09 裏話 カーナの観察日記(下)
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今回も前回に引き続き「日記 + 会話」みたいなテイストで進んでいきます。
カーナがいつもどんなことを思っているのか、その心情なんかを楽しんでもらえればうれしいです。
それではどうぞご覧くださいませヾ(●・v・人・v・○)ノ
○月×日 天候晴れ
私はマリアンヌ様をお送りする為に地下室を出る前、囚人たちに「散らかった囚人たちの死体を片付けておけ」と言った。
にも関わらず進捗状況は全体の8割程度。
まだ所々に囚人たちの血肉が落ちている。
理由は進捗状況の残り2割と同じ、囚人の2割がサボっていたからだろう。
首謀者は間違いなく無数の傷がある男、名前は”ジグセント・カイル”
カイルはあろう事かマリアンヌ様のためにご用意した椅子に座って他数人とくっちゃべっていた。
なるほど、確かにマリアンヌ様のおっしゃられた通り矢を選択した人間全てが忠誠を誓ったわけではないようだ。
「誰がサボっていいと言った!!!」
私がそう言うとサボっていたやつらが蜘蛛の子を散らしたように掃除を再開させた。
しかし傷だらけの男はゆっくりと私の方を見ると、これまたゆっくりと立ち上がった。
「ああ、悪い悪い♪ ちょっと疲れたから休んでいたんだ」
「誰が休んでいいと言った?」
「わかったよ、すぐに作業に戻るよ」
まったく悪びれもしない
心にもない謝罪
勘に触る
「これからよろしくな美人のボス♪ 一緒に姫さんを守っていこうぜ」
それだ、その呼び方だ。
それがまず私の勘に触るのだ。
「おおっと!恐ぇ目だな~でも俺達はもう姫さんに忠誠を誓ってるぜ、いいのか?俺たちは大切な戦力だろ? 理由も無しに暴力はまずいんじゃね~のか? グッハッハ!それに怒ったらせっかくの美人な顔が台無しになっちまうぜ」
マリアンヌ様に対して”姫さん”だと?
マリアンヌ様は神だ、絶対神だ
こいつらは神の慈悲によって生かされたにも関わらず、その神に対して”さん”付けなどとふざけた言動を行った、それだけで万死に値する。
「それじゃあボスも恐いことだし、俺もそろそろ働こうかな。 おい、そこのお前、手に持っているモップ貸せ。あ?お前は手でやりゃいいだろうが」
こいつは自分は既に忠誠を示しているから私に殺されないと高を括っているに違いない。
そしてそれは他の囚人たちに伝染して、結果2割もの家畜が職務を放棄した。
このままではいけない
このような腐敗した状態をマリアンヌ様にお見せするなんてありえない
どうやら見せしめのための血が足らなかったようだ
もっと残虐にするべきだった
私のミスだ
だからこれは私の足らない頭のせいあってマリアンヌ様のせいなどでは決してない
「オイ、待てクソ豚」
「ああ~?だれがクソ豚だ…っ!?」
思いっきりアゴをめがけて殴った。
吹き飛ばなかった。
それどころが倒れもせずに立ってやがる。
不思議だ
殴った場所、角度、威力、全て完璧だったのだが
鍛えているだけでは説明がつかない
おそらく当たる瞬間、私のコブシの威力を和らげる為に後ろに下がった可能性が高い。
こいつは私が考えているよりも戦い慣れしている、それも相当な場数を踏んでいる
まぁ私の前では関係ない。
1発で倒れないなら2発、3発打ち込めばいいだけだ。
2発目の膝蹴りを腹に入れてやろうと思うと、何か反撃するように腕を振りかぶって突っ込んできた。
正直、ハエが止まるほど遅かった。
避けてボコボコにした。
「このクソ豚が!!マリアンヌ様のことをさん付けなど身の程をわきまえろぉぉ!!その椅子は私がマリアンヌ様のためにご用意したのだ!!勝手に座ってんじゃねぇぇ!!!マリアンヌ様を犯してから殺す言ったな!!やってみろ!!その前にお前のことを100回殺してやる!!!!!」
その後は殴りに、殴った。
何回殴ったかは覚えていないほど殴った。
ただ、馬乗りになって息が荒れるほど殴ったことだけ覚えている。
「ハァハァ、、、、、、すまないな、少し本気を出してしまった。 ベッドでいい声でお前を楽しませるぐらいしか能のなさそうな私風情なのだが、お前がとてもいい声で鳴くからついやりすぎてしまったわけだが…もう死んでしまったか」
「もう終わりかぁ~? あんまり気持ちよすぎてこっちにも目覚めて逝っちまいそうだったぜ、グッはっは」
これは普通に驚いた。
殺すつもりで殴ったはずなのにこいつは生きているどころか軽口を叩きやがった
そしてやつは血だらけの顔で私の足首をベロリと舐めやがった。
なんかこう、ゾワゾワした。
今、思いだしただけでも悪寒が止まらない。
「あ~~~うめぇ~な~。もっと上まで舐めてやりてぇが、でも体に力が入らねーわ、グッハッハッハ!」
よし、殺そう
「マリアンヌ様には1匹殺処分しておいたと伝えておく、そのまま逝け」
私は懐に忍ばせていたナイフを取り出した
すると丸メガネをかけた囚人が話しかけてきた。
「お待ちくださいませませ」
押したら倒れそうな、そんなひょろっこそうな男
いや、この際だれが話しかけてきたかなんて問題じゃない
「だれが手を止めていいと言った?お前達はおとなしくゴミ掃除をしていろ、許可しない行動を取ると殺すぞ」
「その男は今殺すには惜しいかと思いますよ」
「惜しいかどうかは私が判断する」
「アリーナで騎士以外で準優勝した唯一の人間ですよ」
「なに?」
「この国においてアリーナへのエントリーは誰でも出来る、しかし現実は騎士たちが上位を独占している、それほどこの国の騎士は強いわけですが、その男は唯一準優勝を果たした民間人ですよ」
「ふん、えらくこいつを生かすのに必死だな、この男はお前の友人か何かなのか?」
「いいえいいえ、ボスにはその男に友人がいそうに見えますか? 私だってあの狭い牢屋の中で嫌々従っていたにすぎません、なのに情などとてもとても、、、。私はマリアンヌ様の有益な物を今壊すのはもったいない、そう思ったにすぎませんよ」
「このウスノロが有益だと?」
「ええ、ボスの攻撃をこれだけ受けてまだ喋れるタフさ、マリアンヌ様の動く盾としては十分有益ではないですか? しかしボスが言うのならしかたないですね、どうぞ殺しちゃってください」
「………」
こいつの目的はなんだろう?
少し考えたが私には分からなかった
しかし、確かにこの男が今殺すには惜しいのかもしれない
そしてマリアンヌ様に有益な存在である可能性がある以上
「いいだろう」
生かすことにした
まぁ何かあったらすぐ殺せばいいだろう
簡単なことだ
最後に1発顔面を蹴って唾を吐き捨てておいた。
○月×日 天候くもり
『100回の訓練よりも1回の実戦』
私はよく父からそう言われた。
昨日は1日牢屋の撤去作業やらで飛んでしまった。
おかげで実に広々として素敵空間が作れそうな気がする、私の総作意欲が湧いて止まらない。
だがそれは逆を言うと何も訓練が出来なかったという意味でもある
つまり訓練初日だからといって優しくなんてありえない。
「お前たち、1人づつ私に剣を持って挑んで来い、私は素手で相手をしてやる」
とりあえずこれでこいつらの個々の実力も知ることも出来るし、強くも出来る。
一挙両得というやつだ♪
× ×
とりあえず21人の実力はほぼ把握した。
あっ、1人数が減っているのはちょっと打ち所が悪くて……テヘ♪
本題だが基本的には似たり寄ったり実力が続いた。
スペックだけならそのへんにいる素人よりは格段に上だが、それでも戦場に出れば間違いなくほとんど死ぬ、その程度の実力だった。
その中で頭1つ抜けていたのは傷だらけの男、カイルだろう
昨日、ボコボコにしたはずなのに、やつは今日には完全回復した姿で私をマジで殺しにきていた。
…まぁ返り討ちにしてやったけど。
だがここで1人、予想外の人間がいた。
あれは最後に残った1人。
マリアンヌ様が気にかけておけと言われた大量殺人で投獄されたアット・シア。
序盤はたいして強いとも思わなかった
むしろ、と言うか剣を振り回しているだけで弱いにも程があるとすら思った。
「ぼ、僕に近づいて来るなぁぁ! …グフッ!?」
それを軽くそれをいなした後、地べたに這いつくばったシアが顔をゆっくりと上げた。
その視線、それは先ほどまでの弱った子犬のそれではなく、まったく真逆のドス黒い沼の底のような視線だった。
「まだ俺は負けて無いよな?」
「…ええ、やる気があるなら立ちなさい」
「じゃあ…遠慮なくぅぅ!」
「!?」
シアは起き上がると同時に体の下に隠していた剣を私に向けて投げてきた。
避けるか?
はたまた掴み取るか?
一瞬悩んだがここは最小限の動きで対処できる避けるを選択した。
私の首横を回転しながら飛んでいく剣
飛んでいく方向を目だけで確認
これを再び拾って、というのは難しいな
そう判断して再び視線だけを正面に戻した
少年から目を逸らした時間は1秒ほど
しかし再び視線を戻したそこに少年の姿は無かった。
どこにいった?
背後に気配を感じた
瞬時に首だけ振り返る
そこには私に飛び掛るようにしているシアがいた
振り払われる前の手の形
手刀
やつの視線の先から狙いを推察
狙いは首か
刀手が振り払われるタイミングでみぞおちに後ろ回し蹴りを入れてやった。
「っ!?!?」
「狙いは悪くない、まぁお前は見込みがあるほうだよ」
「…へ? あれ? なんで僕は? っ!?いたぁぁ!!お腹痛いぃぃ!!」
シアは痛みを思い出したかのように、私に蹴られた腹を押さえて蹲った。
…どういうことだ?
情緒不安定ってやつか?
しかし今の動きは目を見張る物があった
マリアンヌ様に報告せねば
ん?そう言えばマリアンヌ様はシアに目をかけられておられた。
そうか!
マリアンヌ様はシアのこの秘めたる能力を見抜かれていたのだ!
能力が何なのか私にはサッパリだが、そうだ!そうに違いない!さすがマリアンヌ様だ!!
○月×日 天候晴れ
昨日の1件でやつらの問題点が浮上してきた。
それが何かと言うと…
全員の動きが遅すぎる!!
という点だ。まぁシアは別にして
これはもはや看過できないレベルでスローモーションかと錯覚したぐらいだ。
この実力では到底マリアンヌ様の望まれる任務において、よき成果が出るとはとても思えない。
しかしスピードなんて一朝一夕で身に付くものではない。
だからこんな訓練を思いついた。
「今からボウガンを撃つので、お前達うまく避けろ」
「無理だ!!」
全員がそろってそう言った。
なんとも情けない
「お前達は先を読む能力が著しく欠如している。ある程度は戦いながら相手の行動の先を読め、そうすれば実力が離れた相手であろうが一方的に短時間でやられるという醜態を晒すことは無い、現にお前達は私に好き放題殴られているだろ」
「それはボスが強すぎるのでは…」
「何か言ったか?」
「いえいえ」
「1つコツを教えておいてやる。 この訓練は反応スピードを鍛えるためでなく、先を予想する能力、観察眼、そういった能力を鍛えるためにやる。つまり私の持つボウガンの向き、視線の先、引き金を引く指、全てに注意を払え、そうすれば死ぬことは無い」
結果は4人死んだだけ。
ほ~ら、あいつら大げさ言いやがって
結局死んだのはたった4人じゃないか
後半なんてほぼ全員がラクに避けれるようになっていたし
そもそもアレぐらいの距離のボウガン1つ避けれない人間など、どうやって鍛えろと言うんだ?
見込みの無い人間は早々に脱落してもらう
○月×日 天気たぶん晴れだったと思う
最近、もうマリアンヌ様に対して有益であるかどうかという考える前に手が出ることが増えた。
だってなんでこんな簡単なことが出来ないのか、それが理解できないんだもん。
「お前達に武器の使い方を教えていく、まずは各々、今から扱い方を教えていく武器を渡していく」
「はぁ~?なんだよこの小さいナイフは? 俺みたいなビックな男がんなもの…っ!?」
「うるさい、殴るぞ」
「お前もう殴ってるよな!?」
「ナイフというのは非常に使い勝手がいい、相手に致命傷を与えることができ、尚且つ投げることもでき、手元に隠しておくことも出来る。 では実戦形式で教えていこう、おい大木、私を殺しにこい」
「大木って俺かよ!」
「遅い、デカイ、トロイ、ウスノロイ、お前しかいないだろ」
「オッケ!殺してやる!!」
「お前たち私の動きをよくみておけ、後でやってもらうからな」
× ×
「クソッ!強…すぎる」
「お前が弱すぎる。 お前たち、今私がやったことを2人1組でやれ」
「は、はい」
「おい、誰が刃の部分を隠してやれと言った?」
「え、実戦形式って、本当に殺しあえという意味で?」
「ああ」
「いやいや、死にますよ!」
「今、私に殺されるのとどちらがいい? 当たる瞬間止めろ、それで1本としていい。3本取ったら終了だ、では始め!」
正直、子供のお遊戯を見ているようで腹が立った。
「そこっ! 誰がそんなナイフの振るい方をしろと言った!」
「そこっ! ナイフの間合いでそんなに離れる必要があるかっ!!」
あ、そういえばその時は1人死んでたな。
○月×日 天気は晴れ…いや、くもりだったかな?
その日、私の中で1つの光明が生まれた。
1人で弱いならみんなで集まればいいじゃない!
塵も積もれば山となる
つまりゴミも集まればいっぱしの暗殺者集団になるだろう作戦だ!
昔、父にチームを組む場合4人以上は止めておけと言われたことがある。
だから4人編成のチームにしよう
えーと現在は16人だから…ちょうど4で割れるじゃないか!
ラッキ~
割り切れなかった数人殺すところだった(笑)
「今日からチームでの訓練も取り入れていく、私でチームを別けるから取りあえずそれで1回私を本気で殺しに来い」
この日は珍しく誰1人死ななかった。
なんだろう
物足りない
そんな焦燥感にも似た感情が私の中にポツリと生まれた。
○月×日 天気は見てないから知らない
マリアンヌ様、元気かな~?
早くお会いしたいな
そう言えばマリアンヌ様が危惧されていたことが起きた。
私を殺そうとしてきたやつが現れたのだ。
挑んできたのは2人組の男だった。
やつらは私が新調して厳重に取り付けた扉、それを開けて室内に1歩足を踏み入れた瞬間に斧を振りかぶって襲い掛かってきた。
まぁ当然避けて、これまた当然だがその2人は即殺処分した。
やつらはたしか斧を振りかぶりながらこう言っていた
「このまま死んでたまるかー!!」
死にたくないなら黙って私の言うことに従っていればいいものを…
生きるために私を殺す?
それは自殺と変わらないとまだ分からないバカがいたとは
○月×日 天気なんて気にしている余裕は今の私には無い!
今日がマリアンヌ様が来られる日だ。
私は今日出した課題で、ボロボロで疲れきった囚人たちに頭を抱えながら新たに作った椅子に座る。
目の前には、これまた新たに作った机
その上には最後の日記を書くべく万年筆を握っていた。
私は現実から目を背けるためキャップを開けては閉め、開けては閉める。
「困ったぁぁ~~~」
やつらはと言うと、未だに私のコブシ1つ避けられないという不甲斐無さ。
シアも訓練初日以降はまたいつものやつに戻った
あの時のはいったいなんだったんだ?
あいつだけでもあの状態なら成果としてマリアンヌ様にお見せできたのに…
何回か実験がてらシアを殴ってみた
なんなら、さっきもダメ元で殴ったり、蹴ってみた
変化なし
「クソっ!なんてこったい!!」
このままだとマリアンヌ様に顔向けできないではないか!
だって結果だけ見れば、ただ囚人の数が22人から8人減って14人になったというものだけなのだから…
「あ~~昨日に戻りたい、それならまだ16人残ってたのに…」
「その2人が残っていたらどう変わるのだ?」
「14と16では印象がまったく違うだろ、四捨五入したら10と20だぞ、ちょっとは考えろよバカ」
「…バカで悪かったな」
「え?」
何で!?
「ハフ!ファ!マ、マ、マリアンヌ様!? なぜこちらに!?」
「いや、今日来るっていったじゃん」
「しかし!たしか午後から来られると」
「もうとっくに午後だろうが」
胸ポケットに入れていた懐中時計を取り出す
開かれた文字盤が指していたのはなんと午後3時
この地下室にまず時計を設置しておくべきだった!!
マリアンヌ様は手の平を差し出して指先を揃えてチョイチョイと上に上げる。
「で、報告書は?」
「え、え~と今、手元に、、有ったかな?」
「あるだろ、今手元に」
私が今書いてたんだった
「…ありましたね」
「早くよこせ」
「はい」
マリアンヌ様は黙ってページをめくっていく。
そして私の日記をパタンと閉じられるとこう言われた。
「詳細については後からゆっくりと見ることにするが、、、1つ聞きたいことがあるのだ」
「は、はい、何でしょう?」
「お前、後半は毎日書かずにさっき一気に書いたろ?」
マリアンヌ様に隠し事はできないなと思った。
最後まで読んでいただきありがとうございました。( v^-゜)Thanks♪
今回でこの章も終わりになりますが、次回からは一気に話が進んでいくので、よかったら引き続き読んでいただけるとうれしいです(*・∀・`)
次回からついに、ちょっとづつですが魔法の要素が出てきますので、こういうのが好きな方は喜んでもらえるかな~と思ってます。
ちなみに私は魔法もの…大好きです!!*॰ْ✧ً⋆。˚٩(´͈౪`͈٩)⋆。˚*ْ✧ं॰*




