01 出陣
clickありがとうございます⊂(゜∀゜ )!
突然ですが今回の章の中盤?ぐらいで出てくる魔法についてのご説明をさせてください(^_^)急にすいませんm(_ _)m
私はこの世界において魔法というのは絶対的なものではなく、魔力?う~ん体力?みたいな自分の中にあるガソリンを使って、魔道具を経由することによって一定時間行使できるものにしようと思っています。
つまり工夫すれば普通の人間でも十分勝てますし「強い=魔道具の有無」にはしたくないと考えています。
普通の人間が魔法にどう立ち向かうか、そんなのを楽しんでもらえるとうれしいです(^^♪
ちなみに今回の章でマリアンヌの隠されていた能力が紹介されるようにしてます。まぁマリアンヌ自身は隠していたわけでもないのですが…(笑)
ちょっとした能力ですが、その能力が今後の展開に生かせたらな~と思っています(〃^∪^〃)
それでは長い前フリになってしまいましたが、どうぞお楽しみください。
霧が薄っすらと足元にまだ残っている早朝
プルートの外壁をなす門を太陽の暖かい明りが優しく照らしていた。
プルートの門番をしていた衛兵の2人組み、その1人が遠くにそびえ立つ時計台を確認、すると持っていた槍を地面に突き立てて大きく声を出した。
「開門せよ!!」
巨大な杭のような樹木が連なっている門はゆっくりと土から引き剥がされる音をたてながら上に競り上がっていく。
外から差すように入ってくるのは新鮮な太陽の光と風
その風に一切微動だにしない兵士達の隊列が門までの一本道に規則正しく並んでいた。
彼らはまるで機械のように、馬の1頭にいたるまでただジッと前方だけを見ている。
両サイドに並び立つ商店や民家
そこから国民の義務として見送るために出てきた民衆たちは皆、精一杯手を振る。
しかし、心の中ではこれから戦場に赴く兵士達を見送る気持ちなんて露ほども無く、この行列を送り出せばこのセレモニーも終わり、いつものように朝食をとる、そんな日常に戻ると思っていた。
そんな時だった
隊列の中心部に置かれた馬車の扉が開く音がした。
そして馬車から降りてくる1人の女性
それはマリアンヌであった。
マリアンヌの姿を見るやいなや、集まった人間たちは声を失った。
どんな宝石よりも美しく揺らめく銀線の髪、今から戦場に赴くとは思えない漆黒のドレス姿、舐めるような腰のライン、端整でうっとりとした顔立ち、すらりとしなやかに伸びた肢体、黒いドレスを着ることによって銀線の髪が一層引き立ちキラキラと輝く。
皇族の中でもほとんど見ることが無かったマリアンヌの姿、甘い髪の匂いがふわりと風に乗って国民達の鼻先をかすめる。
その美貌は男のみならず、女も息を飲むほどだった。
だが集まった内の1人が「マリアンヌ様」と言うと、ハッと我に返ったように、そして怯えるように目を逸らした。
恐怖と不安が混同する情景を流すように見回したマリアンヌ
口角は優越感に浸るように自然と吊り上げった。
「先日のアンジェラの1件のせい、、、いや、恩恵かな?フフフ」
しかしこの場において1番驚いていたのは、後続に隊列をなしていた兵士たち
皆、何事かとざわついていた。
それもそうだろう、ここでマリアンヌが馬車を降りてくるなんて予定に無かったのだから、、、。
ずらりと自分を取り囲むよう民衆や兵士たち、その中心でマリアンヌはそういった諸々(もろもろ)を気にする素振りを一切見せず、城を背後に背負うように立つ。
そして集まった人間全てに聞こえるように、このモヤモヤした霧を吹き飛ばすように声をあげた。
「プルートに住まう我の愛すべき民たちよ!!」
予想もよらない問い掛けに集まった民衆たちは声援をピタリとやめた。
そしてひな鳥のようにあんぐりと開けてマリアンヌの言葉に耳を傾ける。
馬に乗る騎士達、槍や剣を携えて立つ歩兵たち、荷馬車を引く兵士、その全てが予定外すぎるマリアンヌの行動に何事かと民衆と同じように今から出陣するために前進しようとしていた足の動きを凍りつかせるように止めた。
マリアンヌはこの静まり返った空気を楽しむように続ける。
「お前達も知っての通り、先日我が軍は敗戦した。それも長く防衛し続けた敵国アトラスとの防衛ラインにある三日月峠のダイアル城塞を失った。それはこのプルートにおいて重大なる損害だ、民草からすれば今から徐々に治安が悪化していくのは不安であろう、そして商人からすればその治安の悪化が商品の流通に大打撃を与え死活問題にすらなりえる」
マリアンヌは体全体を使って、身振り手振り”お前たち苦しいだろう?”と民衆に訴えかける。その震える声音は切実さを訴えかけ、表情はまるでマリアンヌ自身に降りかかっていることを嘆いているようだった。
民衆たちの不安をあおるように懸案事項をずらずらと述べていくマリアンヌ。
しかし心の奥底から民たちの生活を案じているか、というと…
否!
マリアンヌは心の中では胸を痛めるどころか、完全にせせら笑っていた。
だがしかし、集まった商人たちはその言葉に表情を険しくさせ、集まった民衆たちは襲い掛かってくる未来の不安に押しつぶされそうな表情をする。
それはまるでマリアンヌの言葉によって操られているように…。
集まった人間達の不安そうな表情を視線を走らせるようにして隈無く確認すると、マリアンヌは「よし!」と固く握られたコブシを天高く突き上げた。
「だがその不安、我が払拭してやる! 民衆たちよ、商人たちよ、安心しろ!治安が悪化する前に、流通が滞る前に城塞を彼奴らの手から奪い返してやる! そしてお前達に教えてやる!誰に付き従うのが正解なのかを! 次、我が帰還する際にはお前達の歓声によって我を出迎えよ!さぁ我を崇めよ!そして期待していろ!我がアトラスのゴミどもを血祭りに上げるさまを!!」
商人たちは各々、持っていた商品をポトリと地面に落とした
そしてそれがまるで歓声への号令となったかのように
「「ウオォォォォオオォオォォオオォオォオオオ!!!!」」
それらを確認するとマリアンヌは次に周りの兵達に見回してこう言った。
「そして兵士、騎士の諸君、貴公らにも伝えておかねばならないことがあるのだ」
そう言ったマリアンヌ、声のトーンは今までとまったく違って重々しく声に重石が乗っているかのような声音だった。
そしてマリアンヌは自分の馬車の一番近くにいる立派な髭を蓄えた1人の将を指差す。
「もしこの戦いに負けたら、そこにいるムンガル将軍が死罪となる」
指差された将軍の瞳孔が大きく見開く。
「マリアンヌ様!それは士気が下がるので言わないお約束では!?」
40代のムンガルと呼ばれた将軍は、マリアンヌの予期せぬ行動、いや、言動に慌てて馬を下りようとする。
マリアンヌはそれを手の平で押さえるような動作でムンガルが近づいてくるのを止めた。
そして悔しそうに目を瞑り、首を横に数回振ってみせた。
「確かにそう言った…が、しかし!ここにいる兵達は、軍勢を率いるお前にとって子も同じではないのか?このことを伝えぬまま戦場に行かせるなど我には出来ぬのだ!」
あまりの衝撃に頭が真っ白になる兵士たち。
マリアンヌはそれを首を振ったときに目を薄く開くことによって確認していた。
驚いて目を丸くしていた兵士は確認した中では全員
こいつらの表情を見るだけで、このムンガルという人間が部下からどういうふうに慕われているかを垣間見ることが出来た。
これは本当にこの横で馬に乗っているオッサンが慕われているということの証明。
フフフ、これを利用せぬ手は無いな
マリアンヌは予定通りのプランで行こうと決めた。
そしてその表情を「情けない」と言わんばかりに顰めた。
「敗戦して帰ってきたにも関わらず何もお前達に対して処罰が無かったこと、ここにいる誰もがおかしいとは思わなかったのか? 現皇帝は常勝を持ってよしとする、それが何の音沙汰も無く、汚名を濯ぐチャンスを与えられると本気で思っているのか?」
そしてマリアンヌは「はっきりと言おう!」と前置くとこれ以上なく強く言った。
「ダイアル城塞を失った瞬間、お前たちは皇帝陛下に見捨てられたのだ!!本来なら全員即刻死罪であった!にも関わらず貴様達の首がなぜまだ繋がっているかと、このムンガルがその罪を1人で背負ったからに他ならん!」
所々から聞こえるはムンガルを心配する部下達の視線や言葉。
兵士達の同様は全体に行き渡って、この時にはピークに達していた。
不安の空気をその身で感じ取るマリアンヌ
待っていました!と言わんばかりに手を自分の豊満な胸へを押し当てると、まるで悔し涙を流すように小さな歯で唇を噛み締めた。
「お前達の今の心情、我には分かるぞ。これだけの御仁だ、今までもお前たちのために骨身を削ってきたのであろう、、、我もお前達と同じだ!この男気溢れる御仁の姿に惚れた、だからこそ我はお前達に…いや!ムンガルに力を貸してやることに決めたのだ!」
もはや完全にマリアンヌの言葉に聞き入る兵士達
”計算どおり”
その時のマリアンヌの心情は民衆達に言った時と同じ
いや、それよりももっと酷いものであった
”民草と同じように、これから言う偽善に塗れた言葉に酔いしれ、死地に赴け敗者どもが”
「お前達はこう思っているのだろう、こんな戦場にも出たことの無い小娘が初陣で城塞を落とすなど無理だと。逃げ帰ってきた兵を再び戦場へ赴かせるのはもしやアトラスの軍勢を1人でも倒して討ち死ねという意味ではないか?と。しかしそれは違う! お前達は知っているだろうか、我が母がなんと呼ばれていたかを。戦乙女、その知略によってどんな不利な戦況をも覆し、数多の功績を挙げ、勝利してきた!我は幼少の頃よりその母上のもと英才教育を受けてきた! この程度の劣勢、不利の内にも入らぬわ!」
まぁ実際は、母上からは特にこれといって何も教えてもらってはいないのだが
「本来、我の初陣はクルヘルス地方の制圧戦であるはずだった、華々しく戦果を挙げるはずであった、しかし、我はこちらを選んだ!!理由は先も言ったとおりムンガルの心意気に胸を打たれたからだ!! だが我は母上と違う、1人では無理なのだ」
そう言ったマリアンヌは馬に跨るムンガルの腰に手を伸ばすと、腰に携えてあった剣を引き抜く。
そして持ち慣れない剣を、吹き抜けるような青空を目指して天高く掲げた。
「だからこそ!お前達には義務ではなく、死力を尽くして進軍してもらいたい!己が意思で剣を握り、己が意思で前に進む、今こそ将軍への恩義に報いて見せろ!!!さすれば、我が奇跡を体現してやる!!」
っていうか、マジこれ重いんですけど!?
無理!
無理無理無理!!
助けてぇぇ!!!手ぇがぁぁプルプルするよぉぉぉ!!!
時間を合わせたかのように凱歌代わりの鐘の音がマリアンヌの出陣を祝うように鳴り響く。
マリアンヌは高らかに声をあげる。
「さぁ、皆のもの出陣だ!!」
そう言って持っていた剣をムンガルに投げ返す。
ムンガルはそれを受け取ると、そのまま流れるように鞘へ収めた。
そして馬を下りるとマリアンヌの前に跪いた。
鷹のように鋭い目を閉じて、歴戦の戦を戦い抜いたコブシを自分の胸に持っていく。
「このムンガル、姫の言葉に感銘を受けました。この命、あなた様にお預けいたします、どうぞご存分にお使いくださいませ」
「うむ、期待しているぞムンガル」
マリアンヌが再び馬車に戻り、ドアを後ろ手で閉めようとすると背後から聞こえたのは
「「我らにはマリアンヌ様が付いている!!マリアンヌ様なら奇跡を起こしてくれる!負けるわけがない!!ムンガル将軍の為にも行くぞ、お前たち!出陣だ!!!」」
騎士達の湧き上がる熱気と歓声だった。
「「ウオオオオオオオオ!!!」」
再び巻き起こる民衆達の声援と騎士達の声
それらの声を聞きながら馬車の扉を閉めるマリアンヌ
馬車の中には小さな丸テーブルとティーカップ
マリアンヌは中で待機していたカーナが引いた椅子に座る
そして、一口ティーカップに入った紅茶を飲むと小さく呟いた。
「クックック、奇跡?そんなもんこの世にねーよ馬鹿どもが、あるのは因果の関係のみ。せいぜい我の為に死ぬ気で働いてくれよ、単細胞なうじ虫ども」
プルート暦314年
マリアンヌ・ディ・ファンデシベル、16歳。 初陣するべく兵1000人を引き連れ、ダイアル城塞に向かうべく門をくぐるのであった。
閲覧ありがとうございます。
今回と次回、その次、合計3つのお話はこの章においてプロローグ部分になります。
次回とその次、(02と03)を読んで頂くと、今回のマリアンヌの発言がいかに嘘にまみれていたか、マリアンヌがいかに酷い性格かを分かる仕様にしていますので、よかったら次回も間違え探しをする要領で読んで頂けるとうれしいです。




