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魔女と呼ばれた少女 -少女は死体の山で1人笑う-  作者: ひとりぼっちの桜
【第7章】 一夜で滅んだ村

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87 マリアンヌという人間

クリックありがとうございます(^^♪連日エアコンの取り付けをしているひとりぼっちの桜ですwいや~暑い(>_<)地獄のようだw

それはそうと現在8月25日が終わろうとしていますね、明日は26日、私の誕生日ですね~(୨୧ᵕ̤ᴗᵕ̤)まぁだから何なのかって話なのですがwまぁ誕生日の実験については後書で語りましょう♪


で、今回のお話ですが……やりきりました(=_=)本当は1週間前に完成していたのですが、納得できなくて全部消してまた書きましたwそして切るなんて選択肢も無いぐらいやり切った、そんな感想です(笑)

初見の方がここから読むことが無いのはもう知っていますが、もしここから読んだとしても自信をもって言いたい………これが当物語の主人公マリアンヌです!ヾ(叫゜Д゜)ノ!!ってねww

それぐらい、マリアンヌの全てが入っているお話になります♪


では原稿用紙16ページ、9千文字近くになってしまいましたが、どうぞ今回のお話もお楽しみくださいませ~



 地獄のような暑さ。

 風の動きが止まり、木々すら流れないことで、そのいやらしい声はいやに鮮明に聞こえた。


「いや~遅れて申し訳ございません」


 小走りで来るわけでもなく、正面から胸を張って堂々と、ゆっくりと歩いてくる一団。

 その先頭にはもちろんサンティエール領主、ヤン・メイザール。

 暑いという事もあって、着ている服装は軽装だが、着けている装飾品は煌びやか、一言で言うならば成金のような出で立ちであった。


 後ろにぞろぞろと20人以上を引き連れ、急ぐわけでもない速度。

 口元には笑みを浮かべ。

 ヤンは言った。


「少し準備に手間取っ!?」


 だがニタニタ笑ってやって来たヤンは声を失った。

 そして、暑さにうな垂れるマリアンヌを見るとついこう口にしてしまった。


「美しい」


 メイドが気まずそうに差す日傘の下。


 出会った人間の心を奪うような銀に輝く長い髪。

 雪のように白い肌。

 まるで神々が作り出したかのような端整な顔立ち。

 黒いドレスを身に纏った銀髪の美少女。


 7年前からの想像をゆうに超える美しさ。


「………」


 領主、ヤンは思う。


 あの傲慢な男の娘とは思えない美しさだ…。

 絶世の美女とはこういう事を言うのか。。


 う~む、これは1時間も待たせて悪いことをしてしまったかな?

 もう少しぐらいは早く来るべきじゃったわ。

 クックック。


 そんな事を思いながらも彼は口を開く。


「いやはや~、この炎天下にお待たせして申し訳」

「フフフ…フフ」


 しかし、領主が口を開くや否や不気味に笑い始めたマリアンヌ。

 当然、その反応に唖然あぜんとする領主達、サンティエールの面々。

 ヤンは問う。


「ん?どうかしましたかの、マリアンヌ皇女殿下?」

「フフフフフ、いや、大した事では無いのだよ」


 蒸しかえる暑さの中、ゆっくりと顔を上げるマリアンヌ。

 その表情は背筋が凍りつくほどの不気味な笑顔。

 ただ、瞳はギラギラと獲物に狙いを定める猛禽類のように。


われを待たせるなど、どのような道化が来るのか期待していたが、来たのは常識をわきまえない死にかけの老人ではないか。フフフ、これを笑わずとして何とするか、なぁ?お前達」


 話をふられたカラス達はフードに包まれた仮面の中でクスクスと不気味に笑う。

 一方、あまりの衝撃的な発言に言葉を失う領主の男。

 これだけ可憐な少女がこの台詞。

 放心している領主に対し、マリアンヌは首を傾げる。


「どうした、黙って?言い分は無いのか? まさか、われを1時間待たせて遅刻した理由は自分の棺桶かんおけを用意するのに手間取った…など言うつもりではないだろうな?ほら、早く申せ」


 すると領主のヤンは小さな子供の駄々を諌めるようにこう言った。


「いやはや、真に申し訳ございません、”ちょっと”遅れまして。皇女殿下にかれましては、お怒りはごもっともですが、少し大人になって落ち着いて頂けるとこちらとしては助かるのですが」


 そう、このような子ども扱いするような言い方がマリアンヌの怒りの炎にまきを投げ入れる行為だとは知らずに。


 マリアンヌの目じりがピクピクと引きつる。


「ちょっと?」


 謝罪を言いかけた領主を制し、まるで人を小ばかにしたようにマリアンヌはわらう。


「おい、カーナ。我らはこの灼熱の中、何分待った?」


 カーナは胸ポケットに入れた懐中時計を取り出す。


「51分27秒です」


 するとマリアンヌは領主のすぐ後ろにいた包帯を頭に巻いた若い丸顔の眼鏡をかけた青年。

 そいつに向かって指を指す。


「そこの包帯を巻いたお前」

「えっ!?私ですか!?」

「そう、お前だ」


 身を強張らせるフイレルンにマリアンヌは問う。


「ここからそこの老いぼれの屋敷まで徒歩何分だ?」

「老いぼ…あ、いえ、ご、5分ほどかと」


 ヤンは余「計な事をというな!」という目でフイレルンを見る。

 その視線を見逃さないマリアンヌ。

 彼女はこの時、確信を持った。


 そして確信を持ったからこそ、目じりがまたピクピクと引きつる。


「なるほど、、5分ね。では先ほどの51分27秒から5分を引いて46分27秒、この時間お前は何をしていた?」


 微笑みながら問うマリアンヌ。

 彼女の頬を伝って大粒の汗がポトりと地面に落ちる。

 暑さの限界、でも笑顔。


 ヤンは白髪の髪を2度3度ポリポリと掻くと言った。


「いやはや、違うのですよマリアンヌ様。ここに居るフイレルン、ワシの軍師なのですが、こいつがとんだおっちょこちょいでして、出発前に怪我をしてしまいまして…それを治療するのに時間を要してしまいましてな」


 それを聞いたフイレルン、ふざけるとなと言いたい、

 しかし言えない。


 一方、マリアンヌ。

 暑さに耐え、胡乱うろんとし始めた目で舐め回す様にフイレルンと呼ばれた男をもう一度よく観察。

 時間にして5秒ほど。

 そして「もう十分だ」と言わんばかりに目を閉じると、フイレルンを代弁するようにマリアンヌは断言した。


「くだらぬ嘘だな」

「嘘?皇女殿下も人聞きが悪い事をおっしゃる、ワシは嘘など一言も…」

「その包帯を頭に巻いた男、その男には頭の包帯以外にも顔に殴られたあとがあるな。それも古い物から新しい傷まで。これは常日頃なにかしらの暴力を受けていると考えられる。そしてお前の手、その手、拳部分だが赤くなっている」


 ハッと両の手を後ろに回すヤン。

 マリアンヌの目は確信している。


「お前がその拳で殴ったのではないか?それに良く見るとその男以外にもチラホラ顔や腕に生傷があるな? ここから考えられることは、従者に対しての理不尽な暴力が常態化していると考えるべきだろう。じゃあ包帯を巻いているのは?その男の頭をお前の拳でかち割れるとは到底思えない。なら関係ないのか?いいやそれは無い、暴力が常態化している男の部下が頭に包帯巻いている、それにお前が関与していないと考えるのはあまりに想像力が欠如、馬鹿げている話だ。 結論、お前がその男の頭を”何かを”使ってかち割った。でもここからが重要。その包帯の怪我、包帯からの血のにじみ方、それを見る限り包帯を巻いたのは1時間ほど前だろう、少なくとも10~20分前ではない」


 まるで見てきたような言葉口。

 マリアンヌの推理にヤンが圧倒されていると、マリアンヌは更にこう畳み掛けた。


「1時間以上前に治療を終えているにも関わらずここに来たのは1時間後の今、つまりお前の今言ったそこの男の治療に手間取ったは嘘だ」

「いや、、あのですな、、」


 領主の老人は気付いていない。

 自らの声が無意識に震えて始めていることに。


「マリアンヌ様の到着を知ったのが先ほどで」

「そんなわけありえません!!私は親書で到着時間のおおよそも書いておきました!」


 日傘を持っていたメイドが大声でそう言うとマリアンヌは


「その通り、お前の部下が親書を握りつぶしでもしない限りはお前がさきほどわれの到着を知ったというのはありえない」

「そ、それです!ワシの使えない部下共がミスを繰り返して、ワシまで親書が来なかったのです!」

「例えそうだとしても、われらがここに到着して既に1時間経過している。周りを見てみろ、周囲の村からも人が集まってきている。こんな小さな街にわれが来たのだ当たり前だ。なら、お前の耳に入っていないのは不思議すぎるな」


 嘘を怒るわけでもなく、ただ、淡々と領主の嘘を見抜いていくマリアンヌ。


 不気味。

 マリアンヌという人間が分からない。


 ヤンや従者達は全く得体の知れない、未知の存在に対面したかのような言い知れぬ恐怖感におちいっている。


「こ、来ないかと思ったのです」

「来ないとはどういう意味だね?」

「2日前も半日ほど待っていたのですが来られなかったので、今回もマリアンヌ皇女殿下は来られないのかと…思いまして」


 この時、暑さで伏し目がちなマリアンヌの目がどんよりと黒く染まっていく。

 その色は思考の色。

 深く深く潜っていく。


「昔、誰かが言っていたな…人は追い込んだときにこそ本性を出す…だったか?」

「何か?人は追い込んだら?」

「いや、別に。それより、今回は親書で到着時間も記載されていた。前回の日にちだけが書いてあるものとは違う。それに、そもそもわれの立場を考慮すれば念のために待っているのが礼儀、違うかね?」

「そう言われてはグゥの音も出ませんが、最近ワシは足腰が言う事をきかなくなって、だから遅れたのであって」

「フフフ」


 思わず笑う。


 これは1番酷い嘘だ。


「日ごろから従者を拳で殴り倒しているのに?こちらに向かってきた歩き方を見るに、足腰が悪そうには見えなかった、もちろん杖を使っている様子も見受けられない、われの父である皇帝と同じで元気そうではないか。まぁよしんば本当に足腰が悪かったとしても、われがこの暑い中、待っていることを知ったなら従者の1人でもこちらに送ればいい。そうすげばわれがこの暑い中1時間も立ち尽くすことは無かった。だがお前はそれもしなかった、なぜだろうな?」


 ヤンはその問いに答える事が出来なかった…。

 いや、マリアンヌによって言い訳、逃げ道などは既に塞がれていた。

 だからだろう、ヤンは早急に話を終わらせようとした。


「いやはや、これは1本取られましたな。流石はマリアンヌ第一皇女様、頭脳明晰というわけですな」


 ワッハッハ!と笑うヤン。


 これで話が終わればヤンにとってどれほど素晴らしかっただろう。

 だが、そうはいかない。

 させない。


 そう…暑い中、長時間待たされたマリアンヌにとっては、ここからが本番。


「当初、君とは穏やかな関係を築きたかったが…残念だ…残念でならない」


 ゆっくり息を吸うマリアンヌ。

 肺に焼けるような空気が充満していく。


 辛い?

 いいや。

 もう誰かさんのおかげで辛さを怒りが追い越した。


「領主よ。誰のせいで、われがこんな辺鄙へんぴな場所に来なくてはいけなくなったか分かるかね?」

「辺鄙?」


 辺鄙へんぴという言葉に反応する領主。

 その言葉こそ領主の琴線きんせんに一番触れるワード。


 ヤンは少しムッとして言い返した。


辺鄙へんぴと仰いますが、ワシの領土はこれでもアトラスの先兵たる重大な意味合いのある場所に位置して」

「お前の領土?」


 心底、意外そうな顔をするマリアンヌ。

 そして…。


「フフフフフフフフフ」


 再び下を向いたまま笑い出すマリアンヌ。


「あの、マリアンヌ皇女殿下様、まだ話は」

「お前の領土などこの世に存在せんわ」

「なっ…」


 自分の守ってきたこの領土すらも”お前の物ではない”と言い切る目の前の傲慢な少女。

 言い返そうとした。

 老人のプライドを土足で踏み荒らしてくるションベン臭い少女に。

 しかし出来なかった。


 思わず目がいった、少女の瞳。

 激怒した時に他者の動きを止めるほど憎しみと怒りが宿った瞳。

 自分が忌み嫌う父親である皇帝に瓜二つの瞳だった。


 マリアンヌは傲慢に、しかしそれを当たり前のこと、常識を叩き込むように言う。


「どこぞの下賎な賊にも言うたが、この世に存在する領土は全て我が領土。貴様は…そう、ただわれの領土の1つ、それを手入れする庭士に過ぎぬ。それを何を勘違いしてか自分の領土だと?庭士如きが錯覚するにも程がある。その傲慢な心は不遜にして不忠、不敬、処刑ものだ、お前は黙って庭の剪定せんていでもしておればよい。しかし此度、われが言いたいのは…言いたいのは…」


 マリアンヌの拳は握られる。

 強く。

 憎しみを込め。


「お前のような…お前のような…ゴミは!いいか!!よく聞け!! お前のようなゴミは畏敬いけいの念を持ってわれを迎えるのが当たり前だというのに!それをあろう事かわれを待たせよって!」


 ヤン、従者、民衆たちの脳細胞を直接揺らすかのような声。

 その大声はこれから何が起こるか想像できないほどの怒りに満ちていた。


われ拝謁はいえつするだけでもありがたく思え!!にも関わらず、よくも何の役もたたないボンクラ風情がこのわれを待たせるという暴挙を取れたものよな!!」


 誰もがマリアンヌの鬼気迫った行動に圧倒されて声を出せずにいた。

 目が血走り、完全に正気を失っているマリアンヌ。


「何だ!お前ら、その目は!?」

「え、いや…その」


 その高圧的な視線。

 心臓を握りつぶされたかのような錯覚に陥り、表情は固まり喉が詰まる。

 めまい、吐き気、周囲の空気が固まったかのようにうまく呼吸が出来ない。

 強制的にマリアンヌの持つプレッシャーによって止められたかのように。


 今までにこんな恐怖に晒された事が無いサンティエールの面々。


 でも1人だけ、

 1人だけ、このプレッシャーに身に覚えがある人間がいた。

 それは遥か昔の出来事。


「……っ!」


 何だ、この威圧感は?

 ワシは夢でも見ているのか?

 これがあの7年前に会った時の小娘なのか?


 あの無垢むくな少女が…


 まるで別人ではないか。

 これではまるで


 そう、まるでこやつの父親、

 大貴族であるワシをこんな辺鄙へんぴな地に追放した男と同じではないか。


「不愉快だな、そもそも、なぜまだ誰も気付かない?」

「えっ?それはどういう?」


 不思議そうに問うヤン。

 するととマリアンヌは眉間にシワを寄せた。


「貴様ら!!いつまでわれを見下ろしている!!早くひざまずけと言うておる!!!」


 サンティエールの街すべてに届くような怒声。


 大声が鼓膜をビリビリと伝って全身に響き渡る。

 全身の水分が全て汗になって噴出されるような感覚に襲われたヤンと従者達。

 気がつくとヤン、そして従者達20名ほどは全て地に膝を付いていた。


 跪くサンティエール側の面々。

 熱い鉄板のような地面、しかしその熱さは感じることは無い。

 今、彼らの全神経は目の前の銀髪の少女に向けられているのだから。


”この人間には従わないといけない”


 全員の第六感がそう全力で言っている。


 足が震え、歯がガチガチと鳴る。

 顔は全員蒼白。

 動悸が激しくなり、何をしていいのかうまく考えがまとまらない。


 マリアンヌは暑さとイライラが極限まで達したと言わんばかりに頭を掻く。


「も~~~う、嫌!嘘は聞き飽きた!」


 綺麗な銀髪の髪がバサバサと舞う。


「そもそも最初からお前の低レベルの嘘など分かっていた! お前の服は急いだという割には一切乱れていない。普通は目上の者が待っているなら急いで着替えないしするんだよ。今のお前のように服に乱れが無いのは明らかにおかしい、その出で立ちはまるでゆっくり用意を整えたかのようだ。それにお前の口元からほのかにワインの匂いがする、ゆっくり食後の酒を楽しんだか!?」

「えっ!いや!」


 酒を飲んで時間を潰していた事すらマリアンヌに看破され動揺するヤン。


「でも重要なのはそこじゃないの。われに嘘を付いたことなんてど~~~~でも!いいの!重要なのはなぜお前が遅刻したかだろ!?そう、嘘なんてどうでもいい!!…………フゥ~~~、理由はなんだと思う?」


 さっきまでブチ切れていたと思ったら、急にまたニッコリと微笑むマリアンヌ。

 もうサンティエール側、マリアンヌ側、両陣営から見ても、情緒不安定としか言いようがない。

 というか、さっきから目の焦点が合っていない。


「ねぇ、黙ってないで答えてよ。なんで遅刻したと思う?」

「さぁ、この老体にはなんとも」

「何?分からない?そんなバカな!ここまでヒントを出しているんだ、ちょっと考えてみろ、簡単な事だ。お前がここでついた嘘を全て蓄積して整理して足していけばよい」


 そこでマリアンヌの笑みが再び消える。

 目を細め、不気味にくし立てるように口は開かれる。


「足腰が痛かったわけでもない、部下の怪我の治療に時間を要したわけでもない、親書も届いているのに部下も寄こさずワインを飲んでゆっくりと身支度を整えてから来たのはなぜだろう? 来るのは皇族の、しかも第一皇女たるわれなのに急がなかった理由」


 笑顔の中、憤怒が見え隠れするマリアンヌは言った。


「領主よ、最後にもう1つだけヒントをあげる♪われは優しいからな、感謝するのだぞ♪」

「ヒントですかな…あの、そんな事よりもうそろそろ屋敷へ」


「うるさい!!!黙っていろ!!!!」


「っ!!!」

「あ~ごめんね。つい、怒りが…つい、感情的になってしまうのはわれの悪いところだ。つまり…何が言いたいかというと、、ヒントは先ほど少しだけお前が感情的になった言葉”2日前も半日待っていたのですが来られなかったので”というものだ」


 その場にいる全員が急変にギョッとして黙り込む中、マリアンヌは誰も答える事が無いのを確認すると再び笑顔で言った。


「報復だよ。ほ・う・ふ・く♪」


 ゴクリとヤンの喉が鳴った。

 マリアンヌは続ける。


「2日前に半日近く待たされた報復として、待たせた人間を1時間待たせることにしたんだろうね♪ いや~~そう考えるとス~~~~と今回の事が全て腑に落ちるのだよ。つまり、お前はわざと遅れたんだよ♪そう…わざと……この暑い中、わざと………わざと!…わざと遅れたんだ!!!!」


 今日1番の大声。

 地響きが割れんばかりの大声であった。

 そして、それとほぼ同時に跪く領主の顎目掛けて蹴りが放たれた。

 貧弱なマリアンヌとはいえ、しゃがんで顔を上げていた所にボールを蹴るように放たれた蹴り。

 吹き飛び、背中から地面に倒れこむヤン。


「っ!!」


 尻餅をつきながらも今、何が自分に起こったのか頭を巡らす。


「え、え?」


 しかし、その目は痛みよりも皇族のお姫様が自分を蹴り上げたという、ありえない衝撃で目を点になるばかり。

 しかもまさか観衆の眼前で。

 そんな事をお姫様がするわけがない。


 でも次の瞬間、目の前の少女がまるで鬼にでもなったかような形相で近づいてくる。

 そんな表情で迫ってくる姿見て思わず悲鳴をあげた。


「ひ、ヒィィィ」


 逃げ出すために足に力を入れようとした。

 でも見事なまでに顎を蹴り上げられたことでうまく立ち上がれない。

 まるで赤ん坊のようにヨチヨチと自分の館の方角へ逃げようとするが…。


「いいか!良く聞け!」


 マリアンヌは無理矢理上から押さえ込むとまたがり首元を掴む。

 そして振り上げた拳を身体全部を使って振り下ろした。


 鈍いゴン!という音が響く。


「貴様のようなボンクラが領主だったせいで、われがこのような地に来ることになったんだぞ!!」


 振り上げる。

 そしてまた振り下ろされる拳。


「このクソ暑い中!分かっているのか!!」


 細腕の一撃とはいえ、

 振り下ろされている事、下が固い地面である事。

 それがマリアンヌの拳の威力を上げる。


「それを貴様はわれを待たせた!!」

「痛い、やめ!誰かワシを助け」


 助けを求めようにも自分の部下達は既にマリアンヌから放たれる威圧感に晒され、本能から動けなくなっている。

 従者達の表情はギョッとしたまま固まっている。


「お前はわれを舐めていたんだよ!!こいつ程度待たせて何が悪い!?自分は2日前に半日も待ったんだ!!小娘なんぞ待たせて当然!!そう思ったんだ!!!違うか!!」


 ただ、セミだけがミンミンと鳴き続ける中。


「死ね!!死ね!!死ね!!」


 上から殴る殴る殴る。

 相手が老人だろうが、周囲の民衆がざわめこうが容赦なく何度も振り下ろされる拳。


 既に感情が憎しみで染め上がっているマリアンヌを止めることの出来る者など誰もいない。

 そしてどれだけ殴ろうが満足するわけも無いマリアンヌ。


「おい!カイル!いるな!?」

「へ?あ、ああ」


 カラスの中でも屈指の実力を持つカイルですらマリアンヌの声でやっとハッと正気を取り戻す。


「こっちに来い!このジジイが動いて殴りづらい!押さえてろ!」

「あ?あ~~了解♪」


 カイルは仮面の下の口元を歪ませて領主の両腕を押さえつけた。


「準備完了だぜ」

「よくやった!そのままにしておけ!このクソが!!」

「マリアンヌ様!落ち着いてください!」


 もう一度、殴ろうとしたマリアンヌの背後から羽交い絞めのように覆いかぶさるカーナ。


「ええい!放せ! 止めるな!カーナ! この男を殺してやる!ここで殺さねばならん男なのだ!!」

「いえ!別にこの男の心配とかではなく!マリアンヌ様の手が!」

「うるさーーい!!!!」


 無理矢理カーナの腕を振り払いマリアンヌは再び拳をヤンの顔面に叩き込む。


「このれ者がぁぁ!!!1時間だ!!1時間もわれは水も飲まずにこの暑い中立っていたんだ!分かるか!この気持ちが!!」

「マリアンヌ様!おやめください!!拳を鍛えていない人間が不用意に人を殴ったら、殴った側が拳を痛めて、骨が!」

「うるさい!! 全然痛くないから問題ないわ!!」

「いえ!それは今興奮されているので、脳からドーパミンが出てるから気付いていないだけで、痛くないのがおかしいんです!」

「おかしいのはこいつの頭だ!!!」


 ドカ!

 マリアンヌのでたらめに振り下ろされる拳がヤンの鼻にめり込む。


「カイル!もっと強く押さえてろ!!殴りづらいだろうが!!」

「へいへい♪」


 ドカ!

 ドカ! 


「死ね!死ね!!」

「マリアンヌ様やめて!! カイル!あなたもこんなの押さえてないでマリアンヌ様をお止めしなさい!このままだとマリアンヌ様の手が!」

「いや、だってよぉ~そう言ったて、マリアンヌ様本人が押さえてろっていうもんだから。ハハハ」

「このクソがぁぁああ!!!」

「やめてぇぇ!!マリアンヌ様ぁぁ!!」


 一方、急に始まったマリアンヌによる領主への暴力。

 なぜ、そんな事態になったのか、それは遠巻きで見ている民衆には分からない。

 でも1つだけ間違い無い事がある。


 今まで高貴だと思っていたお姫様が自分達を虐げている領主を殴っている。

 それだけ見たら正義の味方にも思えるかもしれない。

 しかしマリアンヌの声。


「お前のせいで!!お前のせいで!!お前のせいで!!」


 その気迫に気圧された民衆たち。

 この目の前の光景が”正義”とはとても思えなかった。

 なぜなら観ていた彼らは背筋が凍りつくような光景だったから…。


 領主に馬乗りになりながら発したマリアンヌの声は、この後も街全体に響き渡るのであった。


「シネェェェェェェェェェ!!!!!!」



閲覧ありがとうございました(*ゝω・)ノ アリガ㌧♪

いかがでしたか? ね?マリアンヌの全てが入っているようなお話だったでしょw

これを書いたとき「これは1万文字近くになっても切れんわ~( ̄ω ̄;)」って思っちゃったよねwではまた次回お会いしましょう♪ヽ(=^゜ω゜)^/






時間がどんどん少なくなっていくので簡潔に述べていきましょう。

私の実験は誕生日である8月26日からスタートします。

そう……私はずっと考えていたo(´^`)o


『文才の無い私が、もしもスタートダッシュを成功させてたらいっぱい登録者を増やせてたのかな?』


って。

いや、もちろん小説家になろうの上位陣は才能も有るからこそ上位陣なのでしょうが、それでも私はふと思うのです、才能が無い私でもスタートダッシュ、、成功したらどうだったんだろうな~( -_-)ってさ。もちろん、だからと言ってこのサイトをどうこうするなんて事は考えてません(この小説に登録してくれている人たちは宝なのでw)だから私は考えました。。


『そうだ!別のサイトでアップしたらいいじゃん♪』ってさw


てことで事前準備をしてきました。。。2ヶ月ほど前からw

そして今発表します!

実験内容は……


【もしもひとりぼっちの桜がスタートダッシュに成功していたらどれぐらい登録者が増えていたか?】


です(T□T)!!

ここからは箇条書きで書くねw



実験場所 ー アルファポリス

実験期間 ー 8月26日~9月26日までの1ヶ月

実験頻度 - 初日は毎時間更新(24話)2日目2時間に1話(12話)3日目3時間に1話(8話)4日目4時間に1話(6話)というふうにやっていって、2週間目からはちょっと変わって1日2話アップで14話、3週間目は月曜2話火曜1話アップ水曜2話木曜1話という感じ、そして最後の4週間目は2話→1話→1話→2話→1話とアップ。


1ヶ月で96話アップする予定ですw

あっ!大丈夫ですよw

ここと違って、5千文字とかにしてないから2千文字ぐらいが最高にしてるので、アップは楽勝…というか基本、ここのコピペだけだからねw

しかも予約投稿が出来るので、もう入力してるので、後は勝手にアップされるのを待つだけw


さぁ~楽しい実験の始まりですよ~♪

あっ!皆さんは観ちゃダメですよ乂ΘÅΘ))1ヵ月後、一緒に驚きましょうねw…でも、もしも1ヵ月後アルファポリスの登録者が50人ぐらいだったらその時はそっとアルファポリスは消えるので、その時は、みなさん……アルファポリスなんてなかったんや…いいね??


さぁ~誕生日から始まる異世界スタート生活、やったるでぇ(゜ロ゜ )!

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― 新着の感想 ―
[良い点] あちゃ~…。やっぱり、こうなったか~。 マリアンヌ様は、身体を鍛えているわけではないから、たぶん後になってから痛めた拳が悲鳴を上げるねwww。 カーナは、相変わらずマリアンヌ様一筋だな~…
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