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04 41人の選択肢(1)

クリックありがとうございます(^_^)


今回も短いのでよかったら読んでいただけるとうれしいです。

それではどうぞ~((( つ•̀ω•́)つ



 カーナはすたすたと階段を上っていく。

 マリアンヌは椅子に座りながら問いかける。


「そう言えば2階にある牢屋はなぜ2つあるのだ?」


 2階に上る階段の絨毯を踏みあがりながらカーナは答える。


「男女で別れているからです」

「ああ、なるほど。一緒にするとさかりのついた猿のように乱交パーティーになってしまうというわけか」


 カーナは牢屋の前まで行くとポケットに手を突っ込んだ。

 丸く輪になったリングにジャラジャラと付いている鍵。

 その内の2本を迷うことなく選択するとカーナは両側の牢屋の鍵を続けて開ける。

 そしてリングの中にあった2本の小さな鍵を引きちぎり、男女各々の部屋に投げ込んだ。


「足のおもりを外してすぐに1階に集まれ」


 業務報告のように要点だけを伝えたカーナ。

 伝え終えるとすぐさまきびすを返してマリアンヌのいる1階に下りてきた。


「直に下りてまいりますのでもう少々お待ちくださいませ」

「ああ」



 牢屋から続々と出てくる囚人たち。

 彼ら彼女らはゾンビのようにふらふらした足取りで1階に下りてくる。

 すさんだ目、痩せて色が薄くなった唇。


 重苦しい雰囲気の中、カーナの呼びかけによって1階に集められた囚人たち

 落ち着かない感じで視線をあちこちに飛ばしている。

 おそらく今から自分達が処刑されると思っているからだろう。


 そういえば昔、母上から聞いたことがある。

 この国では処刑される前の囚人は数日前から空腹状態にすると

 そのほうが処刑後の処分がラクという理由

 そして何より唯一の楽しみである食事を取り上げることによってより深い絶望感を与えれるからと。


 ふと、マリアンヌは現状を振り返る。


 ①館の主人であるアンジェラはもう自分達を仲間に誘いに来ない。

 ②1階にいた囚人たちは帰って来ない。

 ③そして片付けられた1階の牢屋。

 ④数日前から食事を取り上げられ、水のみ。

 ⑤極め付けに訳の分からんメイドが室内を真っ暗にペンキで染めて、自分達の牢屋をリボンで結び始める。


 うん、われが逆の立場なら間違いなく自分の命日は今日だと確信するね!


「ではマリアンヌ様、この者たちの罪状などを読んでいきます」

「うむ」


 カーナはポケットからメモ帳を開く

 そして次々と名前と罪状、量刑りょうけいを読み上げていった。


「ロケル・ミル、罪状は殺人4件、放火1件、量刑死刑。 スクロウ・ミスティ、罪状は貴族への暴行、および窃盗、量刑死刑。 シウフィス・ジム、罪状は皇族への暗殺未遂、量刑は死刑」

「ちょっと待て!ちょっと待て! そのペースで読んでいくとして何人いるんだ?」


 マリアンヌは目の前にいる囚人たちを目で数えながら問う。


「41人です」


 うそぉ~、多いよ。

 殺した囚人の倍はいるじゃないか。


「続けても?」

「…どうぞ」


 マリアンヌは残念そうに眉間を指で押さえる。

 今から始動しようとしている部隊建設の計画と今、目の前を歩いているゴミたちのとギャップにくじけそうになる。


 この中に使える人間が本当にいるのか?

 そう考えれば考えるほど目の前の囚人たちから視線をハズしたくなる。


「ああ、折れない心が欲しい」


 マリアンヌは内心でため息をつく。

 そして天を仰ぐように真っ黒な天井を見上げる。


 今だけ耳が馬になればよいのに

 そうすれば希望を打ち壊すような紹介文が念仏化するのに。

 そう言えばこいつら男女どころか同性同士でもほとんど目を合わせていない。

 さっき下りてくる時もゾンビのように足取りが重そうだった。

 打ち解けるなんて言葉が存在しない人間関係が牢屋内で作られていたのだとマリアンヌは思った。


 思った以上に牢獄生活というのは闇が深い

 と言うか、カーナの飼育感覚の闇が深いの間違いかもな。


 全員、腹を限界まで減らしているのだろう

 グルグルと鳴るお腹

 うつろな目がそれを証明していた。


「カーナ、一応聞いとくけど、何日ぐらい水だけを与えたのかな?」


 なぜそんな質問をしてくるのか分からないカーナ。

 罪状説明する口を止めて不思議そうに答えた。


「えっと、あの日からですけど」


 おいおい、あの日って…


 アンジェラ処刑から1週間はたってるぞ!

 部隊を設立する前に全員、餓死がしするではないか!


「未来が不安すぎる」


 こいつに任せたら本当に全員死ぬのでは?


「カーナ、いくらゴキブリでも水だけだといずれ死ぬのだぞ」

「マリアンヌ様はご存知では無いかもしれませんが、ゴキブリなら40日は大丈夫ですよ」

「たとえ話だよ!ゴキブリのような存在=ゴキブリではない。 ”ような”これ大事、似ているが本質的はちょっと違う」


 そこで囚人たちは自分達に向かって発せられた言葉だとやっと気付いた。

 数人の囚人たちは大胆にもわざとマリアンヌに見えるようにくすくすと笑う。


「おや、誰かと思えばアンジェラに騙されて犯されたお姫様じゃないか」


 顔に無数の傷のある男が言った。


「本当だ、何人ぐらいを相手にしたのかしら~?」


 目がくまで深くいろどられた女が妖艶ようえんな口調で言った。


 マリアンヌは小首を傾げる。


「誰がお前達が口を開くことを許可した? このような牢屋で生活しているおのれの身分をわきまえろ、あとアンジェラは既にこの世にはおらん、これからはわれがお前達の飼い主だ。 分かったら黙っていろ、この汚らわしいゴキブリどもが」


 この高圧的で傲慢ごうまんな口ぶり、囚人たちの反感を受けないわけもなく。

 男女問わず目を強ばらせる。

 そして囚人の輪の中から怒鳴り声が聞こえた。


「誰がゴキブリだとっ!!」


 輪から出てきたのは少し小太りの男。


 マリアンヌは冷めた目を向ける。

 そしてわざと囚人たちのかんさわるようにわらう。


「お前達以外でこの場にゴキブリとしょうされる生物などおらんだろ? 国から厄介者やっかいものと弾かれ、誰からも認めてもらえず、このような地下室で水だけを飲んで命をつないで、ただ死を待つだけ、ゴキブリそのものではないか。それとも其方そちたちは牢屋の中に本物がいたから自分達ごときが本物だと言うことに躊躇ためらいや、おこがましさを感じているのか? そうだとすると気にするな、本物のゴキブリもお前達のことなんてなんとも思っておらんよ」

「ふざけるなよ!!貴様!!」


 その囚人だけというわけではないが、ほぼ全ての囚人に恐怖ではなく怒りの感情が瞳に灯された。

 小太りの男はまくし立てるように続ける。


「アンジェラがいなくなったってさっき言ったな! じゃあ俺達がここにいる理由はねぇ!お前を人質にしてこの国から出てやる!!」


 これだけ偉そうに睨みつけて啖呵を切るやつだ、それはそれは凄い罪を犯したのだろう。

 マリアンヌは座ったまま顔だけを動かしてカーナに視線を向ける。


「やつの罪状は?」


 カーナは紙をペロリとめくって指をなぞって探す

 そして見つけるとマリアンヌの耳元までやって来る。


「ドミニク・カスタード、すり65件、詐欺29件、恐喝32件、暴行24件です」

「ショボ! それで死刑か?」

「いえ、その後に酔った勢いでパレード中の皇族に対して暴言を吐いたそうです」


 あ~なるほど。


「それは一発アウトだな」

「はい、この国において完全なアウトです」

「おい!てめぇ聞いてるのか!」

「お~恐っ、さすが揺すり65件、迫力が違うな。場数を踏んできた玄人くろうとのにおいがするよ」


 そうあざ笑うように言うと、指をパチンと鳴らす。


「カーナ、罪状報告はもうよい。 あれを」

「はい」


 カーナは部屋の隅においていた2つの大きな銅製のカゴを囚人たちの前に乱暴に置いた。

 戸惑う囚人たち

 マリアンヌは言う


「お前達に選択肢をやろう」



閲覧ありがとうございました(*∩ω∩)

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