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13 アンジェラのミス

閲覧ありがとうございます<(_ _*)>


今回は前回のラストのすぐ後を書いてみました。

次の物語へいく前のワンクッションを置きたかったというのが本心ですが、裏話的に楽しんでいただければ幸いです。


それではどうぞ(つ´∀`)つ゜+o。ドゾドゾ。o+゜★



 数日前から不安はあった。


 胸騒むなさわぎもしていた。


 だがそれは杞憂きゆうなんだと思っていた。


 なぜなら私の立てた計画は完璧だったから。




「こ、これは」


 しんと静まり返った廊下。

 激しく窓を打ち付ける雨に怒号どごうのような雷鳴らいめいの光だけが闇に光を与えていた。

 その中、アンジェラと兵たちは絶句した。


 地下からの階段を上って、少し廊下を歩くと一面に人が倒れていたのだ。

 すでに人の形をしていないものもあった。

 そしてアンジェラたちの目前に血の水溜みずたまりを作っていた。


 べちゃり、べちゃり。

 血の上を歩くと粘り気のある血液が靴の裏側にこびり付く。


 つれて来た騎士の1人が血の気の引いた真っさおな顔で言った。


「アンジェラ様、これはワーナーさんがやったのでしょうか?」


 確かにワーナーにはマリアンヌを死を確認しだい囚人たちを全員殺せと命じた。

 しかしそうなると一番大事なマリアンヌの姿が無い

 そして同時にワーナーの姿も見当たらない


「いいえ、おそらくワーナーがやったのではないわ」


 折れた枝のような物が転がっている。

 持っていたキャンドルで照らすと、根元から引き裂かれた腕だった。

 そのまま奥を照らしていく

 血の海の中をただようミミズのような物が見える

 ミミズの先を視線で追っていくと囚人が腹を割かれて座り込んでいた

 そこで、はみ出たちょうだと理解できた。


「あのワーナーがここまでのことをするとは思えない」


 彼は実直じっちょくちゅうに厚く無駄な殺生せっしょうは嫌う人間。

 今回だって最後まで彼は「アンジェラ様、マリアンヌ様はあなたの妹君いもうとぎみです、他に方法は無いのでしょうか?」と言って反対していた。

 それでも自身では思うことがあったのであろうが、最後には私に付いて来て殺し屋、、、いえ、掃除屋のようなことすら引き受けてくれた。


 だがこの場にあるのは


 あまりに残酷ざんこくな風景に目を隠したくなる。

 あまりの異臭に口をおおいたくなる。

 それほどまでの情景じょうけい


 ここまで猟奇的りょうきてきな殺し方を私の知っている彼がするとは思えなかった。


「まるで人殺しを楽しんでいる」


 しかし私にはここまでのことをする人間に心当たりがある。

 彼女もワーナーと同じで無駄な殺生せっしょうは嫌う

 でも彼女には人格が変わってしまうスイッチがある


 他者が決して触れてはいけないパンドラの箱

 スイッチが入ってしまった彼女なら、、、


「あなたたち、マリアンヌの死体をさがしなさい」


 想像通りであって欲しくない

 そんな気持ちから騎士たちに命令した。


 もしかしたらこの死体の中にマリアンヌの死体もあって

 その先の角からワーナーが出てくるのではないかという希望を込めて。


 しばし待った後、騎士の1人が帰ってきた

 そしてアンジェラのあわい希望を打ち壊すかのように


「マリアンヌの死体は見当たりません、それとその…ワーナーさんも見当たりません。 屋敷の中をくまなくさがしたのですが、、」

「そう…」


 マリアンヌの死体が無いということは逃げられたいうこと

 にも関わらずワーナーの姿が見当たらない

 これは


「連れ去られた…と、考えるべきね」


 ワーナーを連れ去るということはワーナーに勝てるほどの使い手

 考えるまでも無い


「カーナ」


 つらそうにアンジェラはそうつぶやいた。


「あなたたち、すぐにこの囚人どもの死体を片付けなさい」

「ハッ!」




            ×              ×




 割れた窓から雨が入ってきている。

 激しく降っていた雨が小雨に

 アンジェラは窓のふちに指を置き、ツーとなぞった。


「血…かしら?」


 灯りを照らすと、それはどろだった。


「外から入って来た人間はここから入って来たのね」


 わざと”入って来た人間”などと表現をぼかす。


 これは彼女の持つ戦力に対しての未練だろうか?

 それとも親友を失ったことを認めたくなかったからだろうか?

 ただ、アンジェラはひび割れたガラスに映った自分を見ながら”何でこんなことに”と自問する。


 そして自分自身のミスを振り返るようにゆっくりと目を閉じた。



【なぜ私はすぐにマリアンヌを殺さなかった?】


 計画の完遂かんすいだけを考えれば陵辱りょうじょくする必要は無かった。

 いや、強姦ごうかんにあったという事実が必要だった

 でないと、私が殺したと他の皇族に…いえ、カーナに気付かれる恐れがあった。


【本当にそうだったのか?】


 心のどこかで私はマリアンヌを憎んでいたのではないか?

 皇族の中でもとりたて恵まれた境遇きょうぐうに生まれ、私たち兄弟を見下していたあの小娘を。


 そこに私怨しえんは無かったのか?

 本当に計画の成功だけを願っていたか?


 はいと言い切れない自分がいる。

 私は昔からマリアンヌを嫌っていたから。


【ではあの地下室から逃したのが問題だったのか?】


 それはそうだろうが、まさかあれだけの人数がいて逃すとは思わなかった。

 確かに容姿だけを見れば私の憧れた亡きリーシャ様に瓜二うりふたつだが、それでもたかが小娘の裸ごときで逃がしてしまうなんて。


【ワーナーを1人でマリアンヌを追わせたのが問題だったか?】


 いや、カーナを相手にしたのだとすると、私の騎士たちでは何人いたとしても相手にならなかっただろう。


【そう考えるとカーナが思いのほか早く帰ってきたのが問題だったか?】


 今日、彼女に紹介する予定だったのは私の知り合いである正騎士

 彼には「出来る限りカーナを引き止めろ」と命じた

 にもかかわらずカーナが帰ってきたことを考えると、正騎士は足止め出来なかったのか?

 それとも…そもそも会えなかった?



 ミスと言われればミスだが、どれも計画に支障が出るというほどではない。

 だがそれが組み合わさって今回マリアンヌを逃がした。


「運が悪かったのね」


 結局はその一言に尽きるのかもしれない

 それにどう反復はんぷくするように反省しても時間は戻らない。

 もし神様なんて不毛ふもうなものいるのならば、よほどマリアンヌが好きだったのだろう。


「神を呪い殺したくなるわね」


 何にしても確実に言えることは


 カーナはもう手に入らない。

 それどころか敵になったと考えるべき。


「もう…私のことを友とは呼んではくれないでしょうね」




 兵たちは”大丈夫でしょうか?”と心配そうにアンジェラに話しかける。


「アンジェラ様、我々は王位継承権第一位であるマリアンヌ皇女に弓を引いたわけですが、この国において皇族を傷つけることは死を意味します、、それで、その」


 そう言った兵たちにアンジェラはにんまりと笑ってみせた。


「安心しなさい、王位継承権第一位と言えど、たかが小娘。それは今日であなた達もよく分かったでしょう? やってくることなど予想できるし、たかがしれている」


 自分がおそわれて、首謀者は私

 そう言ってお父様にでも泣きつくにきまっている。

 あの他力本願たりきほんがんなお姫様に出来るのはそれぐらいだろう。


 ワーナーを連れ去ったのは十中八九カーナのアイデアだろう。

 でもねカーナ


 ワーナーを連れ去ったのは証拠を彼が喋ると思ったからでしょうが

 甘い、彼は口を割らない。


 たとえマリアンヌがこの屋敷を調べろと言った所で、私はそれを拒否できる。

 証拠も無いのに私の私有地に入るなんてありえないと言える。


「どう頑張ったところで彼女に私はさばけない、私は皇族、ファンデシベル家の一員なのだから」


 お手並み拝見といこう。


 アンジェラは全てを切り替えるように割れた窓ガラスを背にするのだった。


閲覧ありがとうございましたヽ(^-^ )


よかったらブックマークにポチ(*´・д・)σお願いしま~す♪

まぁ、次アップするが問題作なのですぐに消されそうですが(笑)

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