157 3日目⑭ 歓迎パーティーとカウントダウン
クリックありがとうございます♪(#^^#)この世で一番好きな曲は?と問われたら『kalafinaのARIA』と答えるひとりぼっちの桜ですw
皆さんはこの曲を知っているかな~? よく私は”美しい”という表現をしますが、このARIAには美しさが詰まっているのです。そう…歌詞、声、曲、テンポ、雰囲気、全てが美しいのです(T_T)
気になった皆さんは、よかったら探して聴いてみてね~♪
さて、今回のお話ですが…実は1週間前に完成しておりました(=_=)でもね、納得できなかったのです。だから、ひたすら完成度を高める為に更に1週間かけました(ΦωΦ)ええ、俗に言う煮込み作業ってやつです(´・n・`)
それはと言うのも今回のお話は、今回の章を書くと決めた時に「絶対に書こう!」と思っていた3つのシーンの中の1つだったからです。1つ目はマリアンヌ到着時の領主をボコボコにしたシーン、2つ目は今回のお話、3つ目は終盤のお話…。
この3つのお話は妥協できなかったので、待っていて下さった皆さんには大変申し訳ないのですが1週間、更にかけてしまいましたwでも自分でも「やりきった(t=_=)燃え尽きたで…」と思えるお話になったかと思うのでお許しをww え?文字数ですか?…原稿用紙15ページですが何かw
今回は絶対に”とある事情”から切れないのですw
まぁ週末などを使ってゆっくり読んで頂ければ幸いです♪あっ、因みによかったらなのですが、今回のお話を読む前、、出来ればなのですが、、少し前のお話149話【3日目⑥僅かな変化】から一気に読んで頂けると嬉しいです(;^ω^)まぁ今回のお話も凄い文字数だし、無理にとは言いませんが、そこから一気に読んで今回のお話を読み切ると更に面白くなるような仕掛けをしているのでよかったら…w
では今回のお話、ちょっと長いですがどうぞお楽しみくださいませ~♪
徐々に周囲の空気が暑さを忘れた頃。
<PM20時…>
「それでは、マリアンヌ様の、この地へ来られた事を祝して…カンパーイ!!」
もの凄くやり慣れている感のある兵士長ソウスの音頭に、沢山のグラスが掲げられる。
『カンパーーーイ!!!』
そして盛大に始まるマリアンヌの歓迎パーティー。
パーティー会場は1階食堂であった。
まぁ、旅芸人を呼んだり、領主の部下たちが飲み食いする事を考慮すればここしかなかったのだろう。
今尚、飢餓で苦しんでいる領民達が沢山いるにも関わらず、それをあざ笑うよな豪華な食事がテーブルに並び、それを笑いながら食べる領主の部下達。
だがそんな部下達の誰もがマリアンヌの近くに居る領主を一度は見るのだが、領主の横には大男のカイル、そしてカーナ、他のカラスたちも居る事で、関わってはいけない、近づいてはいけない雰囲気を醸し出していた。
つまりボコボコに殴られ、牢屋にまで入れられた領主がマリアンヌの近くに居る事で些か緊張感もあるが、領主の部下達は完全に見てみぬフリをして飲み食いしているのであった。
そしてマリアンヌはというと、コロナの甲斐甲斐しい食事介護を受けながら口だけを動かしていた。
だが瞳だけは内通者候補である容疑者4名を目の端に捕らえ続ける。
「マリアンヌ様、口を開けて頂けますか?」
「うむ、あ~ん」
他の部下達同様に楽しく笑いながら酒を飲む兵士長ソウス。
1人離れた所で黙々と食事を取る庭士ゴーツ。
次々と豪華な食事を運ぶ料理長ボラン。
唯一渋い顔をしているのは軍師フイレルン。
変わり無い4名の姿。
「マリアンヌ様、こちらお料理に合うワインでございます」
「うむ」
コクコク。
「ん?これ美味いね」
「はい。マリアンヌ様がお好きそうな物をここのワインセラーで見つけまして」
「ふ~ん、飲んだ事がないワインだ、プルートにはこんな味のワインなんて…」
マリアンヌはコロナの持っているワインボトルのラベルをマジマジと見る。
あ~なるほど。
「おや?」
一方、違うワインを飲んでいた領主。
マリアンヌの飲んでいるワインボトル、そのラベルを見た。
その瞬間、「静かにしていろ」「喋るな」とマリアンヌに言われていた領主の瞳が見開いた。
「ぐぇ!そ、それはワシの秘蔵の一品!? なぜ!?おい!そこのメイド!なぜお前がワシのワインを!ふざけた事をしよって!」
今まで静かだった領主の怒号。
部下達はあの数日前までの日常を思い出す。そして一瞬ザワッとなる食堂であったが、現在領主の前で向き合っていたのは部下達ではなくコロナ。
彼女は真正面から領主と向き合う。
そしてカーナのように怒り狂って言葉を発するのではなく、あくまで由緒正しいプルートのメイドとして口を開いた。
「領主様は何がそんなに不満なのでしょうか?」
領主は老人とはいえ結構な剣幕で怒っているのだが、そんな領主に一切動じないコロナ。
それどころか若い女性であるのに彼女は自身の正当性を正面から唱えた。
「マリアンヌ様に喜んで頂ける…それは全ての人間にとっての幸福。領主という立場であれば尚の事では無いのですか?」
「グッ!?」
その澄み切った瞳はカーナと同じ、完全にマリアンヌを神と信じて疑わないプルートの狂信者特有の瞳だった。
「それともあなたはプルートに忠誠を誓っていない、自身の財の方がマリアンヌ様の笑顔より価値があると仰られるのでしょうか?」
「いや、それは…」
言い淀む領主に、マリアンヌは口の中に残るワインの余韻を楽しみながら上機嫌で口を開く。
「コロナ、このような田舎の領主にどれだけ正論を説いても無駄だよ。それが分からないからここに居るんだから…。そして領主よ、我が飲み食いする物について文句でもあるのか? もしもこれ以上騒ぎ立てるなら、あの約束は反故になるけど…お前はそれでいいのかな?」
「うぐっ…」
マリアンヌが言う約束の反故が意味する事。
それが何なのか、もちろんすぐに察する領主。
つまりは何も言えない。
だがよほどの秘蔵の品だったのだろう。
領主は悔しそうに唇を引き結むのだった。
「マリアンヌ様、次は羊の肉のソテーになります」
「うむ。あ~ん」
そこから1時間ほど経った辺りだろうか、夏の夜空に月がスッと見え出した頃。
3人の人間がソウスの部下に連れ添われて室内に入って来た。
場の空気がガラッと変わる。
食堂に置かれた大きな置時計は午後9時を指している。
そして入って来た3人組はマリアンヌや領主が居る一番奥、ふかふかの絨毯が敷かれた上座までやって来ると跪いた。
<PM21時…>
2ヶ月前にプルートで聞いた懐かしい声が響く。
「マリアンヌ・ディ・ファンデシベル皇女殿下、それに領主様、この度は我々、黒き翼の一座をこのような素晴らしい場にお呼び頂きありがとうございます。どうぞ今宵は心行くまで我々が奏でる歌や演奏、舞をご堪能くださいませ」
そう言ったのは黒く流れるような長髪に露出の多い踊り子の服身を包んだラン。
後ろにはデコレーションされたリュートを背負い、奇抜な髪をしたシャルドネ。
そして数多くの荷物、剣を携え、フードを深く被って顔を隠しているオム。
2ヶ月前と変わらぬ3名の姿。
マリアンヌは一切表情に出さないまま言った。
「ふむ、領主から色々聞いているぞ!素晴らしい歌に演奏、舞いを披露出来るらしいな!心から期待しているぞ!」
「…? …ぁ~、ありがとうございます。マリアンヌ様のご期待に沿えるような演奏させて頂きますわ」
わざわざこの食堂全体に聞こえるように、いつもより気持ち大きな声で喋るマリアンヌ、そして瞬時にその意図を理解するラン。
ランはマリアンヌにだけ分かるように軽く頷いた。
そして、その後はすぐ完全に「初対面です」といった態度に戻った。
それを見てマリアンヌはほくそ笑む。
そして勝ちを確信した。
素晴らしい!
ラン、今のやり取りだけでおそらくこちらの意図は読み取ったな。
内通者に見られているこの状況を。
我が内通者探しに難儀している心境を。
カーナやシャルドネの進言もある以上100%信用は出来んが、それでも
この勘の良さ、頭の回転の速さ、カーナとウィノを足したような存在だな。
この女が2ヶ月も住んでいて、鐘の音なんて目立つ事象を気づかないはずが無い。
つまり、こいつならきっと”鐘の音”について心当たりがあるだろう。
フフフ、内通者め。
優雅に食を楽しめるのも今宵までだ。
ランに話を聞き次第、貴様を罠にはめる策を練る。
最後の晩餐を存分に楽しむが良い。
「フフフ」
「どうかされましたか?」
「いいや、君達の演舞が楽しみで楽しみでならないだけだよ」
そして始まった演奏…。
それは夏の暑さを忘れさせるような演奏であった。
主役を語るのならばランではなく、もちろん演奏と歌を同時にこなしていたシャルドネだろう。
あの意味不明な宝石がキラキラと輝くド派手なリュートから奏でられているとは到底思えないほど繊細な音色で奏でられる演奏に、音楽をするには向かない大量の三つ編みを頭の上で複雑に編み上げた奇抜な髪、完全にギャル…そんな人物が発しているとは到底思えないほどの透き通るような歌声。
聴いた瞬間、この場に居た全員を魅了した。
そしてその横で舞い踊るラン。
その踊りはシャルドネの演奏の付け合せなどではなく、まぎれもない一級品であった。
煌びやかであり妖艶な舞い、これもまた見た者を魅了した。
2人の名手が奏でる音楽は至高。
一流の演目が続く中、領主はマリアンヌに話しかける。
「ど、どうですじゃ?皇女殿下。 ワシの言った通り素晴らしい演奏に歌、そして踊りですじゃろうに?」
「うむ、確かにお前の言う通り素晴らしいな。今、我は感涙の涙を流しそうなほど感動しているよ」
まぁ、2ヶ月前にも事前に見ているからそこまでの感動は無いけどね。
その後、途中休憩を少し入れたが、ランたちの演目はたっぷり2時間演目は続いた。
<PM23時…>
拍手と大歓声が鳴り止まない。
そんな中、ランたち3名がこちらにやって来る。
「いかがでしたか?マリアンヌ皇女殿下。 我らが奏でる演舞、楽しんで頂けたでしょうか?」
演奏後という事もあり、ラン、シャルドネは少し息を整えながらマリアンヌの座るテーブルの前で跪きそう言った。
マリアンヌは薄く微笑む。
「領主に聞いていた以上だ、素晴らしい舞いに歌に演奏であった、褒めて遣わすぞ」
「ありがとうございますですわ」
「だがそれだけに不思議でならない」
「なんでしょうか?」
「これだけの素晴らしい演奏技術に歌、舞いを持っていて、なぜこのような何も無いような地に立ち寄ったのだ? お前達ほどの芸があるのならもっと大都市でいくらでも興行できるだろうに、今ここでは紛争が起こっている。お前達も知っているだろ?なのになぜ?」
そう言うとランは妖艶に笑う。
「うふふ、それはとてもくだらない理由なので、、とてもとてもマリアンヌ皇女殿下にお話できるものではありませんのでご勘弁くださいませ」
「構わぬ、申せ。今、我は機嫌が良い」
なぜなら内通者の首元を羽綿でゆっくり絞めているような気分だからな。
「私の名と関係があるのです」
「名前だと?」
「まだ名乗っておりませんでしたが私の名はランと申します」
「うん、で?」
「そしてこの地方の名はバ・ラン」
「うん」
「同じ名を持つ地、運命を感じまして」
「え? 以上?」
ウフフと妖艶に笑うラン。
「はい、そうですわ。後ろの仲間たちにも色々と言われましたが、運命である以上は仕方ありません。ここに訪れる以外の選択肢、私には無かった」
「ふ~ん、なるほど、名前ね。実に愉快な話を聞かせてもらった」
クックック、と笑うマリアンヌ。
実につつがなく予定調和の会話をこなす両者。
すると次に話しかけてきたのは後ろに居るシャルドネであった。
彼女は久しぶりに会ったマリアンヌの姿に目をキラキラさせながら、
「ほんとランさんはぁ~ワガママなんですよ~」
「お前の名は…」
「…あ~名乗ってませんでしたぁ~。私はシャルドネって言いますぅ。この一座を結成して2年、いつもいつもランさんのワガママに私と後ろのオムさんは迷惑しているんですぅよ~」
2ヶ月ぶりに改めてこの独特な甘ったるい声を聞くと、さっきまでの美しい歌を歌っていた人物とはあまりに違って頭が混乱する。
「ふ~ん、3人しかいない大切な仲間とはいえ、振り回されて大変だな。因みに演奏中にずっと気になっていたんだが、なんでお前が弾いているそのリュートは宝石などが所狭しとデコレーションされてるの?」
出発時に渡した時は、そのリュート確かに何も付いてなかったよね?
「だってぇ~その方が綺麗じゃないですかぁ♪」
いや、そんな感情論を聞いてるんじゃなくて、何処で宝石を手に入れたのだ?
出発前、金は持たせたが宝石なんて売ってる場所、プルートからここまでの道のりで無いはずだよね?
「綺麗な物で演奏した方が綺麗な音が出る、これって世の中の真実って感じじゃないですかぁ~?」
「な、なるほど」
そして、こいつブレねぇな。
「え~と、後ろのお前、確か名はオムでよかったのだよな?」
「はい」
「お前も機材の準備などご苦労であった」
「ありがとうございます」
マリアンヌは1つ咳払いをすると、
「素晴らしい演舞の礼だ。パーティの残り時間、そう時間があるわけではないが、お前達も食事を楽しんで帰るがよい」
「ありがとうございます。皇女殿下」
そして用意された席に向かって行く3名の旅芸人。
その後ろ姿を見ながらマリアンヌはスーと内通者候補の4名を流し見る。
あいつらパーティー中も、何1つ変わらなかったな。
表情が変わらない、笑っている者は笑い続け、仏頂面の者は仏頂面のまま、無関心の者は無関心のまま。
これだけ慎重で思慮深い内通者だ、我が反乱軍たちと接触した事は既に何かしらの方法で知っていてもおかしくない。
にもかかわらず。
怯えているのか?
今、お前はいかなる感情を持って食事をしているんだ?
きっと臆病者の君の事だ、心の中では我が何を考えているか気になってしかたないだろう。
フフフ、数時間後には貴様を見つけてやる。
その時にで教えてやろう。
お前の命と引き換えにな。。
<PM23時50分…>
とても大きな置時計、その文字盤が間もなく深夜0時を迎えようとしている。
マリアンヌは大きな溜め息を吐く。
「フ~やっと終わりか」
いつもより少し食べ過ぎたかな?と思いながらもマリアンヌは同時に考える、この後の展開を。
「う~む」
とりあえず0時を回ったらパーティは即お開きにする。
そしてそのままランたち3人を我が居る部屋に呼びつける。
呼びつける理由は”先ほどの演舞を見て感動したので褒美をやる”とか適当でいいだろう。
そしてランと密な情報交換、鐘の音について心当たりがあるか?と問いただす。
ランの基本スペックを考慮すれば何かしら心当たりがあるだろう。
つまり鐘の音の場所、それさえ分かれば策を講じて内通者を罠にはめる方法を考える。
そうだ、ホリーでダメならカーナを使ってもいいな。
カーナの性能なら大抵の…。
その時だった。
食堂に置かれた大きな置時計が
『ボーーーン!』
と重圧な音を響かせたのは。
<PM24時…>
「っ!?」
これはただの時報。
12時間に1回鳴るだけの。
この屋敷で生活している者たちは誰もがそう思うだろう。
だが誰よりも早くその音に反応したのはもちろんマリアンヌであった。
彼女の身体はビクッと反応する、と、同時に脳内で瞬時に例の4枚の紙の文字が浮かび上がる。
【1枚目/2枚目/3枚目】
<緊急事態→来訪者の敵味方不明→動けない>
<待機→期間は不明→皇女が帰るまで絶対に動くな>
<花壇→2-11→1-4>
そして4枚目が…
【鐘の音が鳴る時に分かる】
鐘の音!?
どうして、どうして領主の館で鐘の音が鳴る!?
ここは反乱軍のリーダーが入り込めない場所だぞ!?
そんな所でなぜ!?
そうこうマリアンヌが考えている間にカーナやカラスたち、例の紙を見た全員も同じ回答に行き着いた。
ガタッという席を立つ音、今まで黙って領主の近くでカイルと共に領主を監視していたカーナが急ぎマリアンヌの近くまでやって来た。
凶悪な赤髪のメイドが急に立ちが上がった事で一瞬室内がどよめいたが、カーナは構わずマリアンヌの耳元に顔を近づける。
「マリアンヌ様、鐘の音が!」
「わ、分かってる。それとなくすぐに見て来い」
「はい!」
少し不自然な早歩きで時計の場所まで向かうカーナ。
いったい何が起こっている?
頭が追いつかない。
どうするのが正解だ?
そもそも内通者が反乱軍リーダーに送った紙に書いてあった”鐘の音”とは本当にこの置時計の鐘の音の事を指しているのか?
違うかったならこの音は偽者で、本物は…。
マリアンヌの考えが纏まらないうちにカーナは大きな置時計をゴソゴソゴソゴソ、そして早歩きで帰ってきた、1枚の紙を手にしながら。
「マリアンヌ様マリアンヌ様マリアンヌ様。意味不明な文章の紙が1枚、置時計の裏に貼り付けてありました」
「マジかっ!なぜ…そんな」
紙があったという事は”鐘の音”はここ、領主の屋敷を指していたという事になる。
でも、なぜ?
なぜなんだ。
ここには反乱軍の人間は絶対に入り込めない、読ませたい相手が入り込めない場所に手紙を置く理由が分からん!
まだ動揺で上手く頭が回らないマリアンヌ。
そんな彼女の前でバッと開かれた紙には1行、たった1行こう書いてあった。
【私を探しているのはお前だ】
マリアンヌの目が点になる。
「はい? ”私を探しているのはお前だ” …どういう意味だ?鐘の音が教えてくれるのは食料などの受け渡しの場所ではないのか?意味が分からない」
1~3枚目の紙との関連性はあるように思えない。
4枚目と5枚目ならば文章が続けられそうだが。。
つまり鐘の音が鳴る時に分かるのは…私を探しているのはお前だ。
となる。
鐘が鳴ったときに、私を探しているのがお前だと、分かる?
「ハッ!!まさか!!」
不自然な点はいくつかった。
でも確信は持てなかった。
だが立ち止まるべきだった。
そう…この状況すらもおかしいと思うべきだったのだ。
マリアンヌは立ち上がってしまった。
そして4人の内通者候補の容疑者の顔を見た。
見てしまった。
4人の表情は全員が「どうしたんだ?」という驚きの形をしていた。
「あ」
その瞬間マリアンヌの額から汗がひと筋、
そして自分のミス、自分は内通者の罠にかかったと理解した。
マリアンヌも焦っていたし、頭も混乱していた。
だが、そうであったとしてもマリアンヌらしからぬ全てが悪手。
全てが最悪手。
せめて今、4人の顔を見ていなければ何とでも言い逃れする事ができた。
敗北でなくても引き分けに持ち込めた。
もっと言えばマリアンヌならそこから勝ちに持ち込めた。
マリアンヌは勝利の確信から完全敗北、天国から地獄を経験し、悔しさで歯を軋ませながら呟く。
「いつからだ?…いつから攻守が入れ替わっていた? 容疑者たちに対して屋敷から1日出るなと言った時、あの時は間違いなく我が攻め側だった。これは我が内通者を一方的に探して処刑する、そういうゲームだったはずなのに、、いつからこんなに罠を仕掛けられていた?」
そして事切れる様に椅子に再び腰掛けると、頭をゴツンとテーブルに打ちつけたままマリアンヌは今の状況を整理していく。
声は心の中で呟くように、まるでテーブルと会話をするように。
「そういう事か、そういう事だったのか、、。慎重で狡猾な内通者はどうしても確かめたかったんだ…」
①この地の紛争を解決すると豪語する我、マリアンヌ・ディ・ファンデシベルがどれほどの頭脳を持っているのか? 自分の脅威になるほどなのか?
②マリアンヌ・ディ・ファンデシベルは今、何を目的に色々動いているのか? まさか自分という内通者の存在に気付いているのか?
大きく別けて、この2点。
そしてその全てが一手で叶う方法、それを内通者は我から課せられた軟禁状態の中で考えて導き出した。
そう、それこそが偽物の紙を我に掴ませるというものだった。
「くそぉ~あの手紙は内通者宛てでは無く、我宛てだったんだ」
まずあの1~5枚目の紙に書いてあった、次の紙を探させるやつ。
あれによって我の脅威度を測った。
次の紙の場所を探し出せたら脅威。
気付かなければマリアンヌという人物は自分の敵ではない。
そして結果は、我は最後の5枚目まで行き着いた。
故に内通者はマリアンヌという人間を脅威だと考えた。
そこまでがカーナが最後の5枚目の紙を見つけ我に持ってくるまでの、内通者の我への評価だったのだろう。
「そこでカーナが紙を見つけ持って来た時に、カーナと同じ ”何だこの紙は?” って顔をしていれば。少なくとも容疑者4名の顔を見なければ…」
そう、この紙を見て「何だこれは?意味が分からない…」という表情をした場合は自分という反乱軍と通じている内通者の存在は気付いていない。
ただ、頭の切れる人間が紙を発見してここまで辿り着いただけ。
だが…もしも、もしもこの「私を探しているのはお前だ」という紙を見つけ、尚且つ自分が罠にかかったのだと即時に気付き、自分たち、領主の部下の居る方向を見てきたら。。
マリアンヌ・ディ・ファンデシベルという人間は、
”自分の脅威になる頭を持ちつつ”
”内通者という反乱軍と通じている人間の存在に気付いている”
しかも。
”容疑者は領主の部下の中に居ると絞っている、そしてその中に自分が居る”
と分かってしまう。
「内通者はその紙だけで同時にいくつ者情報を手に入れることに成功した」
つまり。
つまりだ…。
我は愚かにもその全ての罠を踏んでしまった。
慎重な内通者の事だ、もう絶対に表には出てこないだろう。
つまり我は……
”負けた”
閲覧ありがとうございました( ^^) _U~~
いかがだったでしょうか?今回のお話、皆さん驚かれたのではないでしょうか?
マリアンヌが主人公だから、頭良いから、絶対に頭脳戦では負けない…って思ってたんじゃないですかぁ~?(・∀・)ニヤニヤ
甘いですね~ウニをいっぱい獲る凄腕の海女さんよりも甘ちゃんですよ。ニヤ(°∀° )ニヤ
因みに今回の偽物の手紙、実は偽物であるヒントは少し前に隠されておりましたwよかったら探してみてね~♪ヒントを探す為のヒントとしては…【マリアンヌは知ることが出来ない場面、でも皆は知ることが出来る場面】かなw
ではまた次回お会いしましょう♪( ´v`)ノ~バイバイ
正直、前回「よかったら気に入った話があった時、いいね♪押してね」って頼んだ手前、連続のお願いって事もあるし今回のお話の後書きでとても言いづらいのだけど…以前からこのお話の後には書こうと思っていたので、どうかお許しくださいませ(。>ㅅ<。)ゴメンネェ
まぁ既にブックマークや評価ボタンを押している方はこの後のお話は飛ばしちゃっても大丈夫ですw
では…ゴホン(-_-メ)
よかったらブックマーク、評価ボタン(評価ボタンは最新話の下にあるのでw)お願いします♪次回のお話が投稿されるきっかけになったりします(^v^)
因みにずっと言ってますけど、点数などは、高い点数だろうが、低い点数だろうが、皆さんからの大切な意見だと思っていますの、皆さんの思い思いの点数で大丈夫ですよ♪
付けたからといって皆さんに何か得があるのか?と問われると、全く無いのでアレなのですが、よかったら押していただけると幸いですw
あっ、もちろん物語が完結するまで評価なんて付けられないよ~(>д<)って方は、無理に評価ボタンを押さなくても大丈夫ですからね(^^)♪私もその気持ちは分かるのでw
そういう方はブックマークだけでも十分嬉しいので気にしなくてもいいですよ~♪




