そして畑方向からやって来る父親、男の子は言います。


「何や!この上空のカラスの群れ!」

「あ~さっき捕まったカラスが何か死んでたから、木にロープ使ってグルグル巻きにして吊るしたってん♪上空のあいつら仲間やろうけど怯えとるでwハッハッハ(^○^)」


そう言って笑う父親、彼の手に握られていたスコップには赤い何かが付いておりました。

男の子は「マジかよ、こいつやりやがった。そんなに野菜の事で憎かったんか…」と思いながら畑に行くと、それはもう無残に頭が半分に割れたカラスがこれまた無残に木にロープでくくりつけられておりました。

まるで上空を飛ぶカラスたちに対して”次はお前たちの番だ”と言っているように。。

それから数分間カラスたちは襲い掛かってくるわけでもなく、ずっと旋回して飛び続けて私たち人間と死んだカラスを見ているようでした。今思い出しても恐ろしい光景です。


そしてそれからほぼ半年が過ぎた今日この頃、我が家のカラス被害は0になりました。

そしてカラスたちは”なぜか我が家の上空だけは飛ばなくなった”そうな…。


皆様、この話を聞いてどう思いましたか?

本当に彼ら鳥は鳥頭なのだろうか?

案外、鳥たちは忘れたフリをして人間を騙しているだけで、本当は皆さんの顔や行動を覚えているのかも…その恨みと共に……。


どう?ちょっと怖かったでしょ?w


因みに最近その男の子の父親は。

「なぁこのAmazonのアラホールっていうアライグマの専用捕獲機注文しといて1セット4個入りのやつ。アライグマが俺のトウモロコシ食い漁りやがってん!捕まえて頭かち割ったんねん!!」

と息巻いているそうな…。

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― 新着の感想 ―
[良い点] シャルドネはやっぱり宝石か〜 なるほど!オムは、魔道具を奪い取ってマリアンヌ様に渡すためだったんだ! ランはどっちのルートでも良かったのかな [気になる点] シャルドネとオムの反応を見る…
[良い点] この話のタイトルを見た際、一瞬『焼肉定食』と誤読してしまったのは誰ですか…。 腹ペコな私ですww。 [気になる点] えっ!柔術っ!?。この作品には、日ノ本のような国が存在していた!?。あ…
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