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魔女と呼ばれた少女 -少女は死体の山で1人笑う-  作者: ひとりぼっちの桜
【第1章】 第一皇女 マリアンヌ
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02 差し伸べられる手

今回は心情を頑張って書いてみました。

あんまり長くないので、初見さんもよかったら読んでね。



                                  (改稿済み。2016.09/01)


 ここはマリアンヌの自室

 全てが黒で塗りつぶされた世界


 開けられたカーテンレールから差し込む光が骨董品の数々をきらびやかに彩り、部屋の中央には気品のある刺繍ししゅうが施された高級な漆黒色のベッドが陣取っていた。


 遠目で見渡せるほど広い室内に存在するのは静寂だけ…。

 そんな中、ドアノブが一気に開いた。


「くそぉ!!」


 部屋の中に地響きを立てるように入ってきたのは、怒りに任せたヒールの音とその後を気遣うように付いてくる静かなブーツの音。


 無造作に開けられたドアは耐久地が0になる勢いで閉められた

 四方を見渡せるほどの部屋の中心で1人の女の子が叫び狂う。


「あのぉぉぉぉ劣悪種どもめぇぇぇ!!!!!!!」


 その罵声と共に売れば平民の家が1つ建てられるほどの高価な花瓶が砕け散った。

 中に入っていた水が床一面に敷かれた高級そうな漆黒のカーペットにぶち撒けられ、割れた花瓶の欠片が黙って立ち尽くす赤毛のメイドにあたる。


「道端に転がっておる石のような分際で、われに意見だと!? そろいも揃ってわれを馬鹿にしよってぇぇ!」


 1つ、また1つ、高価な物質がその原型を変えていく。

 どれもがマリアンヌが自分で選んだお気に入りだった物

 しかしそれも今日、王の間に出発する前までのこと

 血走った瞳には理性という文字は無かった。


「殺してやる、殺してやる!!!」


 憎い、すべてが憎い

 父の性のけ口として王族に入ってきた卑しい女ども

 そこから生まれた腹違いの兄弟たち

 周りにいた大臣たちの冷ややかな視線

 黙って見守っていた騎士たち


「やつらを1人残らず、ズタズタにして殺してやる!!」


 高そうな漆黒のカーテンは力いっぱい引き裂かれた。

 本棚やクローゼットは大きな地響きと共に横たわる。


 女性らしい線の細い身体

 柔らかく筋肉のついていない腕

 年々膨らんでいく胸

 それらを映し出す鏡は、椅子の一撃によって機能不全を起こし、蜘蛛の巣のようにひび割れた。


 目に付くものは全て破壊し終わるとマリアンヌの息は上がっていた。


「…はぁ、はぁ」


 激しく上下に息をするか細い肩が視線をどんどん下げていき、力尽きたようにマリアンヌの膝が崩れていく。

 そして花瓶の水で濡れた黒いカーペットにバタリと落ちた。


「マリアンヌ様…大丈夫ですか?」

「うるさい、カーナ!!われに話しかけるな!!出て行け!!」


 出て行けと言われた赤髪はメイドは頭に備え付けられているカチューシャを左右を振った。


「私の仕える方はマリアンヌ様しかおりません」

われが皇帝になれぬ今、お前のあるじわれではない!たかだか2、3年ほど前から仕えている程度で何が分かる! 分かったら次の飼い主を探しにでも行け!」

「あなた様以外に皇帝に相応しい方はおりません。それに私はマリアンヌ様に忠誠を誓っております。代わりの主などおりません」

「お前のような下々の者に王族の何が分かると言うのだ!それに忠誠を誓うだと?軽々しくそんな騎士道を女のお前が使うな!お前は役目としてここにいて使用人としてわれに使えているにすぎないではないか!!」


 割れた花瓶の破片を憎しみで強く握るマリアンヌ。

 白い指先から赤い雫がポタポタとカーペットに斑点はんてんを形作っていく。

 それを見たカーナ、そっとマリアンヌの手に自分の手を添える。


「私の父は現皇帝陛下の下、近衛団長を勤めておりました。父は厳しく、私にも小さい頃から父に剣術や体術を教え込まれました。 母は心配そうに見ていましたが、実を言うと楽しかった、国の英雄のような父から毎日受けた訓練、どうやら私は昔から勉学より体を動かすほうが好きだったようです。そんな父ですが数々の武勲を挙げて最後は忠誠を誓った陛下を守って戦死しました。それはまだ幼かった私にとって悲しみではなく誇りでした。涙を流す母の傍らで埋葬される父を目の前にしても涙ではなく私もこうありたいという気持ちのほうが強かった。だからこそ自分自身強くならねばと、しかしながら父の戦死後に私を待ち受けていたのは女であることへの差別です」


 力いっぱい握られていた陶器の破片を、カーナはゆっくりとマリアンヌの細い指先から離す。

 すると破片はギラギラとした切り口からカーペットに沈んだ。


「今までは気軽に入ることが出来た剣術や体術の訓練場にも入ることが出来なくなりました。どうやら父の部下達はみな私が女だというのが気に入らなかったようですが、父がいる手前言えなかったようですね。 そしてその後は父の同僚たちに形見のナイフを取り上げられ【カーナちゃんのような女の子がマリアンヌ様に仕えたくばメイドしかないよ】とあざ笑われました。 それからは覚えたくも無い給仕や掃除の訓練をやらされメイドのイロハを教え込まれました。毎日が地獄のようでした。【私の手は給仕をするためにあるんじゃ無い!マリアンヌ様の敵を殺すためにあるんだ】そう言いながら紅茶やお菓子作りを覚えました。【私の頭は食事のマナーを覚えるためじゃない!マリアンヌ様の敵をいかに迅速に効率的に殺すかを考えるためにあるんだ】そう口にしながらテーブルマナーの本を夜遅くまで読みふけりました」


 つらい過去を話す間もカーナは平穏な顔をしたまま、手にした救急箱を開きマリアンヌの手のひらの血をふき取って消毒、包帯を優しく巻いていく。

 まるで自分に起こったことなど今のマリアンヌ様の心労しんろうに比べたら大したことではないと言わんばかりに


「それでも私が私として保っていられたのはマリアンヌ様がいたからです」


 われが?と、問うようにマリアンヌは弱りきった顔を上げる。


「はい。 マリアンヌ様は覚えてらっしゃらないでしょうが、マリアンヌ様が生まれて間もなかった頃に私は父に連れられてマリアンヌ様に会いに行ったのです。産籠うぶかごで寝ていらっしゃるマリアンヌ様の傍らで父にこう言われました。 【このお方は次の皇帝になるだろう。だからお前はこのお方を守っていくのだ。今この時からお前の命はお前の物ではない、もちろん俺やお前の母の物でもない、マリアンヌ・ディ・ファンデシベル様の物だ。忘れぬようによく見ておけ、そして刻み付けろ、自分の心に】と、聞いた時は何のことかよく分かりませんでしたがマリアンヌ様の寝顔を見たときに私は天啓てんけいを受けたような衝撃でした、そして確信したのです。 私はこのお方を守る為に生まれてきたのだと。だからこそ父の死後、どんな差別を受けても私は父から続けろと言われた訓練を続け、研鑽けんさんを重ね、私が私でいつづけられたのです。母、家、父が築いてきた名誉、全てを失い死のうと思った時ですら私の命は私の物ではないのでその権利が無いと踏みとどまれた」


 思い出話を終えるカーナ。

 その手はちょうど治療も終わり、思い出を一緒に閉じ込めるように救急箱をパタンと閉める。


「ですから私の居場所はマリアンヌ様のそばしかありません。行く場所が無いのです、だからどうか私を見捨てないで下さい」


 ギュッと握られた手から伝わって来る体温はとても暖かかった。

 それはまるで今まで1人で生きてきたマリアンヌの心をじっくりと溶かすように


「私に、出来るかな?」


 ちぎれる寸前の絹糸のような声だった。

 カーナはそれを結びなおすように手をいっそう強く握る。


「顔を上げてください、マリアンヌ様。 私にとってあなた様は神なのです、自信を持ってください、神に出来ない事などこの世にありません」

「フッ、この状況で自信を持てか、、、、」


 苦笑いがこぼれた。


「カーナ少し落ち着いて考え事をしたい、紅茶を入れてきてくれ」

「はい喜んで。こう見えても紅茶を入れるのは得意なんです、なんと言っても10年ほど練習してきましたので、最高の1杯をすぐにお持ちいたします。私の主マリアンヌ様」



ここまで読んでくれてありがとう。


ちなみに最近、チェインクロニクルVってゲームにハマってます。

なかなかレアカード出ない・゜・(ノД`)・゜・

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