02 アンジェラの残した物
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それではどうぞご覧くださいませませ~
マリアンヌとカーナはアンジェラの自宅、いや元自宅、現在はカーナの自宅となっている館の地下室の階段を下りていた。
「うっぅ」
「…ちなみに貴様は先ほどから何で泣いているんだ?」
あまり関わりたくなかったので無視していたが、前方を照らしながらカーナは大粒の涙をまるで道しるべのようにボロボロと落としながら泣いていた。
悲痛な声を上げながらカーナは答えた。
「マリアンヌ様がお可愛そうでお可愛そうで、、お父上である皇帝陛下に疎まれて、ご兄弟にまで目の敵にされて、皆マリアンヌ様がどれほど苦しんでおられるか分かっていない…と思うと涙が止まらなくて」
「別にあの1件以降、皇帝陛下を父だなんて思っておらん、それに思い返してみれば以前から我に対しては疎まれている節があった、今回のことで確信を持ててよかったとすら今は思う。 兄弟に関してはそもそも生まれてこの方ほとんど視界に入ってすらおらんかった。 だからつまり何が言いたいかと言うと、苦しんではおらん! そしてあの処刑を後悔などもしていない! 分かったらすぐそのうざったい涙を止めろ!!」
「はい、分かりました」
はやっ!
本当に泣き止みやがった。
「お前…さっきのウソ泣きだろ」
「いえ、100%本気泣きでした」
機械みたいなやつだな。
カーナはまたランタンで前方を照らしながら進んでいく。
「この屋敷はお前にくれてやったわけだが、ちゃんと言いつけ通りやつらに餌はやっているのか?まさか殺してはいないであろうな?」
マリアンヌはまるでペットの世話をしているか?という口ぶりで聞いた。
「はい、死なない程度に水分を与えています」
するとカーナはまるで植物の世話はちゃんとしていますと言わんばかりに答えた。
「水分!?」
想像を凌駕する回答
あんぐりと口が開く。
「はい、そしてマリアンヌ様がいつ来られてもいいように、清潔で綺麗をモットーに空間作りを行いました」
その言い方だと生命に関わる食料よりも空間作りのほうに重きをおいているように聞こえるのだが
「まぁよい、お前に任せるよ、最初っからそう決めていたのだからな。 それはそうと、以前お前に命令していた新しい部隊を作る人集め、あれはどうなった? 何人かはアンジェラのツテで手に入ったのだったよな?」
カーナにとってその言葉は睡眠時にラッパを耳元で鳴らされるような言葉だった。
心臓が止まるかと思った。
そして歩みはピタリと止まり
その瞳の中の黒目は逃げ惑うように上下左右移動する。
「おい」
「はい」
「はい、じゃなくて、その後どうなったのだ?」
それは…その…と言いよどむカーナ。
しかし永遠にそれを続けるわけにもいかず
覚悟を決めたように
「アンジェラ様…いえ、アンジェラの死後、全ての騎士たちからお断りの連絡が…」
「では今0人か」
「ほんと何て言えばいいか…無念です」
「いや、そういうのいいから」
これはアンジェラを殺す前から予想していた状況だ。
むしろよかったと考えるべき事項。
なんと言ってもアンジェラの息のかかったやつらだ、もし我の下に付くと言っても信用なんておけんかったからな。
そんなマリアンヌの心情を知るはずも無いカーナ。
ビクビクと、そしてワナワナとする。
「あの…本当に、申し訳なく、私の力が至らないばかりに」
「あ? あのな、お前は分かっていないかもしれないが、そもそもそいつらは我に従う気が最初から無かったんだよ」
「え!?そうだったのですか!」
そりゃそうだろ
「お前が殺した囚人たちにしても同じ、いいようにアンジェラに使われていた駒にすぎない」
マリアンヌは「嫌な言い方になるが」と前置きをして
「まぁそれは我らとて例外ではなかったのだろうがな。 ただ1つだけ例外、アンジェラの計算の外にいる人間たちがいると我は思っている」
「例外ですか?」と首を傾げるカーナ。
ああ、と頷くマリアンヌはその細く長い指をカーナに向けてビシッと指差した。
「確認だが、地下室に残っている囚人たちはお前が殺した囚人たちよりも凶悪で言うことを聞かなかったから、アンジェラは近日中に殺すことにしていたのだったよな?」
「はい、いくつもの条件を出しても首を縦に振らない愚かで野蛮な囚人と言っていました」
「複数の条件提示。あの女がそこまでするということは、お前が殺した囚人たちよりも特別扱いしていたと考えられるな」
「後は確か、何をするか分からないから殺す方法は毒殺にしようとも言っていたと思います」
毒薬を散布して殺害するなら、死ぬ前の決死の行動を防げる。
牢屋から出して処刑するのすら躊躇ったわけだな。
その理由が気になる所だが…
凶悪な思考を考慮したからなのか、はたまた力量を考慮してなんか
それとも両方か
「ではそいつらはアンジェラの中では既に死刑宣告を通知した、いわば”死人”ということになるよな」
「死人…あ!」
「そう、ここにいる”やつら”はアンジェラの息はかかってない。それどころかアンジェラに従うぐらいなら死を選ぶようなやつだ、よく言うだろ敵の敵は味方。この囚人たちをうまく使えば我の思う特殊暗殺部隊は事足りる」
カーナは”使う”という言葉を脳内で租借してカーナは視線を落とす。
そして子供が親に自分のやったいたずらを報告するようにビクビクながらカーナはランタンの先をいじる。
「わ、私は、、人を殺すのは得意です。 でも人を、教えるのは、そういうのは、、昔から、、苦手です。 もちろん! マリアンヌ様のために全力で取り組みます! でも…結果が出るかは…」
「そんなことはお前に言われんでも分かっている」
怒られる、絶対怒られる、そう確信していたカーナ
あまりに想定外の回答に目を満月のように丸くする。
「え!?」
「もうお前に人を育てろなどと無謀なことは言わん。我が求めているのは教育ではなく調教だ」
「調教…ですか?」
意味が分からず、頭に疑問符を大量に浮かべるカーナ。
マリアンヌは足を止めた。
ランタンの灯りが薄っすらとマリアンヌの口元を照らす。
「お前が育てるのは人ではない家畜だ、教えるのではない調教だ。 手心など一切加えるな、手取り足取りご丁寧に教える必要など無い、無理難題をふっかけろ、出来が悪ければ殴れ、どんどん篩に掛けろ、そして最終的に出来の悪い家畜がいたらお前ならどうする?」
問いかけるマリアンヌの口角が三日月のように吊り上がる。
「出来損ないは殺処分してよい。 元より家畜とはそういう生き物だ、我の役に立たない生き物に存在価値など無いのだからな」
それを聞いたカーナ。
曇らせていた表情から太陽が昇るように笑顔に変わった。
そして自信をみなぎらせる様に言った。
「それなら得意です!」
「ふふふ、今までにないほどよい返事だ。 あのクソ女の忘れ形見、せいぜい有意義に使わせてもらおうぞ」
マリアンヌはカーナの横をすり抜けるようにして扉をギィーと押し開けた。
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